あんしーず的房間

あんしーず的房間

中国における酒



 とにかく乾杯が多い。日本であれば開始時に一度乾杯するだけであるが、中国では90分間の宴会中(正式な宴会は基本的に1時間半)ひたすら乾杯する。「あなたの健康のために」「日中友好のために」「両国の発展及び協力関係の前途を祝して」乾杯の理由はとりあえずめでたい内容ならなんでもいい。

 そして乾杯というのはその名のとおり「杯を乾かす」つまり一気に飲み干すのである。飲む酒がまた強烈なのでかなり気をつけなければならない。

 現在宴席で一般的に飲まれる酒の種類は「ビール」「紅酒(赤ワイン)」「干白(白ワイン)」「黄酒(紹興酒)」「白酒(焼酎)」である。

 浙江省は紹興酒の本場であるので質のいい、美味しい紹興酒を飲むことができるが、宴会も半ばになると味などわからなくなる。中国人は『無理にでもたくさん酒を飲ませるのは好き』であるが『酔っ払いは見苦しい』ものとして軽蔑される。だからどんなに強い酒をたくさん飲んでも決して酔い潰れてはならない。自らの信用にかかわってくる。どんなに飲んでも楽しく冷静に談笑できなければならない。とはいっても紹興酒であろうとビールであろうと酒の種類を問わず一気飲みの嵐は疲れる。ワインまで一気飲みするのには仰天した。

 紹興酒は3年もの、5年もの、8年もの、12年ものなどがあり、一般的に古いほど味も値段もよい。時に30年もの、50年ものという紹興酒にもお目にかかるがこれに至っては、味云々ではなく希少価値としてのもてなしとして捉えたほうが分かりやすいだろう。50年物を飲んだ方に感想を聞いたところ「なんか酸っぱかったな」だった。それってもう酸化しているんじゃないだろうか・・・。

 中国を代表する文豪魯迅と紹興酒の故郷、紹興市では昔は女の子が生まれると紹興酒を甕一杯に作り娘の嫁入りの披露宴の席で振舞ったという伝統があったそうだが「最近では晩婚化が進んで、嫁入りを待っていたら酒の味が落ちてしまいます。やはり12年ものぐらいが一番美味しいですね」と地元の方が笑いながらおっしゃっていた。

 また白酒(バイジゥ)の中にもランクがあって、最高級に位置する五梁液や芧台酒(マオタイ)はアルコール度数も高ければ値段も高い。宴会の格を上げるという。栓が抜かれる時は部屋の電気を消して皿の上に注いだ白酒にライターで火をつけ炎を鑑賞するというデモンストレーションまで時にはあったりする。つまり火がつくほど強い酒を今から飲みますよーということである。部屋の電気が突然消えると「ああ、やっぱりくるんだな」とため息が出たものだ。

 白酒は、お猪口のような小さなグラスで飲むが、いいものになるとアルコール度数が50度前後と高いので気をつけないと酔ってしまう。酔わないこつは、飲んだら必ずミネラルウォーターをチェイサー代わりにたっぷり飲むことと、あとは気合いのみ。それから自分の白酒における酒量を知っておくことも重要である。

 アルコール度数56度という白酒を生まれて初めて飲んだ時は「死ぬかもしれない・・・。」と冷汗が出たが、人間気合を入れていれば意外と死なないし倒れないしふらつかないものである。これを昔の日本人は武士道と言ったのだろうか。自分でくの字型に腹まで切れた人達だし。乃木大将なんて切って出てきた内臓を自分でお腹の中に戻して軍服のボタンを上まできちんと留めてから絶命したっていうし、などということにまで思いを馳せることができるのが中国の白酒のすごいところだろう。

 しかし、中国式の宴会に慣れず、勧められるままに勢いで飲みすぎ、結果として足を取られている日本人のおじさまは結構多い。

 日本で「中国の宴席におけるマナー」というのを読んだ時は「お酒が強くない人は最初から一滴も飲まないようにしましょう。アレルギーのためアルコールは一切飲めませんと言ってソフトドリンクを飲むようにすれば乗り切れます。ただし、一杯でも飲むとだめです」と書いてあった。これは良いと、風邪をひいて体調が悪い時にそう言って試してみたが「いや、お前は飲めそうな顔をしている」と一笑に付され、えらい目にあった。飲めそうな顔って一体どんな顔なのだろう?



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