BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

ロビーとヒーロー学校 


ロビーとヒーロー学校 [act.1]


時は2044年……。






 最近この都市には、犯罪が溢れていた。

ある政治家が警察の予算を大幅に削減したのが引き金となった。
それはかつて類を見ないほど大型の”横領”であった事が後にわかった。
国家規模の犯罪であり、それがこの大国全土の警察組織を弱体化させた。

……その事が災いして、都市には犯罪の魔の手が溢れた。そしてそれは瞬く間に各地に飛び火した。
あっと言う間の出来事だった。
人々もまさかここまで犯罪の波及が速いとは思わなかった。

都市は暴徒の海と化した。






 ”ロビー”と言う、美しいブルネットヘアーの少年がいた。歳は14歳。
彼の両親はこうした暴徒の襲撃と戦って命を落とした。
そして彼は孤児となり養護施設に入れられた。

いかに犯罪多発都市とは言え、その時、彼はまだ中学生だった。
本当なら…、明るい学園生活と未来が約束されていた。
その未来を、身勝手な暴徒達の襲撃によって奪われてしまったのだ。





 養護施設にはたくさんの子供達がいた。彼らのほとんどが暴徒による襲撃で両親を失っていた。
孤児達の心はすさみ、施設内では、ヘルパーの目を盗んで子供同士のイジメが横行していた。

子供達は基本的には暴力的な暴徒を憎んでいた。
しかし、寂しさと空しさからか、自分達も他の子供達をいじめるという行為を繰り返していた。
これらは矛盾ではあるが……、ある程度、仕方のない事だったのだろう。
子供達は荒廃する都市の現状を見て、自分の力だけで未来が切り開けるとはとうてい思えなくなっていたのだ。
子供達は皆失望していた。

それでもほとんどの子供達は親戚等の引き取り手があった。その人達が迎えに来るまで、ここで我慢して過ごせばよかった。
だが、まったく引き取り手の無い子供もいた。それがロビーだった。
彼には行く所が無かった。その為、彼は毎日酷く落ち込んでいた。
悲しい事に、その沈んだ態度がさらなるイジメを生む要因になっていた。




この施設は子供達が勝手に外に出られない造りになっている。
以前は外に逃亡する子供達が多かったので、今では施設の周りには”さながら刑務所”のような高いフェンスが張り廻らされており、大人でもここからの脱出する事は不可能だった。

その「閉じ込められた」という息苦しさと、明るい未来はもう来ないかも知れないという重い心の重圧が、毎日ロビーを苦しめていた。













そんなある日。

ロビー 「くそーーーー!もう何もかもが嫌になった!!」

普段は大人しいロビーも、ついに怒りをこらえ切れなくなった。
ロビーのいるクラスは”心身が特に弱っている子供”を対象に預かっていたので、安全カミソリ等の刃物は所定の保管場所に置かれ、許可なく無く持ち出せないようになっていた。
そこでロビーは生まれて初めて”盗み”をした。

夜になって、彼は盗んだカミソリを持って、この施設内でも彼が大好きな場所、外のフェンス脇の芝生の上に行った。
ロビーはこの施設が大嫌いだったが、この芝生は好きだった。
昼間、ここで太陽の光を浴びながら寝ていると、その時だけは何もかも忘れる事が出来た。

ここには監視カメラも回っているようだが、彼はその死角になっている場所を知っていた。
そこに立った。




夜だった。
ここにはフェンスがあるし、高い照明用のポールも立っていた。
照明の光が辺りを明るく照らし出していた。
月が大きくて、美しかった。

ロビー 「これが最後かな?月を見るのも」

そしてロビーはこれまでの事を思い出した…。
この都市が犯罪都市になってから、全てが狂い出した。
両親の死は耐え難いものであった。しかし、どうあがいても、その事実は元通りにはならない………。








彼は自分の右手首を出して、そこにカミソリの刃をそっと当てた……。



その時!










