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2017.09.03
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カテゴリ: 観照 & 探訪
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西洞院通を北に入ると、南を正面にして 「蟷螂山 (とうろうやま) があります。 「かまきりやま」 とも呼ばれます。

この山が少し変わっているのは、鉾の胴組に相当する 山車 (だし) の上に、唐破風造りの屋根の御所車そのものが載っているのです 。そして、 その屋根の上に、大かまきり が正面を向いて乗っかっているという珍しい組み合わせです。
宵山までは覆屋の中に収まっています。西洞院通ではここに山があるだけです。比較的幅広い通りの東寄りに置かれていて、宵山でも室町通、新町通の混雑と比較すると寂しさすら感じるくらいです。他の山鉾からみれば位置が外れているから、そうなるのでしょう。逆に、ゆっくりと見物できるところです。

からくり仕立て となっていて、 山鉾の中で唯一のからくり山です。

名古屋のカラクリ師玉屋庄兵衛氏が、古式の鯨鬚をばねに用いた精巧な糸あやつり木彫の大かまきりを復元されたのだそうです。

「蟷螂の斧を以て降車の隧を禦がんと欲す」という中国の故事から発想された山です。この言葉は中国梁の時代の詩文集「文選 (もんぜん) 」の中に記されているそうです。弱い者が自分の分や力を考えず、果敢に斧をたよりに大敵に向かい妄進することを諷刺した言葉だと言います。「山鉾について」(祇園祭山鉾連合会)を参照すると、南北朝時代にこの町内に住んでいた公卿・四条隆資(1292~1352)の戦いぶりと故事を結び付けたところから発想されたと伝えています。

中国のこの表現の別バージョンがいくつかの書に取り上げられているようです。『荘子』(外篇 天地)には、「蟷螂の臂を怒らして以て車軼 (しゃてつ) に当たるがごとし」と記しています。

蟷螂山は応仁の乱前からあったそうですが、元治の大火(1864)の大火で大部分を喪失するということもあり、 昭和56年(1981)に117年ぶりに再興された山 です。

今回、初めて宵々山でこの蟷螂山の細部を鑑賞することができました。

(ながえ) には龍頭が付いています。
  轅の先端です。


屋根の軒裏から沢山の 総角結びの房飾りが吊されています
山車の欄縁の角には透かし彫りの飾り金具が取り付けてあります。


欄縁の側面も透かし彫りの金具で装飾され、三頭巴の紋や五葉木瓜の紋が使われています。

この御所車の場合、『源氏物語図典』に掲載の牛車の種類毎の挿絵を見ても、明らかに違う点があり興味深いところが散見されます。
御所車 は貴人が乗ったことからくる 牛車の俗称 ですが、唐破風造りですので、 唐車と呼ばれる種類 になります。唐車は上皇・皇后・東宮・親王・摂関などの乗用だったようです。
唐車の挿絵と比べてみると、この御所車は極度に豪華絢爛な装飾性を過剰なまでに取り入れていると思われるのです。ひょっとしたら、祇園祭の行事に御所車を取り入れる発案をした京の町衆が、意図的に実際の唐車とは次元の違う架空の豪華な御所車を仕立て上げたのかもしれません。
まず一つ、 人の乗る屋形の外回りに装飾性の高い欄干がある のです。欄干の下部は花々の浮彫彩色で飾られています。橋や建物の欄干では擬宝珠が一般的ですが、ここの擬宝珠に相当する装飾金具は草花に造形されています。これもまためずらしい意匠です。

屋根には棟の両端に金塗鯱鉾が取り付けてあります 。唐車の挿絵ではここももっとシンプルな飾りです。

正面、 唐破風の兎毛通は瑞鳥が彫刻され金彩色されています 。金箔が施されているのかもしれません。

頭貫には草花や正面から見たかまきりの図案化された形が彫刻され、虹梁は雲と鱗の文様が見えます。その上の大瓶束と装飾彫刻などは極彩色に塗られています。
  こちらがたしか屋形の正面です。
そして正面から撮ると、虹梁(前)と頭貫(後)の遠近感がなくなり、平面的に見えています。
それでも対比的に眺めていて気づいたことがあります。おわかりになるでしょうか? 
改めて、再観察の課題が残りました。



屋形の袖の部分には、昇り龍と降り龍の彩色彫刻像が取り付けられています。


山車の四隅には角房を掛ける角金具が欄縁の下に付けられて、角房が吊されています。
角金具の意匠がいいですね。角房は総角結びと八坂紋結びが併用されているようです。

水引と胴懸



透明保護シートがかけてあるために見送がよく見えないのが実に残念!
その代わり 山車の担棒の部分のなわがらみがよく見えます。

ちがう角度からの眺め。 裾幕には蟷螂の蟷の文字が並んでいます

担棒の先端にはめ込まれた金具にも「 蟷」の文字 がデザイン文字風に記されています。


近くの家に、御神体や胴懸などが展示されています。右側の壁にも2枚ずつの水引と前懸・胴懸が見えます。

       正面の覆いの中に 「祇園三社」と神号が墨書された軸 が掛けてあります。

その左前には 竹芯に萌葱色薄絹張のかまきりが飾台付で置かれています
これらが巡行当日御所車に載せられるのでしょうか・・・・。手許の資料では不詳です。


「瑞苑浮遊之図」

「瑞苑巡巡之図」

 水引は「吉称橘蟷螂図」、胴懸は「瑞光孔雀之図」

前懸「瑞祥鶴浴之図」
壁に吊して展示されているこれらは、 人間国宝・羽田登喜男作の友禅作品です。

この日、比較的見物人が少なかったので、ゆっくりと時間をかけ、写真を撮りかつ眺めることができました。それでも見落としている箇所がけっこうありそうです。

つづく

参照資料
『祇園祭再見 山鉾篇』 松田元編並画  郷土行事の会
宵山・巡行ガイド2016  2016年に入手の資料
『源氏物語図典』 秋山 虔・小町谷照彦 編 須貝 稔 作図   小学館  p70-74
祇園祭と八坂紋結び ​  :「茶香房ひより」

補遺
山鉾について ​  :「祇園祭」(祇園祭山鉾連合会)
山鉾の説明 ​   :「京都市観光協会」
牛車の種類 ​   :「風俗博物館」
牛車 ​   :ウィキペディア
牛車いろいろ ​  :「雪月花」
下鴨神社  唐車 ​ :「旅 瀬戸内(たびせと)」
紐の結びと基本の結び方 ​  :「MACHIDA」
八坂紋結び ​  :「かめこ」
日本結び文化学会 ​ ホームページ

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Last updated  2017.10.23 09:50:22
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