一期一会 ―日々思うこと―

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サレンバーガー機長




 飛び立ったばかりの旅客機が、摩天楼のすぐわきを流れる厳冬下のハドソン川に不時着した。15日午後(日本時間16日早朝)、米・ニューヨーク市で起きたUSエアウェイズ機の緊急着水事故では、日本人2人を含む乗客・乗員155人全員が救助された。市街地での大惨事を回避して着水を成功させたベテラン機長の判断と技術、浸水する機体からの迅速な救助劇に、「ハドソン川の奇跡」と国内外から感嘆の声があがった。

 地上との通信などによると、機長は、離陸直後に異状に気づくと、乗客に衝撃に備えるようアナウンス。出発したラガーディア空港に引き返すことは不可能と判断した後、眼下に見えた近くの別の空港への緊急着陸を検討したが、そこまで飛び続けることは不可能と判断、ハドソン川への緊急着水を決めた。

 事故の知らせを受け、乗客が一時収容されたマンハッタン側の水上タクシーターミナルに駆けつけたブルームバーグ市長は、機長との会話を踏まえて、「機長は全員が機外に脱出したあと、2度、機内を行き来し、乗客が残っていないことを確認した」とのエピソードを紹介し、「機長は緊急着水を見事に成功させただけでなく、乗客全員を安全に脱出させた」と称賛。パターソン・ニューヨーク州知事は「これはハドソン川の奇跡だ」と語った。

 USエアウェイズ機がニューヨークのハドソン川に不時着した事故で、米国家運輸安全委員会は17日、チェスレイ・B・サレンバーガー機長(58)ら乗員から聴取を行った。

 記者会見で公表された聴取内容から、鳥の群れがエンジンに衝突した衝撃のすさまじさと機長の瞬時の判断の的確さが改めて浮かび上がった。

 15日午後3時26分、ラガーディア空港を離陸した際、操縦かんを握っていたのはジェフリー・スキールズ副操縦士(49)だった。離陸から約1分、高度900メートルまで上昇したところで「大きな暗褐色の鳥の群れ」がフロントガラスいっぱいに迫ってきた。

 「ドスン」という衝撃音の後、左右両翼下のエンジンは停止し、エンジン音の消えた機内は「図書館のように静まりかえった」(客室乗務員)。鳥や金属の焦げるにおいが立ちこめた。

 サレンバーガー機長は直ちに操縦を代わり、スキールズ副操縦士はエンジンの再始動を試みながら、緊急着陸の要領をチェックした。しかし、要領が想定している高度は約1万メートル以上で、高度不足は明白だった。

 機長は、ラガーディア空港帰還も近隣のティーターボロ空港への着陸も「高度は低すぎ、速度も遅すぎる」と判断。市街地が周囲に広がる両空港を目指すのは「失敗すれば大惨事になる」と考え、ハドソン川への緊急着水を選んだ。

 機長はグライダーの要領で機体を滑空させ、フェリー・ターミナルが眼前にある、救助には最適の場所に緊急着水させた。エンジン停止から着水まで、わずか3分余りだった。

 ◆USエアウェイズ機の離陸から不時着までの経緯◆

 (米国家運輸安全委員会の記者会見から。時刻は推定。管制官と交信したのが機長か副操縦士かは不明)

 午後3時26分 ラガーディア空港を離陸

 同27分 高度900メートルで鳥の群れと激突、エンジン停止。機長が副操縦士から操縦を代わる。同機から管制官に「鳥と衝突し、エンジンが両方とも止まった。ラガーディアに戻る」と交信

 同28分 管制官がラガーディアへの着陸を希望するかを質問。同機は「できない。ハドソン川になるだろう」と回答。ティーターボロ空港着陸についても「できない」と交信

 同29分 機長が「衝撃に備えよ」と指示。客室乗務員が乗客に「準備して、頭を下げて」と叫ぶ

 同30分 ハドソン川に緊急着水。機長が「避難せよ」と指示



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