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blog開設当初より、こちらを利用していましたが、この度blogを引っ越しました。新しい転居先は、こちらです。名称は少しシンプルに、【観劇のカフェ】となります。今までありがとうございました。
2012.07.31
新国立オペラ『夕鶴』。作曲は團伊玖磨。日本の雪のしっとりたした情景が浮かぶ旋律、そこに“つう”を呼ぶ子供たちの唄う童謡が明るい陽射しのように射し込みます。機織りの音色の楽器の組み合わせが聴く人の想像力を誘い、見えない鶴の辛く哀しい心情まで映し出していました。物言わぬオペラの舞台で、最低限でいて最大の効果は舞台美術と照明です。再演ですが、まだ観たことのない演劇に携わる方々に観ていただきたいと思いました。既に日本オペラの代表作と言われているようですが、日本が誇る日本人のオペラですね。指揮・高関 健演出・栗山民也美術・堀尾幸男衣裳・植田いつ子照明・勝柴治朗※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場 オペラパレスにて)
2011.02.04
えびす組劇場見聞録第36号が出来上がりました。メンバー4人がそれぞれ選んだ作品と評をお楽しみください。こちらをクリックすると、「えびす組」のホームページに跳んで、お読みいただくことができます。「えびす組劇場見聞録」第36号は、下記の劇場に設置される予定です。(劇場への直接のお問い合わせはご遠慮下さい。)◆世田谷パブリックシアター◆シアタートラム◆相鉄本多劇場◆テアトルフォンテ◆シアターサンモール◆タイニイ・アリス◆駅前劇場◆こまばアゴラ劇場◆シアターX◆STスポット◆カメリアホール◆みどり会館◆シンフォニア岩国◆山口情報芸術センター◆文学座アトリエ◆北九州芸術劇場◆七ツ寺演劇情報センター◆山手ゲーテ座◆にしすがも創造舎◆シアターZOO◆横浜赤レンガ倉庫1号館◆急な坂スタジオ◆まつもと市民芸術館◆画廊Full Moon◆吉祥寺シアター◆川崎市アートセンター◆王子小劇場◆サイスタジオ◆d-倉庫◆アトリエS-pace◆アトリエセンティオ◆三鷹市芸術文化センター星のホール◆京都芸術センター◆BankART Studio NYK◆バサラブックス◆福山市民劇場 ◆神奈川芸術劇場◆水天宮ピット (順不同)「えびす組劇場見聞録」ホームページ掲載演劇作品一覧も、演劇に興味がありましたらご覧ください。過去に取り上げた作品を掲載しています。あとがきは、【2010年の一本】・・・愛情を込めて、書いています。劇場に置かせていただいているのは、B5サイズ縦書きの瓦版。見かけたら、手に取ってみてください。※写真は、神奈川芸術劇場2階のチケットインフォメーションエリアに置いていただいた「えびす組劇場見聞録第36号」。 今号はイエローです。お隣は「因幡屋通信」。
2011.02.01
帝国劇場100周年記念公演のオープニングは『新春 滝沢革命』。滝沢座長の公演を、初めて観ました。凄い!日本のエンターテイメントの最新技術が集結していると思うほどの舞台です。気付いたら頭上でフライングなど、観客の度肝を抜きつつ、アクロバティックな動きに魅了されます。15トンの水を使った演出も、どこまでも観客の意表をついて、大満足なエンターテイメントショーが繰り広げられました。それでいて、スタッフも出演者も息を合わせて人力でやりきる技もあり、温もりのある作品という印象です。芝居あり、歌あり、ベテランが全体を締めて、クオリティの高がクセになります。写真のように入場口では、帝国劇場開場100周年を祝う花のアーチをくぐってロビーへ。劇場へ行くと何かが起きる、予感をさせる演出もお見事でした。※公演の詳細は、公式サイトで。(帝国劇場にて)
2011.01.04
最近はツイッターばかりで、こちらのサイトのアップがありませんでした。にもかかわらず、日々見ていただいてありがとうございました。さて、今年の初芝居観劇は、やはり国立劇場から。昨年も国立劇場の歌舞伎観劇から始まりました。出し物は、『四天王御江戸鏑(してんおうおえどのかぶらや)』。3日初日の国立劇場の様子はNHKで生中継されるため、テレビでご覧になった方も多いと思います。そのせいか、劇場ロビーはより華やいでいるように見えました。国立劇場では、初日の出演者挨拶、そして鏡開きの後、開演前に太神楽曲芸協会による「曲芸」が披露されます。期間ごとの行事が満載で、7日までは獅子舞も披露されていました。写真のように、取り巻く観客の輪の中で舞っています。来年こそはご祝儀を持参して、頭を噛んでもらおうと思います。舞台では菊之助の優美な宙乗りもあり、最後は毎日撒かれる手拭いを飛びつくようにいただき、正月気分を味わいました。※『通し狂言 四天王御江戸鏑』公演の詳細は、国立劇場のサイトで。※こちらは、初日の鏡開きやロビーの様子。
2011.01.03
6日に東宝ミュージカル『モーツァルト!』再演の幕が開きました。モーツァルトに扮するのは、右の写真が初演から務めている井上芳雄さん、左が今回初参加の山崎育三郎さんです。初日は今年デビュー10周年を迎えた井上芳雄さんの日でした。 話は変わりますが、1000文字エッセイを書いています。原稿用紙にすると、2枚と10行に収まる程度で。今回は、一観客の目線でその成長を見てきた井上芳雄さんについて書いてみました。タイトルは、「プリンスからプリンシパルへ」 「ルドルフが良いらしい」ミュージカル『エリザベート』を観劇した友人の間で噂になった日から、もう10年。初代ルドルフを演じたのは、藝大在学中の学生だった井上芳雄である。今や押しも押されもせぬミュージカル界のスターとなり、長身で細身の可憐な風貌から‘プリンス’と称されている。 当時のミュージカル界では、有名なポピュラー歌手や既にスターとなった俳優が主演を務めることが常であり、若くしてクラシックの経歴を持つ無名の俳優の登用は珍しかった。実力で注目された彼は、デビューから2年後には、音楽の神童とも異端児とも言われたモーツァルトの生涯を描いたミュージカル『モーツァルト!』、初演のタイトルロールに抜擢されていた。初日の観劇者として、瑞々しく新鮮な衝撃を受けたことが忘れられない。 さらに躍進は続く。翌年の2003年には蜷川幸雄演出の『ハムレット』に、レアティーズとして出演を果たした。 経歴だけを見れば、順風満帆な歩みに見える。ところが、ストレート・プレイの『ハムレット』では、演技で定評のある藤原竜也のハムレットを相手に得意の歌声を封じられ、舞台という土俵の上で少々心細そうに映った。 数々のミュージカルの主役、そしてリーディングなど様々な経験を積んだ彼が、時を経て、ついに観客を唸らせた。2009年、井上ひさしの最後の戯曲となった『組曲虐殺』で、彼は主人公の小林多喜二を演じきった。 音楽劇であるが、本質的には演技中心の作品である。警察による拷問で死に至った小林多喜二。虐げられた人々の代弁をし、体を張り、命をかけて主張を続けた芯の強さを見事に表した。カーテンコールでは観客だけでなく、舞台の上の出演者も涙を流して感動を分かちあうほどに素晴らしい出来だった。 そしてデビュー10周年の今年9月、記念コンサートが行われた。彼の代表作が歌で綴られ、その歌に込められた想いが伝わる。井上芳雄は言葉で作品を伝えられるほどの表現者として成長していた。バレエで言うところ同様に、彼にしかできない唯一の最上級の演じ手、という意味の‘プリンシパル’が相応しいエンターテイナーなったのだ。 さて、この11月にミュージカル『モーツァルト!』4度目の幕が開いた。新鮮さから成熟味のある役柄と作品へと、期待が高まっている。
2010.11.06
えびす組劇場見聞録第35号が出来上がりました。メンバー4人がそれぞれ選んだ作品と評をお楽しみください。こちらをクリックすると、「えびす組」のホームページに跳んで、お読みいただくことができます。「えびす組劇場見聞録」第35号は、下記の劇場に設置される予定です。(劇場への直接のお問い合わせはご遠慮下さい。)◆世田谷パブリックシアター◆シアタートラム◆相鉄本多劇場◆テアトルフォンテ◆シアターサンモール◆タイニイ・アリス◆駅前劇場◆こまばアゴラ劇場◆シアターX◆STスポット◆カメリアホール◆みどり会館◆シンフォニア岩国◆山口情報芸術センター◆文学座アトリエ◆北九州芸術劇場◆七ツ寺演劇情報センター◆山手ゲーテ座◆にしすがも創造舎◆シアターZOO◆横浜赤レンガ倉庫1号館◆急な坂スタジオ◆まつもと市民芸術館◆画廊Full Moon◆吉祥寺シアター◆川崎市アートセンター◆王子小劇場◆サイスタジオ◆d-倉庫◆アトリエS-pace◆アトリエセンティオ◆三鷹市芸術文化センター星のホール◆京都芸術センター (順不同)「えびす組劇場見聞録」ホームページ掲載演劇作品一覧も、演劇に興味がありましたらご覧ください。過去に取り上げた作品を掲載しています。あとがきは、【納得のいかない一本】・・・愛情を込めて、書いています。劇場に置かせていただいているのは、B5サイズ縦書きの瓦版。見かけたら、手に取ってみてください。
2010.09.29
studio salt第14回『buzz』◎2010年9月29日(水)~10月3日(日)、相鉄本多劇場にて。作・演出・椎名泉水今やその活動から目が離せないのがこの studio salt(スタジオソルト)です。座付き作家で演出家の椎名泉水、彼女の描く問題の本質から目を逸らさない視点には、潔さ、そして温さを感じます。そして、毎回この期待が裏切られることはありません。ここでは、studio salt公式サイトに掲載されている過去の公演がダイジェストで公開されているサイトをご紹介しましょう。 http://salt4040.seesaa.net/article/163621809.html最近では、『中嶋正人』『天気のいい日はボラを釣る』が秀作でした。※次回公演詳細は、studio saltの公式サイトで。(以下、公式サイトからの転載です) ●スケジュール 2010年9月29日(水)~10月3日(日) 全8ステージ 9月29日(水)19:30 9月30日(木)14:00★/19:30★ 10月1日(金)14:00/19:30 10月2日(土)14:00/19:00 10月3日(日)14:00 ※受付開始は開演時間の60分前、開場は開演時間の30分前です。 ※2日(土)は夜の回の開演時間が他の公演日と異なりますのでご注意下さい。 ★9月30日(木)は昼の回、夜の回共に月末割引 2,500円です。 ☆彼らの舞台裏や、日々の活動がUPされている「塩日記」。 注目のページ欄に掲載しています。
2010.09.28
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音楽劇『ガラスの仮面』。'08の第1作を見逃したことが悔やまれるほど、3Dならぬどっぷりと作品の渦中にいたような楽しみを味わいました。まず開演直前のバックステージ見学に参加した時点で、舞台との壁がなくなりました。その間にも客席から稽古着で舞台に上がる役者たちを見て、観客はこれから彼らによって芝居が作られるということを認識します。作品(劇画の「ガラスの仮面」)を知る者にとっての楽しみは、劇画の人物の魂をこの目で見て感じられたことでしょうか。それにしても卓越した原作に甘んじない脚本と演出の素晴らしさ!私は原作の劇画を知る観客です。(上の写真のように、芸術劇場のガレリアにて前作、そして劇画と登場人物の紹介がされています)何の予備知識もなく、この作品に接した観客からは、どう見えるのでしょうか?あまりに具体的に登場人物を知りすぎているあまり、そんな疑問が付きまといます。ただ一つ言えることは、今日が劇場デビューの女の子は、芝居と舞台が好きになるのに違いない、と思えること。彩の国ファミリーシアターと銘打ったこの作品は、劇場全体で観客を歓迎しているような演出が施されています。今回のサブタイトルは~二人のヘレン~北島マヤ(大和田美帆)と姫川亜弓(奥村佳恵)の劇中のヘレン・ケラーとしての競演だけでなく、様々な作品が劇中劇として上演される、その芝居も手を抜かない演出と俳優の熱演が見所でもあります。※公演の詳細は、彩の国さいたま芸術劇場のサイトで。原作・美内すずえ、脚本・青木豪、演出・蜷川幸雄、音楽・寺嶋民哉、美術・中越司、照明・室伏生大、衣裳・宮本宣子(彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて)☆作・美内すずえ「ガラスの仮面」(文庫版)白水社 文庫版の最新は第24巻 ガラスの仮面(第1巻)価格:650円(税込、送料別) ガラスの仮面(第2巻)価格:650円(税込、送料別)
2010.08.12
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トム・ストッパード作の、『コースト・オブ・ユートピア』(2009年9月に観劇)同様に、政治色の濃い国で時代に翻弄される人々の生き様を、こちらはロックン・ロールを織り混ぜた戯曲で見せています。私の感覚的にはロックが自由と主張の象徴とされる少し前、の1968年から始まります。チェコ生まれの作者の想いがヤン(武田真治)に込められているのでしょうか。時代に飛び込むようなヤンの生き方ですが、特権に甘んじず、流れに身を委ねるように見えて、その実、信念を貫いている姿は、彼の中にある「魂の叫び」を感じずにはいられません。政府の方針に従わないことで職を失ったヤン。不器用な生き方かもしれませんが、内に秘める彼の信念、その生き方が観客の心を捉えます。無念の想いを感じながら黙々と自身の置かれた状況下で生きるヤン、そんな彼の生き様を魅力的に武田真治が好演。外見にとらわれない大人の内面が滲み出ているようです。この魂の叫び、生き方、その結果に自由が存在する、これがロックンロールなのでしょうか。場面の節目にかかる音楽がいいですね。年号が表示されて流れる音楽に、あの時自分は幾つだった、こんな世の中があったのか、と感慨深く想い馳せました。20数年に渡る物語は、信念を持つ人々の魂の精神が継がれていくように見えます。だからこの作品はロックンロールなのだと、その言葉の意味を考えずにいられませんでした。余談となりますが、ロシア生まれのピアニストであり偉大な指揮者のウラディーミル・アシュケナージ。6月に彼のトークを聴く機会がありました。政府による音楽の規制があった若かりし頃、演奏旅行で西側に行った折にレコードを大量に買って帰ったというエピソードが語られたことを思い出しました。西側にある自由がなぜ自国には無いのか、と、手も足も出ない中、人々はそういう想いを抱いていたことでしょう。そんな時代があったということを忘れてはならないのです。作・トム・ストッパード、演出・栗山民也、翻訳・小田島恒志、美術・松井るみ、照明・勝柴次朗、衣裳・前田文子(世田谷パブリックシアターにて)※公演の詳細は、ホリプロのサイトで。☆「トム・ストッパード(2)ロックンロール」 ハヤカワ演劇文庫 トム・ストッパード(2)価格:945円(税込、送料別)☆「悲劇喜劇 2010年8月号」 『ロックンロール』の戯曲が掲載されています。 悲劇喜劇 2010年 08月号 [雑誌]価格:1,300円(税込、送料別)
2010.08.10
ここ最近、観劇録のアップがありませんでした。しばらくは観劇後のつぶやきと、http://twitter.com/cms128そしてこちらは備忘録として記載していこうと思います。
2010.07.25
2008年9月に初めて赤坂ACTシアターで上演された赤坂大歌舞伎。2度目となる今回も、落語を原作とした人情喜劇『人情噺文七元結』、そして歌舞伎舞踊『鷺娘』という華やかな演目で上演されています。『人情噺文七元結』では、博打で大きな借金をこしらえて、この年の瀬を越せるかどうか案じている左官長兵衛(中村勘三郎)一家。娘のお久(中村芝のぶ)は、借金を返済して長兵衛が心を入れ替えることを願い、自ら吉原へ身を売りに行きました。その親孝行な娘の気持ちに免じて、吉原の大籬・角海老女房お駒(片岡秀太郎)は、長兵衛に金を貸し与えます。その帰り道、店の掛け金を盗まれたお詫びに身投げをしようとしてる手代文七(中村勘太郎)と出会い、このお金で済むならと長兵衛は全額文七に渡してしまうのですが・・・。勘三郎の長兵衛はカラッとしていますね。この人情物語の中に、人間の持つべき心がサラッと浮かび上がってきているように思います。そしていつもの平成中村座のメンバーを中心とした座組みは、そのキャスティングも楽しみの一つです。お久を迎えに長兵衛が吉原へ行く場面では、座敷の中心に少々老けた花魁の姿が。よく見ると中村小山三が扮しています。セリフも動きもたっぷりと、よく通る声と元気な姿で観客を楽しませてくれました。次は中村七之助による『鷺娘』。坂東玉三郎が2009年1月の歌舞伎座公演を最後に封印した『鷺娘』を、中村七之助が新年恒例の浅草歌舞伎で披露し、大切に踊り継いでいる作品です。それを初めて観ることができました。先輩が長年踊り、極めた舞踊です。これからも大切に踊って、七之助という名の鷺娘を見せて欲しいと思います。 ※公演の詳細は、赤坂ACTシアターのサイトで。(赤坂ACTシアターにて)
2010.07.24
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6/20-8/8まで長い長い旅に出た作品。野田秀樹特有の言葉が様々な意味を持ちます。ある町の書道教室。そこでは言葉は都合のいいように受け取られ、人々が洗脳されていきます。弟がここでいなくなった、と書道教室に潜入して探す姉のマドロミ(宮沢りえ)。そして彼女は同じように息子を探すオバちゃん(銀粉蝶)と出会います。教室内では、幹部のすることに逆らえない人々。ギリシャ神話と交錯しながら、その存在が「ない」のか「消され」たのか、幻想の世界が現実の世界と交じり合った時に真実が明らかになってきました。善悪の感覚を無くし、言いなりになる人々の姿を見るのは虚しかった。「信」という字を掲げても今一つ本来の意味を為さないのは、昨今の政治家のせいなのでしょうか。そんな想いも巡らせて、じっと見つめる先にはいつも真実を探るマドロミの姿がありました。救われることなく着地点が見えにくい作品ですが、心に引っ掛かったところを掘り下げたくなりました。登場人物の存在を無駄にしたくない、と思います。作・演出・野田秀樹、美術・堀尾幸男、照明・小川幾雄、衣裳・ひびのこづえ※公演の詳細は、公式サイトで。(東京芸術芸術 中ホールにて)☆「新潮」 2010年 07月号 戯曲『ザ・キャラクター』を掲載。 新潮 2010年 07月号 [雑誌]価格:950円(税込、送料別)
2010.07.02
生きることは戦いだ。そう思わされるような、心揺さぶられる芝居です。ここに登場する人々は、逃げていない。人は人と触れ合って、生きる何かを見つけて支えとする、そんなことが青年を通して見えました。ある家庭が舞台。60代の父親に母親、婚活中の30代半ばの姉、そしてコンビニでバイトする31才の弟の礼司。そこにかつて学生運動で同志だったという父の友人が40年ぶりに訪ねて来ました。あの、家では自分の意見をはっきり言わない父親(高橋長英)の同志?口より先に行動に出る二人の男たち(林隆三、瑳川哲朗)。彼らはバイトに甘んじている礼司(高橋一生)の意識を変えるべく手を差し伸べます。しかし、父に似て寡黙な青年には、やるべき務めがわかっていました。皆、戦いながら生きるような毎日を送っています。人の敵は人でしかないのでしょうか。戦う標的は違っても、気持ちをわかり合えば支えになるということも、孤立しているように見える若者の目線から感じます。‘「人はなぜ戦うのか」というシーズンのテーマの最後の作品’、とは、この作品が任期最後となる鵜山芸術監督の弁。戦うことは乗り越えること。作品を通じてそんなことを感じました。それにしても、世代の違いでしょうか。‘雑学王’と姉に揶揄される博識な青年でも、「三里塚」の意味するところ、そして「成田で空港を建設するにあたって紛争があったこと」については知らなかったという場面があります。時を経ても当事者にとっては解決していない問題が山積している現実は、「普天間」「辺野古」も同様なのではないかと痛感しました。作・蓬莱竜太、演出・鈴木裕美※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場 小劇場にて)
2010.07.01