「待ちたまえ!」









男性の声がした。それはハキハキとして、力強い印象の声だった。
年齢的には20代後半の男性の声だ。ヘルパーや施設の関係者ではない。

驚いて、ロビーは辺りを見回した。すると………、




ロビー 「うわあ!あれはなんだ?!!」




1人の男性が、施設内の照明用ポールの上に立っていた。そのポールの高さは建物の3階分程度に匹敵する。
そこに立っていたのだ。




男性のシルエットは筋肉質で美しいプロポーションのようだった。
全身にライディングスーツのような物を着ていた。
手には分厚いグローブ、足にはロングブーツをはいていた。そして肩から大きなマントをひるがえしていた。
それはまるでアメリカンコミックのヒーローの姿だった。



ロビー 「映画の撮影かな?」



男性はポールの上から澄んだ声でロビー少年に話しかけた。

謎の男性「ロビー君!早まった事をしてはいけない!
君には特殊な能力がある!今日は君に”学校の入学案内”を持って来た。」

よく通る声だった。歯切れがよくて若々しい。
シンとした深夜の施設内に、男性の声は響いた。

ロビー 「”入学案内”だって?」

ロビーはキョトンとした。
そんな話は今まで何処からも聞いた事がない。
第一、学校なら施設内のカリキュラムで毎日受けている。

ロビーが首をかしげると、男性はポールから飛び降りた。

ロビー 「あーーーーーーー!!」

”危ない!落ちたのか?!”と、一瞬ロビーは思ったが、男性は猫が着地するようにしなやかに芝生の上に舞い下りた。

それにしてもなんという素早さ!
オリンピック選手でもこうはいかない。
驚いているロビー少年をよそに、男性はゆっくりとした足取りで近づいて来た。
そして、大き目のプラスチックのバインダーを丁寧に差し出した。
ロビーはそれを受け取った。

とにかく不思議な男性だ。
顔にはマスクをしており、目と口のまわりだけが露出していた。
それでいて、眼差し・物腰・言葉、そのどれもがとても丁寧でやさしそうだった。
ロビーは心地良さを覚えた。


謎の男性「私と一緒に正義を守ろう!」

男性は突然そう言った。

ロビー 「”正義”?」

謎の男性「そうだ。”正義”だ!
この都市は犯罪で腐敗している。この都市を我々で守ろう!」

ロビーは驚いた。いままで、この施設内で喧嘩をしても、取り立てて強い方ではなかった。勉強もやや出来る方だが、トップというわけではない。
しいて言えば、自分がトップになれるのはコンピューターゲームぐらいだった。
そんな自分になぜ、正義を守れだなんて………。

不思議に思ったロビーは男性に聞いた。

ロビー 「あっ、あなたはいったい誰ですか?」

謎の男性「”学校”に来ればわかる。まずは学校に来なさい。いいね。」

そう言うと、謎の男性はロビーの手からそっと安全カミソリを取り上げた。

謎の男性「これはもう必要ない。私が預かっておく。
入学案内にはよく目を通しておくんだよ。」

そう言って男性は、また高いポールの上にジャンプした。驚くほど身軽だった。
そして、今一度ロビーの方を振り返った。
ややアメコミ調ではあったが、彼の姿は輝いて見えた。

謎の男性「また、迎えに来るよ!」

男性は今一度ニコッと微笑むと、今度はマントをひるがえして大空へ飛び立った。
ロビーは思わず手を振った。











………それにしても、男性は空を飛んで行ったのである。
ロビーはまるで夢でも見ているんじゃないかと思って、しばらくその場に立ち尽くした。





翌朝、ロビーが盗んだ筈の安全カミソリは……、キチンと元の場所に戻されていた。







ロビーとヒーロー学校 [act.2]


 昨夜は、ロビーは謎の男性からもらったバインダーを抱えて、こっそり部屋に戻った。
部屋から出る時は「見つかっても別にかまわない」と思っていたが、今は状況が違っていた。
ロビーには、なぜかそれがはっきりと感じられた。風向きが変わりつつあることを。










ロビー 「(学校?)」

あの男性が言っていた”学校”が何であるかはわからなかったが…………。
なぜか期待で胸がいっぱいになった。

ロビー 「(もしかして、ここから出られるの?)」

そして、次の日の夜になって、同室の子供達が皆寝静まった頃……。
ロビーは共同ベッドの布団の中に潜り込んで、懐中電灯の明かりを点けた。
そして昨夜もらった物を取り出した。

