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2017.08.28
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カテゴリ: 観照 & 探訪

長刀鉾の鉾建て2日目を前回ご紹介しました。その見物を始める(12:00)前に、長刀鉾の組み立て現場を通り過ぎ、ちょっと 函谷鉾の様子を見に行きました 。四条通を西進し、烏丸通を横切れば函谷鉾が見えます。冒頭の画像は、10:48頃に眺めた景色です。

鉾は既に引き起こされていました。クレーン車に吊された作業台が高く引き上げられて、真木に取り付けた榊に対して、飾り付けの作業が行われているように見えました。

函谷鉾の場合は、 榊の中央に金幣 が挿され、 榊の枝に小型のしでが多数取り付けられています
函谷鉾は「扇形の鉄板に穴を多数あけた支持の枠と、榊の根本をまとめる榊受台をとりつけ、この穴に榊の枝を多数活けるように挿す」 (資料1) というやり方です。そのため榊が花束のように上方へ拡がる形になっているのです。


真木を見上げて、ズームアップで撮ってみました。
鉾頭には、白麻三角形2枚を合わせて竹骨に張り、それが竹真木の先端に冠せて取り付けられ、上端に白銅銀鍍金の三日月が両先端を上に向けて取り付けてあるそうです。これは、 「函谷関から見上げる暁の山稜を象徴している」 といいます。 (資料1)

左の画像と合わせて見ていただくと、一番上のしゃぐまの少し上に、四角の枠が上に開いて漏斗状の形で固定したものが見えます。黒塗割竹の80cmほどのものが16本、真木の周囲に使われています。 「中程に底板があって真鍮金鍍金雌雄の鶏が居り、周囲を褐色石垣模様の麻幕で包み、函谷関の城塞をかたどる」 のです。函谷関の城塞に見立てたこの関が、 天王台 に相当するそうです。 天王人形 は1mほど上の位置に真木に結わえられています。さらに上には、 黒塗小屋根 が真木に取り付けてあります。
鉾頭と小屋根の間には、 「吹きちり」 が2枚付けられています。天王台に相当する関の下には角幡がつけられています。 (資料1)

胴組の方に目を移します。
北側面
北東隅の上部
北側面 中貫東端側

「なわがらみ」技法が駆使された仕上がりの美が鉾建てを見物する楽しみの一つです。
長刀鉾の北側面の仕上がり美の画像と見比べてみてください。技法は同じなのでしょうが、仕上げ方がかなりことなります。それぞれの鉾のやり方が繁栄されていくのです。
胴組の後部(西面) 


道路脇にこんな道具が置かれていました。木槌のような道具には天保十年六月と刻まれています。江戸時代、1839年です。それ以来、連綿とこの道具が使われてきたのです。さりげなく置かれている道具にも歴史の厚み、継承と人々の愛着が見られます。

四条通の西から、函谷鉾の基本構造の全体像を眺めたところ。
この後、鉾が巡行の折に見る姿に仕上げられていきます。



囃子台の取り付け作業が始まったところです。 時刻は10:54頃です。




四条通の南側歩道の違う位置、角度から真木を撮ってみました。
函谷鉾のしゃぐまは7個取り付けられていて、上から5つ目と6つ目の間に榊が位置します 。5つ目のしゃぐまは大きな榊の陰になっています。褐色の石垣模様の麻幕の図柄がよく見えるとともに、その下に吊された角幡の図柄もちゃんと見えました。勿論ズームアップで撮ったからなのですが・・・・。紺地に白二引窠紋入の30cm 角幡 です。
このまとめをしていて、記録写真から小さな発見(?)がありました。側面から眺めた榊の北方向に、鉾頭と同じ形のものが細い棒の先に取り付けられているのが見えたのです。函谷鉾の会所の屋根に、これが設置されているというのを初めて知った次第です。
長年見物し親しんできている祇園祭ですが、毎年何か新しい発見、新しい気づきを得ています。だから、この祭見物に飽きないのかもしれません。

ここで一旦、長刀鉾の鉾建て作業のプロセスを見物することにします。


函谷鉾のところに14:30頃戻って来たときには、既にこの状態まで進行していました。
胴組の下部では、石持を堅固になわがらみで緊縛する作業がかなり進んでいます。胴組の上に作業用の張り出しが設置され、上部構造としての囃子台には既に手摺、柱と屋根が組み立てられ、着々と外装部分の組み込み作業が進んでいきます。

