BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

第6話 過去の恋 act.41~50




それを聞いていた郷田指令も通信して来た。

郷田指令「そうか、レイチェルさんもいたか……。
だが、君達はバーチャルリアリティーシステムならびに”向こうの世界”から帰ったばかりだ。
精神には心理的負担がかかっている。今戻ると危険だ。それに君達自身はその心理的負担に本当は気付いていない。
今出動しても、救助活動中や戦闘中に突然精神レベルがダウンする恐れもある。
ナターシャ君からの報告では、今現在君達の精神レベルが数値的に低下している。
出撃は許可できない。今は休養する事だ。少し休め。」

クリス「アンナとレイチェルさんが危険なんです。向こうではザークが出現しています!」

郷田指令「ザークが?」

矢樹 「だが行っても無駄だ。突然スポルティーファイブの動きが鈍くなったらどうする?
ただでさえ精神レベルの低下でパワーがでないというのに。」

その時神田が、











神田 「 バッキャローーーーー!!

アンナちゃんとレイチェルさんが危険や言うとるやないか?

今行かんと危ないんや!それがわかれへんのかぁーー?!!













といつもの調子でまくし立てた。矢樹と郷田指令からはいつものごとく軽く無視された。
しかし…、

郷田指令「ナターシャ君、行けるのか?」

ナターシャ「やはり危険です。精神レベルというものは数値で測りきれるものではありませんから。とても心配です。」

だが矢樹はフッと笑った。

矢樹 「行かせてやれ。」

ナターシャ「え?でも……。」

矢樹 「君の言う通り、精神レベルは数値では測りきれない。
アンナやレイチェルさんにもしもの事があれば、それこそ彼らの精神レベルは低下する。そして、2度とその精神レベルは甦らないだろう。そうなれば彼らの心は深く傷付くからだ。
しかし、若者の精神力は未知数だ。人を思いやる気持ちが時には未知の力を発揮する。それにかけてみよう。」

ナターシャ「でも……。」

郷田指令「……しかし、報告から見て、ローレンス・フォスターが神津君やレイチェルさんに危害を加えるとはとうてい思えない。それなら急いで出発しなくてもいいのではないか?8時間ほど睡眠を取ってから行くべきだ。」

するとまた神田が、













神田 「 向こうでクリスは殺されかけたんやでーーーー!

もうローレンスのヤツは何にしでかすかわからん状態や!!!

ローレンスも今やマッドサイエンティストになっとるんやでーー!!!

早くアンナちゃんとレイチェルさんを助けに行かんと!














委員長「あちゃ~~~~~!」

委員長は特に”マッドサイエンティスト”と言う言葉に赤面した。それは自分達が矢樹博士に付けたあだ名だったからだ。
だが矢樹は笑って返した。

矢樹 「確かに今のローレンスの行動は常軌を逸脱している。何をしでかすかわからん。
ならば発進を許可してもいいのではないか?」

郷田指令「精神レベルが低下した状態でも”ゲート”をくぐれるのか?」

矢樹 「今のレベルならまだ問題無い。スポルティーファイブの全機能さえ正常可動しているならば。だが向こうに着いた時のドッキング時には注意が必要だ。その時は精神レベルが大きく作用する。」

クリス「アンナとレイチェルさんさえ救出できれば、今回はザークと戦闘する気はありません。」

郷田指令「……わかった。やむをえない。出撃を許可する。だが充分注意しろよ。」

こうして、スポルティーファイブが発進する事になった。





スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.42]


クリス達はそのまま発進体制に入った。
再び機体のシートに座り直し、6点式シートベルトを閉めて身体を固定した。

クリス「モードリセット。」

クリス達は機体のモードを通常に切り替えて、エンジンをスタートさせた。

ナターシャ「各機、機体の最終チェックを行ってください。」

クリス 「こちらクリス機、オールグリーン、発進準備よし!」

豪 「同じく羽山機、発進準備よし!」

委員長「小川機、発進準備OK!」

神田 「こっちも準備OKや。いつでもいいで、ナターシャちゃん!」

ナターシャ「……………………。

それでは、待機してください。ゲートリフトアップ!」

甲板上に[ゲート発生器]がせり上がって来た。
そして、無人の神津機が用意された。
神津機のカタパルトが移動してレールが切り替わり、今やゲート発生器まで続いていた。

