「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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BLUE ODYSSEY
第7話 委員長の恋 act.51~60
それから教室で授業を受けた。
体育、世界史、英語リーダー、生物
そして午前中が過ぎて、お昼休みになった。
委員長・神田・豪の3人はお昼を食べに校庭にある桜の木の根元に行った。
神田は委員長の横に座った。
そしていつに無く真剣な表情でこう言った。
神田 「委員長!たまにはいっしょに映画行かへんか?!」
委員長「もーーーーーー!!!」
神田 「委員長”でも”いいからこうしていつも誘ってあげてるのに。」
委員長「でも?」
神田 「ふ~~~~~。いつもこうや。肩透かしや。
もうええわ。疲れたわ。
委員長やと今ひとつ俺のハートが燃えへんし。」
委員長「なにそれ?…………。」
神田はすぐに委員長を誘うのを諦めた。
見上げると空は青く、白い雲がかかっていた。いい天気である。
いつも見る景色である。
しかし……、
神田 「なにか……、なにか違うな。何かがもの足りない。」
急に神田は神妙ともいえる表情になった。
委員長「”何か”?何かって何が?何がもの足りないの?」
神田 「さあな。それはわからない。でも昨日までと違うんや。何かが変わってしまった。
朝起きて自分の部屋の天上を見上げた時、それはすごく感じた。
だけど……、それが何かわからへん。」
委員長「……。」
委員長もまたっく同じような感覚を今朝味わったのだった。しかし………、ここは安易に話を合わせようとしなかった。
なにせ相手は神田なのだ。話を合わせばまた”からかわれる”に決まっている。
神田は両手で頭を押さえた。その”何か”を思い出そうと必死のようだった。
神田 「なんやろう?大切な物や。
とても大切なもんやった気がする。でも、それが何か思い出せない……。」
豪 「……僕もです。」
と、豪も言い出した。
豪 「何か良い思い出を全て失ってしまったような感覚が今朝起きた時にありました。
昨日までは毎日が充実していた。でも今朝はそれが無いような気がしたんです。おかしいですね。
昨日まであった物がない。そんな気がして。」
神田 「何が足りないのや?!!何が足らんようになったんや?!!」
豪 「そこが僕にも思い出せないんです。」
神田は違和感のような物に対して追及しようとした。
不意に立ち上がってズボンのポケットから定期入れを取り出した。
それを開くと2つのクリアフォルダがあり、定期券のカードともう1つには白い台紙の紙以外は何も入っていなかった。
神田が立ち上がった時、そのお尻にくっついていた芝生の草と土のほこりが舞った。
それを浴びた委員長は怒り気味だった。
委員長「もう!その定期入れがどうしたのよ?!!」
神田 「俺はいつもここには大切な写真を入れてたと思う。でもそれが無いんや。」
委員長「大切な写真?」
豪 「女子の誰かの写真ですよ。神田さんは好きな女子が出来るとかならずそうしてました。」
委員長「……。」
豪 「一時期、委員長の写真も入ってた時がありました。」
委員長「げ!」
神田 「
豪!よけーーーな事言うなよな!!
」
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.52] 275
神田は非常に照れた。そして委員長の方に背を向けた。
それから今は何も入っていないフォルダを見つめる。
神田 「ここには誰かの写真が入ってたような気がする……。」
豪 「ええ、入ってましたよ。僕も見ました。
委員長の前は、たしか……………、
”静穏学園の笹山良美”さんとかいう人の写真が。」
神田はまた照れた。
神田 「あっ、あないなもん、ただの”憧れ”や!!!もうとっくに終了したで!!
だいたいトレインの中で見かけただけや。喋りかけるチャンスもなかった。」
委員長「ふう……。」
委員長はあきれてため息をついた。
豪 「では誰が?そこには誰の写真があったというんです?」
神田 「なんやすごい美少女の写真を入れてたような気がするわ。」
委員長「”美少女”!」
豪 「それはこの学校の女子ですか?」
神田 「そうやと思うわ。俺の大切な憧れやった。忘れるわけにはいかん。」
神田はそう言って何も入ってないクリアフォルダを眺め続けた。
委員長にはその「大切な憧れ」という言葉が妙に引っかかる気がした。
午後の授業、物理、現国を受けて、本日は終了。あっと言う間に下校となった。
委員長「じゃあ、また明日。」
委員長、神田、豪の3人はそれぞれの自宅へと向かった。
委員長は自宅に着いて、学生服のまま家族と夕食を食べると、その後は2階の自分の部屋に上がった。
そして鞄を机の上に置いて、ベッドの上に身を投げ出した。
そこには見慣れた天井天上があった。
委員長「……………………。」
神田の言葉「大切な憧れ」がまだ引っかかっていた。
委員長は考えた。
何が引っかかっているのだろうか?
心の中に、なにかすきっきりしないもやもやがある。
しかし、それが何かどうしても思い出せない。
委員長は自分の部屋の机の上に写真立てがあるのを見つけた。
見るとはそこには何の画像も入っていなかった。
この写真立ては液晶画面と内部メモリーを持つ。
委員長はその中のメモリーに入っている画像を全て見たが、家族の写真しか入っていなかった。
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.53] 276
次に委員長はベッドの上で自分のノートパソコンを起動させた。
そしてその中に綴られている自分の”日記”を見たが、そこには委員長としてクラスの事に関するさまざまな予定が書かれていた。
10月には文化祭の準備で忙しくなる筈だった。
”教室の手配。会計。買出しのメモ”などがいろいろ記されていた。
誰が何を担当するかも書かれていた。
それを見ると………平凡だが、幸福な学園生活が感じられた。
委員長「……。」
委員長はクラブには入っていなかった。普段は学級委員長としての仕事に終われていたが、それが無い日は自宅に帰ってから空き時間があった。
しかし、いままでの委員長の性格から言えば、その時間をダラダラと過ごして来た覚えはない。
でも、今日の委員長はなぜか「時間が余る」感覚にとらわれていた。こんな感覚を味わうのは始めてのような気がした。
委員長「こんな時、いままでどうやって過ごしていたんだろう?」
委員長はベッドから起き上がって、机に座った。そして課題をさっさと片付けた。
それでもまだ時間が余った。
委員長「前はもっと学級委員長としての仕事がたくさんあったのかしら?
その仕事にずっと追われていたのかしら?」
委員長は学校内での自分の仕事を思い出してみた。
先生に呼ばれて、連絡事項を受け取る。それをメモして、教室の黒板に書く。
またはプリントされた物を受け取って他の生徒に配る。
それ以外にも教室内で他の生徒に注意している自分を思い出した。
委員長「神田君!今日はあなたは掃除当番のはずでしょ?!
さぼらないで!何を帰ろうとしているの?!」
神田 「かんにんしてえなあ~~。今日はデートのある日なんや!」
委員長「嘘おっしゃい!」
委員長「……………………。」
クラスで何か問題がある生徒がいれば、直にその生徒に注意する。
これも”学級委員長”としての仕事の一つだった。
委員長「神田君!黒板を消すのは貴方の当番よ!早くして!先生が来ちゃうじゃない?!」
神田 「ちょっと待ってえや!この漫画、面白いトコなんや!」
委員長「漫画を持って来ちゃダメだって言ったでしょう!学校は漫画を読む所じゃない!」
委員長「……………………。」
委員長「神田君!相原美由紀さんにしつこく声をかけているそうね?
教室内でそんな事するのはやめてくれますか?
彼女が嫌がってます!」
神田 「そっ、そんな事ないで!俺と美由紀ちゃんは……………!」
委員長「むこうは”関係ない”って言ってます!!」
委員長「……………………。」
委員長は頭を抱え込んだ。
委員長「もしかすると…………、いままでのクラスの問題は…………、全部神田君1人が作ってきたんじゃない?!!!」
委員長は再びベッドに横になってため息をついた。
委員長「はあ~~~~~~。」
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.54] 277
そういえば明日は学校は休みだった。祝日だったのだ。
委員長「そっか、明日はお休みだ。」
でも……、何をしていいかわからなかった。
委員長「いままで何を楽しみに生きてきたんだろう?」
”違和感”。
何かはっきりとはしないが違和感に包まれていた。
委員長「……………………。」
しかし、それが何かはどうしてもわからなかった。
委員長は枕もとの小さな液晶のテレビを取った。それはDVDも観れる物で大変小さくて軽いコンパクトサイズの物だった。それを枕もとのスタンドにセットして、寝転びながらテレビを観始めた。
何気なく回したチャンネルは恋の学園ドラマだった。
いままでに一度も見た事が無いので、ストーリーなどはよくわからない。
だから最初真剣に見ようとは思わなかった。
そのドラマの内容はいたって普通の学園の恋愛物語。
主人公はハンサムな少年。彼はクラスでも目立つ好青年。それを密かに慕うおとなしく真面目な女子学生、しかもその女の子も学級委員長だった。
さらに、恋のライバルとも言える美少女が現れる。その女の子は性格も良かった。日の打ち所がない。
焦るヒロインの女の子。
…………委員長はその番組の内容に親近感を覚え、しだいに見入って行った。
委員長「いいなあ、私も恋がしたいなあ。」
そして委員長は神田の言った言葉を思い出した。
「大切な憧れ」
委員長はふとそれは恋の事ではないかと思った。
プルルルルルルル!
その時、携帯電話が鳴り響いた。
委員長は携帯を手に取ってみた。
発信者名は[神田 司郎]と表示されていた。
委員長「か、か、神田君?!何の用なのよ、こんな時間に?」
委員長は通話ボタンを押した。
すると大きな声で、神田が喋って来た。
神田 「わかった!わかったで委員長!”大切な憧れ”。それは恋の事やった!」
耳元で大きな声で喋られ、挨拶もなしでいきなり本題に入って来た。
それで委員長は神田に注意した。
委員長「神田君、いったいなによ!
最初に”こんばんは”ぐらい言えないの?学級委員長としては……。」
神田 「そんな事どうでもええ!!思い出したんや!はっきりと!
それは”恋の事”やった!今テレビ観ててわかった。」
委員長「……テレビ?それって『恋の桜学園』っていうドラマじゃない?」
神田 「そうや!ようわかったのう!さすが委員長や!」
委員長がさっきまで観ていたドラマである。
神田 「やはり俺と委員長は通じる部分がある。心のどこかではつながっているとちゃうか?!」
委員長「……………………。」
委員長はあきれた。
委員長「それで?」
神田 「”この俺”が学園生活において、恋をしてない時期があるなんておかしいと思っていた。」
委員長「はん?」
神田 「それでわかったんや!明日会おう!」
委員長「はあ?!!なんでそうなるわけ!」
委員長は神田の話の持って行き方に驚いた。
神田 「勘違いしいなや!”委員長に恋する”ゆうんやないで!
とにかくその事について会って話したいんや!」
委員長「どうしてわざわざ会って話をする必要があるの?今言ってよ。」
神田 「重大な事やからな。電話じゃ無理や!」
委員長「じゃあ今度登校した時、学校で………。」
神田 「誰かに聞かれるとまずい!外で会おう!」
委員長は机の上の何も表示されてない写真立てに目がいった。
神田と会う事を別に誰にも遠慮する必要はない。
それに、ああ見えても神田は一応信用できる男である。
委員長「ふう~~~~~~~。まあ、いいけど!」
神田 「よっしゃーーー!!」
神田は待ち合わせ時間と場所を言って、すぐに電話を切った。
ツーーーーーツーーーーーーツーーーーー!
委員長「もう!”その待ち合わせ時間でいいか?”ぐらい聞きなさいよ!!!」
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.55] 278
委員長は豪にも一応連絡を取った。
それで3人で待ち合わせする事になった。
翌日、委員長と豪は神田との待ち合わせ場所に着いた。
ここは駅前のすぐ近くの高架下。商店街のアーケードの入り口にあたる。
行きかう人々の往来は多い。
しかし、付近を見回しても神田の姿は見えなかった。
……と、思っていたら、白いスーツに身を包んだ男が、帽子を深くかぶりながらやって来た。
その帽子も白。あからさまにこの場所に不似合いな格好である。
男は委員長達の姿をうかがうように遠巻きにたたずんでいた。
それが誰であるかは委員長にはすぐにわかった。
委員長「神田君!」
委員長は大声で神田を呼んだ。神田はズルッと足を滑らせた。
彼にしてみれば、スパイ映画の主人公でも演じている気分だったのだろう。
その後、委員長と豪と神田はファーストフードのお店に入った。
そこで神田は390円のパックセットを注文した。
そのトレイを受け取って、さっそく勇み足で2階席に向かう。
委員長と豪も同じような物を注文して神田の後を追って2階に上がった。
店内は明るくて快適だった。同じような年齢の女の子達が店内に何組かいて、お喋りを楽しんでいた。にぎやかな店内で、やわらかな音楽が流れていた。過ごしやすい雰囲気である。
神田は興奮気味だった。
しかし、今日の本題に入る前に、先に食べ物の事について話し始めた。
神田 「まずはこれが前座や。後は本格的に注文する。」
委員長「は?これが前座?まだ食べるの?」
神田 「当たり前や!こんなもんで腹がふくれるかい!!!」
神田はコークのストローに口をつけ、ズズッとすすった。そして大きなビーフが入ったハンバーガーに大口を開けてパクついた。
豪 「神田さん!そんな事より、今日の本題は何ですか?」
神田 「おーーーそうやな、忘れるトコやった。」
委員長はがっくり来た。
神田はまたハンバーガーに口をつけてたいらげ、その後、コークを飲み干した。
神田 「それでな……。」
委員長「うんうん。」
委員長はテーブルに手を着いてその上に頭を乗せる。
神田 「あっ、ちょっと待って、先に追加分買って来るわ。」
委員長はガクッと頭を滑らせてしまう。
その後、神田は安いハンバーガーを大量に載せたトレーを持って戻って来た。
それには100円のバーガーが8個ほど乗っていた。
豪 「……。」
委員長「神田君、それ、全部食べるの?」
神田 「そうや。でも委員長にもひとつやるわ。一応”オナゴ”やさかい。」
委員長「”一応”……。」
神田は豪にも一つあげて、残りのハンバーガーを自分1人でむさぼり始めた。
そして食べる事に集中した。いつまで待っても本題に入る気配はない。どうやら忘れているようだ。それなので委員長の方から口を開いた。
委員長「………………で、話って?」
神田 「ああ、それがな……。」
ここからやっと神田は真剣な表情になった。
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.56] 279
神田 「絶対におかしい。俺の定期入れのクリアファイル。それから俺の部屋のパソコンのデスクトップ。あれも消えとる。
前にあそこには何かあった筈や。それが消えて真っ黒だった。
それにテキストデータ………。
ラブレターを練習した跡があった。」
委員長「ラブレター?」
神田 「ああ、ラブレターや。俺のパソコンの中にあった。
誰かに出そうとしてたみたいで、気恥ずかしくなるような文章だった。」
豪 「誰に出そうとしてたんですか?」
神田 「そこなんだよな……。
誰に出そうとしてたのかわからないんや。自分が書いた事は確かなんだが。」
委員長「名前とか特徴とか書いて無い。」
神田 「それが、文章が壊れてよくわからんのや。」
委員長「”壊れててわからない”?」
神田 「歯抜けのような文章になっとるんや。ところどころ文字が消えとる。
もしかすると抜けた部分には何か重要な事が書かれていたのかも知れないが。」
豪 「単にデータが壊れただけでは?」
神田 「う~~~~ん。そやけどな。
それ、まるっきり誰に出そうとした物か本当に思い出せんのや。
壊れた部分に何を書いたかもまったく思い出せへんし。」
委員長「それ、単に忘れているだけじゃないの?」
神田 「そんな事あらへんで!!
”ラブレター”って言えば、俺にとっては大切なものや。そこに書いた内容を忘れる事はない。」
委員長「じゃあ、ホントに文章が壊れているの?」
委員長は試しに自分の携帯を開いた。神田はそれを覗き込もうとした。
委員長は慌てて画面を隠す。
神田 「なんや?!」
委員長「もうーー!!女の子の携帯をのぞき込むんじゃない!」
委員長は自分の携帯のメールを開いて見た。差出人の名前が空白になっている物が多くあった。
中を開けるとメールの文章の一部が壊れていた。
誰かの名前。何かの名称。文章の一部。相手のメールアドレス。連絡先。
それらが部分的に欠落して無くなっていた。
委員長は背筋が寒くなった。
神田 「どうしたんや?委員長!顔色が変わったで。」
委員長「……私のメールも壊れているわ………。」
神田 「なんやて?!!メールが壊れてるのかいな?」
委員長はうなずいた。
神田 「見せてみい!」
神田は当たり前のように委員長から携帯電話をもぎ取った。
委員長「……。」
委員長は恐怖の為か、今は別に神田にメールを見られても平気だった。
委員長が嫌がっていないので、豪もその画面を覗き込んだ。
神田 「差出人の空白が多いな。中身も文章が壊れとるで。
このメールは一体誰からや?」
委員長「さあ?」
委員長はさっぱり見当がつかないので首をかしげた。
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.57] 280
豪も自分の携帯を出してみた。
すると、委員長のメールと同じように、自分のメールも所々壊れていたのだ。
豪 「不思議ですね。この空白はなんでしょうか?」
通話記録の中に部分的に壊れて空白になった箇所があった。
神田も自分の携帯のメール画面を開いて見せた。
神田 「こっちにもあるで。同じや!」
神田は酷く驚いた表情をしていた。
神田 「なんやろうな?なにか重要なメールだったのは確かや。」
豪 「僕の所に来た中にもそのようなメールがあります。
差出人の名前が空白です。誰から来たのかまったく見当もつかない。
それは長文で………、非常に固い文章で書かれています。何かお役所か学校の教育委員会から来たような感じの文章です。」
神田 「誰から来たか見当もつかんのかいな?秀才の豪ともあろうお方が!」
豪 「ええ。えらく大人びた文章なんです。
その中に不思議な文章があるんです。それはこんな文章です。
”もし万が一、緊急な事態に陥り、歴史が変わってしまったら、故意に歴史を変える努力をせよ。そうすれば連鎖作用により、歴史は元の流れに戻るかも知れない。”」
委員長「”歴史”?”元の流れ”?……。いったいどういう意味かしら?」
神田 「なにかの宣伝メールが来てたんじゃないの?それが壊れただけかも。よくある事や。
やっぱりそれはスパムメールに違いない!」
豪 「でも、同じような文章が数通来てます。
”時間軸が多少変更されていてもいずれ自然に元に戻る。
しかし大きく変更された場合、そこに”別の世界、別の歴史”が存在するだろう。”
何の事かさっぱり……………。」
委員長「いったいどういう意味かしら……?」
神田 「いたずらに決まってるやん!豪、誰かにメルアド教えた?
ほら、
”これは不幸のメールです。これを受け取ったら5人の人間に送信しないと、貴方に不幸が訪れます!”
とかいうメール着た事ないか?」
委員長は自分の携帯の中のメールをいろいろ表示させて見たが……。
自分のメールの中にも、
===================================================================
もし万が一、緊急な事態に陥り、歴史が変わってしまったら、故意に歴史を変える努力をせよ。そうすれば連鎖作用により、歴史は元の流れに戻るかも知れない。
===================================================================
と書かれたものを発見した。
委員長「私にも同じメールが着てた!」
そこには今豪が言った内容と同じメールが来ていたのだ。しかも差出人は空白になっていた。
相手のメルアドも壊れててわからない。
委員長は背筋が寒くなった。
そこで、神田も自分の携帯の中を探ってみた。
神田 「あっ、俺の所にも同じ物が着てる!」
===================================================================
もし万が一、緊急な事態に陥り、歴史が変わってしまったら、故意に歴史を変える努力をせよ。そうすれば連鎖作用により、歴史は元の流れに戻るかも知れない。
===================================================================
3人ともしばし言葉を失った。神田は携帯を握りしめて油汗をかいていた。
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.58] 281
しばらくして豪が口を開いた。
豪 「そういえば……、日中の過ごし方に変化はありませんか?特に休日。
どうやって今まで時間を使っていたのかと不思議に思う事が多いんです。」
神田 「日中?いつも宿題に追われてるんじゃないの?」
委員長「課題なんてすぐに終るじゃない!問題はその後よ!」
神田 「すぐに終われへんで。俺の場合は。
なあ、委員長、ものは相談やけど………、数学の宿題、ちょっと見せてえや。もう終ったんやろ?」
委員長「……………………。」
いつものごとく話がそれ始めた。
委員長「クラスの委員長として不正を取り締まる立場にいる私が……。
人にノートを見せるなんて!」
神田 「なあ、頼むで!いいやないか?!困っている者を見捨てるのかいな?
困っている者を助けるのも”学級委員長”の務めやで!」
委員長「課題は自分でしないと意味がありません。」
神田 「自分でしないとは言ってない!参考までに見せてもらうだけや!そんなに冷たいんか?委員長は?!」
委員長「あきれた…………。」
神田の態度の急変に呆れる委員長。
委員長「このままじゃ話が進まないから見せてあげます。でも”参考”だけですよ。」
神田は両手てかしわ手を打った。
神田 「やったーーー!さすが委員長や!おやさしい!」
委員長「ふう。」
大いに疲れる委員長。とにかく神田がいると話がちゃんと前に進まない。
豪が飲み物の追加注文をして、皆の分を運んで来た。
委員長「ありがと。食後は温かい紅茶が最高ね。」
委員長は豪が持って来てくれた紅茶がえらく気に入ったようだ。
神田は冷たいコーラーを飲みながら、
神田「なんや委員長。”オナゴみたいな”言い方しおってからに。」
委員長「ピクッ!一応”オナゴ”です…………。」
いつものパターンで脱線し続ける話を豪が戻そうとした。
豪 「とにかく休日の使い方に引っかかる事があるんです。前は忙しかった印象があるのに、今は時間が余るんです。何をしてたんだろう?」
神田 「ゲームじゃないか?ほら、夢中になってたゲームを全てクリアした後、ポッカリ時間が開いた気分にならないか?」
豪 「僕は最近全然ゲームをしてませんが……。」
とにかく委員長らは答えが出ないので、ここで”お開き”にする事にした。
ここで顔を突き合わせていても、何もわからない。
3人はそのファーストフードのお店を出て、街を歩き始めた。
帰り道、ビル街の歩道を歩いていると……、
10階建ての小型のビルの真ん中の階辺りの窓からもうもうと黒煙が立ち上っていた。
炎も少しちらついていた。
神田 「火事やあ~~~~!!!」
それはまさしく火事だった。
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.59] 282
豪は急いで消防に連絡した。
委員長「あれは?」
屋上を指差す委員長。
屋上部分に停滞する煙の切れ目の中に人影のようなものが見えたのだ。
神田 「誰か逃げ遅れたんや!」
神田は目がいい。神田にも見えたようだ。やはり逃げ遅れた人物がいるのは確かだ。
委員長「助けに行かなきゃ!」
ビルの中腹部分を見ると……、煙と炎がガラス窓の向こうでうごめいているのが見えた。
神田 「無茶言うな!もう火が回ってるで!助けに行こうと思っても消防署員に止められる!
俺らシロウトに何が出来るんや?ここはプロに任せた方がええで。」
すると豪が、
豪「あれは”女の子”のようです。」
と言った。
神田 「へっ?」
神田も屋上に取り残された人物をよく見た。するとスカートのような物がはためくのが見えた。よく見ると委員長と同じ制服を着た女生徒のようだ。
神田 「大変や!助けに行かんと!!!」
がせん神田がはりきり始めた!
委員長「……。」
神田は勇敢にもそのビルの中へ飛び込んだ。
豪 「待って!神田さん!」
委員長 「あーーーーーー!!」
豪と委員長は身の危険を感じつつも、神田を放っておけないので追いかけた。
2人はビルの入り口から侵入した。
神田は走った。そして階段を駆け上がる。委員長と豪も必死で後を追いかける。
5階ぐらいまでは楽に登れた。
そこからは煙を避けて登った。まだ火の回っていない通路を見つけ、そこから上に上がった。
豪 「神田さん!注意してください!酸欠になりますよ!」
ようやく屋上までたどり着く神田。
屋上は煙に包まれていた。黒煙が立ち上り、視界が悪かった。
コンクリートは所々黒く焼け焦げていた。熱気もあった。
それでも神田はなんとか女子学生の所までたどり着いた。
神田 「大丈夫ですか?!」
その女子学生はすでにフラフラだった。
神田と豪がその女子学生の両側から肩を担いだ。
委員長は先にたって先導をした。全員で来た道を引き返した。
幸運にもそこはまだ火の回りが遅かった。
やっと1階に着き、ビルの外へ出る4人。
辺りには消防車が到着して、消防署員達が消火活動を始めていた。
消防署員の誘導で女子学生は救急車で病院に搬送される事になった。
こうして、委員長・神田・豪はその女の子を助ける事に成功した。
スポルティーファイブ 第7話 委員長の恋. [act.60] 283
後日3人は病院に入院したその女の子を見舞った。
病院に現れた3人に対して、女の子はややぎこちなさそうに頭を下げた。少々口数が少ない、おとなしい人のようだった。
神田 「すごい美少女やな!」
豪 「大丈夫ですか?」
女の子「ええ。」
それから少女は「ありがとうございました。」と言って、ぎこちなく頭を下げた。
委員長「お名前は?」
女の子「”神津アンナ”です。」
その名前を聞いたとたん3人の頭の中に何だかよくわからないが衝撃が走った。それは”感覚”とでも表現したらいいのであろうか?とにかく言葉では言い表せない何かを感じた。
委員長「アンナ……。」
豪 「どこかで聞いた事がある名です。どこでだったかな?」
神田 「はっ、はじめまして!!
俺……いや、僕は”神田司郎”って言います。これからよろしく!」
委員長「本当に”はじめまして”?」
初めてという気がしなかったので、委員長は思わずそう口走った。
その後アンナは退院した。
退院の日には委員長・神田・豪がまたアンナに会いに行った。
アンナはやはり同じ青葉ガーナ学園の生徒だった。
アンナはその学園の学生寮に入って来たと言った。これから学生寮で1人暮らしのようだ。
それなので今晩、委員長は自分の家に泊まる事を進めた。
この不思議な雰囲気を持つ少女と話がしたいと思ったのだ。
聞けばアンナは自分のクラスに編入予定だと言うでは無いか。
委員長「私が貴方が転校してくるクラスの”学級委員長”なの。」
おとなしそうな女の子ではあるが、次第にうちとけて話をするようになった。
委員長「初めて会ったっていう気がしないわ。」
アンナ「私もだわ。
私には予知夢を見れる能力があるから。
それで貴方とは……、以前夢の中で会っているわ。」
委員長「”予知夢”?」
アンナ「そう、未来の出来事が、ホンのわずかだけど見る事が出来るの。夢の中で。」
委員長「そう。」
アンナ「貴方にもその能力がある筈だわ……。」
不思議な事を言う少女だと、委員長は思った。
アンナの神秘的な表情で言われると、それが一段と超自然的な事のように思えて来るのだ。それで”予知夢”というもの対して委員長は気になって仕方がなくなった。
そして………、委員長とアンナの2人は共に眠りについた。
委員長はその夜、夢を見た……………。
そこには1人の青年が出て来た。
とても親切そうで、委員長に対しても丁寧な接し方だった。
顔は………、はっきりわからなかった。
彼は近く委員長のいるクラスに編入して来ると言った。
とたんに委員長は嬉しくなった。その青年を気に入ったからだ。
青年とはまだあまり話はしていない。だが、委員長にはその青年が真面目で正義感の強い人間に思えたのだ。
委員長「彼と毎日会える。」
なんだか毎日が楽しくなって来た。
ポッカリと開いていた時間的空白が埋められるような気がした。
そう考えると………、以前、恋とでもいえるような物がその空白を埋めていたような気がしてきた。
誰かに恋していた。
それが無くなった。
委員長はそう感じた。
委員長「恋か……。でも、いったい誰に恋していたんだろう……?」
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