縄文杉へ

朝4時。目覚ましが鳴りました。
縄文杉に会える!そう思うと眠気もふっとびます。

起きて、昨夜作っておいたおむすびを取りにダイニングに行くと
おむすびの隣に、瓜生巻き、チョコレート
それにテツママが東京から取り寄せたパンが並べてありました。
テツママのお心遣い・・・うるうるダ~リンと感動していると
そこにボワ~ッと人影が。
出た~、幽霊・・・かと思いきや、それはテツママ。

「置いといたの、わかったか~。がんばってきいや。」
寝巻き姿、髪ボサボサのテツママのガッツポーズに送り出され
ファイト満々!
予定通り、朝4時半、まだ星の瞬く暗い中、別荘を出発しました。

縄文杉までの道は険しさはいろいろな人から聞かされていました。
往復9時間、21.4キロの行程。
「ちょっとやそっとじゃ行けんで~。」テツママもそう言っていました。
私よりずっと若い同僚も「地面ばかり見て登った」と言っていました。
毎日ジョギングをしているダ~リンはともかく
日頃から大した運動もしていないこの私が果たしてそこまで到達できるのか
「これは自分との闘いだ、真剣勝負だ!」と自分に言い聞かせ
己を奮い立たせました。
車の中で無の境地で精神統一する私。戦場に向かう武士の心境。

が、これがいけませんでした。
気がつくと、あれ?
きのう純子さんご夫妻をお見送りした宮の浦港まで来てしまっていました。
まだ外が暗かったので、途中で標識を見落としてしまったのでした。
往復のロスタイム1時間。

ああ、バカバカバカ、すっかり取り乱して今来た道を戻っていたら
オ~ノ~!今度はガソリンがなくなる赤いランプが点滅し始めました。
点滅してからもかなりの距離は走れるはずだけれど
きょう行くのは山の上。携帯も繋がらない所です。
もしも、の時を考えると、このまま走り続けるのは危険。
仕方なく、ガソリンスタンドが開くのを待つことにしました。
時間は6時前。計画ではもう登山道の入り口に到着している時間です。

車の中に漂う険悪なムード。
登山の途中で食べるはずだったおむすびを車の中でひとつ食べ
ダ~リンはシートを倒して寝てしまいました。
せっかく早起きしたのに、縄文杉がだんだん遠くに行ってしまう気がして
情けなくて悲しくて私は泣きました。

8時前、やっとガソリンスタンドが開いて
登山口に到着したのは8時40分。
駐車場にはすでに車がいっぱいとまっています。
ガイドブックには「縄文杉コースは遅くとも7時には出発すること」とあり
今からでは絶望的。
「この際、途中までの行程を楽しもう。」というダ~リンの言葉にしぶしぶ頷きつつも
まだ諦め切れない思いで
人っ子一人いないトロッコ道を急ぎ足で歩き始めました。

トロッコ道


手すりのない橋もあり、下を見ると足が竦みます。

トロッコ橋

トロッコ道の両側、素晴らしい世界が広がっています。
樹齢千年を越える屋久杉、その杉に宿る苔や様々な植物、清らかな渓流
そして、ところどころでまた猿や鹿が姿を現します。
じいっと立ち止まっていたい気分でしたが、とにかく急ぎました。

1時間半くらい歩いたところで、先方に初めて人影が見えました。
追いついてみると、大きなリュックを背負った外国人青年2人組。
なんと、オーストラリア、メルボルン出身、今は広島在住という2人でした。
こんな所でダ~リンと同郷の人と会うなんて。
2人は今晩は縄文杉の近くの小屋に泊まり、あす下山するとのことでした。

その2人を追い越し、だんだん険しくなってゆく道をズンズン登ってゆくと
今度は下山中の若者のグループに会いました。
朝、5時半に登山口を出発したとのこと。
「ここから2時間くらいですよ。だいじょうぶですよ。がんばって下さい。」
その言葉に励まされて、よ~し!ファイトが漲って来ました。

樹齢2000年の巨大な切り株、ウィルソン株の近くでひと休み。
瓜生巻きのおいしかったこと!

それからも下山グループに挨拶を交わしながら、ズンズン登り続けました。
そして、ついに登山中の一行に追いつきました。
ガイドさんを雇ったオバサマグループ。
荷物はみんなガイドさんに持ってもらって、休み休み歩いているようです。
その先に今から向かうグループがいくつか見えました。
どうにか追いついたようです。急に心が明るくなりました。

ホ~ッとした途端に急に道が険しく思え始めました。
今までは必死で、きつい、とか苦しいとか感じる暇もなかったのです。
ロープにつかまりながら岩をよじ登ったり
張り出した木の根をうんとこしょ、っと乗り越えたりしながら
ハアハア息を切らせ、最後の階段を登りきると・・・

天に向かい、枝を四方にしっかりと伸ばし、堂々立っていました。
荘厳な姿の縄文杉。樹齢7200年。

縄文杉

この木の前で悠々と流れた気の遠くなるような時間
それを思うと、今いる自分が本当にちっぽけなちっぽけな
大きな力に生かされている存在であることを感じます。
心が揺さぶられて、何だか泣けてきそうでした。

時間を見ると、1時半。
5時間弱でここまで来ることができたのでした。
もう会えないと思っていただけに、感動もひとしお。
この日のことは一生忘れないよね、とダ~リンと話しました。

帰りはゆっくりと来た道を戻りました。
焦らずに歩くと、不思議な気が漂っているのが感じられる場所があります。
きっと木霊がいるのでしょう。本当にもののけの森です。

苔むす森

別荘に帰り着いたのは7時くらいでした。
私たちが火事場の○○力で縄文杉に必死に向かっている頃
別荘では大変なことが起きていました。







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