ナターシャ「まず神津機を発進させます。」

郷田指令「よし了解!」

ナターシャ「発進!」

神津機がオートパイロットでカタパルトより打ち出された。
ゲート発生器の壁がきらびやかな光の変化を放ち、神津機はそこに吸い込まれて行った。

ナターシャ「成功しました!数値的には異常ありません。」

郷田指令「うむ。それでは有人機の発進を始めろ。」

次にナターシャはクリスに呼びかけた。

ナターシャ「クリス機、発進してください!」

クリス 「了解!」

クリスの機体もカタパルトレールの上を疾走した。そして無事ゲートに溶け込んだ。
委員長はクリス機が無事に吸い込まれたのを見てホッとした。

ナターシャ「次、神田機、発進してください!」

神田 「よっしゃーーーーーー!!
任せんかい~~~~~~~!ナターシャちゃん!
俺の出番やでぇ~~~~~!!!」

神田は必要以上の気合が入っているようだった。

豪 「よくあんな元気が残ってますねえーー。
やっぱり神田さんには精神的負担なんか無いんじゃないですか?」

ゴーーーーーー!

神田機も発進。そして見事ゲートに吸い込まれた。

ナターシャ「次です。羽山機、発進してください!」

豪 「わかりました!」

続いて羽山機も発進。豪の操縦はいつもそつない。難なく成功した。豪は操縦がうまかった。



そして………、
ついに委員長の順番がやって来た。

ナターシャ「小川さん、発進して!」

委員長はやはり”壁”に向かって行くのは苦手なようである。これはいつもの事だった。
見る見る内にさらに精神レベルが低下していった。
ナターシャはそれを見て驚く。
普段より数値が低い所へ、委員長の精神レベルだけがさらに下降を続けていたからだ。レベルメーターはもう一番底の方まで低下していた。

ナターシャ「危険だわ!小川さん、いったん機体を降りて!発進を中止してください!」

しかし委員長はスロットルレバーを引いた。

委員長「えい!」

小川機が発進した。

ナターシャ「待って!小川さん!」

ナターシャは緊急停止スイッチに手を伸ばした。
それを矢樹が止めた。

矢樹 「行かせてやれ!」

小川機も発進に成功。ゲートに吸い込まれた。

矢樹 「仲間を思う気持ちが、スポルティーファイブの未知なる潜在能力を引き出してくれるだろう…。」

こうして甲板上からスポルティーファイブの機体は全て消えた。







スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.43]


ナターシャ「……本当に大丈夫かしら?」

ナターシャは不安な気持ちに包まれた。

矢樹 「彼らを信じるしかない。”向こうの世界”には通信も届かんしな。」

郷田指令「……。」

郷田指令も心配そうだった。








その頃レイチェルはザークの追跡から逃がれようとしていた。
ローレンスはクリス達の姿が消えたので、彼らがこの世界からログアウトした事を悟った。
そして今やその矛先を変えてレイチェルとアンナを捕まえようとしていた。

ローレンス「2人ともさすがだ。私のキーロックを解除するとは。
ああ、やはり君はアンナ・エリスに間違い無い。あの優秀だった君に。」

ローレンスはコクピットで操縦しながら、その脳裏に昔の事を思い出していた。
彼にとってはそれが人生でもっとも華やかな時期だった。

ローレンス「君と私はお互い良きパートナーだった。少なくとも私はそう信じていた。
あの日………、あの時………、2人の息はぴったり合っていた。
私は幸せだった。毎日が充実していた。
隣にはいつも君がいたからだ。」

