DarkLily ~魂のページ~

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ドラゴン、街へ行く・第九話



 この子は、少女で、はにかみやで、ドラゴンの、それも上位種で、とんでもない、ポンコツだった。

 あと、方向音痴で、地理に疎く、世間知らずで、記憶は障害を疑うレベル、おまけにアドリブに弱く、ややパニック気質の持ち主でもある。

 これらは、街に来るまでの経緯、つまり、どこから来て、どこを通って来たのかを聞きだすための、門番による決死の情報収集の成果のほぼ全てといえる。

 かろうじて、荷馬車に乗せてもらったのが、控え目に言って最高!、という貴重な情報を入手していた。

 門番の苦労、推して知るべし。

 わずかに答えられたことは、ノータイムで返事をしてくれていたが、ほとんどの質問ですぐにしどろもどろになってしまう。

 やぶからドラゴンになっては、目も当てられないので、すかさず助け舟を出して、話題を打ち切らねばならなかった。

 はあ、本当にもう、この子は。

 門番は、全てが徒労に終わらなかったことに安堵した。

 そう、判断材料は手に入った。

 荷馬車なら間違いなく街道を通っている。まっすぐに森を抜けて、現在戦争状態にある国境方面から来たと思われた。しかも、少女の姿のままで。追跡調査が必要になったとき、とっかかりにはなるだろう。

 それに、御者と友好的に接しているのも好材料といえる。

 質問に上手く答えられないのは、むしろ誠実に答えようとしてくれていることの裏返しに思えた。少なくとも嘘が苦手な性分には違いない。答えられることには即答していることからみても、本人的には、答えられるものなら答えたかったものだろう。

 これなら、あの質問にも素直な答えを返してくれるかもしれない。

 意を決して、一番知りたかったことをたずねる。

「この街を訪れた目的は何ですか?」

「あ、はい、移住希望です」

 えっ。

 そこ観光とかにまかりませんか?

 ちょっ、どうしましょ・・・

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