BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

『あるモテない男の話』 


『あるモテない男の話』 act.1


これは、ある”モテない男”のショートストーリーである。




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モテる男   二階堂 一樹

モテない男  三街道 文雄


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 2人は同じ大学の同じ学科の学生だった。

かつて2人は高校が一緒でクラスメートだった。とりたてて仲がよいワケではなかったが、自然といつも連れそうようになっていた。
二階堂はイケメンで、なかなか頭も良かった。それに彼のしてくる会話はいつも面白かった。三街道のように無理をして自分をよく見せようとする事もなかった。
そのせいか、彼は男女を問わずモテていた。自然で気どらない彼の口調や態度は、時間と共に彼の人気をますます上げていった。
でも彼には”彼女”はいないようだった。本当にいないのかどうかは分からなかったが、少なくとも教室にいる時の彼はそうだった。


高校卒業後、二階堂と三街道は同じ大学に入った。二階堂は、彼の学力なら当然その大学に入れた。しかし三街道の学力ではとうてい無理だった。その大学には同じクラスメートだった”水島千草”が進学する事になっていた。彼女を追う為、三街道は親に頼み込んで大金を出させ、裏口入学に近い形で、見事この大学への入学を果たした。


モテない男、三街道。
彼はこれまでの人生でモテた事がなかった。それもそのはず、彼には元来から”女好き”の傾向があった。高校在学中はクラスの女子に片っ端から話しかけていた。それを嫌がる子や、無視する子もいた。でも、大半は軽くあしらう子が多かった。これが噂を呼び、彼はますますモテなくなった。
しかし、………中には話を受けて返す女の子もいた。
千草もその内の1人だった。
整った顔立ちで、勉強が出来て、運動神経もまあまあ。
誰にでもやさしく、協調性もある。
そこで三街道は将来の結婚相手はこの千草と、勝手に心の中で決めていた。






 さて大学に進学した三街道。
ここでのキャンパスライフの中でも千草を追う筈だった。
しかし高校とは違う大学の授業の受け方に、最初三街道も戸惑いを見せていた。
毎日が、いろいろと新しい体験の連続で、しばし千草の事を忘れていた。

けれど1か月も経つと、大学生活にも慣れ高校の時の感覚に戻ってきた。
しかし、千草の姿をすぐには追わなかった。
なぜなら……………、学内には他に綺麗な女の子がいっぱいいたからだ。
高校では、基本的にその周辺の学区の人しか入学して来ないが、大学は違った。ありとあらゆる学生が全国各地から集まって来ていた。そして……、中には外国から来た女性もいた。言ってみればいろんなタイプの異性と接触できる場所だった。
三街道にとってそこはまさに”天国”だった。
彼は狂喜乱舞した。





『あるモテない男の話』 act.2


 大学で見つけた同じ学科の女の子、静香。
まず彼女に目をつけ、三街道はアタックを試みた。女の子に話しかけるのは高校の時に慣れていた。
そしてまた……、嫌われるのにも慣れていた。
だから……躊躇なく話しかけた。
向こうも入学したての大学キャンパスの開放感からか、気軽に言葉を返してきた。
そして…………、
約2週間で、学内の喫茶室で2人きりでお茶を飲むまでになった。


 三街道はしだいに静香といっしょにお茶を飲む回数が増えていった。
それで「(これはかなり脈がある)」と思い始めた。
そんな矢先………、
静香が他の男と2人きりで喫茶室でお茶を飲む姿を目撃した。
遠巻きに見るだけだったので、その男の顔ははっきりと見えなかったが。