ローレンスの直面した仕事は多くの人間を統括するという事に加えて、技術的にも困難な作業を強いられていた。
例えば資材の強度が不足する事がたびたびあった。しかしアンナ・エリスはその問題をどの技術者に相談すればいいかよく知っていた。
ローレンスが仕事上の事で困ればアンナ・エリスに相談さえすればよかった。彼女はいつも、誰も想像しなかったような方法で彼を助けてくれた。彼女がいれば不安はなかった。

ローレンス「指揮官という職業は常に孤独だ。私はプロジェクトの指揮を取り、孤独を感じた。
それは自分との戦いでもあった。
しかし、私のそばにはいつも君がいた。私を助けてくれる君が……。」

ローレンスはあの日のアンナ・エリスの笑顔を思い出した。

ローレンス「あの日、確かに君はいた……。そこに存在していた。
この手で抱きしめられる距離にいた……。それなのに……。」

ローレンスは破損したザークでゲートに飛び込んで消滅したアンナ・エリスの事を思った。

ローレンス「私が……。私がいたらなかったのだ。この私が……、君を死に追いやった。」

ローレンスの両目から大粒の涙がこぼれた。

その涙はコクピット内の小型モニタースクリーン上にも垂れた。
そしてそこには一瞬レイチェルの姿が映った。

ローレンスはハッとした。
レイチェルの姿はアンナ・エリスの若い頃の生き写しだった。

ローレンス「見つけた……。アンナ・エリス……。」

ローレンスはレイチェルの正確な位置をスキャンし始めた。
しかしバーチャルリアリティーシステムからレイチェル達を探す時はそのプログラムの[検索エンジン]などで容易に探し出せたのだが、このようにいったん彼女達の”本体”をこちらの世界に引き込んでしまうと検索エンジンは使えなくなる。
それで隠れたレイチェルとアンナを探すのにローレンスは手間取っていた。

ローレンス「うまく隠れている。」

レイチェルは分厚い岩陰に隠れていた。ザークの温度センサーや心音探知が分厚い岩に妨げられていた。しかしローレンスは大きな岩の密集した岩場を何度もスキャンして、何とかレイチェルの隠れている岩影を見つけ出した。
そしてその近くに接近して来た。ザークの腕が岩影に伸びる。

レイチェル「あ…………。」

レイチェル達は岩と岩の間を縫うように、奥へ奥へと逃げていたが、行き止まりに突き当たってしまった。もう奥へは逃げられない。
ローレンスはその手にレイチェルをつかもうとしていた。




その時、轟音と共に上空に航空機が接近して来た。
その音を聞いて、アンナは飛んで来た機体の種類がわかった。

アンナ「スポルティーファイブの機体だわ!」

クリス達がやって来た。機体はローレンスの乗るザークの前を通り過ぎた。

ローレンス「くそーーー!やって来たかクリス……。」






スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.44]


ザークがクリス達の機体の方に身構えている。

クリス「向こうはやる気だ。しかたない。まずザークを足止めしよう。
しかし、先にアンナとレイチェルさんの位置を確認しておいた方がいい。
そうしないと流れ弾に当たって危険だ。それでは攻撃できない。
委員長!付近をサーチしてくれ!」

委員長「……。」

しかし委員長からの返答はなかった。

神田 「委員長、出番やで!どうした?」

委員長の精神レベルメーターを見ると[気絶寸前]の状態だった。

神田 「あちゃーーーーー!!!またや!
これやからオナゴを乗せるのはダメなんや。デリケートすぎる!
スポルティーファイブちゅうのは本来”男のマシン”なんやで!」

豪 「”男のマシン”???」

クリス「委員長の精神レベルは最低値だ。疲労も認められる。バーチャルリアリティーシステムに潜った事が原因だよ。」

神田 「俺はなんともないんやけどなーーー。」

豪 「神田さんとは違うんです!」

神田 「なんやて?俺かてデリケートな神経の持ち主や!そうじゃないとでも言うんかいな?!」

豪はその事を無視して通信する。

豪 「でも、どうしましょう?とりあえず神田さんが換わりにサーチしてください!僕は武器管制がありますからできません。」

神田 「え?俺?あかん。俺はコンピューターとか苦手やから~~~。」

豪 「神田さん!!」

神田 「わかった!!わかったよ!!サーチ開始!」





サーチ開始直後、誰かから通信が入って来た。
発進人は[アンナ・エリス]という名前になっていた。

クリス「アンナ・エリス……。」

神田 「おい!”アンナ・エリス”さんから通信が来たで!」

神田も驚いていた。クリスが回線を開くとそれはレイチェルからだった。

レイチェル「今、アンナ・エリスさんのノートパソコンから通信してます。アンナさんも無事です。」

神田 「はあ~~~。それで”アンナ・エリス”っちゅーー名前になってたんか。」

クリス「今どこにいます?」

レイチェル「アンナさんの家から東南東70メートルほどの所、岩棚のある場所です。そこの中の岩の1つの岩陰に隠れています。」

クリス「神田君!そこを重点的にサーチしてくれ!」

神田 「わかった。
あーーーー!見つけたで!
熱感知カメラと生体反応センサーに反応があったあーー!!」

豪 「座標もわかりました。すぐに収容に向かいましょう!
でも、その前に………、ローレンスの機体に一発お見舞いしておきます。」

豪はローレンスを足止めさせるため、高速ロケット弾で攻撃した。
しかしローレンスはそれを避けた。

ローレンス「くっ!私を本気で怒らせたな。地球人め!」






スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.45]


クリス「神田機!アンナとレイチェルさんをひろってくれ!僕らがザークの足止めをする。」

神田 「わかった!
あっ!それと委員長の機体の面倒も頼むわ。フラフラやで!」

見ると、委員長の機体は方向さえ定まらない状態だった。その動きは明らかに精彩を欠いていた。
ザークのいる上空を旋回もせずに、別の方向へ飛び去ろうとしていた。

クリス「しまった!」

委員長をカバーするため、豪はなおもミサイルを放ったものの…、どれもザークに命中はしなかった。しかし、数発はザークの足元に着弾し、大地を揺さぶった。ザークのコクピットにその震動が伝わり、シートに座っているローレンスの身体が揺れた。それは彼の怒りをさらに増幅させた。そして今やローレンスは感情をむき出しにしてクリス達に襲いかかろうとしていた。




ローレンスは上空の委員長の機体の動きが鈍い事を悟り、重点的に狙った。それでクリスと豪は再びザークを阻止しようと試みた。

神田 「まずい!委員長はもう意識が無いかもしれんで!いちかばちかでドッキングしたらどうや?」

クリス「そうだな……。ドッキングしよう!」

豪 「じゃあ、アンナさんとレイチェルさんは後で収容ですか?」

クリス「それしかない!まずザークを倒す事が先決のようだ。」

神田 「よっしゃ!決まったーーーー!ドッキングしようぜ!」

クリス「アフターバーナー点火!座標X:33 Y:1002 Z:1102 に退避!
委員長の機体はオートパイロットへ変更!」

クリス達の機体はエンジンを全開にしてその場から飛び去った。





この混乱に紛れてレイチェルとアンナは別の岩陰に隠れるために、元いた岩陰から飛び出して移動していた。さっきまでいた場所はすでにローレンスに見つかっていたからだ。だが、上空では轟音を残してスポルティーファイブの機体は飛び去ってしまい、それを見たレイチェルは「どうなったのだろう?」と心配していた。

レイチェル「皆、どこかへ行ったわ。」

アンナ「ドッキングするので安全な空域まで一時避難したの。じきに戻って来るわ。」

レイチェルとアンナは別の岩陰を見つけて、その奥へと入った。
雨がふたたび降り始めた。その雨が2人を隠していた。
機体が全て飛び去ったのでローレンスはまたアンナとレイチェルの姿を探した。
スポルティーファイブが戻って来る事はわかっていたので、急いで探し出そうと躍起になっていた。だが2人は見つからなかった。






