全1122件 (1122件中 151-200件目)
噛み締めるように語るコイユールの全身は仄かな白光に包まれ、大気中に溶けるように半ば透けていて、その様子からも、彼女が実際にここにいるわけではないと、アンドレスには分かった。それでも、コイユールの不思議な力をよく知っている彼には、目の前の光景が幻覚などではないということも、彼女自身が説明した通りであろうことも、悟っていた。「コイユール、俺は、どうしたらいい?毒のようなものを吸い込んだらしくて、目も喉もやられて、周りも見えないし、吐き気もひどい。戦うどころか、まともに歩くことさえできないのに、トゥパク・アマル様の身に危険が迫ってる…!」思いがけぬ愛しい人との再会で、一気に緊張感から解き放たれて、アンドレスは止(とど)めようもなく内面の思いを吐露していた。そんな彼の手を握り締める細い指先に力を込めて、コイユールは、アンドレスの瞳の奥まで貫き通すように見つめた。『希望を無くさないでアンドレス。私、さっき、砦の向こうにある山の稜線が金色に光るのを見たの。とても力強くて、神々しい綺麗な光だった。インカの神様が、まだ諦めちゃいけないって、そう告げておられるように思うの』 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.07.11
コメント(34)
盲目の暗闇の中で、トゥパク・アマルを求めるかのように必死に伸ばしたアンドレスの手が、力無く石床に落ちかけた時、不意に、ふわりと温かな何かがその手を優しく包み込んだ。と同時に、彼の耳元に、聞き覚えのある柔らかな女性の声が、微かな遠い鈴の音のように響いてきた。『――アンド…レ…ス』朦朧としながらも、アンドレスは、反射的に、その感触と声に強く心を集中する。すると、今度は、もっと近くで、鮮明に、その声が聞こえてきた。『アンドレス、わたしよ』「コイユール――?!」視界の閉ざされた闇の中で、張り裂けぬばかりに琥珀色の瞳を見開いたアンドレスの目の前に、確かに、コイユールはいた。心配のあまりか涙ぐんだ表情で、それでも力を分け与えるように己の手を華奢な指先で包み込みながら、清んだ眼差しで真っ直ぐこちらを見つめている。アンドレスの表情が、驚きと共に大きく輝いた。「俺は…夢を見ているのか…。それとも、もう、死んでしまったのだろうか……」恍惚と呟いたアンドレスに、コイユールは長く艶やかなおさげを揺らしながら、『違うわ。あなたは、まだちゃんと生きているわ』と、涙を滲ませた目元を優しく微笑ませた。『私も、こんなふうにアンドレスに会いに来られるとは思わなかった。だけど、すごく不吉な予感がして、心配で、心配で……!そうしたら、ここにいたの』 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.07.08
コメント(30)
意識の飛びそうなほど猛烈な頭痛と吐き気に襲われながらも、アンドレスは、強度の憤怒と危機感に突き上げられて、猛然と立ち上がった。(だけど、アレッチェ…味方の兵さえ、いとも簡単に犠牲にする、おまえの汚いやり方は許せない。それに、トゥパク・アマル様――トゥパク・アマル様が、危ない)異物が沁みてズキズキ痛む目からは涙が滲み出し、それこそ大量の唐辛子を喉に押し込まれたような激痛と渇きに意識朦朧となりながらも、アンドレスは、壁伝いに、手探りで元来た道を戻りはじめた。(トゥパク・アマル様も、俺たちと同じように毒にやられていたら、アレッチェは必ずトゥパク・アマル様に手を下す……!)しかし、頭が引き千切られそうな激烈な頭痛と、内臓ごと全て吐き出してしまいたくなるような常軌を逸した嘔気に襲われて、アンドレスは、またもガクリと石床に膝をついた。通路の数ヵ所に設けられている覗き窓に駆け寄って、せめて新鮮な空気を吸うことができたらと切望するも、もはや動く力も、正気を保っていることも難しかった。(ああ…だけど、このままでは、トゥパク・アマル様の御身が…。俺は、またもトゥパク・アマル様をお守りできないのか……。トゥパク・アマルさ…ま……!) 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍)植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。 ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.07.04
コメント(34)
己の鼻腔に、マスクの隙間を通って、ツンとした強烈な刺激臭が充満してくるのを、アンドレスは、ぞっとしながら感じていた。(やはり空気がへんだ…!ま…さか、大気中に何か毒物を混ぜて流し込んでいるんじゃないのか?――いや、だけど、それはあり得ない。だって、そんなことをしたら、インカ兵だけじゃなく、この砦の中にいるスペイン兵まで巻き添えになってしまうじゃないか……)視界を失った己の周りで、敵味方の別なく、ドサドサと人々の倒れていく不気味な気配と音がする。アンドレス自身も、とうとう堪え切れずに、石床の上に両膝立ちに身体を崩した。(いや…!あいつなら…アレッチェなら、やりかねない…!)アンドレスは心臓の凍りつく思いで、わななく唇を噛み締めた。(あいつなら、俺たちインカ兵を一網打尽にするためなら、味方のスペイン兵さえ、犠牲にすることも厭(いと)わない。砦の外にも、スペイン軍の大軍は温存されているのだ。ならば、砦内のスペイン兵が使い物にならなくなろうとも、ここにいる俺たちインカ兵をまとめて無力化できるなら、その方を優先するに違いない。俺たちを身動きできないように弱らせておいて、砦外の友軍を呼び寄せ、抵抗できない俺たちを始末すればいいだけのことなのだから…!) 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍)植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。 ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.07.01
コメント(25)
アンドレスは、今も右手でサーベルを辛うじて振いながらも、もう左手では、とうに外してしまっていたゴーグルとマスクを腰袋から引っ張り出していた。身体の異変や激痛は、何かを吸い込んでしまったことによる症状ではないかと、直観的に感じたからだった。しかし、それらを装着しても防御効果は感じられず、ますます視界はチカチカして、頭はくらつき、もはや敵と味方の姿を見分けることさえままならない。ジェロニモや仲間たちの無事を確かめたい思いに駆られるも、閉ざされた視界の中で、ひりつく喉は声すら出せず、どうにもすることができなかった。熱く焼け爛れたような酷い喉の痛みも、マスクをしても何ら減ずることはなく、むしろ、いっそう呼吸困難に陥りそうだ。正体不明の何か――それは、このような原始的なマスクやゴーグルでは太刀打ちしようのないものであると、アンドレスは苦渋の思いで察していた。それでも諦めずにサーベルを振い続けながらも、奪われた視界の中で、彼は、気配で周囲の様子を掴もうと懸命だった。つい先ほどまで、あれほど激しく続々と己に襲いかかりきていた敵の刃も、今は、水が引いたように不気味なほど大人しくなっている。アンドレスは、背筋の寒くなる思いで、固唾を呑み込んだ。(異変を感じているのは俺だけじゃない…。ジェロニモ…みんな……いや、敵兵たちもだ…!ここにいる誰もが、目や喉をやられて、その上、ひどい吐き気や息苦しさで、戦う力を奪われている) 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.27
コメント(31)
再び、スペイン砦内部――。副王ハウレギの嫡男アラゴンが、アレッチェからの伝令により、トゥパク・アマルの作戦を見抜いて攻勢の手を強めていた頃、且つまた、コイユールが不思議な光を第六感でとらえていた頃、アンドレス当人は、トゥパク・アマルやロレンソから別れて、砦の武器庫を抑えるべく敵と剣を交えながら疾駆していた。そのアンドレスの行く手を阻もうと、敵兵たちが続々と群れ成して躍りかかりくるも、アンドレスのサーベルが蒼き一閃を放つたび、たちまち敵の姿は石床に沈んだ。同様に、アンドレスを援護しながら走るジェロニモらアンドレス隊の精兵たちも、アンドレスに劣らぬ勢いで、果敢な戦いぶりを見せている。アンドレスは汗の雫が滴り落ちる前髪の隙間から、頼もしい部下たちの様子に視線を馳せて、「皆、その調子で頼むぞ。あと一息だ!」と、心で力強く呼びかけた。が、次の瞬間、何とも言い難い異変を我が身に感じて、ぎくっと身を固めた。(――!!)急激に目の奥がズキズキ痛みだし、喉にはヒリヒリ焼け付くような激痛が広がっていく。それでも右手でサーベルを振いながら敵と対決し続けるも、たちまち、それらの痛みは耐え難いほど激しいものになっていった。堪えきれずに、左手で己の喉に触れると、まるで首全体が炎に巻かれたような高熱を帯びている。(な、なんだ……?俺たちが撒き散らしたスパイス弾の効き目が、今頃、また?)確かに、今、己が感じている身体の異変や激痛は、唐辛子や胡椒の粉末を大量に吸い込んだ時の症状とよく似てはいた。(だけど、それにしては、あまりに症状が強烈すぎるのではないか?!)アンドレスの頭は混乱しつつも、激痛と嘔気に喘ぎながら自問自答し続ける。(あのスパイス弾では、これほどの身体症状は引き起こせないはずだ。そもそも、スパイスを撒き散らしてから、もう、かなりの時間が経っている。あの程度の唐辛子や胡椒の効果なんか、とっくに薄れてしまっているはずだ――なら、これは、一体……!?) 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。 『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.24
コメント(28)