それは真っ黒でかっこいいデザインのバインダーだった。

表紙を開けるとすぐに大きなマークが目に飛び込んで来た。
それは何と言うか……、アメリカ映画の正義のヒーローがよく使うようなマークだった。
現代的でシックな色使いで、とてもかっこよく見えた。




そして、その下に







『ヒーロー学校入学案内』







と書かれた文字を見つけた。




正式学校名は『ジャスティス』となっていた。













『ヒーロー学校』

 それは”選ばれし者”しか通えぬ学校。
一般の人々には目に見えない空間に存在する学校。









ここに学生としてロビーはやって来た。
入学願書は前もって提出し、受理されていた。
それで入学試験と、適性検査があった。
その適正検査で、超能力の有無等を調べられた。

新築で特殊なコンクリート材を使って建てられた校舎。
場所は山奥に切り開かれたニュータウンの中にあった。
ここは最初、近代的な都市として建設された。しかし、不人気の為、後にタウンを丸ごとタダ同然で売却したという経緯を持つ。

この学校は、このタウンを全て買い取って、そこにもともと建てられていた校舎を改装して創られたものだった。


そして今、このニュータウンは一般の人間の空間から遮蔽された所にあった。
もはや通常の人間ではこのタウンを見る事すら出来ない。
ロビーはこのタウンで下宿しながら学校に通う事になっていた。




この学校に入学するためにやって来た生徒は他に何名かいた。
その中に”エド”という少年と、”メアリーアン”という少女がいた。
どちらもロビーと歳が同じで、すぐに友だちになった。
この2人もロビー同様、この街に住む事になった。










 初めての登校日。
朝は朝礼。まずは校長先生の訓示から。

マックス先生「私の名は”マックス”。
ここの校長であり、教頭でもあり、君たちの担任でもある。
そして、また君たちの良きフレンドだ!



皆、正義を貫け!正義は我にあり!



まあ、固い挨拶はこれだけだ。」

マックス先生は、ロビーにあの夜”入学案内”を持って来た人だ。
素顔は若々しくてハンサム。
アメコミに登場するヒーローそのままのイメージでかっこいい。



教室は大きかったが生徒数は少なかった。
ロビーを入れて全部で14名。内、男子11名、女子3名。たったそれだけ。ものすごく小さなクラスだ。

また通常の授業を行う教室は30室を越えるが、使われているのはここ1つだけ。つまり14名1クラスしかない。
しかも先生はマックス先生ただ1人。

不思議な学校だった。









1時間目は『道徳』だった。

「正義のために尽くす」と言う事について、道徳の授業が行われた。






2時間目は『体育』だった。

ロビー 「よし皆、次は体育の時間だ!全員替えて芝生の上に集合!」

皆、更衣室に行った。
そこで強化ボディースーツを着込んだ。これを着込むと、なんでも3階分ぐらいの高さから落下しても無事でいられるらしい。
おまけに「防弾」で、しかも火災現場の中でも、ある程度は熱に耐えられた。
そこにセットになっているグローブとロングブーツを着ける。そして最後にマントを着けた。これらを全て着込むと、やはり映画に登場するヒーローみたいに見える。
ロビーは更衣室の大きな鏡に自分の姿を映した。

ロビー「かっこいい!」

しかし、サイズは若干ジュニアサイズ。マックス先生と比べ、「かっこよさ」では大きくひけを取った。





一つ年下の男子学生”ゴッヘル”君は、太っているのでスーツを着るのが大変だった。

ロビー 「はやくしろよゴッペル!」

こうして皆で校庭の芝生の上に出た。

マックス先生「さあ、皆!今日は空を飛ぶ訓練だ!」

見ると目の前には着地用のマットが何枚も敷かれていた。
それに跳び箱用のジャンプ台がある。
先生に言われて、皆ジャンプ台の上に立ち、空を仰ぎ見る。
念じてマントをひるがえるすと……、空を飛べる筈だ。





ロビー 「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」





マントがバサバサと揺れた。

ふわり。

ロビー 「とっ、飛べたーーーーーーー!!!」

こうして皆、大空に舞い上がった。









3時間目は『シミュレーション』

マックス先生「では、今度は”シミュレーション”をしてみよう。

”建物の火災が起こったとしよう。
目の前のビルは火に包まれた。
そのすぐ前には犬小屋と鎖につながれた犬がいた。
建物の中には、現在、人がいるのかどうかわからない。