その時、上空からスポルティーファイブのヒューマノイド形態が姿を現した。

ローレンス「来たか?!」

豪はミサイル発射の準備をする。

神田 「おい!うかつに攻撃するなよ!アンナちゃんとレイチェルさんに当るやないか!!」

豪 「それもそうですが……、これはホーミングミサイルですし……。第一、今のローレンス相手には攻撃しないとどうにもなりません。」

地上のローレンスからはスポルティーファイブに向けて機銃が撃たれた。

クリス「攻撃が来た!かわすぞ!」

クリスはスポルティーファイブに急な回避運動をさせて機銃掃射をかわす。
しかしそれはスポルティーファイブのシールドに当った。機体がビリビリと震えた。

神田 「うわあ!上空にいる限り撃たれやすいで!早く着陸しよう!」

クリス「よし!」

神田 「委員長!着陸やで!ショックに備えや!!!」

委員長「……。」

神田 「委員長!委員長!聞いてるのかいな?」

委員長「……。」

神田 「アカン……。委員長は……。」






スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.46]



スポルティーファイブは地上に降り立った、すると……ローレンスはいままで構えていたライフルの銃口を下に降ろした。

クリス「向こうもアンナとレイチェルさんに流れ弾が当る事を恐れている。
豪君!アンナとレイチェルさんに避難するように伝えてくれ!」

豪 「わかった。」

こうしてローレンスとスポルティーファイブは対峙した。

神田 「委員長お嬢様がお眠りなっているから、シンクロレベルはサイアクや!クリス、気を付けや!」

クリス「わかっている!」







ローレンスはクリス達に通信して来た。

ローレンス「これが”スポルティーファイブ”か?いまいましい機体め!
かつてレイドの国に探査名目で侵入して来たのもおそらくこれの前身となる機体だった。」

クリス「違う!僕らは侵略者ではない!いっしょにしないでくれ!」

ローレンス「いいや、侵略者だ!特にクリス、君はだ!君は私からアンを奪った!」

その会話をレイチェルがアンナ・エリスのパソコンからモニターしていた。
それをアンナも聴いていた。

レイチェル「違うわ、何言ってるの?彼は?!」



クリス「奪ってなどいない!」

ローレンス「いいや!奪った!そしてあのアイクと言う男も!」

そこへ神田が割って入る。

神田 「なんやて?何を言うとるんやこの男は?アンナちゃんやレイチェルさんはアンタには気がないと言うとるだけやんけ!」

豪 「……。」

ローレンス「………君達地球人が我々レイドから、どれほどの自由や同胞の命を奪ったのかわかるまい。
だから気安くそんな事が言えるのだ。
かつて我々は地球上空で静かにくらしていた。そこには何機かの空中都市が浮いていた。
それを撃ち落としたのは地球人だ。その時、多くの家族が亡くなったのだ。」

神田 「そやけど……」

豪 「僕らには関係ありません。僕はまだその頃には生まれていません。」

ローレンス「お前たちの前の世代の者達は血も涙も無い侵略者だった。
お前たちもその子孫だ。血塗られた歴史を作って来たその子孫なのだ!」

神田 「だけどーーー、それとレイチェルさんたちの事とは関係ないと思うがな~~~~~。」

ローレンス「黙れ!お前達はレイドからいったいいくつの物を奪い取れば気が済むのだ!
私はお前たちを絶対に許さん!」







スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.47]


そう言うと、ローレンスの機体はいきなり突っ込んで来た。
射撃するのではなく、そのまま突進して来たのだ。
クリスは反射的にライフルを構えたが、流れ弾や爆風がアンナやレイチェルに当る事を考えてやはり撃てなかった。
それでザークとは格闘戦になった。





ガン!ガン!





スポルティーファイブの機体の装甲板にザークのパンチが当る。

神田 「うわあああ!!格闘戦かいな?!機体を少しでも傷めると元の世界へ帰れなくなるで!」

クリス「今はそんな事言ってられない!」



ガン!ガン!ガン!ガン!



神田 「震動がコクピットまで伝わって来よる!」

豪 「これでも直にスポルティーファイブの機体に当たっているわけじゃありません。装甲板の上をシールドがおおっています。それによって相手の攻撃による衝撃はだいぶ弱められています。」

神田 「せやけど、当たってる事には違い無い!」

2機は激しくぶつかりあった。だが格闘戦をまったく経験してないスポルティーファイブは一方的にザークからパンチを受け続ける。接近戦はどうやら向こうの方が一枚上手のようだ。スポルティーファイブは押されてしまう。

ローレンス「どうだ!ザークはもともと作業用ロボットだ!力を出す為の基本性能は高いのだ。
そんな戦闘機もどきの弱い耐久性のロボットがザークに格闘戦で勝てると思うか?!」

スポルティーファイブは激しいパンチを何発もくらった。こちらからのパンチは思うように相手に当らなかった。

神田 「どうしたんや、いったい?相手の方のパンチばかり当りよるで。これじゃ負ける!」

豪 「こんな戦闘はシミュレーション訓練でもほとんど想定されていませんでした。」






ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!






そして、ついにスポルティーファイブは地面に倒れた。







ガシャーーーーーーン!






ローレンス「ふふふ……。」




神田 「ぐわ!すごい衝撃が来た!
あっ!もし、今、下にアンナちゃんやレイチェルさんがいたらーーーー!!」

クリスはすぐに機体を立ち上がらせる。

豪 「下には誰もいなかったようです。誰もふんづけてません。」

神田 「ふーーーーー。」

その後もスポルティーファイブはザークから攻撃を受けた。




ガシャ!ガシャ!ガシャ!




クリス「うっ!」

豪 「いくらシールドの上からとは言え……、これではダメージを受けています。」

神田はローレンスに向かって叫んだ!

神田 「やめろーーーー!下にアンナちゃんやレイチェルさんがいる言うてるやろ!!」

ローレンス「くくくく……。クリス君、君達には気の毒だが……、ここで消えてもらおう。」

クリス「くっ!」






アンナ「ローレンス!!やめて!」






ズシャ!ズシャ!ズシャ!ズシャ!







スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.48]


クリスは精神レベルの低下により動きの鈍くなったスポルティーファイブの機体を騙し騙し使っていた。ロボットどうしの格闘戦という前代未聞の戦闘が続き、見る見る内にスポルティーファイブの機体は傷んでいった。外壁の装甲板はへこみ、内部のハイドロ機構に影響を与え、スポルティーファイブの機体はさらに動きが鈍くなっていった。

豪 「はっ!警告ランプ点灯!油圧系統に異常発生!」







レイチェル「ローレンス!もうやめて!」

岩場まで伝わってくる戦闘による震動に思わずレイチェルも叫んだ。
巨大な2体の震動はまるで地震のようにアンナとレイチェルに伝わって来ていた。







ズシャ!ズシャ!ズシャ!ズシャ!







豪 「電力バス、メインバス電圧低下!酸素タンク内圧力低下!左腕電磁コイルにも異常発生!
各部で断線したケーブルが多々あります。そのつど予備回路に切り替えます。」

よろめくスポルティーファイブ。

豪 「警告ランプが次々と点灯していきます!危険な状態です。
精神レベルも下がり切っています。クリス君、まだ大丈夫ですか?!」

クリス「機体のこの反応の鈍さではどうにもならない。いったんここから離脱しよう!」







ガシャ!ガシャ!ガシャ!






ローレンス「アンとアンナ・エリスは誰にもわたさない。」







その時、神田が開き直った声でこう言った。

神田 「クリスぅ~~~。ちょっと操縦代わりいや。」

豪 「神田さん、こんな時に冗談は止めてください!」

神田 「いいから代わりいや……。ローレンスのヤツ、もうあったま来たわ!」

豪 「あのーーーー、神田さん。」











神田 「 いいからちょっと代わりいや!