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ヴァイオリニストの五嶋龍の働きかけにより、日本で初めてデビューする「アンサンブルDITTO」。五嶋龍がニューヨークで出会ったメンバーは、今や韓国で活躍している肩書きは一流の若手音楽家です。ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの四重奏。演奏が始まると、それぞれの音楽に陶酔しているように見えましたが、互いの音を聴き、呼吸を合わせ、まるで一つの楽器のように息の合った美しく楽しい音色を響かせていました。五嶋龍も加わり、同世代の音楽家同士の協調と信頼と尊敬が浮かび上がります。私が注目したのは、ピアノのジヨン。軽妙なタッチ、情緒豊かな音色、アンサンブルとしての彼の演奏にも惹かれますが、ソロも是非聴いてみたい。今後の活動から、目が放せない音楽家集団です。ところで、タイトルだけでなく、五嶋龍は司会も進行も、全て一人で務めていました。DITTOのメンバーの準備が整うまでのトーク、1曲終わり、観客にその反応を尋ねる様など、最初から最後まで責任を持って、そして自信を持ってアンサンブルDITTOを日本の聴衆に紹介するその姿勢に、音楽家としての喜びが感じられました。まだ若い彼の演奏を初めて聴いた日が思い出されます。音楽とともに成長した彼の姿を見て、なんだか嬉しくなりました。※公演の詳細は、公式サイトで。(東京国際フォーラム ホールAにて)☆Ensemble Ditto Carnival 輸入盤 【CD】 Ditto Carnival/Ditto【送料無料】DU7397 【smtb-k】【kb】価格:2,100円(税込、送料込)☆【CD】五嶋龍/パガニーニアーナ 2010年05月19日発売【CD】五嶋龍/パガニーニアーナ価格:2,800円(税込、送料別)
2010.06.28
'下総佐倉の領主の圧制に苦しんだ領民のために名主木内宗吾が江戸へでて、将軍に直訴する事件'(チラシ文より)この実在した人物の無念の想いをコクーン歌舞伎の新演目として上演されました。賛否両論ある作品、ということを耳にしていました。芝居の部分は役者の懸命な奮闘ぶりが心を打ちます。七之助の扮する娘・おぶんの、江戸に憧れを抱いたまま死んでいく薄幸な少女。その繊細な表現は、設定やセリフ以上に苦しい状況を生きる民の叶えられなかった希望の姿として訴える力を感じました。コクーン歌舞伎ならではの、現代の要素も取り入れた演出の色濃い作品でもありました。百姓の訴えが、ところどころラップにのせて、共鳴しながらその「声」が沸き上がってきます。そして迎える最後、直訴が叶わなかった宗吾(勘三郎)が家族もろとも処刑され、それを見守る百姓たちの訴え。ラップにのせて宗吾の無念さ、民の心を揺さぶる「声」の渦が巻き起こりました。しかし最後の最後、その生活の悲惨さを訴える「声」の趣が少々違ってきます。カーテンコール間際に、ラップのせて演じた俳優が唱えるのは、現代の社会が抱える問題の数々。それが妙にひっかかります。今の時代への批判をストレートに持ち出さずとも、作品でそれを伝えればいいのではないかと疑問を持ちました。もっと芝居の部分で観客に訴えて欲しかった、と思います。演出・美術・串田和美、脚本・鈴木哲也、照明・齋藤茂男、音楽・伊藤ヨタロウ、作調・田中傳左衛門、補曲・国広和毅、ラップ歌詞・いとうせいこう※作品の詳細は、歌舞伎公式webサイトで。(シアターコクーンにて)
2010.06.27
5日にオペラパレスのホワイエで行われたオペラトークで、上演台本と演出の鵜山仁が三島作品をオペラ化する苦労を語りました。戯曲の言葉を変えてはいけない規則があるそうで、台詞を削ることで上演の短縮の調整をしたそうです。苦心した甲斐あってメリハリの効いた作品に仕上がっていました。有名な戯曲ならでは、観客の記憶と想像力が神秘な鹿鳴館の作品の世界へと導きました。今回は女性陣の功績の大きさを感じます。朝子役の腰越満美(25,27日)は姿、歌唱ともに際立つ美しさで聴衆を魅了します。オペラは曲調と強弱で人物の特徴と感情が表に出るのが分かりやすいですね。日本語ならではの作品の理解も楽しみの一つ。カーテンコールでは帰る人はほとんど無く、最後は企画した故・若杉弘の遺影に出演者も観客も拍手を送り、別れを惜しみました。原作・三島由紀夫指揮・沼尻竜典上演台本・台本・鵜山仁、作曲・池辺晋一郎企画・若杉 弘芸術監督代行・尾高忠明※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場 オペラパレスにて)☆作・三島由紀夫「鹿鳴館」新潮文庫
2010.06.24
44プロデュース公演、中島淳彦・戦中戦後三部作『フツーの生活』沖縄編の千穐楽。この23日は、沖縄慰霊の日でした。ニュースでは一日中そのことを伝えていました。沖縄の人々にとっては、その日から何も変わっていないこと、そしてその前に受けた苦しみを忘れてはならないことを痛感したのでした。さて、舞台を見上げると、人が通れるほどの隙間から明るい光が射し込んでいます。戦中の、沖縄の言葉で言うガマ(自然洞窟)の内側が舞台。観客はガマの中にいるような錯覚を起こしながら、ここに避難する人々の生活を息を飲んで見守ります。日本で唯一地上戦が行われた地、沖縄。米兵の上陸、ガマの外に聞こえる爆撃音、そして足音。避難する人々には情報も届かず、銃を突き付けられた市民はいったいどうすれば良ったのでしょうか。ガマの中、閉ざされた世界で一緒に不安を味わいながら、思案を巡らせました。ここにいる人々は、銃を向けられ、英語で話かけられた時、言葉の意味がわからずに身を縮めるか、威嚇して叫ぶことしかできませんでした。外にいる米兵には、中にいるのが日本兵か市民の区別もつかず…手榴弾を投げ込まれて終わりです。そう、ここで物語は終わってしまいました。この物語はフィクションですが、同じような目に遭った人々がどれほどいたことでしょう。同時にナレーションが、ガマから出て捕虜となった人々について語ります。それらの人々は助かったそうですが、そこでどんな生活があったのかはわかりません。演劇は、実際の再現ではありませんが、その一端を追体験することにより、登場人物の置かれた状況と感情を推し測ることができます。忘れてはならない、繰り返してはならない出来事が、この舞台にはありました。沖縄の人々にとってのフツーの生活とは。戦後65年経って、果たして日本の考え方は変わったのでしょうか?現実のいつまでも解決しない論争を見るにつけ、不安が募りました。作・演出・中島淳彦※公演の詳細は、公式サイトで。(紀伊國屋ホールにて)
2010.06.23
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石丸幹二、デビュー20年目の初のコンサートの最終日でした。リリースしたばかりの初のソロアルバムCDの発売を記念したコンサートでもあります。選曲にかなりこだわりが感じられます。そして一曲一曲感情移入して歌詞をしっかりと客席に届けようとする歌声は、俳優として演技の評価も高い彼ならではの姿でした。さて、クラシックの基礎を持つ歌手がミュージカル界に彗星のごとく現れる、というのは今では珍しくありませんが、石丸幹二、彼こそ元祖、な気がします。小さい頃から劇団四季の舞台を見てきた観客にとって、彼の登場~歩んできた軌跡はとても一口では言い表せません。劇団四季には17年間在籍していたのだそうです。今年45才になる石丸幹二の今だから語れる言葉とともに、二部制のコンサートではたっぷりと彼の舞台人生観が語られているような楽曲が披露されました。ゲストに一路真輝を迎えてのトークとデュエット、さらには楽曲のニュアンスを伝えたいと「ダンス・エスメラルダ~ノートルダム・ド・パリより」をフランス語で歌い上げるなど本当に印象深い選曲が続きます。この一週間、『ニュー・ブレイン』ガラ・コンサートをこなし、トニー賞中継番組のゲスト出演でアメリカをとんぼ返りするなど話題が尽きませんでした。かなりのハードスケジュールのためか高音に少々安定感がなかったのが残念です。しかし役を通して大いに期待が持てる歌いっぷりに、コンサートは大盛況のうち幕を閉じました。構成・演出・白井晃※公演の詳細は、石丸幹二の公式サイトで。 今年のミュージカル『エリザベート』では、トート役にキャスティングされています。(東京オペラシティ コンサートホールにて)☆ソロアルバム「kanji ishimaru」(2枚組) 視聴できます kanji ishimaru価格:5,000円(税込、送料別)
2010.06.19
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東京裁判三部作(第一部は『夢の裂け目』、第二部は『夢の泪』)、最後の作品の舞台は終戦から2年後。しかし何年経っても大切な人を亡くした人々にとっては、戦争というキズが消えることはありません。東北のとある町にある屋敷の蔵で管理を任されていた古道具屋の徳次(角野卓造)。ある日、徳次はこの屋敷に天皇が訪れるための予行演習で、陸軍で参謀を務めていたからという理由で、天皇の役を頼まれました。それは、おもてなしの予行演習、のはずでした。ところが、その屋敷の娘絹子(三田和代)が徳次に対して発したのは、戦争責任を追及する言葉でした…。戦後、地方で穏やかに暮らす人々にとっては、戦争は「過去」になりつつあるように見えました。しかし、その戦後をカサブタとするならば、家族や恋人を失い戦後を生きる人々にとっては、その下に癒えぬキズがあることを、私たちは忘れてはならないのです。作・井上ひさし、演出・栗山民也、音楽・クルト・ヴァイル、宇野誠一郎、音楽監督・編曲・久米大作、美術・石井強司、照明・服部基、音響・黒野尚、衣裳・前田文子※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場 小劇場にて)☆作・井上ひさし「夢の裂け目」集英社 ☆作・井上ひさし「夢の泪」集英社 ☆作・井上ひさし「夢の痂」集英社
2010.06.16
今月5日にサントリーホール入口左手にある小ホール・ブルーローズ。そこで行われたのは『パリの恋人たち~フランソワーズ・サガンのエスプリ』と題したリーディングと室内楽のコンサート。Vol.4と言うのですから、定期的に開催されているのでしょう。私も今からVol.5が待ち遠しく感じられるのですから、ファンが多いのも頷けます。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、そしてクラリネットが加わり奏でるのはブラームスの楽曲。しっとりとした弦の調べの後、サガンの小説について書かれたくだりがある田辺聖子の「ほのかに白粉の匂い」の中からのリーディングセッションが行われました。途中、サガンと親交のあった村上香住子がサガンの素顔を語るなど、作家と作品を知ることができるなかなか面白い趣向でした。なかでも一番の魅力がリーディングセッションです。サガンの「ブラームスはお好き」の章では、文学座の小野洋子が描く女性像(ポール)、浦井健治の透明感ある青年像(シモン)、2人の語りに作品の人物像が浮かび上がります。セリフ以外に「ほのかに白粉の匂い」の文も語る小野洋子は、作者・田辺聖子の茶目っ気たっぷりな主観も、サガンの人物も語り分け、心地良い響きを耳に残してくれました。※公演の詳細は、サントリーホールのサイトで。(サントリーホール ブルーローズにて)☆田辺聖子「ほのかに白粉の匂い」講談社文庫☆フランソワーズ・サガン、訳・朝吹登水子「ブラームスはお好き改版」新潮社
