夏のパン作り

夏のパン作り

 夏のパン作りで一番注意したいのは過発酵。これは経験しないとわかりにくい状態ですが、1度経験すると忘れられないほどのショックを受ける場合も多いのでは?


 そこで、夏および室温が高い環境での注意点などを書いて見ました。




★過発酵とは?★

 パンの発酵が必要以上に進んだ状態で、パン生地が蜂の巣のようにスカスカの穴だらけになり、ふっくら感に代わってもちもち感が強くなってきます。表面がピカピカつるつるで焼き色がつかず、膨らみが悪かったり逆に陥没したりするのも過発酵になってしまったパンです。


 原因は発酵時間が長すぎたり発酵温度が高すぎたり。夏季には温度管理が難しいので、イーストの量や発酵時間に気をつけなければなりません。




過発酵対策あれこれ


*HBの場合

①仕込み水を冷やします。HBはモーターの熱でパンケース内の温度を上げるので発酵が早く進んでふっくらパンが焼き上がるわけですが、室温が高すぎると必要以上に進みすぎてしまうのでどこかでそれを抑えなければなりません。HBそのものを涼しい場所に移すのでもなければ、中に入れる材料を冷やすしかありませんね。バターや卵などは冷蔵庫から出し立てを使い、仕込みの水も冷たいものを使います。それでも過発酵になりそうなら、計量カップに氷を入れ、指で沈めながら水を足して計量したものを使います。


②タイマー予約は避けたほうがいいかもしれません。夜中も室温が下がらない場合は、せっかくの冷えた材料を仕込んでも意味がなくなってしまいます。しかしそれほど暑くない場合なら、氷水で仕込んだものがこね始める時にちょうどいい具合の生地温になっている事もあります。夏だからと言って冷やしすぎは禁物。室温がそれなりに低ければ冷やす必要はないのです。


③タイマーで焼く場合、卵や牛乳、豆乳を仕込むのは危険かもしれません。高温多湿の環境に長く置くと、物によっては過発酵どころか食中毒を招きます。


④パンケースを途中で冷やすと発酵を抑える事が出来ます。ナショナルHBはパンケース自体がかなり熱くなってしまうので、寝かしや1次発酵の時にケースを取り出して冷たい濡れ布巾で冷やすと落ち着く事があります。ケースを取り出したら、生地が乾燥しないように上をラップやビニール袋などで覆っておきます。


⑤東芝HBではパンケース自体はそれほど熱くならないので、こねている時に蓋を開けるなどして熱がこもらないようにするだけで引き続きお任せで焼いてくれる事が多いです。お持ちのHBは、パンケースのモーターに接する部分がどのくらい熱くなるでしょうか?機会があればチェックしてみるのもいいかも。


⑥早焼きコースがあれば、短時間で焼いてしまうのもひとつの手です。甘いおやつ系ならおいしいものが出来ると思います。


⑦生イーストは発酵力が強いので、暑い時期にHBで使うのは避けたほうが無難です。クロワッサンのような折り込み生地を作る時、生イーストを使うと冷やしてもマイペースでどんどん発酵してくれます。と言う事は、過発酵を防ぐために途中で生地を冷やしても効果がないと言う事です。これは経験済み。


⑧生地作りコースを使う場合も、発酵が進む事を考慮してほったらかしにしない事をお勧めします。1次発酵終了のブザーが鳴る前に発酵が終わってしまう事は十分に考えられるので、こねが終わったら生地の大きさをチェックしておきましょう。こまめに様子をみて、2倍ほどになっていたらフィンガーチェックで確認するのがいいと思います。



*イースト生地のその他の注意点

①手ごねの場合は様子を見ながら作れるので機械よりは安心出来るかもしれません。通常のレシピでは、ドライイーストをHBで作るものの倍量使う事が多いようですが、室温が高い時は量を減らしてもよく発酵すると思います。


②ベンチタイムの時、湿度が高ければ濡れ布巾を省略したほうがいいかもしれません。生地の湿り気が多すぎるとベタついて扱いにくくなります。その上小さな成形パンで手間取っていると、ベンチタイムでも過発酵の原因になる事もありますのでご注意を。


③リッチなパン生地のほうが発酵に時間がかかります。砂糖や油脂がたっぷりのレシピなら比較的安心しておいしいパンが作れます。ただし、暑い時期にリッチなパンが食べたくなるかどうかは疑問ですが。


④イーストの働きを妨げるものを上手に使います。普通はイーストから遠ざけながら仕込む塩や油脂などを、わざわざイーストと接するように混ぜて使います。濃いコーヒー液などもイーストの働きを邪魔するので大いに利用したいもの。


⑤発酵しやすいものには注意します。全粒粉、ライ麦粉などは発酵が進みやすく、放っておくと過発酵になりやすいものです。そもそもは傷みやすい素材ですから、冷蔵庫で管理して早めに使います。夏場ではあまり大量に買い込まないほうがいいかもしれません。



*酵母パンの場合

①発酵にとても時間のかかるホシノ酵母のパンなどは、夏にはふっくらおいしく出来るもののひとつです。ただし生種は暑さに弱いので、酷暑の続く地方では種起こしがうまくいかないかもしれません。


②酵母のパンでもリーンなものは過発酵になりやすいので注意します。特に一晩かけての1次発酵は油断禁物。なるべく涼しい場所を選んで行いましょう。


③白神酵母は値段が高めなので量をケチって使う方法をあれこれ考えていたものですが、夏場では少ない量でふっくらおいしいパンが出来ます。翌日もしっとりふわふわのまま。


④パネトーネマザーのパンはまだ夏場では試していませんが、高めの温度に設定したオーブン内で2次発酵を行っても何の問題もないので暑さには強そうです。乳酸菌の働きで長期の常温保存も安心だそうです。まだ経験不足なので、いずれ結果を書き加えていきます。



こんな事にも注意を

 傷みやすいパンを作らないように心がけたいものです。たとえばプルマン・タイプの食パン。ふわ~っと釜伸びさせて焼く山形と違って、蓋をきっちりかぶせて作るプルマンは生地に水分を多く含みます。焼いてすぐに食べきれない時は冷凍したほうが無難です。同じ期間でも山形よりはるかに早く傷みます。


 カスタードクリームも不安な素材ではあります。どうしてもクリームパンが食べたい時はクリームを手早く冷ましましょう。鍋で煮上げたクリームをバットなどに移し、熱いうちに表面にラップをぴったり貼り付けて雑菌が入らないようにしてから冷まします。あら熱が取れてから洋酒を加えても。


 夏には気温だけでなく湿度も上がります。いつも通りの水分量ではやわらかいドロドロの生地に仕上がる事もありますから、特に湿度の高い時には思い切って少なめの水分量で仕込んでみる事をお勧めします。ホシノ酵母などは発酵の間にどんどん湿り気を帯びてきますから、こね終わった生地は硬めくらいに調節するほうが無難です。



 ◎2003年5月19日更新

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