その後、男はその場から去り、三街道は1人になった静香に「話がある」と言って、学内の図書館の隅に彼女を引っ張って行った。
そして…………、

三街道「あれは誰だよ?」

静香「”あれ”って?」

三街道「あの男の事だよ。喫茶室でいっしょにお茶を飲んでいた………、」

静香はそれを聞き、サッと顔色を変えた。

静香 「あきれた。なんのつもりなの、その言い方?
貴方にそんな事を答える必要があるの……?」

そう言って静香はその場に三街道を残して、さっさと歩いて行った。怒っている様子だった。

後で分かった事だが……、その男は二階堂だった。





『あるモテない男の話』 act.3


 三街道は不機嫌になった。
どうしようもない心のわだかまりが残った。落ち込んだ。

「(静香との関係はもうこじれたのだろうか…?直らないのだろうか?
まだ望みはあるのだろうか?
いや、望みがなくとも突き進むべきだ!)」

……等と一人オーバーに考えていた。
誰が見ても、まだそんな”関係”などあるように見えなかったが、三街道自身はそう思い込んでいた。

しかし、その時、
彼は…………突然、思い出した。

「(俺には千草がいる!)」

そこで、いったん静香の事は置いといて、ひさしぶりに千草と話をしようと思って、千草の受けている授業に出た。そして授業が終わって学生が全員講堂から出て来た時、遠くから千草の姿を見つけた。今までは彼女の学生服姿しか見た事がなかったが、目の前にいる千草はそれとはまるで別人に見えた。
髪型を大人びたウェーブのかかったスタイルに変え、どこかのオフィスレディーにでも見えるような高そうな洋服を着て、さっそうと歩いていた。
美人で、しかも少し長身で、その着ている服のセンスの良さが手伝って、あきらかにこのキャンパス内で目立っていた。

三街道は声をかけようと思った。一瞬だが、その時はまるで千草を”自分の女”のように勘違いした。

「(声をかけると彼女は必ず微笑み返してくれる。あの高校の時のように………。)」

そして、夢中で千草の背中を追いかけて行った。
すると…………、
目の前を横切った人とぶつかった。

「(なにするんだ?!この大事な時に!!)」

三街道はそう思った。彼はあまり性格のいい人間ではなかった。
それでぶつかった相手に文句を言おうとした。
けれどそこに見えたのは、豊かな量の流れるようなブロンドだった。
ぶつかった相手は外人の女性で白人だった。
女性が顔を上げ、三街道がそれを見た時、とてもビックリした。

すごい美人だったのだ。
白い肌にブルーの瞳。まるで映画女優のようだった。

そこで慌て三街道は彼女に謝った。
確かにこの衝突事故、前方にまったく注意を払わずに走って来た三街道が悪いのだ。
しかし、最初少し怒り気味だったその外国人女性も、三街道があまりにも大げさに頭を下げるので、気分がこなれた。
そして……、許した。
いや、許したと言うより、そのワザとらしい三街道のお辞儀に、周りの学生達の視線をあび始めたからそうしたのだ。
彼女は、もういいからというジェスチャーをして、この場から立ち去ろうとした。

でも、三街道は引きさがらなかった。

三街道「(こんな女性と知り合う機会など滅多に無い!!)」

彼はその女性にしつこくくっ付いて行った。

三街道「あーーーーー、ファッチュアー……ユアネイム…………」

シンディー「”シンディー”よ」

三街道「ああ、シンディー!日本語できるんですね?!今からお茶でもいかがですか?おわびのしるしにおごりますよ!」

シンディー「はあ?」

シンディーは日本に来て長い。この手のセリフを発する日本人男性に何度遭遇してきたことか………。

シンディー「いいえ。けっこう、けっこう!No thank you!」




 しかし三街道は諦めなかった。
以来、広いキャンパス内でシンディーを見つけてはしつこくつきまとっていた……。
だが…、そのかいあってか、ついにシンディーと2人きりで学内の喫茶室でお茶を飲めるようになった。
そこで三街道は大げさな話をしてシンディーを笑わせた。いちおうウケた。

三街道「(こっ、これは脈があるに違いない!)」

三街道はそう思った。

三街道「(ああ、なんて素敵な事なんだ。こんな美人とめぐり合えるなんて……)」



しかし……………、

数日後、シンディーが他の男と2人きりで喫茶室でお茶を飲む姿を目撃する事となった。遠巻きで見るだけだったので、その男の顔ははっきりと見えなかった。
男がその場から立ち去り、1人きりになったシンディーに三街道はかけより、「話がある」と言って、学内の体育館横の休憩所に彼女を引っ張って行った。
そして…………、

三街道「あれは誰だよ?」

シンディー「what?  "あれ”って?」

三街道「あの男の事だよ。喫茶室でいっしょにお茶を飲んでいた………、」

シンディーはそれを聞き、サッと顔色を変えた。

シンディー「It was amazed!Must I say him to you?」

なにか英語でブツクサ言い残して、シンディーはその場を去った。少々怒っているようだった。去る時にシンディーは三街道を振り向きもしなかった。

後で分かった事だが、その男は二階堂だった。





『あるモテない男の話』 act.4


 三街道は”失恋の痛手を味わった”と勝手に思っていた。

「(シンディーとの関係は、もうこれで終わるのだろうか?
いや、そんな事はない!
明日になればきっとシンディーは機嫌を取り戻してくれる!
そしてまた1から会話をやり直せばいいんだ!)」
等と考えた。



でも三街道はその後、シンディーの事はいったん置いといて、千草に心の安らぎを求めるべく、キャンパス内で彼女に接近した。
高校の時、三街道が落ち込んだ話をすると、千草だけはなぐさめてくれたからだ。

千草の周りには女ともだちが常に2~3人いたが、三街道は、彼女達に迷惑がられるのもかまわずに千草にアタックした。
そして2週間もすると…………、千草とその女ともだちの輪の中に入って、いっしょにお茶を飲む事が出来るまでになった。

三街道「(やはり、高校の時、千草に話しかけていてよかった。彼女、俺を忘れていなかったんだ………)」

彼女達とは、高校時代に戻ったようなたわいもない会話で盛り上がった。

三街道は、「(風向きが変わった。俺に向かって風が吹いてきた)」と思った。




しかし………、数日後、千草が他の男と2人きりで、喫茶室でお茶を飲む姿を目撃する事となった。遠巻きで見るだけだったので、その男の顔ははっきりと見えなかったが。
その男が去って、1人その場に残った千草に、三街道は「話がある」と言って、学食の横の水飲み場に彼女を引っ張って行った。
そして…………、

三街道「あれは誰だよ?」

千草「”あれ”って?」

三街道「あの男の事だよ。喫茶室でいっしょにお茶を飲んでいた………、」

千草はそれを聞き、サッと顔色を変えた。

千草 「あの人が誰であろうと、貴方に関係ない筈でしょ?
貴方に答える必要があるの……?」

千草は怒った様子でその場から立ち去った。実にそっけない態度だった……………。

後で分かった事だが、その男は二階堂だった。






『あるモテない男の話』 act.5


「(千草とまで…………、これでこじれてしまったのか?)」

 三街道はそんな事があったせいもあり、この大学に入ってからは一度も二階堂と連絡を取っていなかった。
しかし二階堂からは何度かメールが来ていた。
そのメールの件名は高校時代の時と同じように親しげな言葉が書かれていたが、三街道はメールを開く事さえしなかった。
勝手な思い込みではあるが……、三街道は二階堂に対して今や激しい嫉妬心を燃やしていた。

そのためか、静香・シンディー・千草に、以前にもまして猛烈なアタックをかけた。
しかも個々別々に。
女性達はお互いその事を知らなかった。いや、まったく知らないわけではなかった。三街道はやる事が何でも派手すぎるので薄々分かっていた。

三街道は、
彼女達のメルアドを聞き出してはメールをしまくる……、
派手な便箋を買ってきては手紙を出しまくる……、
果ては電話番号を聞きだして電話をかけまくる……。

…………そんな事を繰り返していたからだ。





 ある日、夏休み前の最後の登校日がやってきた。大学の夏休みは長い。2ヶ月ぐらいの期間がある。
途中で登校日は無い。各人おのおの学内の掲示板に重要な連絡事項がないかチェックすればいいだけだ。それは、先に掲示板をチェックした仲間がいれば、その人に電話をかけるなりして掲示板の内容を聞けば、それで事足りた。わざわざ学校に行く必要はなかった。またインターネットで公開してもよい内容の場合は、大学のホームページを見ればそれでよかった。

それだけに、まだメルアド・電話番号を聞いて無いような学内の同級生とは、まったく連絡が取れなくなる事もあるのだ。
そこで、その長い夏休みの間に仲が遠く事を恐れて、三街道は女性達にもう一度、夏休み中でも連絡が取れる事を確かめに行った。


二階堂「やはり今までは”友人”としてしか見てもらえていなかった。いや、もしかすると単なる”同級生”としてしか見てもらえてないのかも……?
別に学内の喫茶室でお茶を飲むぐらいは…、何の関係でもなかったんだ!!」






『あるモテない男の話』 act.6


それでまずは静香の所に行った。静香はすぐに見つかった。

三街道「静香、夏休み中に君に連絡取れる?どこか遊びに行かないか?2人だけで」

静香 「え?2人だけで????」

三街道「そう!2人だけで」

静香は大変驚いた顔をしていた。

静香 「あっ、あのう………………無理です。私、二階堂君といっしょに行きたいので……」

三街道「はあ?にっ、二階堂?!!」

三街道は耳を疑った!

静香 「だから………、貴方とは行けません。
別に学内でお茶を飲むのは、これまで通りかまわないんだけど……………。
それ以外で2人きりで合うのは…………、ちょっと…………。

……ごめんね。」

三街道「………………。」

さすがの三街道も最後の一言は効いた。

静香「あっ、今日、最後の登校日だから………、私、これから二階堂君を探さなきゃならないの。それじゃあ!」

静香は去った。
三街道には言い知れない敗北感と悔しさが込み上げてきた。

三街道「(二階堂だって?)」

意外だった。彼女と二階堂にどういう共通点があったのだろうか?かいもく見当がつかなかった。
だだ、彼女が二階堂に好意を寄せているかも知れない事実だけが頭の中に残った。
正直、ガックリくる三街道。

三街道はここの所、毎日静香にメールを送っていた。返事は7回に1回ぐらいは返って来ていたので、”大丈夫”だと勝手に安心していた。

三街道「じゃあ、今までの俺の”戦い”は何だったんだ?」

……等と、三街道は途方も無い妄想の世界にふけった。

そして、ひとしきりその広いキャンパスのど真ん中で泣いた後、
急にケロッとして、

三街道「そうだ……!
俺にはまだシンディーがいる!
そうだよ!実は彼女が本命なんだ!
今日は最後の登校日だから、早くシンディーをみつけなきゃ!」

三街道は変わり身が早かった。いや、もともと、何も深く考えていないせいか……?

三街道は「(くよくよしていては駄目だ!)」などと自分に言い聞かせた。そして学内を走りだした。







『あるモテない男の話』 act.7


 しばらくシンディーが立ち寄りそうな場所を探していると、一番奥の校舎前で、運良く1人で歩いているシンディーを発見した。体にぴったりフィットした薄い洋服を着こなしていた。綺麗だった。まるで学内に飾られていた絵画の中の女神みたいだった。

三街道「シンディー!」

大きな声でシンディーを呼ぶと、シンディーはニコッと微笑み返してくれた。

三街道「はぁはぁ……、」

シンディーの前に立った三街道は息も息切れにこう言った。

「シンディー!夏休み中に君と連絡取れる?どこかに行かないか?2人だけで」

シンディー「What?」

三街道「2人だけで……」

シンディー「あっ、あのう………………、私、国へ帰ろうと思うの。休みの間だけ。」

三街道「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!」

ガックリくる三街道。しかし彼は諦めない!

三街道「残念だ!
じゃ、いっしょに行っていいかな?
俺、海外旅行してみたかったんだよ。君の家まで行っていい?」

シンディー、顔色が急に変わる。

シンディー「え?あっ、あのう………………、それは……」

三街道「いいじゃない!1人より2人の方が旅は楽しいしさ!」

シンディー「あっ、あのう…………、それなら、私、二階堂君といっしょに帰りたいので……」

三街道「はあ?」

寝耳に水だった。

シンディー「だから貴方とは行けません。まだこの事は二階堂君に話していない私だけの計画なんだけど……、彼に聞いてみて、YESと言ってくれれば……。
彼を一度私の両親に会わせたかったので……。」

三街道「そっ、そんな……」

三街道の中で何かが音を立てて崩れた。

シンディー「あっ、今日、最後の登校日だから………………、私、これから二階堂君を探さなきゃならないの。じゃあ、ごめんね!sorry. Good-bye!!!」

シンディーは去って行った。

三街道には言い知れない敗北感と悔しさが込み上げてきた。
そして泣いた。

三街道「またしても二階堂だと……………。
じゃあ、俺のこれまでしてきた”長い戦い”はいったい何だったんだ?
あの血のにじむような努力は……」

しかし、それは女性達にはまったく届いていない努力だったのだが……。

三街道は、ひとしきりその広いキャンパスのど真ん中で泣いた後、
急にケロッとして、

三街道「そうだ!!!俺にはまだ千草がいる。
そうだよ!!
彼女こそ、俺と赤い糸で結ばれた人だったんだ!
今日、最後の登校日だから、早く千草をみつけなきゃ!」

三街道はまた走り始めた。




『あるモテない男の話』 act.8


 そして運良く大講堂前を歩いている千草を発見した。いつもの通り、彼女は女ともだちに囲まれていた。千草が美人のせいか、取り巻きの女ともだちも皆美人だった。その為、かなり目立つ集団と化していた。
三街道はその集団の前に回りこんだ。

