「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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れいんぼータウン
姫禾 キリリク
たまにはその口から聞きたいの。
本当かどうかわかんなくて、不安になる時だってあるんだよ?
ねえ、だから言ってごらん?
あたしの事・・・・・・
『スキ?』
「だーーー!もう、さっきからそればっか!」
「だーかーら!お願いって言ってんじゃん!」
パチンと両手を合わせてみても、相変わらずブン太は「イヤ」の一点張り。
こんなにあたしがお願いしてんのに!
「一回だけでいいからさ。ね?」
「イヤだっつってんじゃん」
「何でよー。けちーー」
「ケチじゃねーよ」
顔の前で手を合わせたままのあたしに背を向けて、ブン太は窓際を向いてしまった。
誰もいなくなった放課後の教室には、あたしとブン太の2人だけ。
開けっ放しの窓からは野球部の声が聞こえてきた。
「ケチじゃんか。ブン太のケチー!言ってくれたっていいでしょー?」
「ケチじゃねーし、ぜってー言わねーよ。」
頬杖を付いて窓の外を眺めるブン太。
隣の席に座って、その背中をにらむあたし。
ブン太の意地っ張り。ケチ。意地悪。
こんなにこんなにお願いしてるのに。
この前ブン太がコアラのマーチ(チョコ)食べたいって言ったから買ってあげたのに。
その時お金持ってないブン太に貸した100円まだ返してもらってないのに。
いや、そんな事はもうどうでもいいとして。
あたしはブン太の口から聞きたいの。
「好き」って。
ブン太がそんな事しょっちゅう言うキャラじゃ無い事ぐらいわかってるよ。
たださ、ホントに時々でいいから聞きたいの。
「ねえ、ブン太。」
「んー?」
ブン太の背中がやる気なさそうに返事する。
もう。返事だけじゃなくてこっち向いてよ。
「ブン太の彼女って誰ですか?」
「・・・・・・・」
あ、こっち向いた。
「ねえ?」
「彼女って・・・・・・・・・お前だろぃ?」
「なに当たり前の事聞いてんだよ。」そう問いかけるようにポカンとあたしをみて、同時に指も指された。
まあ、確かに彼女はあたしなんですが・・・・・・・・
「じゃあさ、ブン太はどうしてあたしに好きって言ってくれないの?」
出来る限り真面目な顔して言ってみる。
それなのにブン太は「ハハッ」と軽く笑い返した。
「どうしたんだよ。今日の杏璃、何か変だぜ?」
「変じゃないよ」
「変だって。急に「好きって言えー」とか。」
「・・・・・・だって・・・・」
下を向くと、自分の折り曲げた膝が目に入る。
始まりは、昨日の生意気な後輩の一言―――――。
「ねえ、岡沢先輩と丸井先輩が付き合ってんのは知ってるんスけど、
丸井先輩って、「好き」とか言ったりするんスか?うわっ、想像出来ねーッスよっ!」
ケラケラと冗談交じりで言われたその一言が気になって、
そう言えばあまり言われた事が無いことにも気が付いた。
いや・・・・あまりって言うか・・・・
「あたし、ブン太が好き」
「うん、俺も。」
そんな言葉ばかりで、
ブン太の口から「好き」と聞いたことは・・・・・・・・?
「無いんじゃないっ!!?もしかしなくても!」
「おわっ!何だよいきなりっ!」
うん。今あたしは悲しい事実に気が付いた。
無い、のかもしれない。いや、無い。
あたしは聞いたことが無い。
ブン太の「好き」の言葉。
それでも、あたしたちは付き合ってる訳だから、それなりの言葉は何度か聞いたこともある。
でも・・・・・
「ねえ、ブン太お願い!言ってよ。」
「まだそんなこと言ってんのかよ」
はぁ、とため息をつくブン太。
本当は、こんな風に強制して聞くもんじゃないことぐらいはわかってる。
あたしだって言わされて言う言葉を聞いて嬉しいとは思わない。
半分以上ヤケになってるのは自分でもよくわかる。
「ねえ、ブン太。あたしのこと・・・・・・好き?」
「・・・・・・・・・・・・・・・まぁな。」
「・・・・「まぁな」じゃなくてさ。」
「うん。」
「「うん。」でもなくて!」
「はいはい。」
「・・・・・・・・・・」
・・・・・・くそう。
あたしが「好き?」って聞いて、「好き」って返してもらう事を期待してんのわかってるはずなのに。
意地でも言わないのかこの男。
「・・・・・・・・・長期戦に持ち込んでやる。」
「は?」と、わけがわかんなそうなブン太の目の前で、持っていた包みを開けた。
「・・・・・・・・!おまっ!ズリーぞ自分だけっ!」
「言ってくれないブン太が悪い。あたしはお腹が空いたの。」
あたしの口に入ってるのは丸い棒付きのアメ。
苺の味と香りが口いっぱいに広がった。
「俺だって腹減ってるっつーの」
「もう一本あるよ?いる?」
「マジっ!?いるいる!」
「でも、言ってくれたらね?じゃなきゃあげない。」
「・・・・・・」
一瞬固まってしまったブン太の目の前で、あたしのとは違う、青い包み紙のアメを振ってみせる。
「どーする?」
「俺のは苺じゃねーわけ?俺、苺の方がいい。」
「・・・・・・苺はあたしのだけだよ」
「俺も苺がよかったー。じゃあ今日はそっちで我慢すっか。」
・・・・ブン太、あたしの話・・・・聞いてた?
食べる気満々なのはいいんですが、言ってくれないと、これあげないんだってば。
そんなあたしを無視して、ブン太はあたしの持ってるアメに手を伸ばした。
「ちょっとブン太っ!言わないとあげな・・・・・」
アメを取るかと思えば、伸ばしたその手はそのままあたしの手首をつかんで、
もう片方の手であたしの口からアメを抜き取って―――――
視界には、ブン太しか映らなくなった。
暗くぼやけるほど近づきすぎてるブン太の顔。
やっと状況を把握できたあたしの脳は、次第に心臓をドキドキさせる。
ブン太の少し長めの前髪が鼻に触って、あたしはくすぐったくてゆっくりと目を閉じた。
一瞬の事だろうけど長く思えたその時間を遮る様に、チャイムが大きく鳴り響いた。
あたしの唇から離れたその口が、ゆっくりと薄く開く。
「・・・・・・・・好き・・・・・・」
真っ直ぐにあたしを見て、ブン太は一言そう言った。
「俺はやっぱり苺味が好きだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
苺味?
あたしじゃなくて、・・・・・苺味が?
だからあたしにキスしたと言うのですか?
「何・・・・」
言い返そうとした時、真っ赤になってそっぽを向いたブン太が目に留まった。
「・・・・・ありがとうブン太。あたしも好きだよ」
それは照れ隠しだって、思ってもいいよね?
「だから、苺がだって。」
「うん。」
「わかってんのかよ」
「わかってるわかってる」
あたしが、でしょ?
手に持っていた青い包みのアメを渡して、夕日が差す教室を後にした。
END
ごめんなさい。勝手に優亜から杏璃に変えちゃいました・・・。
ごめんなさい。
しかも、甘くねぇ!
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