2010.06.15
今月の国立劇場は、歌舞伎鑑賞教室。歌舞伎の解説と作品の上演がある、歌舞伎を気楽に楽しめる趣向です。歌舞伎のみかたの解説は、柔らかい語りが魅力の澤村宗之助。今回は歌舞伎観劇初心者に、よりオススメの内容です。観客の中から代表者に舞台へ上がってもらうのですが、私が観た日は高校生の団体が観劇。好奇心旺盛そうな女子高校生が2人、舞台へと導かれていきました。舞台構造の説明から、鳴り物、歩き方、見栄、人物の化粧の解説など、彼女たちに体験させての説明がわかりやすい。舞台ではさらりとこなす所作に、実は鍛練が必要なことを再認識するのでした。後に上演される『鳴神』に関連していたので、公演は大盛り上がり。帰りに高校生の観客の感想に耳を傾けるのも楽しかった!☆19時開演の「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」もあります。 今月は11日(金)と18日(金)。※公演の詳細は、国立劇場のサイトで。引き続き、7月も歌舞伎鑑賞教室が行われます。歌舞伎のみかたの解説は、期待の若手 中村壱太郎と中村隼人。子役の頃から知る観客にとっては、立派になったなぁと感慨深いですね。歌舞伎の上演は、「身替座禅」「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」は20日(火)、23日(金)です。来月も、乞うご期待!(国立劇場 大劇場にて)
2010.06.14
13日、【音楽の祭日】特別共催として、鎌倉小町のぎゃらりー伊砂・貸和室にて「荻江節演奏会」が行われました。(左の写真の座敷が会場です)リーフレットの解説を要約すると、この【音楽の祭日】とはフランスにおいて文化事業新興の目的で始まり、開催日は6月21日(夏至)と定められ、その後海外に発展、現在では特に「音楽は全ての人のもの」という基本精神に則りこの日の協賛音楽イベントは、入場料を全て無料にしなければならないとされているそうです。さて、荻江節演奏会では日本音楽を気軽に楽しんで聞いてもらえるようにと、この基本理念に賛同し開催されました。最近は大劇場での演奏もありますが、荻江節は本来は座敷芸風の唄なのだそうです。唄と三味線を座敷で演奏する様を、座敷に入り切れなかった聴衆は庭から聴きます。日常の中で、ちょっと特別で贅沢な一時を楽しみました。※音楽の祭日については、こちらの公式サイトで。(ぎゃらりー伊砂・貸和室にて)
2010.06.13
作・ロナルド・ハーウッドの『ドレッサー』。渡辺哲と小宮孝泰プロデュース・出演の作品です。共演者(マッジの大西多摩恵、夫人の久世星佳)と演出(大谷亮介・出演も)にも恵まれて、まるでウエストエンドで芝居を観るような、そんな洒落た空気を感じながらじっくりとセリフと空間の芝居を味わいました。実はこの芝居、2005年8月にパルコ劇場で観たことがあります。(その時のマッジは久世星佳が演じていました)主に作品の状況に関心を持ったパルコ劇場での観劇とは異なり、今回はより座長とドレッサー(付き人)、そして彼らを取り巻く人々の心情が胸に響きました。忘却の恐怖に怯える年老いた座長、アルコールに依存しながら自身を奮い立たせるドレッサーの緊迫感が直に伝わってきます。舞台に立つものだけが知る苦しみは、もしかしたら喜びより大きいのかもしれない。そんな作品の作り手たちの人間臭い悩みが、観客の胸を貫きました。脚本・ロナル。ハーウッド、翻訳・松岡和子、演出・大谷亮介、音楽・サンポーニャ演奏・野田晴彦、舞台美術・松野潤、照明・五十嵐正夫(吉祥寺シアターにて)
2010.06.11
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紀伊國屋サザンシアターでの上演は終わりましたが、関東では鎌倉で観劇のチャンスがあります。この作品は小津映画の「麦秋」「晩春」をモチーフに平田オリザが現在に置き換えて書き下ろした作品です。「麦秋」の舞台は鎌倉の極楽寺。こちらも舞台となる家は極楽寺という設定で、この家に集う人々の話を聞いていると、どこからどこへ歩いたなど情景を思い描きながら観る楽しみもありました。幼い頃に母親を亡くして、父娘二人暮らし。そこに大学教授である父の同僚や教え子、そして親戚まで多くの人々が出入りして、家というものが温かく感じられました。人々が集まる場所、小津映画では、それが家だったような気がします。嫁にいかない娘、60歳を過ぎてシングルの叔母など、独身女性には耳の痛い話かと思いきや、彼女たちの生き方が実に颯爽と、凛として愛情深く描かれていました。お節介を焼く親戚も、つまるところは思いやり。平田オリザの現代版のこの作品では、家族一人、二人暮らしの人々も、この家に集い、憩い、議論して、その傍らではアイロン掛する生活の匂いもあり、家というものに実に愛着が感じられます。セリフの端々に聞かれる自然と共存する人々の豊かな心に触れて、居心地の良さを感じました。突然娘が結婚を決意することで、「存在」であった父親の内面が浮かび上がってきます。そして結婚を決意した娘の、自分の気持ちに気付く瞬間。その思い切りが潔くて可愛らしく見えました。この作品の居心地の良さは、人々が思いやり、支えあって、彼らの人生がまだまだこれからも続くところにあるのではないかと思います。演出は今年94歳の戌井市郎。瑞々しさが演出に溢れています。作・平田オリザ、演出・戌井市郎装置・石井強司、照明・山内晴雄、音響効果・望月勲※鎌倉は、6月19日(土)鎌倉芸術館 小ホールで上演されます。 チケットの詳細は鎌倉芸術館のサイトで。※公演の詳細は、文学座のサイトで。(紀伊國屋サザンシアターにて)☆「悲劇喜劇 2010年 06月号」早川書房 文学座特集とともに、『麦の穂のゆれる穂先に』戯曲が掲載されています。
2010.06.09
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ロンドン公演を終え、さいたまで上演中。7月にはニューヨーク公演があります。昨年上演された作品の再演ですが、海外公演のために上演時間が短縮されました。脚本の見直しが作者である井上ひさしの手によって行われたそうです。観る側も海外公演があることで、改めて作品の意図を強く意識しました。宮本武蔵(藤原竜也)に敗れ、恨みを抱いた佐々木小次郎(勝地涼)は、身も心も悲しいほどに荒んでいます。報復の連鎖を断ち切ること、これが作品のテーマ。今の時代に生きる私たちだからこそ、願わずにはいられません。海を越え、この想いが届くことを願っています。※公演の詳細は、彩の国さいたま芸術劇場のサイトで。※公式ブログには、ロンドン公演の様子も掲載されています。作・井上ひさし(吉川英治『宮本武蔵』より)、演出・蜷川幸雄、音楽・宮川彬良(彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて)☆作・井上ひさし「ムサシ」集英社 ☆初演の「ムサシ」DVD ☆初演の「ムサシ激動の123日間の舞台裏-蜷川幸雄と若き俳優たち」DVD
2010.06.08
ジョン・ケアード版『キャンディード』の上演です。最近では2001年と2004年に宮本亜門演出の『キャンディード』が上演されたので、ご覧になった方もいると思います。(私はこの作品をDVDで観ました。現在も販売中)レナード・バーンスタイン作曲の、音楽が大変印象深い作品です。6月1日は、有料の公開舞台稽古が行われました。観客は入りますが、初めての通し稽古であることがジョン・ケアードの口から語られ、それぞれ持ち場で待機するスタッフの紹介もありました。あくまでも初日とは異なります。ジョン・ケアード版では、「キャンディード、または楽天主義者」という原題を重んじるかのように、楽天主義のバングロスと悲観主義者のマーティンという二人の存在が際立ち、両者との係わり合いの中で、バングロスの教え子で楽天主義のキャンディード自身の成長を楽しみました。主義とともに、少々野蛮に聞こえるかもしれませんがストレートな言葉にも耳を傾けてください。様々な考えがめぐります。どんなに悲惨な状況下に置かれても力強く生きる登場人物の姿に敬服しました。井上芳雄が扮するキャンディードは、純白な彼のイメージそのまま。実はそれがキーで、まっさらからキャンディードと共に考える観客の旅も始まりました。その案内人は市村正親。原作者である作家のヴォルテールと家庭教師のバンクロスの二役を務めあげ、膨大なセリフを軽妙に、わかりやすく観客に語りかける口調は素晴らしかった。大奮闘のクネゴンデ役の新妻聖子の歌声も聴き所の一つです。6月2日に、初日の幕が上がります。原作・ヴォルテール、作曲・レナード・バーンスタイン、台本・ヒュー・ホイラー、作詞・リチャード・ウィルバー、歌詞補作・スティーブン・ソンドハイム、ジョン・ラトゥーシュ、リリアン・ヘルマン、ドロシー・パーカー、レナード・バーンスタイン訳・吉田美枝、訳詞・松田直行、台本改訂・演出・ジョン・ケアード装置・ユン・ぺ、装置原案・ジョン・ネピア※公演の詳細は、東宝の公式サイトで。(帝国劇場にて)☆宮本亜門演出「キャンディード」DVDは、イーオシバイドットコムのサイトで購入できます。 そう言えば、ジョン・ケアード版でマキシミリアンを演じた坂元健児は、両方の「キャンディード」に出演していますね。
2010.06.01
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劇団、本谷有希子。知名度のある俳優を主演に、エネルギッシュな舞台を作るということで気になっていた演劇人です。ようやく『甘え』で、彼女の作品に触れることができました。主人公のジュンに小池栄子。父親に抑圧され、殺意を抱く引きこもりがちな娘を演じています。女友達が訪ねてきて語るのは、大好きな先輩と寝て、彼に頼まれたから他の5人の相手もしたけど、先輩は一番私に優しくしてくれたこと。嬉しそうに語る友人を前に、自分とは大きく価値観が違うことに戸惑いつつも、どうにかして友人を理解しようと努め、励ますジュン。この話題だけでも衝撃的ですが、さらに父親への殺意がジュンの思考のほとんどを占めていきます。女の、男の、人間の、本能とエゴと畏れと偽善が噴出した作品の主題は、てっきり「価値観を変えること」だと思っていたら、「不道徳」についてであると作品紹介に書いてありました。自身の「不道徳」な行いを認め、自らを「カス」と呼ぶ人々。そういう人物の価値観が変わる時、それは自分でも驚くほどの変化であるように描かれています。どう見ても「不道徳」を前提に生きるより、変わった後の彼らのほうが活き活きとしています。しかし変わりたくても変えられない人は、どうすればのでしょうか?試行錯誤した末に自分の価値観を変えようとジュンがとった策。もっと違うやり方ではいけなかったのでしょうか?そこに行き着くまでの過程が意表を突くほどに壮絶であっただけに、作者に求めたくなりました。現実と幻想の狭間を、登場人物とともに在る観客。笑いと怒りの波が交互に押し寄せてくるような緊張感のある舞台。何しろ個々の俳優の演技がリアルなのが怖ろしいと感じてしまいました。殺意を抱いた時の声って、こんなものなのか・・・?作も演出もこなす本谷有希子。奇才であることは間違い無さそうです。作・演出・本谷有希子美術・中根聡子、照明・小川幾雄、音楽・渡邊琢磨、音響・藤森直樹(Sound Busters)、衣裳・畑久美子※公演の詳細は、劇団、本谷有希子のサイトで。※こちらには、本作品のあらすじが掲載されています。(青山円形劇場にて)☆「シアターガイド 6月号」に、作品について記事が掲載されています。
2010.05.27
文学座では、有志による自主企画公演が盛んに行われています。先月は、「久保田万太郎の世界」の公演が第8回を迎えて上演されました。 『ピンクの象と五人の紳士』が、信濃町にある文学座稽古場、新モリヤビルで24日まで上演中。ご存知、別役実の作品です。演出は若手準座員二年目の西本由香。テンボのいい進行から観客が得るのは言葉。その台詞からは、実は現代社会で大切にしたいものが浮かび上がってきました。深い作品をわかり易く伝える、なかなかステキな演出です。シンプルな舞台装置も見所の一つです。作品の持つ、現実にも幻想にも思えるなんとも宇宙的な空間の存在感。美術は石井強司。出演者からスタッフに至るまで、大ベテランから若手まで一丸となって作品を作る環境にあるのが劇団の強味でしょう。次作も期待しています。※公演の詳細は、ピンクの象と五人の紳士公式ブログで。(文学座 新モリヤビル1階にて)☆別役実戯曲集「遊園地の思想」三一書房 「ピンクの象と五人の紳士」を収録 脳死や人間の尊厳、臓器移植など、こういう題材も扱うのかとその言葉の意味にドキリとしました。
2010.05.23
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『夢の裂け目』に続く東京裁判三部作の第二部です。観客は登場人物の抱くナゼの疑問から、歴史の、政治の、戦争のナゼについて考えさせられます。時は昭和21年春ごろ、舞台は新橋駅に近いある法律事務所。夫婦ともに弁護士で、妻の秋子(三田和代)は東京裁判におけるA級戦犯・松岡洋右の弁護人となることを依頼されました。しかし戦犯容疑者の貯金や預金が封鎖されて、弁護料はどこから出るのか。政府が戦犯の弁護料を国費で支払うことへの日本国民の反発は必須であろうから見込めない。そこで思いついた街頭でのカンパもGHQに禁止され、どうしたものかと案じていたら、アメリカ側が費用を持つという連絡が。喜ぶのも束の間、ナゼ弁護料を検察側が持つのだろうか?ナゼ探しても必要な資料は出てこないのか?その他、たくさんのナゼが弁護士や一般市民の口から出てきます。登場人物の抱くナゼは、今の時代の私たちに、より良い社会にするための提言のように聞こえます。過去のナゼを大切に、これからの未来が明るくなればと願わずにいられませんでした。劇中、持ち込まれた騒動の一つに美しい歌があります。そのナゼが解決された時、私たちは穏やかにその歌を聴くことができました。作者の井上ひさしが遺し、伝えたかったことを、自分自身に取り込み、感じ、考える。この三部作は栗山民也という演出家と出会って、末永く愛され、語り継がれる作品になったのだと思います。作・井上ひさし、演出・栗山民也、音楽・クルト・ヴァイル、宇野誠一郎、音楽監督・編曲・久米大作、美術・石井強司、照明・服部基、音響・黒野尚、衣裳・前田文子公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場小劇場にて)☆作・井上ひさし「夢の裂け目」集英社 ☆作・井上ひさし「夢の泪」集英社 ☆作・井上ひさし「夢の痂」集英社
2010.05.22
無名塾主催、仲代劇堂小さな演劇祭2010 Vol.6として上演されていました。場所は無名塾の稽古場。その名を「無名塾仲代劇堂」と言います。田園都市線用賀駅から徒歩20分という、閑静な住宅街に位置する稽古場には、自転車に乗ってご近所らしい人々も来場していました。安部公房作の、かつては仲代達矢が出演して紀伊国屋演劇賞を受賞した作品です。演出は、塾員の樋口泰子。不条理劇は語るは易し、表現するは難しですが、所属の塾員のベテランから若手まで、エネルギーたっぷりにまさに挑むという芝居を稽古場で観る楽しみを味わってきました。立ち見まで出て大盛況でした。作・安部公房、演出・樋口泰子※公演の詳細は、無名塾の公式サイトで。(無名塾仲代劇堂にて)※写真は、無名塾仲代劇堂の外観です。 レンガで縁取られた温かい雰囲気の建物です。
2010.05.20
『関数ドミノ』以来のイキウメでしたが、今回も見事に独特の仮説と現実の狭間に観客を迷い込ませてくれました。そのテーマは思い込みとその力。ある意味、演劇そのものではないかと思うのです。笑い飛ばすことのできない展開、目の前で起きていることを疑う心が失われていく感覚。これぞ演劇の持つ魔力(魅力とも言います)、観客は舞台の上の出来事のたいていのことは信じます。より真実味を持って、自分の周りに起きても可笑しくないと思わせるイキウメンたち。そこで起きることは全て現実、の演劇だからこそ、受ける心理的な影響は大きいのです。空間の使い方もお見事。壁一つで所が変わる、軸を中心に置かなかったところが妙技です。息を潜めてその行方を見守りました。作・演出・前川知大※公演の詳細は、イキウメの公式サイトで。※公式サイトには、前川知大『プランクトンの踊り場』インタビューも掲載されています。(赤坂RED/THEATERにて) 大阪公演もあります。
2010.05.18
鴻上尚史の主宰する虚構の劇団。劇団メンバーの手による一作品が約20分×4本が、自主企画発表会と称して上演されました。劇場では鴻上さん自らが座席に案内したりDVDを販売したりと、全力でバックアップしている温かい光景が見られました。さて作品は、今時のエネルギー溢れる若い俳優が何を表現したいのか、興味津々で見せてもらいました。メンバー自らが作・演出・出演する舞台はメッセージに溢れています。こんなに充実していて1500円?アンテナは張っておくものです。■program(公式サイトより)●『死に際の生え際』 ー生きるために生きる。~そんな僕達はまだ生きている~ー 作・演出:山崎雄介 出演:杉浦一輝、三上陽永、山崎雄介、渡辺芳博●『FRIENDS』 ー伝えたい言葉ー 作・演出・出演:大杉さほり●『マグロ』 ー考えることも煩わしい。この先は勝手に決めてくれ。 何せ私はマグロなのだから。ー 作・演出:渡辺芳博 出演:小野川晶、高橋奈津季、渡辺芳博●『THE MATTER』 ー《事件;問題の意》・a private matter 私事 ・a serious matter 重大事 ・a matter of life and death 死活問題ー 作・演出:小沢道成 出演:大久保綾乃、小沢道成アドバイザー:鴻上尚史(新宿シアター・ミラクルにて)※彼らの出演する虚構の劇団次回公演は、 『エゴ・サーチ』(2010年9/10-19) 紀伊國屋ホールにて。※諸々の公演情報、虚構の劇団のサイトで。
2010.05.16
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DAIGO主演、で観に行くのもいいでしょう。サプライズがたくさんの素敵な大人のミュージカル。演出は『URASUJI』でもお馴染みの…とはこちらの弁ですが、松村武。個人的には、役に俳優の個性をギリギリまで引き出してキャラクターを作り上げる、そんなバランス感覚を大切にした演出家だと思っています。今回も個性的なキャストの魅力を損なうことなく見せてくれました。初舞台にしてミュージカル初出演の主演のDAIGOは、シーモアらしく、DAIGOでありつつ真面目で気弱で頼りないけど優しいシーモアの持つ心の奥まで歌と芝居で見せてくれました。そして、脇を固めるベテラン勢が無くてはこの作品は語れません。彼らの歌と踊りで、この街の様子や刻々と変わっていく状況を知ることができます。この作品は、もちろん笑いもたくさんありますが、気がつくと心の奥に潜んだ人間のダークな部分にまで踏み込んでいます。でも、その先にあるのは・・・。演出よし、コーラスよし、キャストよし、DAIGOの懸命さが役のシーモアと融合してよし、初めて聴いた彼の歌も良かった。今までにも観たことがあるのに、こんなに洒落たミュージカルだったのかとちょっと感動。台本・作詞・ハワード・アシュマン音楽・アラン・メンケンパペットデザイン・マーティン・P・ロビンソン翻訳・常田景子訳詞・演出・松村武、音楽監督・歌唱指導・玉麻尚一、振付・川崎悦子、美術・島川とおる、音響・山本浩一、照明・林之弘、衣装・牧野純子※公演の詳細は、公式サイトで。※『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の公式ブログ※素敵なコーラス、街の女の子クリスタルとして出演中の池田有希子さんのブログ。 ゆっこの分離独立ブログ(本多劇場にて)☆「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ 特別版」DVD リック・モラニス[主演] ☆「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ 1982年オフ・ブロードウェイ・キャスト盤」CD
2010.05.13
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日本でも過去に何度か舞台上演されていました。今回はロンドンで上演されていた作品の日本版です。チラシの情報によると、アンドリュー・ロイド=ウェバーがプロデューサーとして参加。その宣伝文句も「あなたが観たかったのはきっと、この『サウンド・オブ・ミュージック』」と、堂々たるものでした。音楽的な魅力が素晴らしい作品です。セリフでは少々不自然に感じる四季独特の発声も、歌になると強張った気持ちが溶けるように心が温かくなるのを感じました。そして、オーディションで選ばれた子役の歌と演技が素晴らしく作品に溶け込んでいます。音楽の、歌の持つ力を感じつつ、一部、映画とは違う展開にとまどう観客の声も聞こえました。それでも、心から楽しみ、温かい気持ちで劇場を後にしました。トラップ大佐にダブルキャストで、久しぶりに鈴木綜馬が四季の舞台に登場していたのも、過去に四季での活動を知る観客にとっては朗報です。企画・制作・日本版演出・浅利慶太※公演の詳細は劇団四季のサイトで。(四季劇場 秋にて)☆「サウンド・オブ・ミュージック 2006年 ロンドン・キャスト」(輸入CD)
