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僕自身の一部が死んだのと同じ
残されたものが君のいない世界でできることは
君の代わりをみつけること
映画 「トム・アット・ザ・ファーム」
監督・脚本・編集・衣装・主演 グザヴィエ・ドラン
原作・脚本 ミシェル・マルク・ブシャール
元は戯曲です。
少し前に観ていたのですが
時々思い出してしまう映画なので、やはり記しておこうと思います。
「今度、逃げる時は大豆畑にしろ
十月のとうもろこしはナイフだ」
十月のとうもろこしはナイフだ
そう
ここは危険な場所、逃げられないよ
そう聞こえます。
この映画はサイコサスペンスと紹介されています。
確かに閉鎖的社会とその文化の中に潜在する
人間の孤独と本質がせまってきますが
ドランが言うように
「ロマンティック・サスペンス」
ですね。
エロい。
時おり感じるエロティシズムと
暴力
美しさと恐怖
それって表裏一体では?
ラブシーンは一切ありませんが
だからこそでしょうか。
押し殺した感情が滲み出でて
少しずつ画面に広がっていくような息苦しさを感じます。
妙に官能的
そして
順応と服従と洗脳の恐ろしさ
ぞわっっ・・・と。。
詳しくはこちら HP
フランシスの暴力は自己否定の裏返し
トムをクズ呼ばわりしながら
彼の解放を拒む
農場は巨大な檻
弟の代わり
恋人の代わり
息子の代わり
・
・
・
閉鎖的で隔絶された世界
一瞬、現実に帰ったトムも気づいてしまいます。
ここを早く脱出しなければ、取り込まれてしまう
story
今回はネタばれ満載です。
詳細は省きましたが
ラストまでの大まかな展開を記しております。
知りたくない方は
この辺りで退き帰して下さいね。
モントリオールの広告代理店で働くトムは
事故死した恋人ギョームの葬儀に出席するため
彼の実家、ケベック州の片田舎にある農場へ。
隣家も、尋ねてくる人さえいない広大なだけの農場で
ギョームの母親アガットと、兄フランシスは暮らしていた。
この家でトムが知ったことは
ギョームが母親にゲイであることや
トムの存在を隠していたこと
そして
トムの同僚で
サラというガールフレンドがいるという嘘だった。
「酷い女!どうしてここへ来ないの!?」
アガットは葬儀に姿を見せないサラへの不快感をむき出しにして
トムに訊ねます。
トムに嫌悪感を持つフランシスは
「母を傷つけるな、嘘をつきとうせ」
「上手くやり遂げるまで、ここから逃がさない」
と脅迫します。
同姓婚が認められた世の中であっても
敬虔なカトリック色が根付いている地域で
ゲイは「異端」
トムはギョームの単なる友人として接することを決め
恋人を守れなかったという罪悪感から
農場の仕事を手伝うようになる。
葬儀が終わったら去るつもりでいたトム
脅迫されて留まるうちに
フランシスの暴力と時おり見せる優しさの狭間で
自分の「感覚」を少しずつ見失っていきます。
そんなある日
トムは同僚のサラを呼び寄せ芝居をするように頼みます。
サラの直感は家族の異様さ
トムを外に連れ出したサラは
「一緒に帰るのよ!」「逃げるのよ!」
と忠告しますが
トムはにっこり微笑んで
「なぜ?もう家族なんだよ」と受けあわない。
(うーん、怖いですね~ここ)
言い争っているところをフランシスに見つかり
家の中へと連れ戻される。
ギョームの遺品の入ったボックスを
アガットから渡されたサラは
それを固辞し出て行くが最終バスに間に合わず
フランシスとトムは車で送ることに。
二人は車内で泥酔し
フランシスは自分をまともな「男」だと
トムに見せつけるようにサラを誘惑し、場を外すよう命じる。
その間
立ち寄ったカフェでトムがバーテンダーから聞きだした話は
昔、フランシスが起こした凄惨な傷害事件だった。
美しかったある少年の顔を
ナイフで大きくザックリと引き裂き、口まで裂いたらしい。
それ以来、店は彼を入店禁止にしていた。
農場に誰も近づかない理由
フランシスがどの店にも入れない理由
閉鎖的な人々の偏見
少しずつトムの曇っていた思考も晴れてきます。
翌朝、目覚めると家には誰もいない。
アガットはどこ?
左右の壁にくっついていた二つのベッドが
いつのまにか中央に。。
ギョームの遺品ボックスがトムの足元にある。。
のろのろと朝食をして過ごしているうちに
突然、我に返ったトムは
猛スピードで荷物をまとめます。
「逃げるんだ」
スーツケースから必要なものだけを身につけ
スーツケースはとうもろこし畑に放り投げ
スコップを持ち
車を奪われていたため徒歩で街を目指しますが
途中でフランシスに見つかってしまいます。
森へと逃げるトム
森の中まで追いかけてくるフランシス
震えながら木の陰に身を隠すトム
森に響くフランシスの思いがけない懺悔と告白
フランシスが取り乱している間に
トムはフランシスの車を奪い走り去ります。
途中、給油で立ち寄った町外れのガソリンスタンド
その店の奥で働いていたのは
顔に大きな傷跡のある青年でした。
恐怖を感じながら田園地帯を駆け抜けると
だんだん車窓の風景も変化してきます。
街灯の数も増え
高層ビルや商業施設が見えてくる。
街中には人々の姿も。
やっと自分の世界に帰ってくることができたトム
信号待ちで停止し、トムが安堵できた時
信号が「青」に。
私の記憶は曖昧で、うろ覚え部分もありますので
その辺りは追求しないでね。
孤独と不理解
抑圧された精神がもたらす不幸でしょうか。
結局、フランシスは自分の本質から逃れるどころか
トムの存在によって覚醒してしまったようですね。
ご覧になった方はどう思われましたか?
しかし
相変わらずドランのカメラワークや
小物使いでの無言の主張
音楽のセレクト・・・
総合的な映画の見せ方にはセンスがありますね。
ここまで、おつき合いいただきありがとうございました。
ドランは今、旬の人かもしれないけど
私はこれからの可能性を楽しみにしています^^
では、また。