では……、

”燃える建物内に人がいるか確認する”のが先か?
それとも
”犬を助ける”のが先か?
どっちだろう?」

生徒達は手を上げる。
そして、それぞれの意見を述べた。







この学校は楽しい。ロビーにとってまさに天国だった。
今までの重い重圧がかかった生活が嘘のようだった。





ヒーローとしての授業を受け、超能力を開発し、そして強化ボディースーツのおかげで、ロビー達は着々と人間離れした能力を付けていった。
今では空を自由に飛べるし、ある程度のパワーも出せた。
さらに訓練によって、パソコンネットワークから特殊な情報を収集したりする能力も身に付けた。






ロビーとヒーロー学校 [act.3]


マックス先生「さて皆!今日は”実地訓練”を行う。
実際の交通事故の救助に向かう。
交通事故は毎日のように起こっているからね。
ここから高速道路まで行って、そこで発生する事故の救助をお手伝いする。
これは基本的には警察の仕事だから、本当は我々のかかわる仕事ではないが……、今日は特別に訓練と言う事で、これを行う。」


そして、皆で屋上へ出る。


マックス先生「では、高速道路まで飛ぶよ。
さあ、皆、マントをひるがえすんだ!」




バサア!




ヒーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!





マックス先生と生徒達はいっせいに大空に舞い上がった。











空が青かった。
澄みわたっていた。
とても綺麗だった。




ロビーの心は晴れ晴れとしていた。
友人の”メアリーアン”や”エド”とも仲が良いし、全てがうまくいっていた。
幸せだった。

日を追うにつれ、ロビーはますますマックス先生の事が好きになった。







 下には大きくて長い高速道路が見えてきた。
上空から見ると、ものすごく巨大な建造物だ。
ロビーは「人間はよくこんな物を造ったなあ」と感心した。
ちなみに今日は日曜の朝なので交通量は少なめだ。





メアリーアン「先生、あそこ!」

飛行中のメアリーアンが突然叫んだ。

見ると下の方に車の接触事故が見えた。炎が上がっているのが見える。

マックス先生「いいぞ、メアリーアン!よく見つけたね!さあ皆、今から救助に行くぞ!落ち着けよ!」

そう言ってマックス先生は急降下した。

マックス先生は、授業の時はけっして生徒達を置いてきぼりにしないが、この時はさすがに本物の事故なので、1人で素早く下りた。
そのスピードは生徒たちとはケタ違いで、あっと言う間に下の現場に到着した。
そして、事故車両のドアを引きちぎって、中から生存者を救出した。
その時になってやっと生徒達は高速道路上に降りてきた。

マックス先生「よし!ヘンリー!君は消火だ!
キャロライン!君は救急車を呼びなさい!
後の者はこの2人の指示に従いなさい!」

キャロライン「分かりました!」

ヘンリー「ラジャー!」






 こうしてあっと言う間に交通事故は片付けられた。
その後に警官がパトカーでやって来た。
交通事故がすでに処理されていたので、警官がマックス先生に訪ねた。

警官 「貴方達はいったい何者ですか?」

マックス先生「それは、今は言えません。
でも”フレンド”であると、言っておきましょう。」

マックス先生は生徒達に指示した。

マックス先生「さあ、皆!空を飛んで帰るよ」

そう言って生徒達に、先に飛ぶように告げた。

小さなマントをひるがえし、14人の生徒達が空に舞い上がった。
それを見た、警官達は目を丸くした。

マックス先生「ではまた!」

そして先生も大空に飛び立った。













 この後、まだ警官達の数が少なかった為、マックス先生と生徒達は活躍の場を広げて行った。

そんなある日……。



ロビーは決心した。

「僕は”ヒーロー”になります!」

硬い決意だった。

ロビー 「マックス先生のようになりたいんです!!」

マックス先生「そうか!」

ロビーの心の中には今や大きな目標が出来ていた。
嬉しかった。
嬉しくて嬉しくてしかたなった。
目の前の世界が輝いて見えた。





ロビー 「ところで……、先生。
前から聞いて見たかったんですが、
先生はいったい何のために災害や犯罪と戦っているんですか……?」

マックス先生「ああ、私か……」

それ以後、言葉は続かなかった。
いつになくマックス先生が黙り込んだ。
こんな事は初めてだった。






ロビーとヒーロー学校 [act.4]


 この頃、マックス先生の活躍もあって、都市の治安はだいぶ回復していった。
マックス先生と生徒達は、ヒーローとして、日々都市の犯罪を撲滅し続けた。
強盗・テロリスト等にも対抗した。
ビル火災などの現場でも活躍した。
徐々に彼らの名は世間に知られる事となった。




都市の正義は回復しつつあった。
悪い政治家は捕まり、警察組織の再編に予算が投入された。
警察は、元の平和な頃の組織力に戻り始めた。




 しかしこの事を良しとしないマフィア達がこの都市にまだ巣くっていた。
マフィアはここを以前の犯罪都市に戻そうと考えていた。

マフィアの大ボス”グレッグ”は、新しい作戦計画を立案した。

グレッグ「現在都市では、そこを走る商用車と同じくらい、荷物運搬等目的で”多用途ロボット”が活躍している。
その、ロボット工場で生産されるロボットに、事前に独自のカスタムチップを埋め込んでおく。
そうすれば我々は、その工場をロールアウトして来たロボット達を、自分の意のままにコントロールする事が出来るのだ!」

部下「しかしボス!そのチップからアシがついて、すぐに我々の犯行だとバレないですか?」

グレッグ「犯行後、確かにチップはすぐ見つかる。
しかし…………、大丈夫だ。
今度の作戦が成功すれば、今の政権そのものを変えられる。
言わばクーデターだ。これからは我々が政権を握る。
もはや、犯罪を行う事に一切の遠慮はなくなる」

それを聞いて部下の中には喜び勇む者もいた。
しかし、あまりに大胆すぎる作戦だと、成功を疑問視する者達もいた。











「グレッグ達がまた動き出そうとしている」

マックス先生は、今や顔見知りになった刑事からこの情報の提供を受けた。
これまで警察に協力してきたおかげだ。



マックス先生はグレッグの悪巧みを未然に防ぐ為、生徒達を伴って直ちにグレッグがいるというビルの近くまで飛んだ。まずは偵察してみようと考えたからだ。

マックス先生「いいか、皆、今度の作戦は大きい。充分注意してかかるんだ!」






 しかし、そう言っている目の前で、道路上で作業していた多用途ロボット達が突然都市を破壊し始めた。路上に止めてある車を持ち上げ、他の車やビル目がけて投げ付けた。それらは爆発炎上した。辺りには火の手が上がり、人々の叫び声が聞こえた。

マックス先生「路上はパニックだ!君達は市民の避難誘導と消火作業を始めてくれ!!」

マックス先生の指示が飛ぶ。生徒達は言われた通りに作業に取りかかった。









マックス先生「ロビー!君は私と来い!」

マックス先生は近くにいたロビーを引き連れて戦闘に向かった。ロボット達をなぎ倒す。
しかし、あまりに相手の数が多い。

ロビー 「先生!このままでは!」

マックス先生「このロボット達をコントロールしている所がどこかにあるはずだ。
見たまえロビー!あの車両を!」

路上では多くの停車中の車両が大破・炎上していたが、一両だけ無傷の大型のバンが止まっていた。
それは黒塗りで、後部には窓がまったく無いタイプだった。

マックス先生「あの中にアンテナが隠されているようだ!」

ロビー 「えっ?!じゃあ、すぐ捕まえましょう!」

マックス先生「慌てるなロビー!あれは中継車だ!どこからか送られてくる電波を中継していだけだ。別の場所に発信元がある。」

こうしてマックス先生とロビーは手分けして、他にも同様の車両が止まっていないか調査した。
すると……、あるビルを中心に、点々と中継車が配置されている事がわかった。
マックス先生とロビーはそのビルの1階フロント前に来た。大きな丸ビルだった。高層ビルで100階以上の高さがある。