我に返ったコイユールの振り向いた表情が、今にも泣き出しそうに見えて、少女も顔を曇らせた。反乱が始まってから、もうコイユールとの付き合いの長い少女は、コイユールの持つ自然療法の不思議な力と共に、彼女の予見的な直観が異様に当たることも知っていたのだ。「コイユール、何か良くないことでも感じるの?」心配そうな友の様子に、コイユールはいらぬ不安を与えてはいけないと、サッと笑顔をつくって、「ううん、なんでもないの。ただ砦を見ていただけ」と慌てて首を振った。「さあ、あなたまで濡れてしまうわ。天幕の中に戻りましょう」そう明るく言って、友に寄り添いながら天幕へ歩み出しかけて、再び、コイユールはハッと足を止めた。降りしきる雨粒のベールの向こうに透けて見えるスペイン砦の、さらにその向こうに連なる山々の稜線が、にわかに眩い黄金色に輝いて見えたのだ。それは、今しがた己の中に湧き起こった強い不安など瞬時に忘れさせてしまうほどに、パワフルな、美しい輝きだった。「ねえ、見て!あれは何かしら?何かが金色に光ってるわ!」先ほどの不安気な表情とは別人のように顔を輝かせ、声を弾ませたコイユールに、隣を歩んでいた少女も驚いて、そちらに顔を振り向けた。だが、少女の目には、夜闇の中に重々しい威容を晒している砦と、その彼方に聳えるアンデス山脈の連綿たる黒いシルエットしか見えない。「あたしには何も見えないけれど。コイユール、あなた、また何かを感じるの?」首を傾(かし)げながら目を凝らす少女の脇で、コイユールは、己が感じているものが何かを探り当てようとするかのように、山々の方に身を乗り出しながら、大きく見開いた黒曜石の瞳を恍惚と輝かせている。(何かしら――?!) 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。 『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.20
コメント(30)
雷鳴が青光りする雨雲の下、屋上階から赤黒い炎をモウモウと吐き出しているスペイン砦、そして、砦麓の荒野で絶え間なく轟き渡る砲声、吹き上がる爆炎。まるで、その戦場の中心に降り立ったような生々しい戦慄が、コイユールの華奢な全身を貫いて走る。戦場と本陣を行き来する早馬の使者たちによる報告では、トゥパク・アマル軍はスペイン砦に進軍を果たし、ビルカパサ軍は作戦通りに戦いを進めているとのことだった。そして、先に砦に潜入していたアンドレス隊も、トゥパク・アマル軍を援護して果敢な戦いに挑んでいると聞いた。(アンドレス……!)断続的な雨の雫を全身に受けながら、いつしか、天幕へ向かっていたコイユールの足は完全に止まっていた。震える瞳を砦に向けたまま、薬草を抱えた両腕に無意識に力がこもる。(なにかしら…この感じは……。無性に胸騒ぎがする…!)己の胸に沸き上がった不穏な感覚の理由を探り当てようとでもするかのように、コイユールは、彼方の断崖上に聳える敵の砦を一心不乱に見つめたまま、雨の中に立ち尽くしている。そんな彼女の様子を見かねて、共に看護に勤(いそ)しむ義勇兵の少女が、天幕の中から飛び出してきた。「コイユール、どうしたの?そんなところに突っ立っていたら、雨に濡れてしまうわ。さ、中に入りましょ」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。 『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.17
コメント(27)
コイユールは、安堵の表情で目を開くと、今一度、兵の患部を確かめてから、次の兵の元へと移動していった。彼女の一族が代々持ち合わせてきた、その不思議な力――手を触れることによって、相手の苦痛を和らげたり癒したりする、ある種の自然療法的な力なのだが――は、こうして戦場で幾多の実践を重ねるうちに、いっそう磨かれ、力を高めていた。次々と運び込まれてくるインカ兵や、スペイン兵、英国兵たちの間を忙しく行き交うコイユールの頬に、不意に、ポッと、雨粒が落ちてきた。「雨だわ」くっきりした目元を見開き、その野外の治療場で夜空を振り仰いだコイユールの背後から、老齢の従軍医が声をかけてきた。「コイユール、手伝っておくれ。負傷兵たちを雨に濡らして、身体を冷やしてはいかん。急いで天幕の中に運び入れねば」「はい!」負傷兵たちの移動を手助けしようと彼女が身を翻した瞬間にも、すぐに逞しい体躯をしたインカ兵たちが走り込んで来て、手際よく負傷兵たちを広い治療用天幕の中へ運び入れていく。「大丈夫、我々に任せなさい」と頼もしい笑顔を見せた兵士たちに、コイユールは長いおさげをはためかせて頷き、かわりに周囲に積み上げられていた薬草類の方へ走って行った。貴重な薬草を雨で濡らして傷めぬよう、急いで拾い集めて両手いっぱいに抱きかかえると、自分も天幕の方に小走りで駆けていく。そうしながらも、彼女の視線は、今まさに戦闘の真只中にあるスペイン砦の方へと吸い寄せられずにはいられない。(アンドレス、今頃、どうしているかしら。お願いだから無事にしていて…!)◇◆◇お知らせ◇◆◇いつも励みになるコメントや応援を本当にありがとうございます。ご来訪くださる全ての皆さまに心よりお礼申し上げます。申し訳ありませんが、次回の更新(土曜)は、用事でお休みさせて頂きますm(_ _)m来週中には再開の予定ですので、今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします♪ 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。 『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.10
コメント(54)
それらの負傷兵たちの間を、薬草を手にして忙しく走り回っている看護の女性たちの中には、コイユールの姿もあった。サーベルによって無残に斬り裂かれた者、銃弾を身に受けて瀕死の重体の者、砲撃によって身体の一部を吹き飛ばされ、あるいは全身に火傷を負った者など、負傷兵たちは、その傷の深さも重症度も様々である。特に重症の兵たちを受け持っているコイユールのもとに運び込まれてくる兵たちは、皆、思わず目を背けたくなるような惨(むご)たらしい姿となっていた。それでも、彼女の手は臆することなく、殆ど人の姿を成さぬ血みどろの肉塊と化した兵たちの戦塵や血糊を丁寧に拭い、清潔な水で洗い清め、従軍医の指示のもとに治療を補佐していく。「くっ…!」歯を食い縛って苦痛に喘いでいる兵の傍に跪いて、コイユールは心配そうに澄んだ瞳を揺らしながら、兵の顔を覗き込んだ。「痛むのですね。どうか気をしっかり持ってください」兵の額に無数に噴き出した脂汗を手早く拭うと、彼の患部の傍に、細い褐色の指先をそっと触れた。それから、黙って目を閉じ、指先を触れさせた相手の傷口に意識を集中させていく。軽い瞑想状態の中で、己の全身に清んだ光が巡りだすのを感じながら、さらにイメージを深め、その光を「気」のエネルギーに換えて、指先から相手の患部へ送り込んでいく。やがて負傷兵の口元から漏れていた苦痛の呻きが鎮まり、穏やかな寝息へと変わっていった。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。 『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.06
コメント(38)
熾烈な攻防戦の続くスペイン砦とその麓の荒野を遥かに見晴るかすインカ軍本陣は、スペイン砦が屹立する断崖と暫しの距離を隔てて対峙した別の断崖上に置かれていた。トゥパク・アマルやアンドレスたちが大軍を引き連れて出陣してはいたが、その本陣もまた、生え抜きの精兵たちによって堅く守られている。そして、そのインカ軍本陣では、出陣して敵軍に果敢に挑んでいる男性陣に負けぬ勢いで、残された女性たちが、まさに戦争状態さながらの慌ただしさで、続々と運び込まれてくる負傷兵たちの看護に追われていた。負傷兵たちの多くは、もちろんインカ兵たちではあるが、夜戦場で戦塵や血潮にまみれて正体不明の姿形となって運び込まれてくる者たちの中には、時にスペイン兵も紛れ込んでいた。それでも、インカ軍の従軍医や看護に勤(いそ)しむインカ女性たちは、敵味方の区別なく、傷ついた者たちの治療に全力を注いでいる。負傷した者は、敵兵であろうが、たとえ捕虜兵であろうとも、丁寧に治療して看護し、回復したら解放する――反乱当初からトゥパク・アマルが貫いてきた方針は、この時期に至ってもなお、変わることなく貫かれていたのだった。そして、今、その夜の治療場には、さらにスペイン兵以外の負傷兵も大量に運び込まれてきていた。それは、その日の昼間、スペイン砦と決戦に臨んだ英国艦隊の戦艦に乗艦していた英国兵たちであった。スペイン砦の猛烈な砲撃によって、多くの英国艦が撃沈されたが、それらの沈没船から投げ出された者や、激しい戦闘の最中に海上に吹き飛ばされた者たち――そうした英国兵たちのうち、幸運にも息のある状態で浜辺に打ち上げられた男たちが、インカ軍本陣に運び込まれ、懸命な治療と看護を受けていた。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.06.03
コメント(29)
エドガルドの言葉に、アラゴンも、その鋼色の双眸に赤黒い炎を映しながら、険しい表情で顎を引いた。「まこと、あのビルカパサという男、このまま放置するわけにはいかぬ。砦に雪崩込んできたインカ軍からアレッチェの掴んだ情報によれば、ビルカパサは、あのように砦に向かって逃げる素振りを見せながら、実のところ、我らを砦の射程内に誘(おび)き寄せようとしているらしい。多勢を率いて砦に侵入したトゥパク・アマルが要塞砲を奪取し、その砲火によって、射程内に誘き寄せた我らを撃滅しようという愚かしい策謀だ」「なんと、偽装退却でありましたか――!」側近や兵たちが、憤然と色めき立った。「なるほど、それで、先刻からの疑問が解けました。これまでのあの者どもの戦いぶりを振り返ると、命を顧みることなく、捨て身で立ち向かってきていたというのに、此度は妙に退却が早いと訝しく思っていたのです」豊かなブロンドを小雨まじりの夜風に吹き纏(まつ)わらせながら、エドガルドは、妖艶な緑の光を湛えた目元を聳やかせた。「左様」と、アラゴンも呪わし気に応じて、続ける。「わたしも、エドガルドと同様の印象を抱いていた。我らを謀(たばか)るとは、生意気千万。実に、忌々しきことだ。なれど、それならそれで、逆に我らがあの者どもを謀り返してやればよいこと。あの者どもの策にかかったと見せかけ、砦に引き寄せられていると装いながら、逆にビルカパサ軍を砦の壁際まで追い詰めて、逃げ場を奪ってから殲滅すればよい。どうせ、あの者どもに、もはやトゥパク・アマル軍による要塞砲の援護は無いのだから」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ≪アラゴン≫(スペイン軍)スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。 反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。≪エドガルド≫(スペイン軍) 副王の嫡男アラゴンへの絶対的忠誠を誓う腹心の部下。スペイン王党軍を統率するアラゴン王子の副官でもある。 ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.30
コメント(37)
