雑記帖

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私の不安



平日の昼下がり

彼はまだ会社に行っていて

突然家にやって来た目の前の彼女は

彼の会社の同僚だと名乗った

サラサラの長い茶色い髪に、整った顔立ち、高い身長、スラッとした手足

彼の横に立つ彼女を想像すると、とてつもなくお似合いだった。

「あの人と別れて下さい。」

そういう必死な彼女の目は潤んでいて、キレイだった。

何も言えず玄関先に佇んでいる私に

その後も何かを言って彼女は一睨みを残して去っていった。

気がつくと

彼が帰って来ていて、心配そうに私の目を覗き込んでいた。

彼の肩越しに見える外はいつの間にか真っ暗になっていた。

私ははっきり言って、生活能力が皆無だ。

そんな私の面倒を彼は全て見てくれている。

忙しい仕事をしているのに

きっと重荷だろう。

彼女に言われなくても分かっている

(別れた方が良いのだろうな)

彼には「なんでもない」と答えてリビングに来たものの

またボーっと考え込む。

いつもの様に、彼に作って貰った夕食を食べて

お風呂に入って

一緒の毛布に包まってから私は決心を決めて聞いてみる

「別れた方が良いかな?」

小さく聞いたその声は、静かな部屋の中の空気を一瞬凍らせた。

彼が鋭く息を吸い込んで、呼吸を止める。

私はいつもより少し離れた距離で体を硬くして、目を瞑っていた。

自分で聞いたのに、心の中は

(嫌だ、嫌だ、嫌だイヤダイヤダ・・・)

といい続けている。

彼の為でもあると分かっているのに

隣で動く雰囲気がしたと思ったら、彼に体を覆われていた。

目を開けると、真上に彼の顔があって

とても激しい感情を含んだ目が私を真っ直ぐに見つめていた

「なんで!?」

擦れた声が、聞いてきた。

「負担じゃない?大変じゃない?」

肯定されるのが不安で、怖くて、震えてしまう声で聞いてみる

「一緒にいると不幸に・・・」

私がそう言うと、彼は私の顔のすぐ横に拳を振り下ろした。

「負担じゃない、大変じゃない、とは言わない。でも俺が好きでやっている事だ」

キツイ眼差しが怒っている事を私に伝えてくる

「それは例えお前にでも、否定されることじゃない」

彼が私を「お前」と呼ぶ時はよほど気持ちが昂ぶっている時だ

「うん。ゴメン」

震える彼の声の中に激情と、同じだけの哀しみを見つけて私は素直に謝った

「別れたくない」

今度は素直にそう告げると、彼は私に身を投げ出すように重なってきて

「心臓が止まるかと思った」

と小さく告げる。

私をその両手で抱き込んで来ると

「別れるなんて、俺を不幸にさせる事言わないでくれ」

とその体を震わせた。

「うん、ゴメン」

私は彼の肩から背中を慰めるように、撫で下ろした

「もう、言わない。大好きだよ」

彼は私を痛いくらいにギュッと抱きしめた。

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