神田があまりにも真剣に言うものだから、クリスは一旦操縦を神田に代わった。
操縦系統を神田機のコクピットに切り替えた。

クリス 「でも、すぐに離脱するぞ。」

神田 「いいから、ちょっとだけそれはしんぼうしいや!」

神田はコントロールレバーを握り締めた。
そういえば神田は訓練で不必要と言われた接近戦ばかりしかけていた。格闘ゲームでもしているつもりで。そのたびにナターシャに怒られて止めさせられていた。

神田 「よくもよくも……、ローレンスのヤツ!
どんだけ俺達がアンナちゃんやレイチェルさんを大切に思って来たか……。それを……。」

急にスポルティーファイブの動きが前と違い生気を帯びた。機体は体勢を立て直し、身構える姿勢になった。その変わり様をローレンスは見て取った。

ローレンス「くくく……。操縦をクリスと代わったか。」






神田 「覚悟しいやーーー!!」






神田の鋭い切り込み。ザークのふところに潜り込んで下からアッパーパンチを繰り出した。







ガシャーー!!






ローレンス「うわあああ!!」

ザークの機体が少し宙に浮いた。






ガッシャーーーーーーーン!!!!







豪 「すっげーーーーーーー!」







連続して神田はパンチを入れる。







神田 「そうりゃ!そりゃ!そりゃ!」






ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!







鋭い神田の攻撃!

豪 「神田さん!あまり機体を直にザークに当てないでください!これ以上傷付くと帰れなくなりますから。」

神田 「そんな事言うてるヒマないのーーーーー!!」






ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!







スポルティーファイブのこの変わり様に慌ててローレンスも体勢を立て直す。







スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.49]


豪 「なかなかです。神田さん!」

神田 「当たり前やで!」

豪 「お遊びのシミュレーション訓練も無駄ではなかった。」

神田 「一言多いで。豪…。」

しかし、スポルティーファイブの機体は見るからに傷んできた。
そして格闘戦により、双方のロボットが地面に倒れる事が数回あった。
そのつど爆発でもあったかのような地響きがレイチェルとアンナのいる岩場に伝わった。
レイチェルはスポルティーファイブのメンバーを心配し、直にローレンスのもとに通信を入れた。

レイチェル「もう止めて!こんな事をしても無駄だわ。私達は貴方とは暮らさない。いっしょにはいられないわ!」

ローレンスの動きが一瞬止まる。

ローレンス「アンナ・エリス、君はいつもそうやって私を……。」

その後ローレンスはさらに怒り狂った。

ローレンス「くーーーーー!!」





ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!





クリス「ローレンスの動きが急に激しくなった。
神田君、注意しろ!危なくなったらすぐに離脱する!」

神田 「わかってるって!」

ローレンスの放ったパンチによりスポルティーファイブのコクピット内に鈍い音が響いた。

クリス「なんだ?」

豪 「まずいです!何かの部品が脱落しました!」

クリス「なんだって?!」

豪 「左胸の装甲板のようです。神田さんのコクピットのすぐ近くです。」

ローレンスは不意にライフルを構えた。

クリス「シールド展開!」






バリバリバリバリバリバリーー!!!






銃撃を受けるスポルティーファイブの機体。
一応それをシールドが防いだ。神田のコクピットは銃撃から守られた。

神田 「よっしゃ!クリス、グッドタイミングや!」

しかし、

豪 「シールド発生機一部破損!さっきの格闘戦の影響です。」

神田 「なんやて?」






バリバリバリバリバリバリーー!!!






ローレンス「うおーーーーー!!!」

ローレンスはシールドの張られてないところを狙って再び撃って来た。
神田はザークに接近してつかみかかる。そして、パンチの連続による攻撃。
しかしスポルティーファイブの機体はザークからの反撃でさらに傷付く。
ローレンスはまたライフルを構えて至近距離から撃って来た。






バリバリバリバリバリバリーー!!!