今も屋上階から炎を噴き上げたままの砦の方へ馬を進めつつ、今一度、アラゴンは、部下の掲げる松明に透かしながら、手元の書状に目を走らせた。それから、抑揚の無い声で、冷徹に言い放つ。「さて、では、我らも砦内へ向かうとしようか。謹厳なる鉄壁のスペイン砦に、汚らわしい土足で踏み込んでいった礼儀知らずの虫けらどもめ。あの者どもの動きをアレッチェが封じている間に、我らが早々に止(とど)めを刺してしまわねばならぬ」「はっ」副官エドガルド以下、アラゴンの側近及びスペイン兵たちが、猛々しく恭順を示した。「砦のアレッチェ殿は、トゥパク・アマルたちの動きを首尾よく封じることができましょうか?」側近たちの問いに、アラゴンは皮相な薄い笑みを湛えて頷いた。「インカ兵どものすることと似たり寄ったりの、原始的な小細工ではあるがな。その上、砦のスペイン兵まで巻き添えにする荒っぽい手ではあるが、それでも、一時的な効果はあろう。故に、我らも急ぎ、決着を付けに行かねばならぬ」「して、王子、あそこで我らの砲火から逃げ惑っているインカ軍の残党どもは、如何いたしましょう?」冷厳な声音で語を発したエルガルドが、口早に続けていく。「斥候たちの報告によれば、あれを率いているのは、トゥパク・アマルの腹心ビルカパサとのこと。この反乱が始まって以来、トゥパク・アマルが捕縛されていた時でさえ、執拗に副王陛下に盾突いてきた、看過ならぬ大謀反人でございます。この機に、しかと息の根を止めておいた方がよろしいかと存じますが」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。 ≪アラゴン≫(スペイン軍)スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。 反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。≪エドガルド≫(スペイン軍) 副王の嫡男アラゴンへの絶対的忠誠を誓う腹心の部下。スペイン王党軍を統率するアラゴン王子の副官でもある。 ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.27
コメント(35)
エドガルドの言葉に、アラゴンは、輝くような銀髪に縁取られた美貌を、書状の方に振り向けた。「アレッチェからの伝文か。待ち侘びたぞ。見せよ」「はっ」エドガルドが恭しく掲げ上げた巻き物を素早く受け取ると、鞣(なめ)し皮に包まれたアラゴンの指先が、優美な手つきで書状を開いていく。無言のまま鋼色の瞳で書状をなぞっていく彼の横顔を、エドガルドや周囲のスペイン兵たちが黙って見守っている。暫しの後、アラゴンがゆっくり紙面から顔を上げた。それから、物思わしげに前方のビルカパサ軍に目をやってから、砦の方へ視線を這わせていく。今もビルカパサ軍に向けて絶え間なく火を噴いている自軍の大砲群の轟きと振動が、アラゴンや彼の周りの兵たちの全身にびりびりと伝播し続けている。やがて、火明かりに照らされて血塗られたように光るアラゴンの唇から、感情の見えぬ声が漏れた。「アレッチェの報告によれば、トゥパク・アマルたちが、我が砦のスペイン兵に倍する援軍を引き連れ、砦内へ侵入してきたようだ」どよめいた周囲の兵たちを背後にしたまま、副官エドガルドが、鮮やかな緑碧玉の瞳を美麗に微笑ませ、艶やかな声音でアラゴンに応じた。「なれば、我らにとって、それはむしろ吉報。王子やアレッチェ殿の思惑通りに事は進んでいるということになりましょう。俗な喩えではございますが、飛んで火に入る夏の虫とは、まこと、このことかと」「左様(さよう)」と、アラゴンも微かに口端を吊り上げたが、「しかし、まだ予断はならぬ」と、すぐに真顔に戻った。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。 ≪アラゴン≫(スペイン軍)スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。≪エドガルド≫(スペイン軍)副王の嫡男アラゴンへの絶対的忠誠を誓う腹心の部下。スペイン王党軍を統率するアラゴン王子の副官でもある。 ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.23
コメント(49)
「雨か…」ビルカパサ軍と対峙する敵軍10000の陣頭でも、断続的に降り注ぐ雨粒を上質な軍用皮手袋の上に受けながら、低く呟いている人物がいた。黄金色に輝く肩章を戦場の夜風に吹き流しながら、闇に浮き立つ高級馬の高い背に座したこの人物――植民地ペルー副王領を統治する副王ハウレギの嫡男、アラゴン王子である。当初、トゥパク・アマルら反乱軍の鎮圧は、アレッチェを総指揮官とした軍部に委ねられていた。しかしながら、反乱軍の始末に予想以上に手間取っているアレッチェらの様子に痺れを切らした副王は、自らの直属部隊を戦場に派兵するに至っていた。その父王から預かったスペイン王党軍を指揮しているのが、このアラゴン王子である。彼は、自軍の砲撃によって砦の方へ退却を強いられているビルカパサ軍を冷徹な横顔で見据えながら、波打つ長髪に降りかかった水滴をサッと振り払った。「雨とは忌々しいことだ。だが、まだこの程度の小雨なら、我が軍の砲撃に然程(さほど)の差し障りが出るほどではあるまい。なれど、このまま大降りになるようでは厄介だ。早々に決着を付けてしまわねばならぬ」そう独りごちたアラゴンの傍に、彼の副官エドガルドが、美しい皮紐で結ばれた巻き物を手に、逞しい黒馬を寄せてきた。いかにも王子の腹心らしく気品溢れる風貌を備えたエドガルドは、その態度も堂々と沈着で、しかも隙が無い。「アラゴン王子、たった今、砦のアレッチェ殿より書状が届きましてございます。王子に早急にご高覧頂くようにと」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。 ≪アラゴン≫(スペイン軍)スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.20
コメント(29)
瞬時に馬の踵を返した使者に、ビルカパサの力強いテノールの声が追ってくる。「アンドレス様やロレンソ殿は、ご無事であられるか?」「はい。お二方ともご健在にて、ご安心ください」「そうか、良かった」「それに、ビルカパサ様の姪御のマルセラ様もご無事と聞いております」馬上から振り向きざま、逞しい面持ちを微笑ませた使者の言葉に、ビルカパサは己の内面を見透かされたようで、はっと息を詰めた。が、ほどなく、真摯な面差しで礼を払う。「マルセラのことまで、かたじけない。だが、正直、安堵したよ、ありがとう」いかに私情を排し、感情統制のいき届いたビルカパサとはいえ、口には出さぬ心の内では、敵中に囚われて酷い目に合わされていたマルセラのことを案じていないはずはなかった。ビルカパサは、馬上の使者を真っ直ぐ見つめる。「そなたも気を付けて参られよ」誠実な思いの宿ったビルカパサの声音に、使者は深く礼を返した。「ビルカパサ様も。ご武運をお祈りしております」そう力強く応じ、使者は砦に向かって一気に馬を駆り出した。土煙と共に去り行く彼の後ろ姿は、たちまち夜闇の中に吸い込まれていく。ふと気付けば、先ほどから遠雷の鳴り響いていた高い夜空からは、微かな雨粒が、ポッ、ポッ、と、乾いた荒野に落ちはじめていた。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。 ≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。 女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。 砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.16
コメント(39)
「はっ」と、恭順を示して馬上に戻りかけた使者が、今一度、ビルカパサに向き直って声を張った。「砦に向かう陛下に、英国艦隊から供与された武器類を持参するよう、ビルカパサ様が勧められたと聞きましたが」荒れ狂う爆風の中で頷くビルカパサに、使者は、周囲で燃え盛る炎を両眼に映しながら猛々しく続ける。「それらの武器類が、砦内の戦いで大いに役立っていると、トゥパク・アマル様が仰せでございました」「それは良かった。英国艦隊が送り届けてくれた銃剣類は、スペイン兵たちに引けを取らぬ最新鋭の見事なものだった。我が軍の所持しているような寄せ集めの代物(しろもの)とは比べ物にならぬ。まさか、このような場面で役立とうとはな」ビルカパサも精悍な笑みをのぞかせたが、一呼吸おいて、低く語を継いだ。「だが、我が軍としては、これで英国艦隊に借りができてしまったな」「いえ、今日の昼間、英国艦隊とスペイン砦の激戦の最中、我らインカ軍が砦への攻撃を開始したために、英国艦隊は全艦撃沈を辛うじて免れたのです。よって、我が軍と英国艦隊は、むしろ、これで御相子(おあいこ)と存じます」「なるほど、そなたの言うことにも一理ある」ビルカパサが苦笑交じりに頷いた。そんな彼に一礼を払うと、使者は素早い身ごなしで馬上に飛び乗った。「では、わたしは砦に戻ります」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.13
コメント(29)
「して、トゥパク・アマル様から、何かご命令を預かっているか?」ビルカパサの問いに、使者は、ぐっと力強く頷いた。「はっ。砦のインカ兵たちは要塞砲を早急に占拠すべく奮戦しているゆえ、ビルカパサ様は、砦外の敵軍10000を砦の射程内まで導き入れるよう、当初の申し合わせ通り、作戦を続行するよう仰せでございます」今、この瞬間も、砦に追い詰められているかに見せかけて偽装退却を続けているビルカパサ軍に、さらに追い打ちをかけるようにして苛烈な砲火を浴びせてくる敵軍10000の大軍勢。その方角に鋭利な視線を一閃させ、ビルカパサが、使者に向かって顎を引いた。「相(あい)分かった。この命に代えても、あの敵軍を砦の射程内まで誘(おび)き寄せるゆえ、ご案じ召されるなと陛下にご返答申し上げよ」「仰せの通りに!」いつしか夜空は厚い雲に覆われ、月も星も見えない。その暗さを増した夜空を、絶え間ない敵の砲火が生々しい血の色に染め上げている。ビルカパサは、轟音と共に降り注ぐ敵弾の中、味方の兵をさらに砦方面に退(ひ)かせながら、唇を強く噛み締めた。「戦えば戦うほど、あの敵軍の持つ装備の並々ならぬ強靭さ、高機能ぶりが、ますます肌身に沁みてくる。あれほどの重火器を備えた大軍を黙らせるには、トゥパク・アマル様が見通されていたとおり、砦の要塞砲をもって制するしか手立てはあるまい」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.09
コメント(43)
英国艦隊の艦砲射撃も頑として寄せ付けず、原油によるアンドレスたちの脅しにも屈することのなかった、スペイン軍の堅牢な石の砦。その屈強な砦の制覇を成し遂げるべく次なる作戦の第一段階は、トゥパク・アマル軍及びロレンソ軍の総勢1700が砦内に進軍し、先に潜入していたアンドレス隊500の兵と合流すること。さらに、作戦の第二段階は、それら砦のインカ軍2200によって、砦のスペイン軍1000を圧倒して砦の要塞砲を奪取し、奪った要塞砲を用いて砦麓に配された重装備の敵軍10000を迎え撃つ、というものであった。その作戦を成功裏に導くためには、砦麓の敵軍10000を要塞砲の射程内まで誘(おび)き寄せておく必要があった。それ故に、ビルカパサは、トゥパク・アマルから預かったインカ軍本隊7800を率いて砦麓の荒野に布陣し、自ら囮(おとり)となって、敵軍を砦に引き付けるための偽装退却を演じていたのだった。偽装退却――つまり、ビルカパサ軍は、砦麓の敵軍10000の猛攻に押されて敵砦の真下に追い詰められているかのように見せかけながら、実際には、敵軍10000の方こそを要塞砲の射程内に引き入れるという、危険な任務に身を投じていたのだった。迫り来る敵軍10000の砲火は予想以上に凄まじく、その上、敵砦の要塞砲の射程内に敢えて飛び込んでいくというのは非常に危険なことであった。しかし、主砲台のある砦の屋上階はアンドレス隊の持ち込んだ原油によって火の海と化し、既に無効化されている上、作戦通り、砦に進軍したトゥパク・アマルたちが、迅速に残りの要塞砲を占拠してくれさえすれば、それら要塞砲の傘下はむしろ安全地帯となる。トゥパク・アマルが、砦の敵軍に倍する数多くのインカ兵を砦内の戦いのために投入したのも、一刻も早く要塞砲を占拠せんがためであった。そのような作戦下、此度の使者がもたらした報告は、少なくとも現段階では、トゥパク・アマル麾下のインカ軍が砦内部に進軍を果たすという作戦第一段階が、首尾よく成し遂げられたことを意味していた。戦塵にまみれたビルカパサの厳めしい横顔は、今も予断無く引き締まったままだが、それでも、使者のもたらした朗報に微かな安堵の表情が滲んでいる。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。 ≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.06
コメント(32)
敵軍の熾烈な砲撃による破砕物のために、傷だらけになった全身を火明かりに赤々と照らし出されながら、ビルカパサは鷲のように鋭い眼光を使者に向けた。「トゥパク・アマル様は、何と?陛下のお命はご無事であられるか?砦内での戦いは、いかなる状況になっている?」矢継ぎ早に問いかけるビルカパサに、使者は馬から飛び降りて礼を払い、砲撃の轟音に負けじと猛々しい声を張った。「トゥパク・アマル様の騎兵部隊とロレンソ様の歩兵部隊は、先に敵の砦内に潜入していたアンドレス様の援護により、無事に砦内部に進軍を果たされました。それによって、現在、砦内には、敵に倍するインカ軍がひしめき、砦の要塞砲を占拠するべく、果敢な戦いを展開中であります」「そうであったか」使者のもたらした吉報に、ビルカパサの険しい面差しにも、光が射した。夜の戦場で、ビルカパサは、その内部で行われている激しい戦いを見通すかのように、砦の方へ視線を馳せる。そうしながら、此度の作戦を、今一度、胸の内で反芻した。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.05.02
コメント(38)
「どんなに、そなたの身を案じたことか!だが、今、確かに、そなたは、間違いなく、ここにいる」脱走するために牢番と何があったのか、そのことも、つい先ほどまで、あれほど気になっていたというのに、こうしてマルセラの無事な姿を目の前にしてみると、もう、どうでも良かった。唐辛子や胡椒にまみれた前髪から覗くロレンソの瞳は、よほどスパイスが染みているのか、涙さえも滲ませて見える。「マルセラ殿、会いたかったぞ」逞しい腕の中に包んで耳元で熱く囁くロレンソの声音に、マルセラはドギマギしながら、頬を紅く染めた。「み、みんなが見てるじゃないですか…」そう言いながらも、いつしか彼女の両手は、相手の顔や髪から優しく粉を払っていた。そんな彼女を愛しげに見つめるロレンソの瞳を眩しそうに見上げるマルセラの瞳にも、微かに涙が光っている。「ロレンソ殿…!ずいぶん心配をかけてしまいました。でも、もう大丈夫。あなたが来てくれたのだから、もう、わたしは恐れるものなど何も無い!」同じ頃、その砦の麓の荒野では、マルセラの叔父でありトゥパク・アマルの重臣でもあるビルカパサの元に、砦のトゥパク・アマルが放った早馬の使者が、激しい戦火をぬって到着しようとしていた。「ビルカパサ様、トゥパク・アマル様よりご伝言でございます!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) 反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。 「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。 清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.29
コメント(34)
マルセラ自身も、ロレンソのために水を汲んでこようと立ち上がろうとしたその時、床に倒れかけていたロレンソが、バネのように身を起こして、マルセラの腕を捉(とら)えた。ロレンソの手の中にある彼女の褐色の腕は、以前と変わらぬ若枝のようなしなやかさである。しかし、その肌には、薄闇の中でも息を呑むほど、生々しい傷痕が無数に刻まれていた。インカ軍を挑発するために、敵将アレッチェが、衆目の面前でマルセラを激しく痛めつけていた、あの屋上階の悪夢のような光景がロレンソの脳裏に甦る。『来てはだめ!!』アレッチェに打ち据えられながらも、挑発に乗せられかけた己を止めるために叫んだ、あの時のマルセラの必死の声が今も耳奥にこびりついて離れない。あれだけのことがあったというのに、もともと気丈で闊達なマルセラは、今も、何事も無かったように快活に振る舞っている。が――さすがに此度は、その身や心に受けた傷つきや衝撃は、そう軽々しいものではないだろう。ロレンソは、胸の締め付けられる思いでマルセラの腕を握り締めたまま、懇願するような眼差しを彼女に向けた。「マルセラ殿、行かないでくれ」「え?いえ、そこの水瓶から水を取って来るだけですよ」明るい笑顔を見せて己の手をほどきかけたマルセラを、ロレンソの腕は、反射的に強く引き寄せ、次の瞬間には、全身ごと胸に抱き締めていた。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.25
コメント(36)
マルセラは、床の上に崩れかかったロレンソの傍に駆け寄ると、真っ青になって跪(ひざまず)いた。「お願い、どうかしっかりして!」粉末だらけになってフラフラと床に縋(すが)っているロレンソの肩を、ハッシと掴んで、マルセラが強く揺さぶる。「気をしっかり持って!!」マルセラの手に激しく揺すられて、ますます意識が飛びかけながらも、ロレンソは、この上ない安らかな表情で深々と息をついた。「良か…った――そなたが無事で、本当に……」「敵の監視がきつくて、上階に戻るに戻れなかったの。それにしたって、なんてことしちゃったんだろ。まさか、こんなところまで、あなたが来てくれるなんて」大慌てでマルセラが周囲を見回せば、ロレンソのみならず、彼の腕利きの部下たちも、今のスパイス弾を喰らって床にへたり込み、目や口を覆いながら激しく咳き込んでいる。「うわぁ…!みんな、ごめんなさい!大変なことしちゃった☆」マルセラは、仲間の捕虜兵たちに向かって、部屋の隅に置かれた水瓶(みずがめ)を慌てて指差した。「そこに入ってる水、腐りかけてるけど、この際、やむを得ないわ。それで、みんなの目や口をすすいであげましょう!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.22
コメント(25)
「マルセラ様――!どこにいるのですか?!」低声(こごえ)で懸命に呼びかけながら、辺り中を探し回るロレンソや部下たちが、幾つか目の分厚い鉄扉を開いた時だった。途端、見覚えのある白球の群れが、開け放ったドア奥から猛然と飛び出してきた。(あっ、これはっ!!)と意識が走った瞬間には、既に時遅し。白球は、ドアノブを握った姿で固まったロレンソたちの顔や全身にブチ当たってきて、見事なほど派手に炸裂した。「――!!!」それは、まぎれもなく、自分たちインカ軍が敵の目つぶしのために利用する、あのスパイス弾だった。破裂した鶏卵の殻の中から、大量の小麦粉や唐辛子、胡椒が飛び出し、ロレンソたちの目や口内に飛び込んで、全身を白や赤に染め上げた。「くぁ…っ……!」不意打ちのスパイス弾を大量に喰らって、失神しかけたロレンソや部下たちの耳に、部屋の奥からマルセラの仰天した声が響いてきた。「ええ?!やだ、まさか、ロレンソ殿?!」「マルセラ…殿……!こ、ここに、身を隠して…いたのですか…ゴホッ!!」胡椒や唐辛子を深々と吸い込んで激しく咳き込みながらも、安堵と歓喜の声を上げたロレンソの傍に、マルセラが素っ飛んできた。彼女は、目の前でスパイスにむせているロレンソたちと、自分の手の中にある白球とを交互に見比べて、凛と澄んだ瞳を大きく揺らしている。「ついに敵に見つかったかと思ったの!それで、みんなで、このスパイス弾を投げて……。そしたら、まさか、ロレンソ殿だなんて!ああ、しっかりして!!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.18
コメント(32)
気付けば、数少ない松明の薄明かりが照らす通路の両脇には、林立する錆びついた鉄格子が浮かび上がり、いよいよ地下牢の最奥に到達しているのだと分かる。目を凝らしても、今は地下牢の中に人の気配は無い。が、鼻を突くような血生臭く淀んだ空気が辺りに充満しており、少し前まで、そこに捕虜たちが収監されていたことが窺えた。地下道の通路沿いには、地下牢を挟み込むようにして、幾つもの大小の部屋――尋問室から倉庫のようなものまで様々だが――がある。敵襲に気を配りながらも、それらの扉のうち鎖錠されていないものを慎重に開けながら、一つ一つ中を覗いて調べていく。中には拷問部屋などもあり、今は無人のそれらの部屋を横目に走り抜けていくロレンソたちの胸中には、再び強い不安が首をもたげてくる。(マルセラ殿、どこにいる?!頼むから、今も、無事でいてくれよ)予想以上に、地下通路の構造は複雑に入り組んでいた。ロレンソの部下が、気を利かせて壁にマーキングをしながら進んでいくも、それでも、幾度か同じ場所を行きつ戻りつしてしまうありさまであった。そんなことを繰り返しながらも、物陰を丹念に覗き込み、石壁に取り付けられた幾つもの鉄扉を一つ一つ開けて中を確認しながら、マルセラたちの姿を探し続けていく。ロレンソの唇から、声を絞りつつも、堪え切れずに擦れ声が漏れた。「マルセラ殿、どこにいるのです?!わたしです、ロレンソです!どうか出てきてください!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.15
