そよかぜにっき

そよかぜにっき

自転車



光



 息子が5歳になったある日、

「俺は、自転車の練習をするぞ。」

と言ったので、当時住んでいた、

団地の前の道路で練習を始めた。

しばらくすると、

高校生くらいの10人程の男の子がやってきて、

すぐ前で、座り込んでおしゃべりを始めた。

そして、息子に対して、

「おーい!少年頑張れよ!」

と口々に言った。

息子は、当時、とても口が悪く、

「うるさいわ~。あっち行け~。」

そう怒鳴った。

私は、心の中で、オロオロしたが、

男の子達は、にこにこ笑いながら、

「まあ、そう言わずに。がんばろうや~。」

と言って、息子の自転車の後ろを

持ったりしてくれた。

 皆の見守る中、練習を3時間ほど続け、

あたりが真っ暗になった、7時半ごろ、

やっと自転車に乗れるようになった。

男の子達は、拍手を送りこう言った。

「すごいな~。感動したな~。

うん、良かった。お兄さんも頑張らないとなあ。」

息子は、とっても、得意げだった。

 自転車と言えば、

私が、乗れるようになったのは、

16歳の時だった。

子どもの頃は、何度も挫折したのだが、

高校に通わなければならなくなって、

やっと乗れるようになったのだ。

その時のことは、今でも覚えている。

風を感じながら走るあの爽快感、

車が横を通る時のあの怖さ。

たかが、自転車に乗れるようになっただけのことだが、

私には、ものすごい前進だった。

今、人から見ればなんのことはないような、

そんな小さな一歩を毎日探しているような気がする。



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