第三章



 彼と同じクラスの、彼を振った少女は悩んでいた。
(どうして…?私の…私のせい?)
 自問自答を繰り返す。
(行方不明、そんな…おかしいよ。あの後すぐだなんて…私のせい、違う!私は振っただけ、気持ちに従っただけ。
好きな人もいた。私は間違ってない…なんでこんなことで、
おかしいよ。だいたいただの行方不明よ、
うん。ただの家出に決まっている…、
でも、もし自殺していたら…あの人と同じように。
あの人とは親友だった、…もしかしたら…!)
 混乱していた。
自分を正当化しようとする心、自分のしたことへの後悔、
人一倍強い責任感、恋していた人が自殺した過去、
全てが重くのしかかった。
彼が行方不明になったことへの悲しみや不安は
彼女にはどうってことないことだった。
しかし優しい子である、
この状況でも確かに彼を心配に思う気持ちはあった。
ただ、十六の少女には負荷が大きすぎた。
人の生き死にの責任などという問題は酷すぎた。
(死んでいるわけ無い、そんなに弱い人じゃなかった。
そんなに勇気のある人でもなかった。
誰かの後押しが無きゃ、彼は何をするのにも戸惑っていた。
そんな人が一人で悩み、一人で消えるなんておかしい…でも、
もし私がその後押しになったんだとしたら…?
彼はもうあとは背中をぽんっと押されるのを、
あるいは引き止めることを待っていたのだとしたら…?)
 彼女の神経はピン、と張り詰めていた。
 もう、彼女自身も背中をそっと押されただけで、
脆くも崩れてしまいそうだった。



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