コメント(26)
「敵兵どもがマルセラ殿や脱獄した仲間たちを見つけてしまう前に、我らが何としても先に見つけ出し、上階のインカ軍に安全に合流できるよう加勢せねばならん」冷静さを取り戻して語るロレンソの周囲では、部下たちが頷きながら、顔を見合わせている。それにしても、一体、どこに身を隠しているのか――皆、心配そうに眉根を寄せた。マルセラ本人と、彼女が解放した捕虜とを合わせれば、数十名規模の集団になっているはずだった。それだけの集団が、このような場所を移動していれば、それなりに目立つはず。しかし、この地下道に降りてくるまでにも神経を研ぎ澄ませて彼らの気配を探してきたが、今までのところ、その気配は微塵も感じられなかった。(この地下道も、奥深くへ進むほど、人気(ひとけ)が無くなっていく。恐らく、マルセラ殿は、敵兵の目を逃れるために、この地下道のもっと奥まった場所まで入り込んでいるに違いない)何かの見えざる手に引き寄せられるように、ロレンソたちは、足音を忍ばせつつも、疾走速度を上げながら、さらに地下道の深部まで踏み込んでいく。敵の番兵たちさえも殆ど見当たらぬような地下道の深所は、まるで悪魔の喉笛の中にでも彷徨い込んでしまったかのような、おどろおどろしさである。ツーッと、暗黒の天井から滴り落ちる水雫が、不意に頬や首筋をかすめ、ゾクッと身の毛がそそけ立つ。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.11
コメント(36)
(今は、マルセラ様や牢を脱した仲間たちを一刻も早く見つけて、援護するのが先です)石柱の後ろから飛び出していかんばかりの己を抑え込むようにして訴える部下たちの必死の様子に、ロレンソも己の感情を諌めようと努めた。彼は、じっと堪えて、番兵たちがドスドスと石床をしならせて通り過ぎてしまうのを、柱の陰で待った。「――行ったようだな」彼らが去っていくと、ロレンソは低く呻き、気配を消したまま石柱から一歩を踏み出した。部下たちがハッと目を見張った次の瞬間には、おもむろに腰の投石器に石を番(つが)えたロレンソの腕が、ブンッと鞭のようにしなって、力一杯にそれを投げ放っていた。放たれた尖石は、完璧な軌道を描いて、去りゆく番兵の背後に迫り、ゴッ、という鈍い音と共に、彼の後頭部に深々とのめり込んだ。叫び声ひとつ上げる間も無く、番兵の巨体が石床にドッと崩れ落ちる。その者の傍にいた別の番兵が、異変に気付いて浮足立つも、間髪入れずに投げ放たれたロレンソの次なる棘石が、あっという間に彼をも冷たい床に沈めた。いつもは沈着冷静を旨とする上官ロレンソの、まるで別人のような直情的な行動に、彼の部下たちが目を丸くして言葉を呑んでいる。かたやロレンソは、軽く咳払いしながら、投石器を腰袋に戻した。「わたしにも我慢の限界というものがある。それに、騒ぎにならぬよう、一発で仕留めたのだから、よかろう」何やら弁明めいた言葉を部下たちに向かって呟くと、「さあ、先を急ぐぞ」と、薄闇にかすむ地下道の奥に向かって再び駆け出した。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.08
コメント(29)
「俺が警告したにもかかわらず、おまえは下心を出して女の策にはめられた。おまえが無様(ぶざま)に気を失っている間に女に脱走された挙句、地下牢の鍵まで奪われていたなんて、なんたる情けない」「今さらゴチャゴチャ言っても始まらんだろう!それより、逃げ出した捕虜たちを見つけるのが先だ。あの女の手練手管にはめられて、蹴り上げられたところが今も痛むの何のって…!今度見つけたら、絶対に、ただではおかん」極度に苛立った敵兵たちの荒々しい会話に息詰めて聞き耳を立てるロレンソの胸は、今にも心臓が飛び出しそうなほどだった。ロレンソは、闇に身を紛らせながら、それらの番兵たちの、張りしきった分厚い肩や筋骨隆々たる丸太のような腕をまじまじと見据えた。(下心を出して女の策にはめられた――?マルセラ殿が手練手管を使っただって?まさか…一体、どんなことをして、あの巨漢の元から逃げおおせたのだ、マルセラ殿は?)ロレンソの頭を勝手な妄想が怒涛のように駆け巡って、眩暈のする思いと同時に、その場で、その巨躯の牢番どもを八つ裂きにしてやりたい衝動に突き上げられる。しかし、部下たちが、(どうか堪えてください。今、ここで奴らと揉めて、騒ぎになったら、かえって厄介です)と、懸命に視線で訴えてくる。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.04
コメント(34)
その頃には、風のように馳せていたロレンソは、早くも地下牢へ通じる地下通路まで進んできていた。ここまで進んでくる間にも、ロレンソの部隊の兵たちが、多数、彼と行動を共にせんとロレンソの元に馳せ参じていた。だが、地下牢に潜入するのに大勢だとかえって目立つため、特に腕の立つ数名の者のみを同行させていた。砦の最端部に設けられた古びた石段を駆け下りて踏み込んだ地下階は、おぼろな松明の間隔もまばらで妙に薄暗く、外気の入る覗き窓なども無いために、空気も冷たく淀んで湿っている。ロレンソたちは、その黴(かび)臭い薄闇に身を紛らわせ、物陰から物陰へと、足音を忍ばせて苔むした石床を馳せながら、地下道をさらに奥深くへ進んでいく。敵兵たちの多くは上階の戦闘に参戦するために出払ってしまっているようで、今も地下通路に残っている者は殆ど無かったが、それでも、地下牢の番兵たちと思しき、厳つい巨兵たちの姿がちらほら見られた。それらの牢番たちが慌ただしい足取りでドカドカと通路をよぎっていくのを、石柱の陰に身を隠してやりすごすロレンソたちの耳元を、番兵たちのくぐもった会話が掠めていく。「あの脱走したインディオの女が、地下牢の捕虜どもを、どこかに逃がしやがったんだ!」「だから、あの時、俺は、あの女に気を付けるよう、おまえに警告したじゃないか」『あのインディオの女』というのがマルセラのことであると、ロレンソには瞬時に分かった。ロレンソの耳は、ますます番兵たちの会話に釘づけられていく。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.04.01
コメント(26)
その様子に、ロレンソは素直に頷き、「では、行かせてもらうぞ、アンドレス」と、微笑んだ。二人は、どちらからともなく剣から自由な左手を差し出して、「また後で会おう!」と、力強く握り合った。「気を付けて行けよ!」そう呼びかけた己の言葉など、もはや耳に入らぬ勢いで、ロレンソは、飛ぶような速さで敵群れの真っ只中を突き進んでいく。その後ろ姿を目の端で見送りながら、アンドレスの心にも、急に、せつない思いが突き上げた。右手は休み無く剣を繰りながらも、彼の左指は、いつしか首からさげたグランデーロの小瓶に、胸甲の上から触れていた。この手製のお守りを渡してくれた時のコイユールの微笑みが、胸の中いっぱいに、甘く、優しく、甦る。『アカシアの実やヒマワリの種、それから、インカローズ――特別な守護の力を持つ9種類のお守りが、瓶の中で1つにまとめてあるの。だから、これを持っていれば、槍で刺されても死なないって言い伝えられているほどなのよ。きっと、戦場でもアンドレスのことを守ってくれると思って』群がる敵兵たちの向こうに見え隠れする覗き窓の、さらに彼方の夜闇へ視線を馳せて、アンドレスは、甘酸っぱい思いで満たされた胸の内で囁いた。(コイユール、今頃、どうしているだろうか?砦の内外で、こんな惨い戦闘になって、本陣は、運び込まれた負傷兵でごった返していることだろう。きっと、息つく暇も無いほど、治療や看護に追われているな――)思いが、どうにも、そちらに飛び立ってしまいそうになるのを懸命に堪えて、アンドレスは、己の心を厳しく引き締め直した。(戦いに集中しろ、アンドレス!これ以上の犠牲を増やさぬためにも、一刻も早く、この砦戦に決着を付けてしまわねばならないんだ!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪コイユール≫(インカ軍)インカ族の貧しくも清らかな農民の少女。義勇兵として参戦。 代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。 『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.28
コメント(34)
ハッと、こちらを振り向いたロレンソの強い視線を背後に感じて、剣を握り締めたまま、アンドレスも半顔ほど背後を振り向いた。「マルセラ殿はご無事であったか!今、どこにいるのだ?!」瞳を輝かせて己を喰い入るように見入るロレンソに、アンドレスは聞かれるまでもない、とばかりに意気揚々と即答する。「マルセラと一緒に囚われていた仲間たちを解放するために、地下牢に行っているはずだ。ロレンソ、行ってやれ!今すぐ、マルセラのところに!捕虜となった仲間たちを解放するために、彼女に手を貸してやってくれ」「しかし、アンドレス、そなたとて加勢が必要な時ではないか」そう応じながらも、マルセラが無事と分かって矢も盾もたまらぬ朋友の気持ちが、アンドレスには手に取るように分かっている。「俺のことは気にするな」そう言って、アンドレスは、スパイスまみれの顔に力強い笑みを浮かべ、周囲にグルッと視線を走らせた。その動きにつられてロレンソも辺りに目をやれば、いつの間にか、アンドレスの周りには、ジェロニモをはじめとするアンドレス隊の精鋭たちが多数結集してきており、敵勢と勇ましく剣を交えている。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.25
コメント(26)
ひとしきり二人は敵と激しく剣を交えた後、さらに湧き出してくる敵兵たちと睨み合いながら、背中合わせの体勢で口早に言葉を交わし合った。「ロレンソ、すまなかった。あの時、屋上階で、マルセラがアレッチェにひどい目に合わされているのに、俺は、何もできなくて……」アンドレスは、ずっと胸につかえていたことを苦し気に口にした。「いや、そなたのせいではない。わたしも、あの時、砦の麓に布陣していたものの、怒りに我を忘れ、すんでのところで、兵を率いて砦の射程内に飛び込むところであった。トゥパク・アマル様が止めに来てくれていなければ、今頃は、わたしも、大勢の兵たちも、どうなっていたか分からない。今思えば、全ては、アレッチェの計算ずくの挑発だったのだ」そう語るロレンソの肩が、あの時の光景を思い出しているのであろう、激しい憤りに震えるのを己の背中で感じ取りながら、アンドレスも居た堪れぬ思いで唇を噛み締めた。アンドレスは、胸詰まる思いを振り払うようにして、つとめて明るい声音で背後のロレンソに語りかける。「だけど、マルセラは、すごいぞ!俺たちの力なんかに頼らずとも、自分で、敵の手中から脱出をはかったんだ。今は、この砦の別の場所で、仲間たちと果敢に戦っている」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪マルセラ≫(インカ軍)トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.21