スポルティーファイブの機体から黒い油のような液体が零れ落ちた。
辺りには爆風が起こり、レイチェルとアンナのところまで風圧がやって来た。

アンナ「もう止めて!」






豪 「ハイドロ油圧低下!かなり機体が傷付いてます。」

神田 「やばい!防ぎきれないで!」

またローレンスの機体が迫る。ローレンスは至近距離からクリスのコクピットを狙った。

豪 「クリス君!狙われてます!」

クリス 「神田君!操縦をこっちへ!」

クリスはしかたなくライフルを抜いた!







バリバリバリバリバリ!







クリスのライフルは至近距離からローレンスのコクピットを狙った。






バリバリバリバリバリ!






爆風が再びレイチェルとアンナを襲う。

アンナ「クリス君!」






ライフルの弾は何発かはザークに命中した。






ローレンス「うっ!」






ザークは沈黙した。
そして、横方向に倒れた。






ガッシャーーーーーーーン!






神田 「やったか?!」






スポルティーファイブ 第6話 過去の恋 [act.50]


クリスはザークを見つめた。しかし動く気配がまったくなかった。

豪 「動きませんね。スキャンしてみます。」

ザークは機能停止していた。

豪 「ザークはコクピットに被弾したようです。
心音探知によりますと、ローレンスの心拍数が落ちているようです。」






ローレンスは回線を開いていた。レイチェルがパソコンを操作し、ザークのコクピットをモニターする。そこに映ったローレンスは傷付き、倒れていた。
アンナはローレンスに通信してみた。

アンナ「ローレンス!」

ローレンスは弱っていた。頭と肩から血を流しており、ぐったりとシートに座っていた。血の色は地球人と違って青だった。






クリスもローレンスに通信した。

クリス「病院はどこだ?連れて行く。」

ローレンス「いや、もういい。手遅れのようだ。それよりアンナ・エリスの顔を見せてくれ。」



レイチェルはローレンスに通信した。

レイチェル「病院はどこです?」

だがローレンスはレイチェルの顔を見て少し笑っただけだった。

ローレンス「君が心配してくれた事がうれしい。これでもう何も思い残す事はない。
私が間違っていたのだ。これでいい。」

レイチェルはアンナ・エリスのパソコンのキーボードを叩き、病院の位置を割り出した。それはまるでレイドの世界をよく知っているかのような素早さだった。

レイチェル「稼動してる病院は少ないわ。でもここから20キロ先に大きな総合病院があるわ。」





クリス「よし。そこへ行こう!」

クリスはローレンスを病院に運ぶ事にした。
ザークのハッチにはロックがかかっていた。
しかしそれはレイチェルがパソコンを使って解いた。
アンナ・エリスのパソコンからだと、ロックが解けるようになっていたのだ。

アンナ「ローレンスはアンナ・エリスさんには全てを許していたのね。」






こうしてコクピットからローレンスの身体が運び出された。
そしてスポルティーファイブの機体で病院まで搬送された。






病院にはレイドの人々が多くいた。
クリスたちが別の世界から来た人間だとは知ってはいるようだが、皆親切だった。
ローレンスは重体で助かるかどうかは不明である。
直ちに救急の手術が行われる事になった。






クリス達は一度病院の外に出た。そこの駐車場のスペースにはスポルティーファイブの機体が立っていた。あちこち装甲板がはがれ落ち、内部機構が露出していた。ハイドロやクーラントに使用されている油や水が辺りにこぼれて散乱していた。

神田 「あーーーーーあ、だだ漏れや。これで俺たち元の世界へ帰えられへんなあ。」

豪 「軽く言わないでください。一生ここで暮らさなくてはならないかも知れないんですよ!」

神田 「はぁ~~~~~。それをいいな。
もうもとの学校にはもう戻られへんのんかいな?俺の学園生活はどうなる?俺の青春は?
あーーーー、ここには美少女が1名と美人が1名しかおれへんし。」

豪 「よかったですね。今の委員長が聞いて無くて。」

神田 「そういえば委員長は?」

豪 「まだコクピットの中で寝てますよ。」






クリス「もしも、この先ずっとここで暮らさなければならないとすると………。」













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