記念文集  『希望』




《東京損害保険代理業協会50周年記念誌》-飛翔-記念文集より-1993/11/15発行

■ 希 望 ■-------------(株)宮道     M・M=花子

 結婚して16年、子供なし、代理店を始めて12年になる。先日、主人のお薦め本、森村誠一著「星の陣」上・下を読む。  
『昭和19年、戦死した大隊長の、身代わり大隊長が、中隊に挺身隊を命じ、置き去りにした為、多くの戦友を失った中隊長の【怒り】が、39年後ある事件を機に再生、弔い合戦を決意させる。 老いに甘んじ、自分と同じ枯れた人生を送っていたかっての部下を呼集、生き甲斐を見いだした7名を結集して、それぞれの長所を生かし、軍資金調達、旧兵器を手に訓練を開始する。彼らは、すごい勢いで生気とカンを取り戻し、敵の勢力を削ぎつつ【的】に近づいてゆく。

「役の行者(えんのぎょうじゃ)」のごとく飛び跳ね、先に逝く友を背負い脱出、墓標を建て作戦を練り直しては復讐に向かう。 ラスト・ターゲットの身代わり大隊長は、戦後いちはやく政治家に転じ、暴力団を資金源として暗躍していたが、合戦終盤、癒着を暴かれ【ただの人】となる。

 1年後、ボケ老人と化した大隊長を前に、老人2人はその【的】を失い、虚しさが胸を貫く。中隊長は海辺に臨み、空を背負った7人の墓標に過ぎし想いを描く、夜になると、空にはおびただしい星の群が、それぞれの位置に陣を張っているのを視る」。 

 あとがきに、「年齢に関係なく、誰もがいずれは直面せざるを得ない老齢化社会への警鐘を鳴らすために、ともすると【老廃物扱い】され易い老人に、老いを拒否する戦いをさせることで潜在パワーを引き出したが、結果として老人であることを自ら認めてしまった人々に、刺激剤を処方してみた」とある。

 一方、老人問題を提起した本に、有吉佐和子著の有名な『恍惚の人』がある。20年前の私には、今の若者以上に、ボケ老人の存在そのものが信じ難く、核家族についても個人の独立くらいに考えていた。

 世の人々もまた、様々なリスクを直視せず、【物】にとらわれ続け、・生(生命力)・老(肉体)・病(精神・魂)・死(生命力)のバランスを崩し、環境破壊や高齢化、汚染などの記事を日常茶飯事のものにしてきた。

 先の著書の中で、森村氏はリサイクル活動も含め、人それぞれの役目とパワフルな老後を生きる心の持ち方を説き、有吉女史は家庭内介護の限界と、それに対する行政の立ち遅れを指摘している。 二冊とも、保険の出番はなかったが、元来、保険は衣食住と並び、かつ、それらを左右するほどの重要な役割を持つものである。 


◆◆◆保険を業とする者はその重要性に【心】すべきである。◆◆◆ 

しかし、消費者には損害保険代理店の存在や、生命保険外務員の実態が余り良く知られていない為、保険の相談先や契約先を見極められないでいる。 

 そして、彼らの多くは、保険そのものに対し、一部販売員によって植え付けられた猜疑心・強迫観念・拒絶反応などを、多かれ少なかれ抱かされている。 
 過剰な不安を抱きながらも、一攫千金的な含み資産をも同時に与えられ、欲負け、「死ぬ」「死なない」「でも死ぬ」といった花占い感覚的な生命保険加入者が実に多い。 

 払い込み保険料総額が2千万円前後にもなるのに、受け取る時(死亡時)には、葬式費用にも満たないなんてことを知らされていない。 

 これらは、保険販売員たる私達代理店や外務員の重大な責任ではないだろうか、本来の役割を忘れ、シェア拡大に血道をあげて、競って新商品を発売する生保(生命保険)・損保(損害保険)各社。 

 保険を片手間に扱う、あまり責任感のない代理店に外務員、賠償事故の逸失利益を声高に訴える世論などがある一方、印を押す消費者にも責任の一端はある。 また、今日の生・損保兼営時代を目前にしながらも、損保会社社員の生保知識はあまりにもお粗末である。

これからは、私たち損保代理店が率先して生保知識を吸収し、消費者に対して多様化するリスクに無理のない保険料で対処する仕組みを伝えなければならない。 それには、消費者に常に正しい情報を提供し、消費者自身の自覚を促し、ニーズに応じた保険設計を行い得るようなキラリと光る代理店でありたい。

損害保険商品は複雑(多種多様)で、解約返戻金の例を見ても、消費者に及ぼす害は少ないが、生命保険商品は単純にも拘わらず、消費者にとっては不利益となるような問題が多い。 商品というべき約款やパンフレットが充分に説明されておらず、契約者は疑問の解明ができないまま、延々と保険料を払い続けている。

 こうした様々な不都合を改善するためにも現在の【黴】の生えた募集取締法には多くの問題があるので、一連の制度改革に対する今後の代理業協会の対応に期待すること大である。

 そのためには、代理業協会の機能が充分発揮されるよう、多くの代理店がこれに参加するとともに、代理店自らも仕事に誇りを持ち、良き後継者を育て、これからの高齢社会に少しでも明るい展望を描いてゆきたい。  (千代田港支部)                               
~~~1993年(H5年)4月吉日 千駄ヶ谷事務所にて~~~

※1998年(H10年)1月1日(株)宮道から(株)ビッグ・ワンへ社名変更しました。


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