マックス先生「”ファイナンシャル・リスペクト”社か…。」

ロビー 「先生!この”ファイナンシャル・リスペクト”社って、もしかすると………?!」

マックス先生「そうだロビー!これは汚い大人の世界の話だが……、この会社は以前、株の不正取引で莫大な金額を儲けた。
その為、そのあおりをくって泣いた投資家も多い。
しかし、その頃は警察組織が弱体化していたので、不正を取り締まる事が出来なかったのだ。」

そう言って、マックス先生はビルを見上げた。

マックス先生「…………なるほど!
ここが彼らのカクレミノになっていたというワケか!」






ロビーとヒーロー学校 [act.5]


 マックス先生とロビーはそのビルの内部に侵入した。
しかしビルの通路や要所要所には防衛用のロボットが配置されていた。
そこで2人は、いったん非常口から外に出て、空を飛んで、ビルの屋上に下り立った。そこからビル内部へと侵入した。

その後、ビルの最上階付近に存在する大きな部屋のドアの前まで来た。
ここにマフィアのボス”グレッグ”がいる筈である。
ドアにそっと耳を着けて中の会話を盗聴するマックス先生。

グレッグ「……そろそろ囮のロボット達を自爆させよう。
それによって大混乱を引き起こす。警察の注意を引きつけるのだ。

そして次の段階は……、
別のロボット隊を出して、政府要人を捕らえさせる!」

部下「分かりました」

グレッグ「自爆するロボット達には、まずこのビルから遠く離れさせろ!」






それを聞いたマックス先生。

マックス先生「ロビー!事は一刻を争う!
君はこのビルのコントロールセンターを見つけ出して、ビルの電源を落とすんだ。破壊してでも落とせ!
とにかく電波を発信させないようにするんだ!」

ロビー 「わかりました!それで先生は?」

マックス先生「私はグレッグに会って来よう!
無駄かも知れないが、それで時間を稼いでみる。

ああ、それから、
他の生徒達と警察に連絡して、一般人をこの付近から退避させるようにするんだ!」

ロビー 「ラジャー!」






ロビーがその場から立ち去ると、マックス先生はドアに力をかけて押し開く。
……重いスライドドアが音を立てて開いた。

グレッグ「キサマ、誰だ!」

グレッグの部下達が銃を構えてマックス先生を狙った。
マックス先生はそれにひるむ事無く、ゆっくりと彼らの前まで歩いて行った。

グレッグ「これはこれは!
今テレビを賑わせているヒーロー塾の講師様ではないか?
私の息子を勧誘しに来たのかね?塾に入学させるために。
わははははは!」

マックス先生「グレッグ!私が誰だかわからないかね?
私は”マックス・アラン”だ!」

グレッグ「”マックス・アラン”????」

マックス先生「忘れたのか?君が4年前に起こした事件を!」

グレッグの部下達はなおも銃を向けて、今にもマックス先生を撃とうとしていた。
それでグレッグは興奮している部下達に手を広げて「待て」と合図した。

グレッグ「”マックス・アラン”だと……………?

はっ?きさま!!!!」

グレッグは過去の記憶を思い出した。

マックス先生「そう!
かつて私は、あの政府の”特殊能力研究開発機関”の研究員だった。

ある日、君はそこを襲撃した。
そして、そこにいるいわゆる”超人の子供達”を引き渡すように、我々と政府に要求した。
君はその子供達を使って犯罪をたくらんでいた。その子供達には強大な力が秘められていたからな。

君は人質を取って、引渡し要求をした。
その人質とは…………、私の”妻と子供達”だった。
政府は引き渡し要求に応じなかった。
それで君の指示によって、私の家族は全員殺された。」

グレッグ「黙れ!私が直接殺したわけではない!
やったのは現場にいた部下達だ!
部下達は政府が要求に従わなかった場合、そうするように命令されていただけだ!
だからそうなった!
いわば、要求に従わなかったお前達が悪いのだ。お前達が殺したのだ!!!」

マックス先生「私は……、正直に言えば……、
あれ以来、君に復讐する機会を狙っていた。」

グレッグ「なんだと?

こいつは面白い!