2010.05.08
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W・サマセット・モームの「夫が多すぎて」をケラリーノ・サンドロヴィッチの演出・上演台本で舞台化。夫を戦争で失ったヴィクトリア(松たか子)。一年間喪に服した後に、夫の親友と再婚し、慎ましい生活を強いられています。すると突然、亡くなったと思っていた最初の夫が帰宅しました。驚き慌てつつも美しいヴィクトリアは、彼女に好意を寄せる戦争成金の実業家にも心が揺れます。果たして彼女が下す決断とは!魅力的であるが故に罪深い、いわゆる自己チューな妻を松たか子が痛快で豪快なコメディエンヌぶりで好演しています。前の夫に段田安則、現在の夫に渡辺徹が扮して、彼女に振り回される心優しく情けない男ぶりで観る者の同情を誘います。大胆に誇張された舞台美術に象徴されるメリハリのある三幕の舞台に、上演時間があっという間に過ぎてしまいました。作・ウィリアム・サマセット・モーム、演出・上演台本・ケラリーノ・サンドロヴィッチ、翻訳・徐賀世子、美術・二村周作、照明・小川幾雄、衣裳・前田文子、音響・水越佳一※公演の詳細はシアターコクーンのサイトで。(シアターコクーンにて)☆作・ウィリアム・サマセット・モーム、訳・海保真夫「夫が多すぎて」岩波文庫
2010.05.07
1970年、北アイルランドのベルファストで、異なる宗教の家庭に育ったモジョとミキボー、2人の少年が出会いました。少年たちの描く大きな想像の世界の始まりです。浅野雅博、石橋徹郎、2人の関係はまさにモジョとミキボーさながらですが、たった2人だけで彼らを取り巻く全ての人々、17役を演じています。本当にそう見えるということは、観客の記憶と想像力が、演じる側のイメージとピタリと合うということだと思うのですが、閉塞感ある劇場で時間と場所を共有する幸福感を味わいました。オレンジとグリーンの色が隔てているのは土地だけではない、その国の持つ問題が浮かび上がります。北アイルランドにおける紛争問題については知っていたつもりでしたが、この紛争による悲しみがまるで当事者として感じられるような、そんな想像力に溢れる舞台でした。脚本・オーウェン・マカファーティ、翻訳・平川大作、演出・鵜山仁、美術・乗峯雅寛、照明・中山奈美※公演の詳細は公式ブログで。 しばらくの間、注目のページに掲載します。(下北沢OFF・OFFシアターにて)
2010.05.06
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デヴィッド・ビントレーの『カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana)』。新国立劇場のオペラパレスにて、初日の公演を観劇しました。演劇とオペラはよく観ているのに、新国立劇場のバレエを観るのは、まだ2度目です。5年前に上演され話題となった作品の再演ということで、足を運びました。『ガラントゥリーズ(Galneries)』との同時上演で、両作品とも振付はデヴィッド・ビントレー。次の2010/11シーズンより新国立劇場舞踏芸術監督に就任します。『ガラントゥリーズ』では、かねてより関心のあったプリンシパルの山本隆之、ソリストの芳賀望らの踊りを見ることができました。モーツァルの音楽に乗せて、シンプルな舞台に存在するのはダンサーのみ。このような表現があるのかわかりませんが、バレエがフォーメーションの芸術であると感じました。カール・オルフ作曲の『カルミナ・ブラーナ』は、ドラマチックで重厚な音の響きから始まります。コッポラ監督の映画「ドラキュラ」などで、耳にしたことがあると思います。目隠しをした女性ダンサーが、運命の女神フォルトゥナ(ヴィクトリア・マール)として登場し、激しく踊ります。そして3人の神学生が登場し、それぞれが抑えられない欲求のもと、定められた道を踏み外して行くように見えます。時にはその行動が本能により情熱的な生き方にも見えますが、苦悩しながら突き進む様子も見られる、舞踏でありながら観る者にダイレクトに訴えかけているのを感じました。音楽と舞踏、これらが一体となった時に、人の体は多くのことを語るのだと不思議な想いで観た作品です。ところで、初日は終演後にデヴィッド・ビントレー氏のミニトークが開催されました。(トークの様子は公式サイトで)観客との距離を縮めたいという氏の提案で、舞台ではなくオーケストラピットの前で観客の目前で語ります。観客一人ひとりの反応を見るようにして語る氏の姿に、次期芸術監督としての意気込みを感じました。※キャストは日替わりで上演されました。2010/11シーズンオープニング公演には、●ビントレーの「ペンギン・カフェ」同時上演として●バランシン振付「シンフォニー・イン・C」●フォーキン振付「火の鳥」以上3作品が上演されます。ビントレー氏が語るには、それぞれが大変人気の高い作品なので、それを同時に上演するというのは凄いことなのだそうです。こちらも楽しみです。(オープニング公演の詳細は公式サイトで)2010年10月と11月に上演予定。※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場 オペラパレスにて)☆RCA Red Seal THE BEST 96::オルフ:カルミナ・ブラーナ 小澤征爾(OZAWA SEIJI)/ボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)/イヴリン・マンダク(Evelyn Mandac) 試聴できます。
2010.05.05
4月の末は、歌舞伎座の千穐楽やら閉場式やら、最後まで歌舞伎座でいつまでも名残を惜しんでおりました。後日、ご紹介できるといいのですが、そうこうするうちにもう5月。下北沢 OFF・OFFシアターでは、新たな公演が初日を迎えています。◎『モジョ ミキボー』◎5月4日-30日、下北沢 OFF・OFFシアターにて。『モジョ ミキボー』は、モジョくんとミキボーくんという少年のお話です。作品については、4月26日の公式ブログに少々記述があります。演出は、新国立劇場『ヘンリー六世』でもお馴染みの鵜山仁。人物の心情をじっくり見せてくれるのではないかと楽しみにしています。演じるのは、チラシの写真の浅野雅博、石橋徹郎。二人とも『ヘンリー六世』での活躍は記憶に新しいところ。文学座座員である彼らの二人芝居です。※この作品限定のブログも日々更新されています。『モジョ ミキボー』公演詳細(公式ブログより) 作:オーウェン・マカファーティ翻訳:平川大作演出:鵜山仁出演:浅野雅博 石橋徹郎期間:5月4日(祝)~30日(日) ※受付は開演の45分前、開場は開演の30分前からです。会場:下北沢 OFF・OFFシアター TEL.03-3424-3755 [アクセス]井の頭線、小田急線「下北沢駅」南口を出てすぐ料金:5月4日(祝)~ 7日(金)2,000円(全席自由・前売当日共) 5月8日(金)~30日(日)3,500円(全席指定・前売当日共)チケット取り扱い チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:402-405) http://pia.jp/t (事前登録要) イープラス http://eplus.jp/ (PC・携帯共通) モジョミキボー直前予約(各公演前日の24時までお申し込み可) ・5月4~7日の公演 ・5月8~19日の公演 ・5月21~30日の公演 ★タイムテーブル★タイムテーブル:5月4日(祝)14時/19時5月5日(祝)14時5月6日(木)14時5月7日(金)19時半5月8日(土)14時/19時5月9日(日)14時5月10日(月)休演日5月11日(火)19時半5月12日(水)14時/19時半5月13日(木)14時(アフタートーク付)5月14日(金)19時半5月15日(土)14時/19時5月16日(日)14時5月17日(月)19時半5月18日(火)14時(アフタートーク付)5月19日(水)14時/19時半5月20日(木)休演日5月21日(金)19時半5月22日(土)14時/19時5月23日(日)14時5月24日(月)19時半5月25日(火)19時半5月26日(水)14時/19時半5月27日(木)14時/19時半5月28日(金)19時半5月29日(土)14時/19時5月30日(日)14時/19時当日券:当日券は開演の45分前より販売いたします。「当日券限定リピーターズ割引」 ……チケットの半券をご持参いただくと、当日券が2,500円に!「当日券限定グループ割引」 ……3人以上で当日券をお求めいただくと、1名様タダ(無料)![お願い]※小学生未満のお子様のご入場はご遠慮ください。※劇場の構造上、車椅子でのご入場はご遠慮ください。※開演後、ご入場できない時間帯、指定席を変更させていただく場合がございます。お問い合わせ先:コマンドエヌ 03-5338-6215(お電話でのチケットのご予約は承っておりません)(下北沢 OFF・OFFシアターにて)
2010.05.04
毎度注目の、横浜を拠点に活動している劇団studio salt(スタジオソルト)。第13回公演は、下北沢に進出です。地域密着型小規模動物園に世界的に大人気な珍獣パンラがやって来ました。各セクションの飼育係が集められ、チームを組んでパンラの飼育&広報活動に頭と身体を使って大奮闘。その様が描かれています。運営が厳しい現状で、全員が知名度のある動物の受け入れに賛成というわけではありませんが、「チーム」に始まる人間関係を動物園で垣間見る、その視点が洒落ています。今回は、初のゆるっとしたコメディーだそうですが、コンプレックスや自然界の摂理を唱える辛口の現実にも目を向けた、studio salt(スタジオソルト)らしい作品に仕上がっていました。人間だって動物だ。短編映画にしても面白そうです。いつもながら、折込のプログラムに書かれる作・演出家の「ご挨拶」は、痛いくらいに現実を見据えています。そんな彼女が作り出す作品には、嘘がない、と思うのです。作・演出・椎名泉水、舞台美術・小林奈月※公演の詳細は、studio saltのサイトで。 ※舞台裏や、日々の活動がUPされている「塩日記」(下北沢 OFF・OFFシアターにて)
