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2014.10.23
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我が家の近くには、ほぼ開店休業状態の競馬場がある。戦前に創業した歴史ある競馬場らしいのだが、現在は馬が訓練のために走っていたり、競技のような事をしていたり、といった程度。

そこに2年ほど前、一大カジノ施設を建設するという話が持ち上がった。正確には、ここに将来的にはカジノを建設するという目論見の下、赤字覚悟で、この競馬場をずっと経営していたとのこと。

カジノ会場はもちろんのこと、ホテルにショッピングセンターに遊歩道にと、現在は閑散としているこのエリアに、一転して巨大エンターテイメントエリアが登場するという計画である。

私はカジノというと、何となく場末のゲームセンターというか、暗くてネガティブなイメージを持っていたのだが、まだ子供が出来る前にコネチカット州にある Mohegan Sun(モヒーガン・サン) というカジノ施設に行って、イメージがすっかり変わった。ここはまるで大人向けのディズニーランドみたいで、純粋なギャンブルの施設以外はショッピングセンターもあり、子供も入場可能。コンサート会場もある。そんな施設を、我が家の庭先に造ろうというのである。

当然のことながら、周辺住民は賛成派と反対派に分かれた。かなり大雑把な括りではあるものの、賛成派は昔からの地元住民。反対派は最近流入して来た若いファミリー達。

賛成派は何と言っても雇用の増加に期待。ブルーカラーのこの町は、仕事にあぶれている者も少なくない。また、もともと彼らの多くはギャンブル体質のため、カジノ自体に抵抗が少ないと言える。市や政治家達も、周辺地区の再開発への投資を掲げて実現を推進する。近くのダンキンでは、ちょくちょく見かける地元の市議員が、常連の客に「きれいな遊歩道も出来るんだよ」と話しかけているのを目撃(笑)。

一方、反対派は犯罪の増加、近くを走るハイウェイの交通混雑、不動産価値の低下などを懸念。

私はどちらかというと反対派に属する人達のコミュニティに属していたが、無責任ながら傍観派に回った。当時、諸事情により、家の事を回して行くので精一杯な状況でもあったし、正直、どう行動して良いのかも分からなかったからである。



この住民投票当日まで、賛成派と反対派の攻防戦が連日のように繰り広げられた。毎週末のように、反対派と賛成派がそれぞれプラカードを掲げて街頭に立ち、庭先に支持する側の看板を立て、それぞれの主張を繰り広げ、その様子は地元紙に取材された。

反対派は団体を立ち上げ、活動費の寄付金を募ったり、事務所スペースを借りてホットラインを設置し、各住民世帯に電話をして説得を講じるといった作戦にも出た。アナログな電話線を引けるぐらいだから、寄付金の集め方も情報の流し方もこちらはデジタルで、ウェブサイトやフェイスブック、地元のメーリングリストなどを駆使し、連日のように関連情報が流れて来る。

一市民に過ぎない彼らが、いったいどんなノウハウを持ってこのようなことが出来たのかはよく分からないが、その行動力にはいつものことながら驚かされる。でも、自分達で一から地元に幼稚園を設立してしまったような人達でもあるから、別に驚くほどのことでもないのだろうか(幼稚園設立の一部始終は こちら )。

ただし、この反対派の中でも、かなり積極的な人達とそうでない人達の温度差はあったようである。たとえば、知り合いのお母さんの一人は電話作戦を手伝ったらしいが、「こういうことやるのってホントは性に合わないんだけど、やらないといけないと思ってやったのよ」と、告白してくれた。このママ友・パパ友グループ、全員が一丸となってやっているように見えて、一人一人に本音を言わせると実はそうでもなかったりするんだな。

そして、ついに迎えた住民投票当日。私は正直言って、賛成派が勝つと思っていた。政治家のほとんどが賛成側に回っていたし、代々ここに住み着いている住民の意見の方が優勢だと思っていたからである。
ところが、一夜明けての結果を見ると、我々E地区の方は、NO(反対)が過半数を占め、カジノ施設の建設は否決された。パーセントにすると10パーセントほどの差であったが、数にすると確か1000票以上の差だった。これは大きな差である。ちなみにR市の方は60パーセントほどが賛成だった。
カジノ建設にはR市、E地区両方の賛成を得ないとダメなので、この案は否決。反対派が大喜びをしたのは言うまでもない。

傍観者に徹してしまった私も、この地区全体のイメージダウンや、平和なこの住宅街へのカジノ客の流入が回避されたことに内心ホッとした。

その後、R市が別のカジノ事業会社を使い、自身の敷地内だけに施設を建設するプランを作るなどの動きがあったのだが、今年に入ってそれも州の関連委員会の承認を得ることが出来ず、競馬場もその長い歴史を閉じることとなった。

この競馬場の近くには普通の住宅地が広がっていて、その反対側には大型スーパーとTarget以外はあまり流行っていないような店が連なる若干寂しげなショッピングモールがある。いずれにしても、再開発して活性化した方が良いとは思うが、何もカジノじゃなくても、子連れの家族も安心して楽しめるような健全なレジャー施設の方がいいんじゃないか、というのが私の意見である。空港も近いけど町の中心にも近いし、観光客の需要も十分見込めると思う。カジノはノー!という周辺住民の意向は十分表明されたはずだから、それを汲んで、建設的な計画が進むのを期待したい。





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最終更新日  2014.10.23 07:12:00
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