あははは!
正義の味方を気取ってマスメディアを賑わせていた男が”復讐”だと?!
キサマは”復讐”をするために今までこうして戦ってきたのか!
今ではキサマは学生達にヒーローになる事を教えているそうだが……、
”復讐”する事も教えていたのか?」

マックス先生「いいや!」

グレッグ「何が正義だ!お笑い草だ!その正体が”復讐”だと?
学生らはその事を知っているのか?
お前は自分の復讐のためだけにあの学生らを利用しているのか?」

マックス先生「黙れ!」

初めてマックス先生が怒った。

マックス先生「あの子達には…………、
それぞれ正義の為に働けるように教えてきた!それだけだ!
私のためではない!
それに、もともとあの子達は自由なのだ。
政府の”特殊能力研究開発機関”に利用される言われはなかった。」

グレッグ「なに?すると………、
今お前の所にいる学生らは…………、
もともとその機関に捉えられていた”子供達”だと言うのか?
なるほど!

なら”ヒーロー教育”は罪滅ぼしのつもりなのか?

あの機関は特殊能力を持った子供達に汚い仕事をさせようとしていた。
他国のスパイや軍用兵器に利用しようとしていた!
そう、あの機関はもともとその為に作られたのだ!」

マックス先生「私はその事実は知らなかった。
いや、知らされていなかった!
だから…………、
私は、自らの手で、その機関を破壊し、子供達を開放して元の場所に返した。
幸い、まだ物心着く前だったあの子供達には…………、
おろらくあの時の記憶は無い。」

グレッグ「……………………。」

マックス先生「…だが、私ははっきりと君の顔を覚えている。
私の子供と妻にも特殊な能力が備わっていた。
しかし、君はその未来を閉ざしてしまった!
そう君の身勝手な都合によって!

あの頃の君は、どうしても実権を握りたくてウズウズしていたのだろう………。
それはいつしか、マフィアの世界を掌握するに留まらず、一般社会にも進出しようとした。

その為に政治家と結託し、警察を弱体化させた。
さらに自分たちの兵力を強めるため、
当時、裏の世界で話題となっていた”特殊能力研究開発機関”に目をつけたのだ。」

グレッグ「……………………。」

マックス先生「子供達を誘拐し、自分達の言う事を聞かせる。
なるほど、年端も行かぬ子供なら騙すのは簡単かも知れない。」

グレッグ「フッ……………………。」

マックス先生「君はこれまで”全て自分の都合のため”に動いてきた。
そして許されざる悪事を重ねてきた。
残念だが……………、
私は君を許さない!」

グレッグはニヤリと笑った。

グレッグ「”許さない”だって?
この俺をどうする気だ?”殺す”ってのかい?!
はっ!正義の味方が聞いてあきれるぜ!

なるほど、キサマ自身にもその特殊能力があったとはな……。

話はわかった。

いいだろう。

では…………、私のいまわしい過去を全て清算するとしようか」

そしてグレッグは護衛のロボットに手を振って命令した。
すぐさまマックス先生に銃口を向けるロボット達。

マックス先生「いったいどこまで悪事を重ねる気だ?!」

ロボットによる銃撃が開始された。
マックス先生は人間技ではないスピードでそれをかわし、ロボット達をなぎ倒す。

あっという間にロボットは全て破壊された。
さらに先生はグレッグの部下達にも格闘戦を挑み、これを気絶させた。






 そしてついに宿敵グレッグを捕らえた。
床に押さえつけ羽交い締めにした。

グレッグ「くっ、くそ!
こんな事をしてていいのか?!!
もう今にも、都市にいるロボット達が自爆するんだぞ!!」

グレッグは手にはめた腕時計を見せた。
そこには時刻とタイムリミットの両方が表示されていた。
残りタイムは後10秒だった。

マックス先生は自分の腕時計のコミュニケーターに向かって叫んだ!

マックス先生「ロビー!
電源のシャットダウンはできたか?!!!
今すぐやるんだ!今すぐ!」

グレッグ「わははは、もう遅い!都市は火の海となる!」


カウントが表示が…………、












0 となった!


















マックス先生は耳を澄ませた。
その特殊な聴力ははるか下の地上の爆発音を聞き取る筈だった。










だが…………、爆発は起きなかった。

ロビーの活躍によって、ビルのコントロールセンターの電源のシャットダウンがかろうじて間に合ったのだ。





THE END







今回は純粋にヒーロー物ですね。
これなら、続編が書けそうです。





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