「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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青い西瓜
おお振り小説
作・あすまゆう
「榛名!なんだ!その態度は!」
中学の頃散々聞かされた監督の言葉をもう聞かなくても済むと思った時…
喜びとやり切れなさが心で葛藤が始まっていた…
ーそんな時…あいつに出会った。
俺は酷く荒れて居たらしい。
…俺のやり方が気にいらないと文句を言う奴にはあたり散らし…
長く投げれなくなっていた俺を…
本気で叱って怒ってくれる奴に…
「…元希さん…いい加減にして下さい!」
タレ目を引っ提げたアイツが木陰で休む俺を見下しながら言葉を落として来た。
「別にサボってる訳じゃないだろ…」
「アンタは今までソレが通って来たかもしれないけど郷に入れば郷に従えって言うだろ!練習位皆に付き合えよ」
この堅物は俺が影でどれ程のメニューをこなしているか知らない…
知りようもない…
教えて無いのだから…
「かったるい!涼しくなってからやる、体調維持が基本なんだから、この炎天下でワザワザ体をいじめる必要は無いだろ?」
真面目に答えたつもりだったがアイツは顔を真っ赤にして怒りの形相で俺を見下ろしていた。
「…忠告した俺が馬鹿だったっス!」
「?どうゆう意味だよ…?タカヤ…?」
静かに意味あり気な台詞を言うと返事もせずに後ろを向いて歩き出して炎天下のグラウンドに戻って行った。
「…もしかして仲間から顰蹙買ってる俺をフォローしようと練習に誘ったのか…?」
考えると嬉しくなった。
「可愛いトコあるじゃん…アイツ」
あの阿部隆也と言う後輩に…
生意気にもこのシニアと言う野球軍団の中で「剛球」と言われる俺の球を捕れるのは隆也だけだった。
俺にとっては的になげる様なモノで誰が捕手でも構わないと思っていた…
ーあの時までは…。
高校に入ってシニアを出た俺は当り前に野球部に入部した。
一年からレギュラーが当り前の俺には少し…何かが足りないと思って居たあの頃・・・・そう・・あのシニアに居たアイツの事を思い出す。
(アイツ泣いてたな…ははッ!俺が泣かしたも同然だけど…)
あと…一年の辛抱だ…
そう思っていた。
俺を最低の投手だと罵ったアイツに俺の球をまた捕らせる様になるまで…
毎日毎日練習をしてアイツがまた俺の剛球を捕れない日々を…
また痣だらけの身体にしてやる…
そんな復讐にも近い想いは練習に姿を変えて厳しいメニューに打ち込んだ。
ーアイツは此処に…俺の捕手というポジションに戻って来る…
確信があった…。
なのに隆也は…野球部さえ無い無名の高校へ進学…
(俺と組めばレギュラー確実なのに…なんで…)
イライラが続いたが久々に会ったアイツは俺を無視した…
「そう言う…事かよ…」
俺は散々悪態を吐いてやった。
「アンタ…相変わらずだな…」
そんな…顔をして俺を見下ろしていた…
それは練習中に木陰で休んで居た俺に向けたまなざしは面影すら無かった。
試合が終わった後…俺は走った。
何を探しているのか…
何で探しているのかも解らないけど夢中で走った。
「隆也…」
そう呟いて振り向くと秋丸が迎えに来た。
―第二章~秋丸の気持ち~
オレと榛名は高校に入っる前からの付き合いだ。
「クッソ…あいつ待っとけっつったのに…」
息を切らして誰かを探す榛名は何故か気持ちがオレから遠ざかった様に見えた。
「ああ“タカヤ”?」
オレが聞き返すと榛名が驚きの表情を見せる。
オレに話した事すら忘れ、「タカヤ」に夢中になる榛名はオレ達と野球をするより楽しそうな表情を見せた。
(無意識なのか…それとも…)
試合の後のダウンをやりながらそんな考えがぐるぐる回る。
こんな感情は知りたくなかった。
知らなくて良かった…
この手でお前を縛ってしまいたい。
鳴かなくなったカナリアはどうなるんだっけな…
榛名…。
あの中学での故障以来肩を庇う素振りを見せないのは完治しているんだろう…