三街道「千草!」

大きな声で千草を呼ぶと、彼女はニコッと微笑んで返してくれた。

三街道「千草!夏休み中に君と連絡取れる?どこかに行かないか?2人だけで」

大胆にも言ってのけた。
今の三街道の心境は「(俺にはやはり千草だけだ!)」という思いが込み上げていた。

千草「二人だけで?えーーーーーーーーーーーーー?!!そっ、それは………………」

突然の三街道の言葉に驚く千草。
それに対して、三街道は大きくうなづいた。

千草「そっ、それは…………、






無理じゃないかしら」






三街道「えーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!」

今度は三街道が驚いた。そして気落ちする。
しかし彼は諦めなかった。いや、どうしても諦め切れなかった。もう彼には千草しかいないのだ。

三街道「そっ、そんな?!じゃあ、この女ともだちも皆さそって、いっしょにどこかへ遊びに行こうよ!」

すると、その女ともだちが会話に割って入った。

女ともだち「あーーーーーーーーーーーーーーー!だめだめだめ!
千草はね、これから二階堂君を探しに行って、彼をさそうのよ」

女ともだち「そうそう!今日、最後の登校日だから……、彼をさそって、この夏休みの間に何回も千草に会ってもらうように、私達で話をつけるの!」

女ともだち「千草には、この夏休み中に彼との仲を深めてもらわなくっちゃね!
だいぶ前から二階堂君の事を思ってるんだもん!」

三街道「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!!!」

三街道はひどいショックを受けた。

三街道「(またしても二階堂…………。どうしてヤツが……………?
それに千草は俺にとって”最後の砦”だったのに……………)」

三街道は倒される寸前のボクサーのようにフラついた。もはや何も考えられなくなってきた

三街道「千草…………。あの……………、俺………………」

千草「あっ、あのう………………、私、二階堂君を探したいので。悪いけど、これで!」

三街道「そっ、そんな……………」

女ともだち「じゃあね!バイバーーーーーイ!」

女ともだち「貴方もいい夏休みをエンジョイしてね!」








 こうして千草と女ともだちは三街道の目の前から去った。
いや、千草だけではない。気が付けば静香・シンディーも去っていたのだ。
もう彼の元には誰もいない。
三街道は悔しさと悲しさでいっぱいだった。
そして、彼の長く寂しい夏休みが始まろうとしていた。

三街道「俺は……………、俺は………………、
ここの所、毎日彼女らにメールを打ち、手紙を書き、電話をかけ……。
それなのに……、
ああ、それなのに彼女達は”二階堂”だと……………?!
二階堂?!!!
へっ!二階堂がどんな努力をしたと言うのだ?!」

などと勝手な妄想を再び繰り広げながら、三街道はしばらくその場で泣いていた。
が、ふと気が付くと彼の横には1人の女性が立っていた。
それは美しい女性でどこかで見た顔だった。
そう!さっき、千草をとりまいていた女ともだちの内の1人だった。彼女はひどく心配そうな顔を三街道に向けていた。

三街道「あっ……………、どっ、どうして、君がここにいるの?」

女ともだち「三街道君の事が心配になったので………。
さっきの事ですごく落ち込んでいたでしょ。だから気になって様子を見に戻って来たの」

三街道はさっと心が明るくなった。そしてハートマークと化した目を彼女に向けた。彼の正体は”しょせんこんな男”だったのだ。
そして、しょうこりもなく………、

三街道「ごめんね。心配かけて……。じゃ、お礼に1つお茶でもおごるよ。」

女ともだち「はあ?」

女ともだちは三街道の変わり身の早さに驚いた。そして”さすがに付き合いきれない”という顔をした。

女ともだち「いえ、いいわ。
私、これから”彼”とデートなの。その前にお茶を飲んだら、彼とお茶する時に、マズいでしょ?」

そう言って彼女は歩き出した。

女ともだち「じゃあね、三街道君!貴方にもいい夏休みが来ますように!」

そして、三街道の前から去って行った。




『あるモテない男の話』 act.9


 三街道はつかみかけた最後の希望がするりと抜けて行ったような気がした。

三街道「どっ、どうしてこうなる?!!
二階堂!全てヤツのせいだ!」

三街道の脳裏には不意によからぬ考えが浮かんだ。

三街道「はっ!

