DarkLily ~魂のページ~

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ドラゴン、街へ行く・第四話



 街の門番は、途方も無い努力を強いられながらも平静を装いつつ、内心では盛大に頭を抱えて泣き叫んでいた。

 わずかに時はさかのぼり、少女が街に入るために姿を見せたところから、いよいよ彼の苦悩は始まる。

 最初、おさなげな少女が一人きりということで事件に巻き込まれたものかと心配したが、ぽかんと口を開けて外壁を見上げていた様子がいかにも微笑ましくて、暗い影を背負っている風には見えないのは安心材料と言えた。どの道、身分証を所持していなかったため、審査の必要があることでもあり、何かしら出来ることもあるだろうと、この場の責任者である彼は、少し気にかけることにして、自ら話を聞くことにした。

 街の入り口には”鑑定球”という物がある。

 戦争の影響で避難してくる人たちの流入が増え、また、間者などが紛れ込むのを防ぐためもあり、審査のための高価な魔法の道具が配備されていた。

 触れたものの名前や種族、職業、果ては、能力や隠れた才能にいたるまで、一瞬にして暴いてしまう。

 そう、ほんのちょっと触れただけで。

「こうですか?」

 おずおずと手を水晶玉に伸ばした少女は、特に警戒するでも無く、むしろ何が起きているのかを理解していない様子だった。

 種族:スペクトルドラゴン(人化中)

 そこには、門番にしか見えない文字でそう表示されているのだが。

 賢明にも、表面上はわずかに息を詰まらせるだけで、なんとか押しとどめた。たとえ心の中では、絶叫していても。

 うあああああああ!

 ヤバいなんてもんじゃ無い、人の姿をとれるドラゴンってことは、間違いなく上位種じゃないか、下手したら街ごと消されるレベルでヤバい!

 これは、ご無体が過ぎませんか。

 出世街道でつまづき、門番に左遷されても、懸命に働いてきたというのに。

 門番は嘆いたが、街の人々にとっては、彼が左遷されてここに居たのは、紛れもなく僥倖だった。

 この瞬間、街の命運は、しがない門番に託された。

 正直、生きた心地がしないが、ここで対応を間違えるわけにはいかない。

 まず、この場で騒ぎ立てるのは無しだ。撃退など思いもよらない。それどころか、正体が露見したと気づかれたら何が起こるかわかった物じゃない。もしも、暴れられたりしたら大惨事だ。

 街に何の用事があるのか知らないが、目的を遂げるのを妨げずに、速やかに、かつ、穏便にお引き取り願うのが、現状でとりうるほとんど唯一の選択肢なのはわかった。

 ただ、その目的が人に害をなすものであれば、自由にさせるわけにはいかない。

 ということは、今、すべきことは三つ。

 あー、もう、やるかあ!

 できる範囲で。

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