コメント(26)
大きな琥珀色の瞳を揺らしながら、アンドレスがトゥパク・アマルを喰い入るように見据えている。「俺には、あの執念深いアレッチェが、このまま引き下がるとは思えません。特に、あの者の一番の狙いは、トゥパク・アマル様のお命です。どうかくれぐれもお気を付けて――!」アンドレスの言葉に、トゥパク・アマルは静かに微笑み、「そなたの言葉、心に留めおこう」と、頷いた。そうしている間にも、インカ軍の大将を討ち取る絶好の機会とばかりに、敵は雲霞の如くトゥパク・アマルに群がってくる。だが、その一方で、今や数的には優勢に転じているインカ兵たちが、それらの敵勢を圧倒する勢いで、トゥパク・アマルの加勢に飛び込んできていた。それらの激しい鬩ぎ合いの中心で剛腕を振るいながら、トゥパク・アマルの鋭い目がアンドレスに決然と命じた。(アンドレス、行け!武器庫と火薬庫を、しかと頼んだぞ)その視線に力強く頷き返し、アンドレスは、後ろ髪を引かれる思いながらも、味方の兵たちにトゥパク・アマルを託し、踵を返した。(トゥパク・アマル様、アレッチェには、どうかお気を付けて――!)そう心で叫びながら、武器庫に向かって突き進むアンドレスの周りにも、敵兵は四方八方から押し寄せてくる。それらの軍勢を討ち払って我武者羅に道を斬り拓いていくアンドレスの傍に、疾風のごとく、鋭利な目をした褐色の若武者が華麗な剣捌きで飛び込んできた。「アンドレス、加勢するぞ!」その若者の凛々しい笑顔に、アンドレスも、パッと大きく顔を輝かせる。「ロレンソ!!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。 ≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.18
コメント(22)
アンドレスの返答に、トゥパク・アマルは研ぎ澄まされた面差しを思慮深くさせて、「そうか」と、短く答える。「だが、恐らく、アレッチェ殿は、この砦から脱してはおるまい。この砦を見捨てて、一人、逃走するような男ではない」そうしている間にも、二人の腕は、絶え間なく敵勢と戦い続けている。眼前で、また一人、己の手に掛かって床に崩れゆく敵兵の姿を目の端に捉えながら、アンドレスは、不意に、如何ともしがたい強い不安が突き上げてくるのを感じていた。彼は、剣を手にしたまま、トゥパク・アマルの顔を見上げた。長身のアンドレスよりも、トゥパク・アマルは、さらに頭一つ分は軽く身の丈がある。「トゥパク・アマル様、くれぐれもお気を付けください。こうして、アレッチェが、俺たちをここまで砦内でやりたい放題に野放しにしておいたのは、トゥパク・アマル様を砦内に誘(おび)き寄せるための罠だったのかもしれません…!」突如、己の身内に沸き起こった不安を止めることができず、そのままを言葉にしながら、アンドレスは、不吉な予感に背筋が寒くなるのを覚えていた。他方、トゥパク・アマルは、激しく剣を振いながらも、まだ平静な息遣いを保ったまま、物思わし気に答える。「いや、そなたが申すように、アレッチェ殿がわたしを砦に呼び寄せるための罠にしては、あまりにスペイン兵の犠牲を出しすぎている。これほど多勢のインカ側の援軍が砦に雪崩れ込めば、砦が危機に瀕することは、あの者とて承知していたはず。彼に打つ手があったのならば、我らを砦に到達させぬための防衛策を、もっと早々に実行していたはずだ」「では、アレッチェも、此度は為す術も無く、どこかに身を潜めて静観するしかなかったと?」絞り出すようなアンドレスの言葉に、トゥパク・アマルも、「あの者が考えることは、わたしにも計り知れぬ。油断できぬことだけは確かだが」と、眉根を寄せた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.14
コメント(32)
「トゥパク・アマル様!!」加勢に走り込んできたアンドレスに、「わたしのことは案ずるな」と、トゥパク・アマルの鋭利な双眸が相手の瞳の奥まで貫き通して言う。「それより、そなたは、そなたの為すべきことをせよ」「ですが、トゥパク・アマル様!敵兵は、皆、トゥパク・アマル様を狙って、蟻のように群がってきているではありませんか!」「それで良いのだ。多数の敵に囲まれていた方が、狙撃兵は、わたしを狙いにくい」言葉を呑んで息を詰めたアンドレスに、トゥパク・アマルが素早く肩を寄せて言う。「それよりもアンドレス、我らが優勢な今のうちに、砦の武器庫と火薬庫を押さえよ」断固たる口調に、アンドレスは、「御意!」と、即座に応じていた。「それから、アンドレス、大事なことを聞き忘れていた。アレッチェ殿は、どうなっている?」アンドレスは、急に冷や水を浴びせられたような思いで唇を噛み締め、苦々しく首を振った。「すいません…。屋上階の火災に乗じて逃げられてしまってからは、全く姿を見ておらず、どこにいるのか――。その後のアレッチェの所在も、動向も、掴めてはおりません」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) 植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。 有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。 名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.11
コメント(24)
トゥパク・アマルの号に鼓舞されたインカ兵たちが、オオオ!!と、轟くばかりの咆哮を上げて大気を熱く振わせながら、猛然と敵群れの中に斬り込んでいく。先刻までの圧倒的優勢とは打って変わって、急転直下、一挙に劣勢な立場へ突き落とされたスペイン兵たちの形相は、さすがに必死の様相を呈している。砦内部のスペイン兵は約1000。対するインカ側は、もともとのアンドレス隊500の兵に、トゥパク・アマル軍やロレンソ軍による1700の援軍が加わって、今や、ざっと2200にも及ぶ数である。門前で蹴散らされたスペイン守備隊は既にかなりの打撃を被っており、彼らの残党が砦内部の戦闘に加わってこようとも、インカ側の兵力優勢に変わりはなかった。自軍に倍するインカ兵を相手にせねばならなくなったスペイン兵たちに圧しかかるプレッシャーは、ただならぬものであった。しかし、それでも、プライドも意地もひときわ高く強固な彼らは、この重要な砦を断固として渡してなるものかと、決死の反撃を挑んでくる。砦全体は、たちまち白熱した肉迫戦の坩堝(るつぼ)と化していった。トゥパク・アマルたち援軍の到来によって、砦内部の空間は、その広大さにもかかわらず、先にも増して人口密度が高まり、大混雑となっている。その雑多で濃密な空間で、無数の剣の林が打ち合い、それらの放つ金属音が殷々と鳴り渡る中、間隙を突くようにして、断続的に銃の発砲音が弾け飛ぶ。昂ぶる人熱を全身に纏わりつかせながら、トゥパク・アマル自身もまた、我こそはと次々に打ち掛かり来る敵勢を相手に、鋼のごとき強靭な腕をしならせ、重厚な長剣を縦横無尽に振るっていた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.07
コメント(28)
アンドレスもまた、まるで今頃になって胡椒や唐辛子の成分が効いてきたかのように、どうにも熱くなってたまらない鼻をすすり上げた。そんな彼の耳元に、トゥパク・アマルの艶やかな低音が響きくる。「アンドレス、よくぞ、皆を導いた。砦に進軍する我らに対する援護にも、助けられたぞ」(――!)いよいよスパイスが染みてきたのか、それとも別の理由なのか、目元が潤んでくるのを、アンドレスは大きな瞳を見開いて懸命に堪えている。一方、トゥパク・アマルの表情は、今再び、鷲のように鋭く峻厳さを増し、見るからに戦闘モードに切り替わっていく。彼は、周囲の敵兵へと鋭利な視線を一閃させると、味方の軍団に向き直って、鞘から長剣をズバッと抜き放った。彼ら新手のインカ兵を取り囲むようにして、今や正気を取り戻しつつあるスペイン兵たちが群れ成して、憎悪と復讐に燃えた眼をギラつかせ、次の瞬間にも斬りかかってこぬばかりである。先の抜剣突撃の余韻が生々しく残る赤銅色の刀身を胸の高さに構え、トゥパク・アマルが猛々しく言い放つ。「皆の者よ、まだ戦いはこれからと心得よ。この砦の外では、インカ軍本隊7800の兵がビルカパサに率いられ、敵の大軍10000と熾烈な戦火を交えている。敵大軍の武装は、これまで類を見ぬほどの重装備。この砦の要塞砲をもって制する以外に手段は無い。我らは、一刻も早く全ての要塞砲を占拠し、ビルカパサ軍を援護する」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ビルカパサ≫(インカ軍)インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.03.04
コメント(20)
そんなアンドレスをトゥパク・アマルも真っ直ぐに見つめて、暫し言葉を呑んでいる。戦闘衣も、頭髪も、何もかも、灰かぶり姫さながらに小麦粉や唐辛子に覆われ、全身は返り血まみれな上、顔も手足も火傷や切り傷だらけ――。その酷い姿は、アンドレス本人が見ようものなら、愕然とせずにはいられぬことであろう。火傷や大小の傷は、昼間の艦砲射撃の余熱の残る砦の石壁を、長距離に渡って、我武者羅に登り続けたためもあろう。その後も、劣勢の中、ここまで戦い続けてくるのは並大抵のことではなかったはず。トゥパク・アマルは、切れ長の目を細めて、深く頷いた。いや、アンドレスだけではない。彼と行動を共にしたインカ兵も黒人兵も、皆、目も当てられぬ風体であった。だが、その姿にこそ、このような無謀な作戦に挑み、敢行し続けた、ひとかたならぬ忍耐と勇気の証しが刻まれているのだ。ささくれ立った急峻な外壁を這いずり回って傷だらけの全身に、唐辛子や胡椒が沁みて激痛があろうに、恐らく、本人たちは、苛烈な戦いに追われ、そのような自身の痛みに気付く僅かな暇(いとま)さえ無かったことであろう。「まだ戦いは終わっていない。なれど、皆、ここまで良くやってくれた。よくぞ、ここまで戦い抜き、持ち堪えてくれたな」篤い思いのこもったトゥパク・アマルの声音に、アンドレス隊の兵たちは恍惚となりながら、頭(かぶり)を振った。「勿体無きお言葉でございます。我らは当然のことを……!」そう答えつつも、込み上げる熱いものが胸中に溢れて、それ以上の言葉が続かない。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.28
コメント(26)
軍馬たちを門前に残し、臼砲によって破壊された鉄扉をくぐって砦の中へ走り込んだトゥパク・アマルたちは、咄嗟に、うっ、と呻いて、口と鼻を手の平で覆った。(トゥパク・アマル様…これは……!)早くも、じわっと込み上げる涙をたたえた目で、ロレンソがトゥパク・アマルを見た。(ああ、アンドレスのやつ、どうやら、『あれ』を使ったらしい…)トゥパク・アマルも、クシャミをこらえながら、視線で応える。彼は、己の黒ビロードのマントを手早く引き千切って、口と鼻を覆うように顔に結びつけた。他のインカ兵たちも、慌てて、各々、戦闘衣やマントの裾を千切って、即席のマスクを身に着けた。目を覆うゴーグルもほしいところではあったが、この頃には、スパイス類の飛散は、そこそこ沈静化してきてはいたので、裸眼でも何とか持ち堪えられそうではある。それでも、十分に、目の奥深くまでヒリヒリと沁みてはくるが…。そうこうしている間に、まだスパイス弾の効果で弱っている敵の剣戟をかわして、転がるように4階部から1階まで駆け下りてきたアンドレスが、トゥパク・アマルたちの視界の中に飛び込んできた。「トゥパク・アマル様――!!」破壊された鉄扉から続々と雪崩込んでくるインカ兵たちの陣頭に立つ、漆黒の戦闘衣を纏った長身を瞬時に見出し、アンドレスは感極まって歓呼の叫びを上げた。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.25
コメント(18)
敵守備隊員たちは迎撃態勢を整えられぬままに、降りかかる砲弾に挑みかかるように疾走速度を増して突進してくるトゥパク・アマルたちの勢いに浮足立っている。トゥパク・アマル軍及びロレンソ軍は、総勢1700の兵力を擁する。夜闇よりも濃く浮き上がるそれら大軍のシルエットが、今や、すぐ眼前まで迫り来る中、頭上からはアンドレス隊が放つ砲弾が降り注ぎ続けている。統制を失った門前のスペイン守備隊は、ほどなく光速で突っ込んできたトゥパク・アマルの騎兵部隊によって、大波に押し流されるようにして、散り散りに蹴散らされた。さらに、その上を踏みしだくように、ロレンソ率いるインカの若き歩兵部隊が、雄叫びと共に走り込んで来る。耐え兼ねたスペイン守備隊長が、ついに喉を枯らして叫んだ。「ひ、退(ひ)け、退け――!!」いかにも口惜し気ながらも反撃に転ずる手立てもなく、敵守備隊員たちは、乱れた隊列をさらに乱しながら門前から退いていく。一方、トゥパク・アマルたちは、この機を逃すまじと、多数の馬に引かせてきた臼砲(きゅうほう)を砦の至近距離から撃ち放って、砦の分厚い鉄扉を吹き飛ばした。「砦内へ進軍する!!皆の者、わたしに続け!」しなやかな身ごなしで馬の高い背から飛び降り、先陣切って扉の中に走り込んでいくトゥパク・アマルを追って、麾下の大軍が我先にと砦内部へ雪崩込んでいく。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.21
コメント(33)
その時、睨み合うアンドレスと敵守備隊員たちとの間隙(かんげき)を突くかのように、不意に、下層階の要塞砲が火を噴いた。反射的に弾道を追うアンドレスのわななく瞳は、その砲弾が、トゥパク・アマル軍めがけて飛び去っていくのを捉えていた。恐らく、インカ兵たちがまだ占拠できていない要塞砲が、この砦には幾つも残されているのだ。こちらに向かって馳せて来るトゥパク・アマルたち援軍の中に消えていった砲弾を、ハラハラしながら見送るしかないアンドレスの額には、たちまち冷たい汗が滲み出す。今の敵の砲撃に鼓舞されて、門前の敵守備部隊が息を吹き返し、破壊をまぬがれている大砲を援軍にぶっ放そうものなら、一気に形勢逆転になりかねない。アンドレスの険しくなった目元が、意を決した光を強めて吊り上がった。「敵守備隊の大砲群を目標に、狙いつき次第、各個にて砲撃再開!敵に反撃の隙を一秒も与えるな!!」そうしている間にも、またも下層階の要塞砲が数門、割れるような轟音を上げて、迫り来るインカ援軍に向かって砲弾を吐き出した。が、まだ胡椒や唐辛子の効果が持続しているのか、今一つ狙いが定まっていないのが、せめてもの救いだった。それらの砲弾を浴びせられながらも、トゥパク・アマル麾下の騎兵部隊、及び、ロレンソ率いる歩兵部隊共に、この砦に向かって敢然と驀進を続けている。対する門前のスペイン守備隊は、アンドレス隊が頭上から放つ砲弾を避(よ)けようと逃げ惑ううちに隊列を大きく乱し、多数の大砲や武器も吹き飛ばされて、収拾のつかぬ状態になっていた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.18
コメント(23)
血走った眼を剥きながら、味方であるはずの自分たちを狙ってくる高所の要塞砲を振り仰いでいたスペイン兵たちが、「あ!」と叫びを上げた。「インカ兵どもです!砲門の隙間から、やつらの姿が見えています!あやつら、4階にある通路ぎわの要塞砲を占拠しております」「あいつらぁ!!」守備隊のスペイン兵たちが、頭から湯気を上げて激昂する。そんな彼らの視界の中で、時をはかっていたかのように、ゴーグル姿のアンドレスが砲門の陰から顔を覗かせた。彼はゴーグルとマスクを取り去ると、大きく砲門から身を乗り出して、麓の守備隊に向かって声を張る。「おまえたち、これ以上の犠牲を出したくなければ、即座にそこをどけ!今すぐ、この砦の門前から消え失せろ!!」「な、何を、生意気な…!」スペイン守備隊員たちが、あまりの憤激に頭髪を逆立て、いかつい肩を怒らせながら、憎悪に燃える双眸で睨み返した。しかし、そうしている間にも、トゥパク・アマル率いる精鋭の騎兵部隊は、いっそう距離を詰めながら大波の如く荒野の向こうから押し寄せて来る。さらに、その後方からは、ロレンソに率いられた若きインカ歩兵たちが、野を駆ける若駒のように生気漲る足取りで、こちらに迫り来ていた。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。≪ロレンソ≫(インカ軍)アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.14
コメント(30)
占拠した4階部分の6門の要塞砲が、一斉に轟然と火を噴いた。彼らの眼下、砦正門前に布陣した敵守備隊の中へ、6発の砲弾が突き刺さる。そのアンドレスの砲撃に倣うようにして、他の階の要塞砲の数門が、少し遅れをとりながらも、地上の守備隊めがけて発砲した。恐らく、それらも、別の階にいる仲間のインカ兵たちが、占拠に成功した大砲に違いない。夜闇の中で目を凝らせば、彼らの砲撃を浴びせられて、殊に、砲撃対象とされた守備隊の大砲群が、かなりの被害を被っている様子が見て取れた。砦の上階からも分かるほどに、守備隊の数門の大砲が、地面に横転したり、数メートル先まで弾き飛ばされたりしている、他方、いきなり味方の砦から砲撃を受けたスペイン守備隊員たちが、驚愕したのは言うまでもない。「なんだ?!砦の奴ら、気でも違ったのか?!」混乱に陥る彼らに追い打ちをかけるかのように、アンドレスは、さらなる砲撃を命じた。ワッ、と蜘蛛の子を散らすように、撃ち込まれた砲弾から四方八方に飛び退きながら、敵守備隊員たちが口々に叫ぶ。「やめろお!!なぜ、味方を撃つんだ?!」【お知らせ♪】 この度、本格ミステリー小説を執筆しておられるkaze-uniさまの小説に、小説内のフィギュアスケートの曲として『コンドルは飛んでいく』が登場しております!ペルーの民族音楽『コンドルは飛んでいく』は、私もこの小説を書くにあたり、土台とさせて頂いている楽曲でもあります♪kaze-uniさまのミステリー小説は、何作も拝読させて頂きましたが、最後の最後まで堪能し尽くさせてくださる手腕、まさに圧巻です。『コンドルは飛んでいく』の曲をイメージした素敵なイラストも掲載しておられます!【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.11
コメント(24)
味方を背後から狙撃される危険に晒していることに肝を冷やしながらも、アンドレスは、努めて沈着な口調で指示を続けていく。「砲頭を門前の敵守備隊の大砲群に向けて、ぐっと下げろ。よおく俯角をつけて狙ってくれよ。急いで、だが、正確に頼むぞ」砲撃準備を進めるアンドレスの傍に、モウモウと中空に舞い飛ぶ白や赤の粉を手で払い除けながら、ジェロニモが走り込んできた。「アンドレス様、早くしないと!この程度の唐辛子だの胡椒だのの効果なんざ、そう長くはもちやしませんよ。もう、スパイス弾だって、尽きかけてます。あとは、この舞い飛んでいる粉が完全に薄れちまう前に、早く門前の守備隊を何とかしないと、ここいらにいる敵兵どもが、復讐に燃えて襲い掛かってきますよ!たっぷり胡椒や唐辛子を味わった奴らの復讐は恐ろしいですぜ~」この期に及んで、相変わらず冗談を飛ばしているのか真面目なのか分からぬジェロニモの言葉に、アンドレスは苦笑しながら「分かってる」と素早く頷いた。それから、奪った6門の大砲が据えられている通路の奥の方まで、「準備はいいか?!」と、ひとしきり見通した。オーケーの合図を、遠くの兵たちも動作で送ってくるのを見届けると、アンドレスは、間髪入れず、通路全体に響き渡る声で号を発した。「発砲!!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。≪ジェロニモ≫(インカ軍)義勇兵としてインカ軍に参戦する黒人青年。スペイン人のもとから脱走してインカ軍に加わった。此度の作戦では、アンドレス隊に属する多くの黒人兵を統率し、アンドレスを補佐している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.07
コメント(38)