その後の榛名をここ迄立ち直らせたのは「タカヤ」と言う一学年下の男らしい。
心から感謝するよ…
タカヤ…くん。
自然と口の端が上がった。
「秋丸?何してんだよ?ダウン終わったぞ?」
「えっ?!あっ!じゃあ…帰ろっか?」
慌ててのけ反った…
心配して覗き込んだ榛名の顔があまりにも近かったからだ…
試合の後走った所為か榛名の香りがした。
(甘い…)
匂いがした気がした。
ならば…舐めてみたら甘いのだろうか…
あの肌は…。
いつもの様にプロテインと牛乳を併せてゴクゴクと飲む榛名の姿を見て居た。
口の端から漏れた牛乳が首筋を伝う…
ーゴクリ…
音を立てて固唾を飲み込んだ。
「帰るぞ?秋丸」
ぶっきらぼうにオレを呼ぶ声がひどく心地良い…
「ああ…」
頷いて荷物を持ち上げて榛名の後ろ姿を追いかけた。
ーその日は雨だった。
昼を過ぎて夕方に差し掛かる頃…トレーニングルームには誰もいなくなっていた。
「秋丸…お前もう帰れよ…」
メニューをこなす榛名は息を切らして上着を脱いだ。
「ま、まだオレも残るよ…」
投手でもプロ志望でも無いオレにはそこまで付き合う事は無いだろうと榛名なりの気使いなのだろう。
オレは敢てその言葉を断った。
「榛名こそ雨降ってるけど早く帰らないの?身体冷えちゃうよ?」
「ああ…実は今日は朝に雨が降って無かったから傘を忘れたから止むのを待ってるだけだったり…」
面倒臭そうに答える榛名が脱いだ上着を鞄に入れて新しいシャツを出した。
見事に野球着焼けした肌は鎖骨から下が真っ白だった…
まだ成長期の榛名の身体は筋肉ががっしりと付いていて…
つい滴り落ちる汗を目で追ってしまう。
腕を上げると背中の肩甲骨が動く…
背骨から脇腹へ視線を落とす。
いや…犯しているのだ…
「何、見てんだよ?」
榛名の言葉で我に返った。
「いや、凄い筋肉だな…と、思って…」
「だろ?」
咄嗟に出た言い訳に少年の様な顔で笑う榛名を抱きしめたいと思ったのは初めてではなかった。
雨雲がどす黒くなって雷が鳴り始めた。
まるで…オレの心の中みたいだ…
「スゲー音だな…マジで帰った方が良くないか?」
「お、オレ親に迎えに来てもらうから…」
ふぅん…と興味の無い返事をすると榛名はまたメニューを始めた…
「榛名も乗って行けよ?そんで、今日はオレの家泊まって行けば?」
何とか興味を引きたくて口が勝手に動いた。
「俺が行ったら迷惑だろ?」
10キロの鉄アレイを軽そうに操るとオレに手渡してきた。
(重…)
ズッシリとした鉄アレイはオレの心よりは軽いのかも知れない。
「迷惑なんかじゃないよ…」
俺はボソリと呟いて鉄アレイを抱えたままその場に座り込んだ。
「ん?何か言ったか?」
呟いた言葉に反応して榛名がトレーニングの手を止める。
「何でもないよ?ただの独り言」
にっこり笑って嘘をつく。
ーオレは笑って嘘が付ける様になってしまった…
たとえそれが些細な事だとしても。
「で?榛名は「迷惑」とかそういう話抜きで家に来たいの?来たく無いの?」
わざと意地悪な質問をしたのは百も承知だ。
だけど・・こうしなければコイツは俺のテリトリーに足を踏み入れて来ない。
「わーったよ!行けば良いんだろ?あー!もう!気が散って集中出来ない!!!」
雨に言ったのか俺に言ったのか分からないが、少し面倒くさそうにトレーニング用品を片付け始める。
「母さんも喜ぶよ」
ーそれ以上に俺が嬉しい。
笑って榛名の肩に手を置く。
「何でおばさんが喜ぶんだよ」
怪訝そうな顔で尋ねる榛名は肩に乗せた俺の手を振り払って制服に着替え始めた。
「母さんは榛名のファンなんだって言ってるだろ?」
「オレは何も芸なんか出来ないぞ?」
冗談めかして榛名が笑う。
「マウンドで榛名が出来る唯一の芸を見せてくれればそれで十分だけどな?俺としては」
「プレッシャーかけんなよ?」
そう言って笑う榛名はプレッシャーも逃げ出すような大胆不敵な笑みを溢す。
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