雑記帖

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彼の不安



家の前で、鍵を開けつつしみじみ思う。

外へ出るのがキライな私は、最近は彼と一緒でないとほとんど外に出ていない。

そんな時の鍵を開ける役は彼だった。

珍しく仕事の打ち合わせで外に出なければならなくて

今日は本当に久しぶりだった。

カチッと鍵を回して玄関を開けると

リビングの方から凄い勢いで彼が走ってきた。

(・・・しまった)

その顔は心持青ざめていて、泣きそうな目が私を必死に見つめている。

「ただいま」

安心させるように笑顔を作ると、彼は私に震える腕を伸ばしてキツク抱きしめた

「おかえり」

彼は私が逃げ出さないようにギュッと抱きこむ。

その腕を軽く叩いて背中に腕を回し、私もギュッとする。

私の気持ちが届くように

「大丈夫。ココにいるから」

肩口に埋められた頭が小さく上下する。

彼はまだ不安なのだ。私が逃げ出さないかと

昔とは変化した関係を理解しつつ、拭えないのだ。

「不安にさせて、ゴメン」

謝ると顔を上げないまま

「早く仕事から帰ったら、いないから。・・・・分かっているんだけど」

震える小さな声で言ってくる。

その頭を片手でそっと撫ぜてから、両手で彼の頬を取って眼を合わせる

「うん。仕事でちょっと出た。不安にさせてゴメン」

そうして宥めるようにキスをする。

「大好きだよ」

唇でそっと告げて、もう一度。

彼に私を認識させるように。

彼の不安を解消させるように。

優しく、優しく触れさせた。


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