DarkLily ~魂のページ~

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約束~(第3回)



正直、名前を覚えるのが苦手な私は、こういうときが一番困る。

話かけられたものの、相手を思い出すことができなかった。

どうやら、内緒を送ってきたのは、このちっともじっとしていないバルさんらしい。

とにかく、早く返事を返さなければと、内心、おおいにあせりつつ。

「ぼーとしてます。」

そう話しながら、必死で次のせりふを考える。できればがっかりさせたくはない。

このはしゃぎっぷりは、偶然の再会のためだろうか。この姿でいることはめったにない。

銀装備を着ているからセカンドかもしれない。そういえば、先日、少しだけPTを組んだパラさんが、自分もバルキリーを育てようと思っていると言っていた。名前も少し似ている。それにしても・・・

「よく私を覚えてましたね。」

「えっ、知り合いでしたか?」

「こないだのパラさんでは?」

「たぶんちがいますよ、これしか育ててませんから。」

ああ、しまった。

このとき自分の勘違いに気がついた。最初に話しかけられた台詞、あれは「やっほーこんにちは」と読むのが正しかったのだ。

しかし、まぁ。

「知らない人に内緒で話しかけてるんですか?」

「はい、そーですよ。」

「普通しませんよ。」

「えー、そうですか?」

「はい、しません。みんなびっくりするでしょう。」

「だって、待ってるの嫌いなんですよ。せっかくなんですから、じゃんじゃん話しかけますよー。」

そうか、ただちゃかちゃかしているだけじゃないんだな、と感心していたら、

「ひまそうな人をみつけて声をかけてるんです。今日見た中でカシバチさんが一番ひまそうでした。」

そりゃ、確かにそうかもしれませんがね。

いやー、面白い。

「このカシバチは仮の姿です。私の本職はマジシャンで”誰か”という名前です。」

「できれば、そちらの名前で呼んでもらえますか?」

「はい、誰かさんですね。」

この日から、彼との付き合いが始まる。ほんの数週間の短い期間ではあったけれども。


誰かより、一言。
これは、まだ、プリセラさんと刹牙さんしかいなかったころの話です(しかたなくぼーっとしてたんですからね)。カルさんに初めて会ったころ、「クロノスで一番の暇人です」とか言っていましたが、このときの会話が元になってます。






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