かくして、アンドレスたちのいる4階からは、砦の門前に配備された敵の守備隊たちの様子が、ひときわ良く見渡せる。地面に焚き上げられた大量の松明に照らされ、それらの守備兵は、優に数百名はいると見て取れた。しかも、彼らは、夜の荒野を土煙を蹴立てながら突撃してくるインカの援軍を迎え撃つべく、既にぬかりなく迎撃態勢を整えていた。スペイン守備兵たちは門前に据えられた大砲群に十分な弾薬を込め、猪突猛進してくるトゥパク・アマル軍やロレンソ軍が射程内に飛び込んでくるのを、虎視眈々と待ち構えているのだ。アンドレスが唇を噛み締めた時、不意に、チュンッ、と唸って、彼のすぐ脇の窓際を銃弾が掠めていった。「――!!」背後から撃ち込まれてきたその弾丸が、窓の向こうの闇の中へ瞬時に消えていく。スパイス弾よって視覚を鈍らせられながらも、アンドレスたちを狙撃しようと、第六感や聴覚を頼りに銃を撃ち放った敵兵の仕業であった。「コンニャロウ!」ジェロニモが、目ざとくそのスペイン兵を見定め、まだ視界の危ういその兵に、即座に一撃を見舞って大人しくさせた。大砲の傍で砲撃準備を進めている砲兵以外のインカ兵や黒人兵たちは、まだ通路の中央や広間に残っていて、少しでも長く胡椒や唐辛子の効果を持続させようと、さらなる球を放ったり、敵と剣を交えたり、敵の動きを監視したり、といった行動を続けていたのだ。ジェロニモはジリジリしながら、正気を取り戻しそうなスペイン兵たちに追加のスパイス弾を浴びせつつ、アンドレスに叫んだ。「アンドレス様、早く!!さっさと要塞砲をぶっ放しちまってください!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。≪ジェロニモ≫(インカ軍)義勇兵としてインカ軍に参戦する黒人青年。スペイン人のもとから脱走してインカ軍に加わった。此度の作戦では、アンドレス隊に属する多くの黒人兵を統率し、アンドレスを補佐している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.02.04
コメント(31)
夜の荒野を疾風怒濤の勢いで駆けてくる援軍到来を知って歓喜に湧く仲間たちの中央に立ち、アンドレスは砲身に降り積もった小麦粉や唐辛子の粉末を払い落とした。「トゥパク・アマル様たちを砦内に導くため、俺たちは、拝借したこいつを使って、門前の敵兵どもを追っ払おうじゃないか」眦(まなじり)を毅然と上げて、そう言い放ち、アンドレスは、眼下の正門前に布陣している敵の守備隊を睨(ね)め付けた。その言葉に、「おう!!」と、雄々しく応じた仲間たちに、アンドレスは力強く頷き返す。ところで、彼らのいる4階以外の要塞砲については、占拠できているのかどうか、この時点では、まだ定かではなかった。(ここ4階だけでなく、各階の砲台にも、同程度の要塞砲が据えられているはずだ。別の階の仲間たちが、そのうちの1門でも占拠してくれていれば、ありがたいのだが)砲撃準備を大急ぎで進めている砲手たちを見守りながら、アンドレスが胸の中で呟く。しかし、もし他の階の仲間たちが要塞砲の占拠までには至っておらずとも、援軍が砦内に到達するまでの一時的な間、敵兵が要塞砲を使えなければ、あるいは、使う腕が落ちさえすれば、今は、それで良いのだ。そうすれば、向かい来る援軍のインカ兵たちは、要塞砲の苛烈な砲撃に身を晒さずに、この砦まで辿り着くことができる。アンドレスのいる4階では、筋金入りの敵の強者たちも、スパイスが沁みて涙に霞む目を覆いながら、大量の鼻水を流して咳き込み、立ち往生している。この様子ならば、今しばらくは、仮に要塞砲の前に立たせたとしても、まともな砲撃など行えまい。多分、他階でも、敵兵たちは似たような状態に陥っているだろう。(――とはいえ、しょせんは胡椒に唐辛子だ。こんな状態が、そう長く続くわけじゃない…!)唐辛子や小麦粉による催涙効果や煙幕効果が薄れるまでの僅かな時間が勝負だった。アンドレスたちは、大至急、奪った大砲の砲撃準備を整えていく。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.01.31
コメント(32)
アンドレスの号令と同時に、ゴーグルとマスクでしっかり目や鼻を防護したインカ兵と黒人兵は、胡椒や唐辛子にやられている敵群れの中を全速力で駆け抜けていく。要塞砲の周辺にいた敵兵たちは、とりわけスパイス弾の「集中砲火」を浴びて、舌や喉をヒーヒー鳴らしながら、真っ赤に腫らした目を掻き毟って石床をのたうち回っていた。この時とばかりに、それらの敵兵たちを撃退すると、インカ兵たちは通路沿いに並んでいる大砲に一斉に取り縋った。敵兵たちのみならず、アンドレスや彼の兵たちが纏う市松模様の貫頭衣も、幾何学模様の飾り帯も、革製の胸甲も、何もかもが、小麦粉やらスパイスやらで、すっかり白や赤に染まっている。その姿のまま、奪った大砲に込められた弾薬を確認している仲間たちに、アンドレスは砲門から麓の荒野を見晴らして、「皆、見てくれ!」と、意気揚々と声を張った。「この砦に、俺たちの援軍が向かってきている。俺たちは、この要塞砲を使って、あの援軍が砦に進軍するのを援護するぞ!」その言葉に、ハッと外の景色に目を転じたインカ兵たちが、ワッと、歓呼の叫びを上げた。「なんと本当だ!」「援軍だ!!援軍が向かって来ている!」「まさか、あれはトゥパク・アマル様じゃないのか?!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.01.28
コメント(26)
「なんだ?!」スペイン兵たちが異様な気配と音の連鎖に警戒した頃には、各階のインカ兵や黒人兵たちは、既にしっかりとゴーグルとマスクで顔を覆っていた。ゴーグルとはいえ、先刻の小麦粉爆弾の時に使用したのと同じ、何かの動物の皮に丸いガラスを二個はめて、それを頭の後ろできっちり結んでいるだけの原始的なものではあったが。それでも、あの屋上階でのいざこざで、インカ兵たちが投げつけた小麦粉を散々に浴びて辟易していた敵兵たちは、咄嗟に嫌な予感に憑かれ、反射的に身を引いた。が、その時には、インカ兵や黒人兵の手から、またも何かの球が、スペイン兵たちに向かって一斉に投げ放たれていた。背負っていた背嚢(はいのう)から手当たり次第に取り出して投げ付けられる無数の白球が、敵兵たちや、壁、天井などに勢いよくぶつかって、方々で派手に炸裂する。拳(こぶし)大ほどの弾けた球から飛び散った微細な粒子は、概ね白色をしているが、その中に、何やら黒い粒子や赤味を帯びた粒子も混ざっているようだ。それらの微細な粒子が煙のように舞い飛び、たちまち辺り全体を白や紅の粉末で包み込んでいく。「また、あれだ!!」煙幕もどきの粉末に視界を奪われ、敵兵たちが、粉にむせながら喚き散らた。「インカ兵どもが屋上で使っていたのと同じやつだ!卵の殻に小麦粉を詰めただけの、あのバカげた子供騙しの――」大声で喚いたために大量に粉を喉に詰まらせた敵兵が、グワッショッ!!と、怪物のようなクシャミをして、涙と鼻水をドッと辺りに撒き散らした。「旦那、今度は、ただの小麦粉じゃないですぜ。胡・椒と唐・辛・子・入り♪」悶絶している敵兵の耳元で悪戯っぽく囁いて駆け抜けていったジェロニモの言葉通り、此度、アンドレス隊の兵たちが使ったのは自作の「スパイス爆弾」であった。「爆弾」とはいえ、穴を空けた鶏卵に小麦粉と胡椒、唐辛子を混ぜ合わせたものを詰めただけのものではあったが。それらの粉末を深々と吸い込んでしまい、怒涛のように涙を流して咳込んでいる敵兵たちの群れを一気に駆け抜け、アンドレスが叫んだ。「今だ!!この通路沿いの要塞砲を全て奪え!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。≪ジェロニモ≫(インカ軍)義勇兵としてインカ軍に参戦する黒人青年。スペイン人のもとから脱走してインカ軍に加わった。此度の作戦では、アンドレス隊に属する多くの黒人兵を統率し、アンドレスを補佐している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.01.24
コメント(26)
「そう言ったって、他に妙案があるわけでもないし、もう迷ってる時間なんて無いんだ!」語気を強めたアンドレスに、ジェロニモは、今一度、肩を竦めて、「まあ、そうですねえ」と、呟いた。それから、玉のような汗を額から振り払って、吹っ切るように鼻息を大きく吐き出した。「――ガッテンです!いっちょ、『あれ』、やってみましょう!」「よおし!そうと決まれば――」汗や戦塵にまみれた顔に精悍な笑みを浮かべたアンドレスに、ジェロニモもまた、いつもの茶目っ気たっぷりのウィンクを返してきた。「ですね。そうと決まれば、すぐに、みんなに合図を送らないとネ!」そう言うが早いか、彼は武器を持たぬ方の左手を口元に添え、「ピュッ、ピュッ、ピューッ!」と、独特なリズムの口笛を吹き鳴らしはじめた。ジェロニモの放った口笛を聞きつけた周囲のインカ兵や黒人兵たちがハッとして、すぐさま、「ピュッ、ピュッ、ピューッ!」「ピュッ、ピュッ、ピューッ!」と同じリズムの口笛を吹き鳴らし、その音を聞き取ったインカ兵たちが、さらに口笛を吹き鳴らし――。合図を送る口笛の音が、まるで、どこまでも広がりゆく波紋のように、アンドレスたちのいる4階から3階へ、そして3階から2階へ、さらには1階へと、砦全体に殷々と鳴り渡っていく。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。≪ジェロニモ≫(インカ軍)義勇兵としてインカ軍に参戦する黒人青年。スペイン人のもとから脱走してインカ軍に加わった。此度の作戦では、アンドレス隊に属する多くの黒人兵を統率し、アンドレスを補佐している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.01.21
コメント(27)
溜息交じりに呻いたジェロニモの言葉に、アンドレスも眉間に深くしわを寄せ、敵襲に身構えたまま頷いた。「ああ、ジェロニモの言うとおりだ。この砦の門前には、外敵の侵入を防ごうと、大勢のスペイン兵が守りを固めている。それに、我らの援軍を迎撃しようとする要塞砲も封じなければならない。そこでだ――」またも襲い掛かってきた敵兵を瞬時に斬り払って、アンドレスは、通路の数ヵ所に据えられている大砲をジェロニモに視線で示した。「この階の通路に据えられている大砲だけでも、ざっと、5~6門はある。あれを拝借すれば、砦の門前の敵兵どもを追っ払うことができると思わないか?それに、砦に潜入している味方の兵たちは、砦の各階に広がって戦っている。例の『あれ』を使えば、一時的にでも、各階の要塞砲を封じることができるかもしれない」そう囁いたアンドレスの低声(こごえ)に、じっと耳を欹(そばだ)てていたジェロニモが、苦笑交じりに肩を竦めた。「本気ですか?!相変わらず無茶な作戦ですね~。こんな大事な場面で、よりによって、『あれ』ですか?!あの効き目なんて高(たか)が知れてるし、そう長くはもちませんよ」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。 剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。≪ジェロニモ≫(インカ軍)義勇兵としてインカ軍に参戦する黒人青年。スペイン人のもとから脱走してインカ軍に加わった。此度の作戦では、アンドレス隊に属する多くの黒人兵を統率し、アンドレスを補佐している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!(1日1回有効) (1日1回有効)
2014.01.17
コメント(31)
全1122件 (1122件中 151-200件目)