DarkLily ~魂のページ~

DarkLily ~魂のページ~

ドラゴン、街へ行く・第十一話



 雪遊びが好きで、あらかたやった。ソリに、かまくらに、雪合戦。

 あの頃は良かったなあ。

 年寄りくさいことを言わないで下さい、とか言いそうな奴もついでに思い出したけれど。

 はぁー・・・

 雪だるま式に、厄介ごとが増えたあああああ!

「早くそれをしまって!」

「あ、はい」

 パフッフールは、あたふたと剣を懐に戻す。

「なんてものを、隣国の王家の紋章の入った剣なんて売ろうとしたら大事件だ」

 声をひそめつつも、強く言った。

「ふえええ」

「もう誰にも見せてはいけない、絶対に人に知られないようにしてください」

「はい」

 なんてこった。

 身の危険については、これが普通の子供だったらなんて想像もしたくない。

 この時、ろくでもないことに使われるくらいなら、パフッフールに死蔵してもらった方がマシな気がした。

 このポン・・・素直なドラゴンなら、余計なことは思いつかず、ひたすら言いつけを守ってくれる。

 存在を知られなければ、何も起こらない、剣も、ドラゴンも隠し通す。

 だからそれはいい。

 いや、大問題だけど、ますます手を出せなくなってしまったのだから仕方ない。

 パフッフールは、温厚なドラゴンだと思う。

 だから、意にそぐわなければ、力の行使をいとわないという事実を、つい忘れてしまわないようにしなければいけない。

 なんてこった。

 こんなの逆らうわけにはいかない。

 二万人・・・

 門番は、戦慄を新たにする。

 移住を望むなら、こちらから屋敷を差し出したいくらいだ。

 隊長の安月給で?、という声が聞こえた気がしたので、まずは、あのパンをバスケットごとお土産として差し出すことを決めた。

「あのう」

 その時、遠慮がちにパフッフールが声をかける。

「このまま、私が持っていても良いのですか?」

 ああ、そんなことを言ったら、取り上げられてしまうだろうに。

「もしかしたら、外交的な理由で譲ってほしいということになるかもしれませんが、その時は、出来る限り悪いようにはならないようにしますので、譲ってくださると助かります。でも、今は、誰にも内緒にしましょう、我々だけの秘密です」

「秘密!、わかりました、ふふふ、私達だけの秘密ですね」

 この聞き分けの良いドラゴンに、一体、何をしたら軍隊を壊滅させられたりするんだろうか。

 呆れるとともに、警戒心も喚起された。

 怒りを買わないために原因を調べるべきか。

 全滅ではなく、二万だけというところにヒントがあるかもしれない。

 心に留めておく。

「でも、困ってしまいました、お金どうしよう」

「ああ、他に換金できそうなものはありますか?」

 うーん、と少し考えて。

「あ、もしかしたら、これは売れませんか?」

 ポプリの袋の様なものをとりだすと、口を開いてその中身、薄桃色をした半透明の小粒の結晶、を少し机に広げて見せる。

 魔力結晶だ・・・

 クスリの材料にも使われるが、兵器の材料にもなる。これだけあれば、この建物ごと吹き飛ばして、近隣に生き物が住めないほどの魔力汚染を引き起こせる。

 なんてこった。

「早くそれをしまって!」

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: