地上12,000mmの沃地

地上12,000mmの沃地

空歪みの塔 TURQUOISE(ブドウっ葉編)



水に入るのは影に入ってゆくようだった。

ひんやり心地よい。shadow blue。

ターコイズ、その色に呼び覚まされるように、石段を下る歩みごとに
ネイティブアメリカンのメディスンマンに私の姿は変わっていた。

翼が息を吹き返した。
白蝋のもったりした作りモノようだった翼が、急に透き通った精気を帯びた。
自ら翼を動かし、丸く畳んで安心して眠り始めた。
滋養の夢。
冬眠する小動物の様でいとおしい。ほっとする。

扉の前についた。
古い土塗りの壁に、やはり古くくすんでしまった扉。
一面にトルコ石の象眼。

左手を、手のひらを扉に向け、目の位置でかざす。
扉の向こうから風の音が聞こえてくる。

さあ、扉が開かれる。

;*;*;*;*;

激しい音と伴って扉が開く。

power sky

勢いよく開かれた扉の向こう。

Turquoise blue の 空。

あまりの風圧に思わず目をかばいながら、一歩。

途端に足をすくい上げられ、逆さまに上へ巻き上げられて行く。
逆錐揉み。
ふっと風が止んだと思ったら、今度は頭から真っ逆さまに下へ。

bleu acide の 明るい海。 

このまま落ちてしまおうか? そんな気持ちになる。

墜落。

衝撃は思っていた以上に軽くって、ジェットバスのエアーに頭から
包まれたような、炭酸水の泡の中に突っ込んだような感じだった。





気が付くと白っぽい海底を漂っていた。


…? 街、、、だろうか? 誰もいないのだろうか?

薄青く映る路、白壁、家並み。
上方はるかにキラキラ輝くのが太陽なんだろう。

これでも水中なんだろうか? 大気が濃くなるとこんな風かもしれない。
しかし、生き物の気配がしない…塵ひとつ、草の一本も無い白い路。
ただ「廃墟」というより、むしろ砂漠のような印象だ。
なぜ何もいないのか? ここでは何も生まれず育たないのか?

長老(首長?)と思しき人物が現れた。  片膝を付き、礼をつくす。

キラキラ輝く結晶を全て、サロメの残した見事なショールを差し出して請う。
「ここは、何処ですか?」

この国の始まりから終わるまでを聞く。

水に沈んだ街の悲しみ。

かつて此の地が地上にあった頃、地の滋養の全てを使い尽くし
結果、国土を人びとは捨てたのだそうだ。
あとに何一つ育たない広大な市街地がとり残され、、、、、
母なる海に土地が帰った今も、構造物は還らずにあって
何も芽生えないのだと。

白い砂は一~二ミリ位のまるで骨切片だ。
つまみ上げた指からサラサラこぼれ落ちる。
これは安定した物質だけど、これだけではね。。。。何も生きられない。


キラキラの結晶が、いつの間にか何かの種子になっている。
巻き貝状の団塊だ。
ああ、この国に土地に持ち込まれた久し振りの種(生命)と滋養なんだ。

広場の真ん中を浅く掘り、私自身の一部と共にそれを植えてみる。



ぼんやりとしていた何かが集まり。
きゅうぅっ…と引き絞られー…・・・・焦点を結ぶ。
放たれる!
地響き。

芽吹きだ。

はじまった。

緑の奔流が広場から真っ直ぐに湧きあがり、天へ昇る。
大地が力を取り戻す時が来たのだ。

差し伸べられた枝に飛びつく。

みるみる遠くなる白い街。
海底の美しい廃墟。死せる都。
本当の眠りにつく。。。。還る。

長老にお礼も言えなかった。もう何処にいらっしゃるか分からない。
ふとみる私の手に彼女のショールと。
それと短剣。
あの方が持たせて下さった。
目蓋が熱くなる。

もう海面はすぐ。



空中へ踊り出た緑の竜巻。

上空にロイヤルブルーの扉が現れる。

天空へ、植物達の勢いは増すばかりだ。

扉をかすめる瞬間を狙って蹴破り、中へ飛び込んだ。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: