Precious Monsters

S先生との出会い



カナダから帰国後すぐに母に付き添ってもらい、産婦人科へ行った。
母も以前、同じ病院の産婦人科にかかっていたのだが、担当はS先生だった。

常々母は「S先生はとてもいい先生」だと言っていたので、私もS先生になればいいなぁ~と
何となく思っていた。

受付で問診票をもらい、そこに記入して名前が呼ばれるのを待った。

電光掲示板を見ると、今日の外来はS先生だった!

母も「よかったね~」と言ったので、会った事もないのに何だかうれしかった。

長い待ち時間を経て、ようやく名前が呼ばれた。


中に入ると、S先生がいた。


第一印象は、



「えっ?これが噂の・・・・・S先生ですかぁ?」




無精ひげを生やしていて、白いYシャツを着ていた。
一番上のボタンをはずしていて腕まくりをしている。
もちろんネクタイなどしてはいない。
靴は・・・・オッサンがよく履いている鼻緒の黒い草履。(イグサのやつね)
全くやる気が見られない。。。
しかも、ボソボソと話すのでよく聞いていないと聞き逃しそう。



問診票を少し見た後、

「じゃ、隣で内診するから行ってくれる?」



隣の部屋で緊張しながら待っていると、



先生「見える?」



見える・・・ってなにが!?




私「何ですか?」



先生「あぁ、ごめん。」

カーテンの向こう側(先生の方)にモニターを置いたまま聞いてたようだ。

モニターを私に見える位置に動かしてくれた。

すると、そこには


赤ちゃんがいたんです~!!!!


その日は9週6日目だったのだけれど、頭と体と両手・両足がハッキリ見えた。
初めて見る私の赤ちゃん。


うれしくて涙が出た。



先生「じゃ、隣の部屋へ来てね。」



下着をつけて隣の部屋へ行くと、



先生「結婚してないんだね?」
私 「はい。もともとは来年の夏にするつもりだったんですけど・・・」
先生「じゃ、母子手帳は籍入れてからもらった方がいいね。」

これが後にも先にもS先生の唯一のアドバイスだった、と思ってる。

つづく


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