「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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りおたんびより
いよいよ出産
日曜が終わり、0時を過ぎた。
寝たいという気持ちはまったくなかったものの、心配してくれながらもテレビを見ている夫にいらいらしたので布団で寝ることにした。
「痛みが我慢できないくらいになったら病院に連絡して、起こすからお願い。」
といっておいた。
そのころにははっきり痛さが変わっていた。
(これが陣痛なんだな。)と思えるようになっていた。
ひとり不安と戦いながらも
(あした、8時ごろまでもつかなぁ…今行ったら時間外で余計お金がかかるから、なんとかがんばろう!)
なんて思っていた。
2時半を過ぎ、痛みがどんどん強くなっていた。
生理痛と下痢が一緒になったような痛みに加えて、“キューッ”て絞られるような痛み。間隔も7分くらい。
いろいろなことが頭をよぎった。
「病院まで間に合わなくて車の中で出産した。」
「痛みに鈍感で、まだ大丈夫だと思っていたら、トイレで頭が出てきてしまった。」
など。
病院に間に合わなかったら、この夫はまったくもって頼りにはならない。
そんなことにでもなったら大変だから、とりあえず病院に連絡して指示を仰ごう。。。
病院に連絡したら、「初産婦さんだから、明日でも大丈夫だとは思いますが、不安な様なら一応入院の荷物を持って来てください。」
着替えをし、荷物を準備して別の部屋でテレビを見ていた夫に
「痛いんだよ~病院行く。」
キョトン… 「行くの?」
大慌てで車に乗り込んだ。5分間隔くらいで陣痛の波がやってくるものの、その痛みは耐えられるくらいのものだった。
私が通院していた産科は総合病院で、分娩室はおろか陣痛室も、家族でも入室できない。
普段でも水分補給を多くするので、喉の渇きが心配だ。甘えられる人はいない。
私:「途中、コンビニに寄って。」
夫:「こんなときに何を言ってるの?」
私:「お茶を買うから。」
夫:「そんな場合じゃないでしょう。」
私:「陣痛は長くかかるから喉が渇くの!いいから寄って。」
かなりイライラしました。
病院に到着し、深夜3時だったので、救急入り口から入り病棟へ。
すぐに看護士さんが子宮口を確認し、
「陣痛が6分おきにきてるし、4センチ開いてるし、だいぶ卵膜も柔らかくなってきてるからこのまま入院しましょうね。」
待合室で待っていた夫から荷物を受け取り、(←こんな時にも夫は深夜にもかかわらずTVをつけて見ていた)
看護士さんが荷物を持ってくれ、陣痛室に向かった。
前開きの手術着みたいのに着替えて、ベットに腰をかけて次の指示を待った。
この時はもう不安はなく、ただただ痛みに途方にくれていた。やっと痛みがおさまっても 必ずまたあの痛みがやってくるのだ。
脈を取り、陣痛の開始時間等の質問に答える。
「今日排便はありましたか?」
「はい。ちょっと固めで量も少なかったです。」
「昨日、今日と出てれば浣腸の必要はないとは思うけど、すっきりしたいならやろうか。」
「是非、お願いします!」
できれば10分、無理でも5分くらいはがんばってね、
っていわれたけど、薬が入った瞬間にとびあがってすぐ横にあるトイレに走りました。
薬だけ流れ出る。。。
「ごめんなさぁ~い 我慢できなかったよー」
優しい笑顔で
「いいのいいの。はじめてじゃしょうがない。がんばったね!」
天使に見えました。
それからはベットに横になり、機械をつけてチェック。
「今日中には産もうね。たぶん大丈夫だと思う。」
私はショックを受けた。
今日はまだ始まったばかりなのに もしかしたら明日になる可能性があるってこと?こんなに痛いのに?
あと2~3時間くらいじゃないの~。。。。
「何かあったら呼んでくださいね。」
カーテンを閉め、看護士さんは行ってしまった。
自分ひとり、痛みと向き合うしかない
ここで覚悟を決めた!
しばらくして別の妊婦さんも陣痛室にきた。
『ウーン』
かなり辛そうだ。
看護婦さんたちもバタバタと動いている。
「子宮口4センチ開いてるよ。」
同じくらいの進み具合だ。
一緒にがんばってるんだ、と思い勇気が出た。
ところが、
看護婦さんが次にその妊婦さんのところに行ったとき
「分娩室に行きましょう。」
と言っているではないか… はッッ早い!!
カーテンの隙間から辛そうに移動する姿が見える。
まったく知らないひとだけれど、他人とは思えない。
(がんばれー!もうひとふんばりだね!)
しばらくして子猫のようなかわいい産声が聞こえた。
胸がこみあげてきた。赤ちゃんは力いっぱい大きく泣いている。
さっきあのひとのお腹にいた赤ちゃんは今、外の世界に出てきた。
私も何時間かあとには 赤ちゃんを胸に抱くときが来るんだ。
2時間くらい経っただろうか。さっきとは別の看護士さんがきて
「どうですか~」
だいぶ若く、かわいい、しっかりした感じの人だ。
ひとしきりモニターを見て、脈・熱を測り、
「助産師の ○○です。 △△さんのお産が順調に進むように精一杯手助けしていきます!今はとっても辛いだろうけど、一緒にがんばりましょう。」
とても心強かった。張り詰めていた緊張はほぐれ、まだまだ大丈夫だって思えた。
朝の入れ替えだろう、看護士さんたちの顔ぶれがかわり、人数も増えた。
気軽に声をかけてくれる。
婦長さんらしき人に、「さっきの人、早かったですね。羨ましい。」
と言ったところ
「あのひとはずっと切迫で入院して辛い思いをしたから きっとごほうびなんだね元気な女の子だったよ。」
納得。
時計を見ると11時ちょっと前だった。
入院して8時間も経ったんだ あっという間だな。
朝はなんとかロールサンドを1つ食べた。
昼は食べられそうもない。。。
お腹はすいているんだけど、体勢を変えると痛みが増す。
助産師さんが子宮口の確認にきた。
陣痛がきているときに確認するため、かなり辛い。
「おしるしですよ。いま6センチくらいですね。どんどん痛くなってくるから呼吸を整えて次の陣痛に立ち向かいましょう。」
このときの痛みは相当なもの。
これ以上の痛みはあるか!って思っていたのがまだ6センチだったことに驚いた。
中学の頃の先生の口癖、「これがおまえの能力の限界か。」って言葉を思い出す。
先生が言うには、限界だと思っていてもまだ余力は残っているものだから、まだまだ頑張れるはずだ、というもの。
助産師さんの『ヒー フー』の呼吸の誘導で痛みが和らぎ、
まだまだがんばれるぞ!と新たな勇気が湧いた。
しばらくすると痛みの感覚が変わってきた。
今までは あお向けで歯をくいしばってベットの手すりにしがみついていたが
痛みが来るたびに声が漏れる。
とにかく腰が痛く、赤ちゃんの頭が私の骨盤を押し広げているのがわかる。
いきみも出てきた。お尻の穴から何か出てきそうな嫌な感じ。
またまた助産師さんの誘導で体を横に向け
ヒッヒッフーの呼吸に切り替えた。
彼女は呼吸に合わせてお尻の穴あたりを押さえていてくれる。
だいぶ楽にはなるが、それでもくじけそうだ。
「辛いだろうけど 充分には体が準備できてないからまだいきまないでね。
ここまでくればあともうちょっと!赤ちゃんも今、死ぬ覚悟でがんばっているからおかあさんも赤ちゃんの手助けをしてあげようね。」
そのとき陣痛の間隔は40秒くらい。
痛みが去るたびにうとうととして、夢をみる。
はっと起きると陣痛がきて我に返るというのを延々と繰り返していたが、
助産師さんの“赤ちゃんも死ぬ覚悟で頑張っている”という言葉が胸にささり、
集中して呼吸を続けるようにした。
「もうそろそろだね!」
担当の先生が子宮口を確認。 9センチ!!!
「分娩の準備をしてくるからね。」
待ちに待った分娩室。
準備の時間がやけに長く感じられた。
最後の子宮口の確認ではもう、本~当~に辛かった。
「す~い~ま~せ~ん。。。。力が入っちゃいます。。。。」
うまくいきみ逃しができなくて 情けないことにいきんでしまうのだ。
「全開大。分娩室に移動しましょうね。」
猛烈な痛みながらもそそくさと移動。ずっと枕もとに置いてあったたくさんのお守りが包まれたタオルを忘れ、途中、ひきかえして取りに戻った。余裕はないけど、分娩室に行ける喜びは大きかった。
これでやっといきめる!ずーっと力いっぱいいきむことを夢見てたのだ。夢が今叶う☆
分娩室に入って、分娩台にあがってからは非常に冷静だった。
たくさんの看護士さんたちに見守られていた。
最初の陣痛でコツを教えてもらい、次の陣痛でいよいよ力いっぱいいきむ。
『気持ちいい~!!!!!』と思った。
陣痛の痛みも全然気にならない。
なかなか上手にできたと思う。
赤ちゃんに酸素を送るために、息を整えながらもしっかりと呼吸をする。
温かい言葉をいただき、いきむコツを教えてもらう。
・腰の横についた手すりのようなものを押すような感じで。
・目はしっかりと開く。
・唇までしっかり閉じる。
しっかりと頭にたたきこんで次の陣痛が来る。
鼻から大きく息をすって、口からゆっくり吐く。
また大きくすって、
止めて
『ヴ~~ン』力いっぱいいきむ。
やっぱり気持ちいい。
この時、腹筋よりも背筋を使う。
「上手!上手!赤ちゃんの髪の毛が見えましたよー。」
俄然、やる気が出てきた。
もうこうなったら 赤ちゃんどうのこうのの問題じゃなく、はやく出してすっきりしたい。
なぜか有効な陣痛がこなくなってしまった。
やってくる陣痛は先ほどに比べて痛くないものばかり。
助産師さんの指示で自分の乳首をつまむ。
来た来た来た~!
3回め、自分の全力をふりしぼり、上手に長くいきめた。
その際、会陰を切開してるのがわかったが、痛みも怖さもない。
「頭が出ましたよ~。」
うれしい!あとっちょっとだ!
次の陣痛でいきむことができた。
自分では感覚がわからないので助産師さんの顔を見る。
助産師さんは笑顔で私の下半身の方に視線を向けていたが
顔をあげて
「全身がでたよ。」
の言葉と同時に、先ほど陣痛室で聞いたのと同じ声が聞こえた。
フギャ フギャ フギャ
「おめでとう!女の子ですよ。赤ちゃんもお母さんもよくがんばったね!」
分娩室に優しい笑顔があふれた。
安堵のため息が出て、すぐ横で体を洗ってもらっている赤黒い赤ちゃんを見た。
「2,868グラムありましたよ。よかったね。」
この時はもう陣痛の痛みから開放された喜びが大きく、
自分が赤ちゃんを産んだという実感はなかった。
達成感のみ。
後産の感覚はわからなかった。
助産師さんだお腹のあちこちをおしていると、にゅるっとしたものが出るのがわかったが、たぶんそれが胎盤だったんじゃないかな…
先生が切開のあとを縫合しているあいだ、はだかの赤ちゃんを胸の上に抱っこした。
「出産直後のお母さんの体はとっても温かくて、体温調整できない赤ちゃんにとってはちょうどいいの。うまいことできてるよね。」
カンガルーケアというそう。
産まれたての我が子は 小さくて しわしわしていて 頼りなげで
とってもいとおしかった。
「是非、初乳を飲ませてあげてね。」
と助産師さんが乳首をつまむと、黄色い母乳がほんの少しだけ出た。
赤ちゃんの位置を調整し、口もとに乳首を持っていった。
まだ産まれて5分もたっていないのに ちゃんと吸った。
口をもぐもぐした。
「ちゃんと飲んでるねー。いい子だねー。」
私以上に助産師さんはうれしそうだ。
縫合が終わり、出産のすべてが完了。
目が冴えていて、このまますぐ歩けそうな気がするほど元気。
2時間ほど喜びをかみしめていたら助産師さんが様子を見に来た。
「元気そうですね。」
赤ちゃんを連れてきてくれた。今度は洋服にくるまり眠っている。
あぁ私は本当に赤ちゃんを産んだんだ!
無事に産まれてきてくれたことがうれしかった。
「○○さん、どうもありがとうございました。
励ましてくれたおかげでがんばれました。」
こういうと
「私は何もしてません。こちらこそすばらしい瞬間に立ち合わせてもらってありがとう。」
なんといういい人!本当にこの人でよかった。
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