わんこでちゅ

あの川のむこうは6







カークは話すのをやめて、最後の一匹の仔犬に聞いた。

「もう話せる思い出がないけど、どうしよう、、。」

仔犬はなにもこたえずに、前足をちゅくちゅくしゃぶっていた。

「ここではお腹はすかないよね。寂しくもならないよね。なのにどうして前足をしゃぶっているの?」

仔犬はそれでもなにも答えなかった。カークは困り果てた。すると目の前にふっと、しゃれたジャンパーをきたマーフィーがあらわれた。

「やぁ!カーク、困っているね。この子にはまだお話がたりないんだよ。」

「えっ、あんなに長い間しゃべり続けたのに、まだたりないの。」

「たりないというより、お話が理解できないんだ。この子は産まれてすぐに、人間にいらないからと捨てられた子なんだ。そんな子にどんなにやさしい飼い主の話をしてもわからないだろう。むこうにいたときの思い出は、ひもじくて、寂しくてたまらずおしゃぶりしていたことだけだったんだから、、、。」

「そうか、、、僕もそろそろ行きたいとおもったけど、、、。じゃあ一緒にいこう。」

カークは仔犬のおしゃぶりしていないほうの前足を、しっかりとにぎりしめた。

「助けてくれてありがとう。ところでマーフィー、ステキなジャンパーをきているね。ここは暑くも寒くもないのに、どうしたことだい?」

マーフィーはジャンパーの胸の部分をつまみあげると、自慢するような嬉しそうな声で答えた。

「これは  思い  というジャンパーさ。寒いから着るんじゃないんだ。人間のお母さんの  思い  がたまに形になって届くのできているんだ。」

「そうか、だから似合っているんだね。」

マーフィーは照れくさそうな笑顔をカークに向けた。

カークはマーフィーと別れを告げると、仔犬の前足をがっちり握って、再び歩きだした。

「そうだ、君の名前をきいていなかったね。なんていうんだい?」

「、、、、。」

そう尋ねても返事はなかった。

「名前もつけてもらえなかったのかい?名前なし、ななし、ん~~、、ナンシーっていう名前はどうだろう。それでいいかな?」

それでも仔犬は何も答えずに、ただ視点の定まらない目をして、前足をしゃぶってばかりいた。

「僕が勝手にナンシーと呼ぶよ。いいだろう。許しておくれね。」

douwa6


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本童話の著作権は ちゃにさん もちぽ1980 さんにありますので、絵、文ともに他での使用を禁じます。文章アップ2004.3挿絵アップ2005.4














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たいせつなものをなくしたら、、泣いてもいいよ。思いはとどくから、、


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