DarkLily ~魂のページ~

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夏祭り




「とうきび、わたがし、りんごアメ・・・。」

夕暮れの風に運ばれるお囃子を聞きながら、こうしてそぞろ歩くのも悪くない。立ち並ぶ屋台を眺めているとそれだけで楽しい気分になってくる。とはいえ、軍資金は限られている、これから目いっぱい楽しむため、お目当ての屋台のチェックに怠りはない。

「なんだ食べ物ばかりだな、他にもあるだろう?」

「うむ、かき氷も捨てがたい。」

「じゃなくて、射的とか、風船つりとか。」

「ギャンブルは身を滅ぼします。だいいち、それじゃたべられない。」

「なら金魚すくいならいいか。」

「おおっ、活け作り!・・・って、そんなんじゃおなかの足しにならないなぁ。」

「すなおに食うなよな。それとも何か食べるか?」

「うーん、もうすぐ他のみんなとの待ち合わせの時間だし、限りあるお小遣いを今使ってしまうわけにはいかないから。」

「しょうがないなぁ、ジュースくらいならおごってやるぞ。」

「隊長!前方にジュースを売っているお店を発見しました!!」

「うあ、目ざといなぁ、それじゃいきますか。」

「お供します。」

冷たい水に沈んだ宝物をサルベージしようと、いそいそと物色していると、とても風情のあるものが目にとまった・・・、というのに!

「おじさん、ビール。」

「コラッ!一般人を巻き込むんじゃない。それよりもほらこれを見て。」

私の見つけたそれは、ガラスの玉に過ぎなかったけれど。

「おっラムネかぁ。おじさん、ラムネ二つ頂戴。」

「あいよ。」

さっと水滴をふきとったラムネを受け取ると、ひとつをこちらに差し出す。

「ありがたきしあわせ。」

恭しく受け取ると、相方がにこやかにのたまう。

「なるほど、お祭りにはラムネがふさわしいってわけね。」

「そうだね、君にはラムネがお似合いだね。」

「なんか引っかかるなぁ、どうやらいらないとみえる。」

「めっそうもない。」

あわてて、両手で抱えてビンをかばった。

抱えたそれをそっと覗き込むと、相変わらず愛嬌のある顔がこちらを見つめている。

逡巡したのち、私は、おずおずとビンを差し戻した。

「ん、どした?」

「ごめん、あけてくれる?」

「なんだよ、それが醍醐味ってやつだろ?」

「だってさ・・・」

ちょっと心配だった。

「浴衣がぬれると悲しいから。」

ほほが浴衣の柄と同じ色に染まってないといいけど。

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