2010.04.25
『御名残四月大歌舞伎』ですから、第一部、第二部ともに見逃すわけにはいきません。第一部「御名残木挽闇争(おなごりこびきのだんまり)』では、花形と呼ばれている若手の役者が揃って中心となって登場する華やかな演目です。登場する役名はお馴染みのものですが、内容が歌舞伎座の新築に係わるものであるところが、歌舞伎らしいと思いました。だんまりでは、闇の中、大切なものが人から人へと持ち主を変えて渡っていきます。ここで渡ったものは、新しい歌舞伎座の設計図。一同は、三年後に再びこの地で会うことを約束して去っていくのでした。「熊谷陣屋(くまがいじんや)」繰り返しよく上演される名作です。随分前になりますが、歌舞伎通のえびす組のコンスタンツェに、歌舞伎を昼夜どちらかを観たいけれどどうしたらいいか相談したところ、「熊谷陣屋」のある方だと薦められたことがありました。そのおかげもあって、努めてこの作品を観るようにしていました。今回の熊谷次郎直実は、中村吉右衛門。熊谷と同様に、藤の方、熊谷の妻 相模の役どころも気になります。歌舞伎のレパートリーシステムならではの、初心者にとっては配役の違いも楽しんでいます。「連獅子(れんじし)」この演目も、様々な役者の組み合わせで観てきました。獅子の親子の舞踊なので、親子など血縁関係にある役者で見ることが多い作品です。今回は中村勘三郎、勘太郎、七之助親子による舞ですが、さすが中村屋。獅子の精となってからの毛を振る場面では、息がぴったり合うのは当たり前、どこで呼吸を合わせているのか次第に早くなっても乱れることはありません。これぞ技、これぞ芸を見せ付けられて、客席からは何度も何度も大きな拍手を送りました。第二部先月に引き続いて「菅原伝授手習鑑」の四段目の「寺子屋(てらこや)」から始まります。こちらの作品も、何度観たことでしょう。主従の忠義に、親子の情、この深い物語は、観るごとに観客に新たな発見を促します。「三人吉三巴白浪(さんにんきちざともえのしらなみ)」お嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三、三人が出会い、義兄弟の契りを交わす有名な場面。今回はそれぞれ尾上菊五郎、中村吉右衛門、市川團十郎と、なかなか見られない役者が揃いました。それぞれが表の顔、本性、そして契りを交わすに至る変化を見るのも興味深い。円熟した役者が綴る名場面を堪能しました。そしてもう一度第三部「実録先代萩(じつろくせんだいはぎ)」初日に観た第三部は、3階席からでしたが、今回は1階席から役者の表情を楽しみます。浅岡の息子の千代松と主君の亀千代が初めて出会う場面となりますが、子役の堂々とした態度により時には笑いと涙を誘いました。亀千代に扮する片岡千之助は、片岡仁左衛門の孫で現在10歳。仁左衛門も『女殺油地獄』の与平を、将来は千之助に教えたいという話しも聞かれます。その日が待ち遠しいと思わせる千之助、新しい歌舞伎座へと期待が膨らみます。「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」の茶屋廻りの金棒引きの音で始まる場面はワクワクしますね。満を持して揚巻の登場。扮する坂東玉三郎の眩いばかりの美しさ。そして隅から隅まで歌舞伎座さよなら公演最後の演目ならではの豪華な配役です。歌舞伎ではちょっとした出番にも大きな俳優がつくことをご馳走と言います。片岡仁左衛門に続いて、中村勘三郎の登場に、客席は沸き、役者もそれに応える日々のアドリブが楽しいお役柄。昔からその時代の流行を語るのだそうで、助六の團十郎や白酒売の菊五郎に向かって、今旬な話題で観客を笑わせてくれました。千穐楽には一体どんな大騒ぎになるのでしょう!!!江戸時代の洒落た風習に感謝しつつ、帰りには名残惜しく歌舞伎座の写真を撮りまくったのでした。※公演詳細は、歌舞伎公式ウェブサイトで。(歌舞伎座にて)
2010.04.24
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文学座有志による自主企画公演は、いつも贅沢なキャストと演出を堪能しています。久保田万太郎の世界は久しぶりの観劇となりましたが、初回の勉強会と称していた頃が平成15年。アトリエの隣にあるモリヤという木造の稽古場で上演されました。翌年から自主企画公演としてサイスタジオコモネAスタジオに場所を移し、毎年上演が重ねられ、今回はかつてモリヤのあった場所に建設された新モリヤビル一階での上演です。初回に観た『十三夜』『蛍』では、稽古場に設えられた狭い舞台ながら、しっとりとした和服姿の俳優の所作、古風な台詞回しの確かさに、唸りました。翻訳劇や現代の作品での生き生きとした俳優の芝居も魅力的ですが、和服で登場する日本文学の世界は、この文学座においては格別です。今回上演されるのは『三の酉』(脚色は演出も担当する黒木仁)、『夜長』。『三の酉』は、料亭での芸者と馴染みの客の会話が中心となる短編です。芸者となった彼女の人生を垣間見るような、大人二人の会話にしみじみと聞き入りました。『夜長』は、ただただ面白い。ある長い一夜の物語、作品にぴったりの役者が揃っている、贅沢な時間を楽しみました。※チケットの予約は直接文学座企画事業部へ。 文学座の場所は、こちら。(文学座 新モリヤビル1階にて)☆作・久保田万太郎「春泥/三の酉」講談社文芸文 『三の酉』を収録
2010.04.23
◎studio salt第13回公演『パンラが野毛にやって来た★GA~!GA~!GA~!』◎4月24日-29日、下北沢 OFF・OFFシアターにて。作・演出・椎名泉水毎度注目の、横浜を拠点に活動している劇団studio salt(スタジオソルト)。今度は下北沢に進出です。舞台は横浜ですが、それをあえて下北沢で上演してしまうところ、そして今回は客演なしの劇団員のみの出演というところが、studio saltの「らしさ」だと思います。横浜は遠いと感じていた観客に、贔屓の観客としても知っていただきたい気持ちでいっぱいです。以下、作・演出の椎名泉水の紹介文から引用しました。●ストーリー横浜は野毛にある、地域密着型小規模動物園に世界的に大人気な珍獣パンラがやって来た!突如世間から大注目される事となった小さな動物園。知名度があがる事によって得るモノと失うモノ、本当に大切なモノとは?不器用ながら一生懸命に生きる愛すべき人々─。飼育員達の懸命なドタバタ劇の中に懐かしく大切な想いを込めたソルト的コメディ。●作・演出 椎名泉水●キャスト 麻生0児 高野ユウジ 東享司 山ノ井史 木下智巳 鷲尾良太郎●スケジュール【2010年4月】24日(土)19:3025日(日)13:00/18:0026日(月)19:3027日(火)14:30★/19:3028日(水)14:30★/19:3029日(祝)14:30★27日(火)14:30、28日(水)14:30の回は平日昼割引2,000円です。※受付開始は開演時間の45分前、開場は開演時間の30分前です。※25日(日)は昼、夜ともに開演時間が他の公演日と異なりますのでご注意下さい。●チケット料金日時指定・全席自由席・整理番号付【一般】前売・当日共/2,500円【平日昼割引】前売・当日共/2,000円[学生割引]前売のみ/1,500円(高校生以下・要学生証)◆ご予約いただいた順番に早い整理番号のチケットとなります。◆未就学児の入場はご遠慮下さい。●会場下北沢 OFF・OFFシアター 世田谷区北沢2-11-8TAROビル3階(小田急線・井の頭線「下北沢」駅下車、南口を出て向かいのビルの3階)tel/03-3424-3755※公演詳細は、studio saltのサイトで。・・・そして、お決まりの私の紹介文で締めくくりたいと思います。今やその活動から目が離せないのがこの studio salt(スタジオソルト)です。座付き作家で演出家の椎名泉水、彼女の描く問題の本質から目を逸らさない視点には、潔さ、温かさを感じます。そして、毎回この期待が裏切られることはありません。過去に観たstudio saltの作品は、 『飢餓陣営』リーディング 2007年2月 『7』2007年5月 『職員会議』2007年11月 『SOMEDAY』2008年5月 『天気のいい日はボラを釣る』2009年5月【初の東京公演】 『あの日僕だけが見られなかった夜光虫について』2009年10月☆彼らの舞台裏や、日々の活動、そして出演メンバー紹介がUPされている「塩日記」。 注目のページ欄に掲載しています。
2010.04.14
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東京裁判の詳細は年号を覚えることだけで事足りたのが、それとも不勉強な私が覚えていないのか、ついに歴史と向き合う時が来ました。井上ひさしの戯曲は、とにかくとっかかりが入りやすい。そして登場人物の歌うメロディーが最後まで、帰り道に至ってもずっと耳に残っています。ふと、井上作品がミュージカルや音楽劇とされない理由を考えてみました。不思議と今まで音楽的な角度から作品を捉えたことはありません。世間一般にもミュージカルという扱いはされていないようです。劇中の音楽は、観客の胸に染み入る手段の一つ、演出に過ぎないのかもしれません。そしてちょうど今、私がこうしているように、劇場を後にしても芝居の情景がメロディーとともに走馬灯のように甦り、気にかかる言葉をひとつひとつ辿る作業が続くのです。さて物語は、昭和21年、日本がアメリカの占領下に置かれて東京裁判が始まるという時、紙芝居屋の親方、田中天声(角野卓造)は突然、GHQ・国際検事局から検察側の証人として東京裁判に出廷することを命じられました。裁判に出廷した後、天声は東京裁判にはカラクリがあるのではないかと思い始めます。一国民の目線で抱くそのカラクリとは…。この作品を含む東京裁判三部作は、2001から2006年にここ新国立劇場で上演される際に書き下ろされたそうです。井上ひさしの作品は、初期の頃から全く輝きを失わないものだと思います。日常から戦争に触れて、戦争を知らない観客に、いかに悲しい出来事を生むものかをささやき、時には叫んでいるように感じられます。プログラムの冒頭には、こう書かれています。 「いつまでも過去を軽んじていると、 やがて私たちは未来から軽んじられる ことになるだろう。 井上ひさし」これが作家の鳴らす警鐘だったとしたら…残念なことにもう新作で、戦争や隠された疑問について「知らない」人々に知らせることは叶わなくなってしまいました。観劇の翌日、11日早朝のニュースで、作家の訃報が流れました。これからは残された作品が繰り返し上演されるよう、観客として声をあげたいと思います。作・井上ひさし、演出・栗山民也、音楽・クルト・ヴァイル、宇野誠一郎、音楽監督・編曲・久米大作、美術・石井強司、照明・服部基、音響・黒野尚、衣裳・前田文子※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。(新国立劇場 小劇場にて)☆作・井上ひさし「夢の裂け目」集英社 ☆作・井上ひさし「夢の泪」集英社 ☆作・井上ひさし「夢の痂」集英社
2010.04.10
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今年は文学座附属演劇研究所開設50年になるそうで、研修生が必ず授業で行う作品が本公演でラインナップされています。3月の『女の一生』に続いて今回上演されるのはソーントン・ワイルダー作『わが町』。1997年にセゾン劇場(現在はルテアトル銀座)で上演された作品を観たことがあります。少年と少女が小さな田舎町で、ともに成長するこの過程だけでも思春期がドラマチックに感じられました。ジョージとエミリー、二人は結婚し、そこからさらに彼女の死が二人を別ちます。残された寂しさを嘆くジョージ、そして生の世界に未練のあるエミリー。彼女の死後までたっぷりと描かれている作品です。残念ながら、その時何を感じたのか、今の私は覚えていません。今回はその長編の物語を休憩なしの2時間にまとめています。エミリーの生と死のどちらに重きを置くということではなく、それでいて作品の主張を押し付けられるでもなく、自分なりの手応えがありました。登場人物たちが、「わが町」と言って愛するこの地、そこで毎日生き生きと生活する姿が印象的です。通りすがりの新聞配達の少年、彼のハツラツとした姿に観客は心を奪われたことでしょう。あんなにも活発な姿を見ているからこそ、少年の後日談で「死」が語られた時には胸に込み上げるものがありました。死と隣り合わせの生だから、だからこそちゃんと生きたい、そんなことを感じました。「千の風に~」ではないですが、愛する人のお墓の前では嘆き悲しむのではなく、故人を思い出し、今どう自分が生きているかを語れるようにしたいという想いを抱きました。心の片隅に置いて、時々覗きたい作品です。エミリー役の栗田桃子の、少女から大人へ微妙な心の揺れが全身に感じられる演技も魅力的です。作・ソーントン・ワイルダー、訳・森本薫、演出・坂口芳貞、美術・乘峯雅寛、照明・金英秀※公演の詳細は文学座のサイトで。(全労災ホール/スペース・ゼロにて)☆「ソーントン・ワイルダー(1)」ハヤカワ演劇文庫 「わが町」を収録
2010.04.09
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「演劇とミュージカルの楽しみ」こんな私の興味を引くタイトルの講座がありました。講師は、演劇評論家の扇田昭彦、そして俳優の浦井健治です。まず、扇田先生から、日本のミュージカルの起源となる作品、その経緯が語られました。劇中で初めて歌われた唄は、意外や意外、耳にしたことのある、あの唄。そんな史実に驚いたところで、浦井氏を迎えて話が膨らみます。鵜山仁演出『ヘンリー六世』でタイトルロールを演じた彼は、その演技に対し、第44回紀伊國屋演劇賞個人賞、第17回読売演劇大賞杉村春子賞を受賞。1月に上演されたミュージカル『蜘蛛女のキス』でも、俳優としての磨きのかかった歌唱を聴かせてくれました。この講座当日も、劇団☆新感線『薔薇とサムライ』の公演を終えたばかりという、まさに「演劇とミュージカル」の旬な話題へ、俳優としてのこだわり、そして趣味やプライベートの話題にまで発展していきました。演劇評論家の目線で、そして質疑応答では観客の目線で、一人の俳優から現場の生の声が聴けたように思います。私にとっては冒頭で扇田先生の述べていた、ミュージカルの観劇人口は演劇の中でも多いのに、ミュージカルの劇評は少ない、というような言葉が耳に残ります。思えば、えびす組のメンバーの中でも好んでミュージカル作品を観るのは私くらい。せっかく学生の頃からミュージカル作品を観て、記憶と感性を蓄積してきたのですから、もう少し踏み込んでミュージカルというジャンルを捉えてみようかと考えさせられました。(朝日カルチャーセンター新宿にて)☆著者・扇田昭彦「ビバ!ミュージカル!」朝日新聞出版☆著者・扇田昭彦「ミュージカルの時代」~魅惑の舞台を解き明かす~キネマ旬報社☆著者・扇田昭彦「蜷川幸雄の劇世界」朝日新聞出版
2010.04.07
今月は、歌舞伎座と、ここ新橋演舞場でも歌舞伎が上演されています。市川猿之助演出猿之助四十八撰の内『四谷怪談忠臣蔵』タイトルからもわかるように、2つの作品が一つになっています。チラシから紹介すると、「鶴屋南北の傑作『東海道四谷怪談』は『仮名手本忠臣蔵』の外伝という構想で描かれました。『四谷怪談』に登場する民谷伊右衛門は、実は浪士として、討入に加わるべき存在だったのです・・・」『忠臣蔵』の塩谷判官が切腹の後には、お家取り潰し、そしてここから浪人となった伊右衛門とお岩の『四谷怪談』の話へと続いていきます。市川段治郎が、悪の中にも艶っぽい伊右衛門という人物を印象的に演じ、彼を取り巻く女性たちの悲劇を一層深いものにしています。斧定九郎(市川春猿)の存在も、意外や意外。宙乗り、本水の立ち回りもありますが、良い意味で奇抜さは感じさせません。表と裏、明と暗のように2つの物語が一つの舞台で繰り広げられます。歌舞伎だからこそ溶け込める世界観がありました。※公演の詳細は歌舞伎公式ウェブサイトにて。(新橋演舞場にて)
2010.04.04
2008年7月に劇団☆新感線の『五右衛門ロック』が上演されました。今回も石川五右衛門の登場です。海を渡り、そして異国の地へ???古田新太の扮する石川五右衛門というキャラクターだけがそのまま、劇団☆新感線の舞台を笑いを誘う魅力的な存在で活躍しています。ヒロインは天海祐希扮する女海賊&王女様。パロディに見える衣裳に身を包む場面あり、演じる側が真剣に見せ場を作れば作るほど、安心して笑える環境が客席に広がります。この中で、浦井健治、山本太郎、神田沙也加ら、若手の客演陣の見せる新たな「顔」も楽しみの一つです。※公演の詳細は劇団新感線の公式サイトで。 『薔薇とサムライ』オフィシャルサイトをクリックすると、音楽が流れます。(赤坂ACTシアターにて)※写真のように桜が綺麗な頃、これもまた観劇の想い出です。
2010.04.03
これも今の歌舞伎座で最後の光景です。3月に引き続き、4月も三部制の歌舞伎座。第三部の開演時間は18時20分。仕事を終えてから早速歌舞伎座へと向かいました。第三部は、「実録先代萩(じつろくせんだいはぎ)」「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどさくら)」「実録先代萩」作・河竹黙阿弥仙台藩伊達家のお家騒動を舞台化した作品で、この伊達騒動については歌舞伎公式ウェブサイトの歌舞伎今日のことばに掲載されていますので、参照してみてください。この「実録先代萩」の浅岡(中村芝翫)は、「伽羅先代萩」では乳母・政岡です。「伽羅先代萩」で政岡が登場する時、幼い藩主と政岡のわが子千松は、既に主従の関係で舞台に登場しています。この「実録先代萩」では、幼い二人が初めて出会う興味深い場面がありました。「助六由縁江戸桜」この作品は、市川海老蔵による口上で始まります。助六を市川團十郎、揚巻を坂東玉三郎が演じ、二人を取り巻く様々な役に大きな役者が登場し、場内を沸かせます。千穐楽はこの作品で昨年1月から上演されてきたさよなら公演が幕となるのですから、感慨深い想いで舞台に見入りました。歌舞伎って面白い。さて、もう一日、特別な「閉場式」という公演がありますが、こちらの観劇は叶いそうにありませんから、さよなら公演を心に刻みながらしっかりと見届けたいと思います。※公演の詳細は、歌舞伎公式ウェブサイトで。(歌舞伎座にて)
2010.04.02

ここ武道館で、オーケストラのコンサート。クラシックにミュージカルに映画音楽、今をときめくミュージカルの歌い手たち、そしてスーザン・ボイル。私の関心をギュッと詰めたようなコンサートがありました。しかし19時開演の武道館に辿り着くのは容易ではありません。靖国通りは写真のように満開の桜並木。 日没後にはライトアップされた千鳥ヶ淵の夜桜を見ようと九段下方面は物凄い人の列が出来ていました。このコンサートは二部制で、一部では、今注目を集めているミュージカル俳優が3人、それぞれ選曲した想いを語りながら歌います。8000人の聴衆のほとんどがスーザン・ボイルの名の下に集まったのかもしれません。しかし、だからこそ、彼らがここで歌う意義は大きかったのだと思います。タイプと経歴の異なる3人の歌い手たち。昨年春にミュージカルの世界に彗星のように現われた田代万里生。宝塚男役トップだった安蘭けい。蜷川演出作品での演技も人々を魅了する、情緒溢れる歌声の石丸幹二。今のミュージカル界に個性と実力を兼ね備えた魅力溢れる人材がいることを、広く一般の聴衆に知らしめた感がありました。そしていよいよスーザン・ボイルの登場です。初めてオーケストラの演奏で歌うという「夢やぶれて」で登場した彼女の緊張が広い武道館にも伝わってきます。それだけ聴衆も集中して彼女の歌声に聴き入っていたというわけです。二曲、三曲と歌ううちに、歌声で伝えることを楽しんでいる彼女の姿が見えてきました。最後にもう一度「夢やぶれて」を歌った時には、会場の誰もが彼女の虜です。スーザン・ボイルの歌声は、余計な飾りがない、素直な歌声です。これが何度でも聴いていたい歌声の魅力なのだと思いました。イギリスには、サラ・ブライトマンというミュージカル出身の高音の美しい歌手がいます。歌声で、二人が並ぶ日も遠くないかもしれません。一年前、スーザン・ボイルは、まだデビューもしていませんでした。それがこの日、49歳の誕生日を、日本で日本の人々に祝ってもらう姿が誰に想像できたでしょうか。夢をあきらめない、彼女のメッセージが歌声として私たちの目前に示されたような気がしました。※公演の詳細は読売日本交響楽団のサイトで。(日本武道館にて)☆スーザン・ボイル「 I Dreamed A Dream: 夢やぶれて」CD ☆スーザン・ボイル「From Pain To Fame」DVD 彼女の生い立ちと、人生を一変させることになった歌への情熱を描いたドキュメンタリー。
2010.04.01
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