★★境界型人格障害について★★ 人格障害というのは、人それぞれの人となりをつくり上げている人格の構造が病理的であることを さします。ドイツ精神医学でいう「精神病質」と同じことなのですが、精神病質というと先天性の障 害があったり、治療不能というイメージが強いために、最近はアメリカ流に「人格障害」という言葉 を使うようになりました。 人格障害の起こる頻度はけっしてまれなものではなく、軽い人格障害はおそらく10人の1人以上あ ると思われます。境界型人格障害もその一つのパターンで、最近急激に増加する傾向にあります。 境界型人格障害(Borderline Personality Disorder)は精神的な発達段階で、自分の人生の目標 や価値観を見いだすことができないままに経過し、情緒不安定で衝動的な行動をとりやすい人格特徴 を持っている人格異常のことです。この人格異常は、同様の傾向を持った母親に育てられることで生 じやすいともいわれています。 また、自分が見捨てられるという恐怖と寂しさと抑うつ感情に支配され、怒り、抑うつ、無感動、 絶望、虚無感などの感情体験を繰り返します。しかも、衝動の自己コントロールがきかず、家庭内 暴力、過食、盗癖、浪費、アルコールや薬物依存、性的逸脱行為などを起こしやすく、その破壊衝 動が自己へ向かうと自殺企図になります。 この境界型人格障害の患者は、しばしば抑鬱的になるので、鬱病との見分けが重要になります。 また別の研究によると、境界型人格障害の人が精神疾患にかかった場合には、最も多いのは鬱病で あるということですから、両者には近縁性があるものと思われます。 DSM-4(アメリカ精神医学会による「精神障害の診断と統計の手引き」)では、境界型人格 障害の診断基準を以下のように定めています。 気分の不安定、対人関係の不安定、自己像の不安定さが基盤で、成人期早期に始まり、種々の状 況下で明らかになる。 以下のうち少なくとも5項目により示される。 1.過剰な理想化と過小評価との両極端を揺れ動く特徴を持つ、不安定ではげしい対人関係の様式。 2.衝動性で自己を傷つける可能性のある領域の少なくとも二つにわたるもの。たとえば浪費、 性的逸脱行為、物質(薬剤その他)乱用、万引き、無謀な運転、過食(5に示される自殺行 為や自傷行為を含まない)。 3.感情易変性。正常の気分から抑うつ、いらいら、または不安への著しい変動で、通常2~3 時間続くが、2~3日以上つづくことはめったにない。 4.不適切ではげしい怒り、または怒りの抑制ができないこと、たとえば、しばしばかんしゃく を起こす、いつも怒っている、けんかを繰り返す。 5.自殺のおどし、そぶり、自殺行為または自傷行為などの繰り返し。 6.自分の人生の目標を立てることができない、または以下の少なくとも二つ以上に関して決定 できないこと。自己像、性的行動の規範、長期的目標または職業選択、持つべき友人のタイ プ、持つべき価値観。 7.慢性的な虚無感、退屈の感情。 8.現実の、または想像上で見捨てられることを避けようとする異常な努力(5に示される自 殺行為や自傷行為を含まない)。 ~ 「うつ病と神経症」より 渡辺昌祐著 主婦の友社 ~
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