後部側に回って見ました。北西側から撮った写真です。囃子台の四周の手摺の上に、角材を渡して仮固定して作業用の張り出しが設けられています。
長刀鉾は3回にわたって記録を整理し、ご紹介したところで終わりました。長刀鉾のその先の鉾建てプロセスは、この辺りから函谷鉾の鉾建て状況の進展に重ねてみることで、イメージしてもらえることでしょう。

鉾の屋根には、普通の家屋や寺社の屋根とは異なり、動く屋形としてその動揺に耐え、かつ毎年の組立・分解の繰り返しで使うのに便利なように様々な工夫が施されているようです。「小部分ごとにブロックセットとなったものを栓や掛金で一時的に固定する方式をとり、独特なくふうが凝らされている。棟は真木のため前後に分断されており、網かくしの内部は穴になっていて、屋根方はここから出入りする。屋根の重量は真木部分で宙釣りにされていて、四本柱で水平に支えられているから、鉾が揺れると屋根は下部に関係なく独特にゆれる」 (資料1) ということになるのです。その揺れ方は、鉾の巡行をご覧になると感じられることでしょう。

屋根の内部の中央に白く見えるのは穴なのです。真木と禿柱が延びているのもなんとか見えます。

函谷鉾の後部の屋根に着目してみましょう。屋根の裏側をズームアップします。

屋形の梁の中央に、切妻造りの屋根を支える金色に彩色された大瓶束が輝いています。
大屋根の軒裏の後部には、金地に明烏 (あけからす) が描かれています。



真木の後部


鉾の骨格の全体構造が見える段階です。鉾の装飾部材がどんどん組み込まれていきます。

14:30頃に前部の軒裏を一度眺めたときは、後部と動揺にこの状態でした。

近くにある他の鉾の様子を見に行くために、ここもしばらく中抜けしました。


15:58頃に再度訪れて撮ったもの。この時点で、張り出しの作業台は撤去されています。

大屋根の棟の両端の獅子口、屋根の合掌部の懸魚などもすべて取り付けられ 、囃子台の中心部を貫いて立つ真木と四方から真木を支持する禿柱が屋形の内側に見えます。鉾の舞台裏がまだ観察できる段階です。
屋根の中央には真木・禿柱を覆う真紅の網隠が既に装着されています。

さて、ここからは、博物館・美術館的な鑑賞を楽しめる時間です。山鉾巡行中には多分ゆっくりと見ることのない部分の美を堪能できるのです。ご覧ください。
屋根の後部



後部の鱗板には波に亀と牡丹の透かし彫り彫刻が施され、彩色されています。

それでは、前部(東面)を眺めてみます。

       15:59頃に眺めると外装の組み込み装着が終わっていました。


軒裏には金地に極彩色で雌雄の鶏が描かれています。大瓶束の左右の鱗板には彩色木彫像が見えます。手許の本によると、嘉永2年(1849)柴田杢之助同与市による作品だそうです。



軒裏前部の右側に、 今井景年の署名と落款印 が見えます。


林和靖と白梅
童子と鶴・白梅

林和靖とは、北宋の詩人で林逋( りんぽ :967-1028)のことで、和靖は死後に追贈された諡号 (しごう) だそうです。中国の西湖中の孤山に隠棲し、20年間市街に足を入れることなく、一生独身で、鶴を飼い、梅を愛でて過ごした人で、梅を詠んだ詩を好んで詠じたと言います。江戸時代から広く愛好された詩人だそうです。 (資料2)

函谷鉾は、孟嘗君が函谷関で家来に鶏の鳴き声を真似させることで、開門させて通り抜けたという故事を題材にしています。そこで江戸時代に良く知られたという林和靖のことを同じ中国関連で題材にしたということでしょうか・・・・。




一文字梁は黒漆塗りに雲鶴の繊細な鍍金金具で、今尾景年下絵によるものと言います。
はや時刻は、16:00頃です。

この辺りで、函谷鉾を離れました。
つづく

参照資料
1)『祇園祭再見 山鉾篇』 松田元編並画  郷土行事の会
2)  林和靖   :「コトバンク」

補遺
函谷鉾  ホームページ
函谷鉾   山鉾について  :「祇園祭」(祇園祭山鉾連合会)
今井景年   :ウィキペディア
今井景年   ;「コトバンク」

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Last updated  2017.10.23 10:07:54
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