待てよ………。
そうだ!
二階堂がもし”いなくなれば”どうなるだろうか?
彼女達と今一番メールのやり取りをしているのはこの俺の筈だ!」

この”メールのやり取りが一番多い”というのは、三街道の空想でしかなかった……。彼は”二階堂の次には自分が彼女達と一番親しい”と思い込んでいた。

三街道「二階堂がいなくなれば、彼女達は悲しむ…………。そこで俺が、彼女達をなぐさめる…………。
すると彼女達は………………」

……と、三街道は考えた。

しかし彼が”いなくなる”にはどうすればよいのか、具体的にはよく分からなかった。
でも今の三街道は、あと1つでも魔が射すような事があれば、犯罪を犯してしまいそうな興奮状態だった。
その後、三街道はちまなこになってキャンパス中のありとあらゆる校舎や講堂を探した。二階堂の姿を求めて………。






 そして……やっとの思いで、キャンパスの裏手の小さな校門から帰る二階堂を発見した。
ここは背の高い木がたくさん植えられている場所で、細いコンクリートの階段以外は、柔らかい土の傾斜面が続いていた。
でも彼を見つけて……、その後どうするかは、まだ思いつかなかった。
とりあえず、木々の隙間から二階堂を見ると、彼は1人ではなかった。隣に女性を連れていた。

それを見て三街道は逆上した。

三街道「あの女はいったい誰だ?!」

そして走り出し、大きく土の傾斜路の中を回って、2人の前に踊り出た。

三街道「(連れの女性は静香か?!シンディーか?!千草か?!)」   

それが気になっていた。
すると、二階堂の方が先に三街道を見つけた。

二階堂「おっ!久しぶりだな。三街道じゃないか?!」

二階堂は、親しげでくったくのない笑顔を向けた。笑うと彼のイケメンの魅力がさらに増した。
三街道は連れの女の顔を見た。

それは…………

静香でもなく………、

シンディーでもなく………、

千草でもなく………、

はたまた、千草の女ともだちでもなく………………、

知らない顔の女の子だった。

三街道は2人の前に回りこむまでは、”もし今、片手にナイフでも持っていたら、二階堂の体に突き刺したかも知れない”というぐらいの勢いだったのだが…………。

その女性がまったく知らない顔だったので、勢いは急速になえた。

三街道「そっ、その女の子は?!!」

驚いたような口調で聞く三街道。それに対して二階堂は静かに答えた。

二階堂「俺の…………、”彼女”だよ。

もっとも、一ヶ月ぐらい前にやっとOKをもらって、ちゃんと付き合い始めたんだけど……。
三街道は初めてだったよな、この子に会うのは。
紹介するよ。

”加藤れみ”さんだ」

れみ「………………、よっ、よろしく!」

れみは大変な美人だった。
それは三街道の好みのタイプだった。
いや、正確に言うと、”好みのタイプが多すぎる三街道”の数ある好みのタイプの内の1つだった。

二階堂「じゃ、悪いけど、これで失礼するよ。今からデートなんだ。予約入れたイタ飯屋に時間までに着かなきゃ。
じゃあな!
またメールでもくれ!こんど会おう!」

二階堂は気を使った言い方をした。
そういえば三街道はここの所、一度も彼にメールを返した事がなかった……。それなのに……。

二階堂の自然でかっこいいふるまい方。
きっと彼はこれでまた株を上げた事だろう。れみは自然と二階堂に寄り添った。
そのまま2人は仲むつまじく三街道の元から去って行った。






三街道「(完敗だ……)」






しかし、別に二階堂は三街道と争ってなどいなかったのだが……。
でも三街道は、自分では戦いにやぶれた気分になっていた。

それから彼は崩れるように、階段の上に膝を着いた。
そしてまるで小学生のように、いつまでもそこで泣いていた。






THE END








あとがき

短編を思いついたので書いてみました。
あんまり深い意味はありません。
第一、私はこの三街道みたいなタイプの人間ではありませんw。(二階堂みたいなタイプでもないけどw)
でも、確かにこの三街道みたいなクラスメートは私の周りに実在しましたw。



それと三街道という変な名前ですが、

二階堂→2枚目
三街道→3枚目

という意味でつけました。




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