DarkLily ~魂のページ~

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ドラゴン、街へ行く・第十七話



 パフの手を引きながら、買い物かごをぶん回して、どこまでもごきげんなお姉さん。

 二人は、市場を見て回っている。

 元々、買い出しに行く途中だったお姉さんは、美味しいものをごちそうするべく、パフを急き立てて、今夜の食材を仕入れに向かった。

 なんといっても、お世話する気満々なのだ。

 もっとも、市場についてからの二人の歩みは、遅々として進まない。

 目をキラキラさせて、食い入るように露店に見入っているパフの存在もさることながら、お姉さんを見かけるとその度に、あちらこちらから店主たちに声をかけられていた。

「いやー、人気者はこれだから困っちゃうね」

 なんて、お姉さんが嘯(うそぶ)いていると。

「おーい、マユちゃん」

 さっそく呼びかけられるお姉さん。

 声をかけてきた店主は、ひとめパフを見るやいなや。

「あー、とうとうやっちまったかあ、いつかこんな日が来るとは思っちゃあいたが、面会には行ってやるからな、自首しろ」

「さっきから、みんなして、理解が早すぎるでしょ!」

 ずっとこの調子である。

「実はね」

 マユが、パフに事情を説明する。

「みんな、ご近所さん達なの。お子さんがいないお家が多いこともあってね、小さい頃からかわいがってもらっているの」

「わー、いい話だね」

 パフは、のんきに感心しているけれど、問題はそこじゃないってことに気が付いていない。

「さて、色々見て回ったけれど、パフちゃんは何か欲しいものある?」

「八百屋さんに行きたいな、また何かあったら困るから、護身用に武器を買いたいの」

「そっか、用心するのは大事だよね、お姉さんもよろうと思っていたから、今から行こうか。でも、八百屋さんに武器はあるかなあ」

「うーん、良いものがあるといいな」

「そうだね、良い品があったらいいね」

 門番が聞いていたら頭痛に見舞われそうな会話をしながら、馴染みの八百屋へと向かう。

「くださいな」

「やあ、マユちゃん、あー・・・」

 本日限定の時候の挨拶も滞りなく済ませたところで。

「わあ、リンゴだあ、カボチャもある」

 どことなく童話チックなチョイスをするパフ。

「えー、武器にするならこっちの大根の方が良くない、殴るのに向いてそうだよ」

 ホラホラとお姉さんが大根を抱えて見せると、店主がここぞとばかりのいい笑顔でのたまう。

「おじさん、立派に育ったマユちゃんのなら蹴飛ばされてもいいなあ」

 マユは、大根を思い切り振りあげた。

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