続ひこうき雲2




「犬太、どうしたんですか?沈んでちゃ、あなたらしくないわ」
「あっ、光さん」
「家族が苦しんでいるのを見るのはつらいでしょうけど、大丈夫よ。
あなたの家族はきっと乗り越えて、また心を1つにするわ」
「ホントかなあ、特にお兄ちゃんなんか、この頃笑わないし、
なんだか母さんともギスギスしてるような気がするんだけど・・」
「大丈夫、お兄ちゃんはいずれ乗り越えるわよ。
でも心の番犬がそんな弱気じゃいけないじゃない。
あなたは向こうの世界の者にはない、力があるのよ。
その力でなんとか家族を元気づけてあげなさい。
えっ?どんな力かって?それはいずれ分かるわ」

ボクにどんな力があるっていうんだろう?
ボクはいつでもみんなの所へ行くことは出来るんだけど、
触ることも、声をかけることも出来ない。
こんな中途半端なボクに、何が出来るって言うんだろう?

「犬太とお散歩」の日記や掲示板にカキコしてくれた、
みんなのメッセージを読んでみる。
『犬太くんが見守ってくれています・・・』
『犬太くんも喜んでいるでしょう・・・』
えっ?どうして分かるの?ボクがいつもそばで見ていて、
喜んだり悲しんだりしていることが・・・。
本当にそのとおりのことが書かれていたので、
ボクはもしかしたら人間にもボクらの世界の者のことが
分かっているのかなと思った。

「犬太、今のあなたの家族が、元のように元気になるためには
何が必要だと思う?」
「う・・・・ん・・、よく分からないけど、
もう一度家族の気持ちを1つに出来るような何か
、たとえば生きていた時のボクのような存在が
必要なんじゃないかなと、思うんです」
「よく気付いてくれました、やっぱり立派な『心の番犬』ね。
ちょっとこっちを見てご覧なさい」

光さんは、初めて会った時にボクの一生を映して見せた
スクリーンを指さした。
そこには、お母さん犬の、そばでくっついて寝ている三頭の子犬がいた。
「犬太、あの一番右側で寝ている赤ちゃん、見覚えない?」
「・・・!?!!えっ?ええっ? 
 光さん、あれってボクじゃないんですか?」
「あなたも、そう思った?
それじゃ、私が初めて見た時に見間違えたのも無理はないわね」
「じゃ、あの子は」
「そう、あなたじゃないわ。だってあなたは今ここにいるでしょう?
でもね、あの子はあなたと同じ波長をもって生まれた子なの。
つまりあの子もまた、
母さんやみんなを幸せにするために生まれてきたのよ。
でも、愛を分かち合える人と巡り会えるかどうかは分からないの。
逢えるかどうかは、あの子と、家族次第ね」


<続く>



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