クリームな日々

クリームな日々

鳩山演説要旨



 広島・長崎では、わずか2発の原子爆弾で20万人以上の市民の生命が奪われ、60年以上たっても放射能被害に苦しんでいる。

 世界の指導者にも、ぜひ広島・長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んでほしい。

 我々は戦後の復興を遂げた後も、自らが核兵器を持つという道を選ばなかった。1970年にはNPT(核拡散防止条約)に署名し、96年にはCTBT(核実験全面禁止条約)に署名した。

 核軍拡の連鎖を断ち切ることこそが、唯一の被爆国としての道義的な責任だと信じたからだ。日本が非核三原則を堅持することを改めて誓う。

 しかし、日本が核兵器を持たないだけでは不十分だ。

 核保有国は膨大な数の核兵器を持ち、世界は核拡散の脅威にさらされている。北朝鮮、イランの核問題、テロ組織による核物質・技術入手の可能性など、核不拡散の取り組みが重大な局面を迎えている。日本は、核廃絶に向けて先頭に立たなければならない。

 今年4月、オバマ大統領が「核兵器のない世界」の構想を示したことは、世界中の人々を勇気づけた。今こそ我々は、行動しなければならない。

 第1に、核保有国に対して核軍縮を求める。非核兵器地帯の創設は、P5(国連安保理常任理事国5か国)と地域の非核兵器国との連携の下で進めることができれば、核軍縮と拡散防止、世界と地域の平和と安定に資する。

 第2に、CTBTの早期発効、カットオフ(兵器用核分裂物質生産禁止)条約の早期交渉開始を強く訴えたい。1954年3月、南太平洋ビキニ環礁での水爆実験で日本の第五福竜丸が被曝(ひばく)したことを思い起こす。核兵器生産能力の凍結は、核軍縮・不拡散の双方に貢献し、NPT体制をより平等なものにする。

 第3に、日本自身が核軍縮・不拡散を主導する積極的な外交を展開する。国連総会での核軍縮決議の提案、日豪による川口・エバンス国際委員会(核不拡散・核軍縮に関する国際委員会)の活動支援、IAEA(国際原子力機関)の技術・専門性、資源の強化に取り組む。天野次期事務局長をサポートしたい。

 第4に、新たな核拡散の動きに対し、積極的に対応する。北朝鮮の核開発は国際の平和と安全への脅威で、断固として認められない。国連安保理決議1874の実効性を高めるため、更に必要な措置をとる。イランの核問題も懸念している。

 第5に、原子力の平和利用では、拡散のリスクを低減し、保障措置・核セキュリティー・原子力安全の各項目で最高レベルの水準を順守することが必要だ。

 来年5月のNPT運用検討会議までの間は、「核兵器のない世界」に向けて現実的な第一歩を踏み出せるかどうかの重要な時期だ。核軍縮・不拡散に向けて行動することは地球上のすべての国家の責任だ。
(2009年9月25日01時56分 読売新聞)

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