SIGMA SA-7N




SIGMA SA-7N


 SIGMA SA-7N + 28-70mmF2.8-4 DG 

勝手にインプレッション

不思議な魅力を湛えたカメラである。
最初から使ってみたかったわけではない。家電量販店の店頭に並んでいた時には、特に何の感慨も呼び起こさなかった。ただ、開放F値が2.8-4の標準ズームレンズとセットで税込29,800円と、新品の一眼レフとしては異常なほど安かったのと、その割りに真面目で良心的なスペックだったので印象に残っていた(希望小売価格はボディのみで50,000円)。

時は銀塩末期。売り場から急速に銀塩カメラの陰が薄くなっていて、いつの間にかコンパクトカメラから一眼のフラッグシップまでが、一つの売台でまかなえてしまえるまでに縮小しつつあった。そんな中に、SA-7Nも並んでいた。

SA-7Nは、レンズメーカーとして確固たる地位を築いているSIGMAが、総合カメラメーカーへと脱皮を試みる過程でリリースした、同社最後の銀塩一眼レフである。SA-7をベースにAF性能を強化したマイナーチェンジ版であり、SA-9の下位モデルになる。SA-9との違いはシャッターの最高速と巻き上げ速度、グリップの形状、ストロボの同調速度、あとは使用電池くらいのものだ。その他の部分は、全く同じである。従って、SA-9よりもSA-7Nの方が若干だがAFは速く、迷いも少ない。

AF測距点は中央のクロスセンサー一点のみ。銀塩末期はエントリーモデルといえども多点測距が当たり前だったから、今どき驚くようなロースペックと言わざるを得ないが、もともと中央しか使わないエンゾーのような人間には特に欠点にならないし、精度に不安があって使えない測距点を増やすくらいなら、一点のみのほうがマシである。

ファインダー像はお世辞にも良くはない。マニュアルでの精密なピント合わせなどは初めから望むべくも無い。、また視野率が92%なので、よく考えて撮らないと、現像後に余計なものが写り込んでいることになるが、この辺りはキヤノンの中級機でもあまり変わらないので、気にしすぎないほうが良い。

それより困るのが、ファインダースクリーンの着色現象である。これは100%発症する。スクリーンの上の方からだんだんオレンジ色に変色してきて、その範囲が下へと広がっていく。さながら、常に夕焼け空を撮っているような感じだ。SIGMAに修理に出しても時間と共に同じ状態になるので、もう初めから諦めている。

シャッターを押すと、「パカン!」と元気な音がする。非常に賑やかなシャッター音だ。ノイズとしては大きいが、例えばペンタックスのカメラのように「ジャリッ」というような切れが悪くて耳障りな感じではなく、あっけらかんとして乾いた音色なので、不快感は無い(むしろ、個人的にはかなり気に入っている)。
またSIGMAの一眼レフは、価格帯に関係なく「安くてもミラーアップ出来ます」というのが一つの売りだった。もちろんレリーズショックを回避する手段として用意された機能だが、ケーブルレリーズを装着できない構造なので、ミラーアップ機能を使おうと思ったら、必ず付属のリモコンを併用する必要があった。リモコンをなくしたら使えないわけで、良心的と言って良いのか悪いのかよく分からない(ちなみにエンゾーは紛失した)。


発売当初、このカメラはダブルズーム付きで売られていた。それまで、SIGMAと言えば「量販店が一眼レフ初心者に売りやすいダブルズームキットのための安いレンズを量産するメーカー」という側面がどうしても付いて回っていたが、ご多聞に漏れず、自社のSA-7にも「28-80mmF3.5-5.6II MACRO」と「100-300mmF4.5-6.7 DL」というコストパフォーマンス重視の軽量小型なレンズがセットで誂えられていた。が、エンゾーはその組み合わせに魅力を感じることが出来ずに、横目で眺めていただけであった。


しかしちょうどその頃・・・改良版のSA-7Nがリリースされた辺りを境に、SIGMAはドラスティックな改革路線を打ち出し始める。

いつまでも『シャープで安いが逆光に弱いSIGMA』でいいのか

山木社長は、こう言って社員を叱咤したそうである。当時のSIGMAの世評はまさにその通りで、順光ではカミソリのようにシャープ、時に驚くほどのコストパフォーマンスを発揮することもあるが、厳しい光線状況においては全く粘らず、フレアやゴーストが頻発する、いわゆる「ここ一番で全幅の信頼を置けないレンズ」という位置付けが完全に定着していた。
ユーザーに一流メーカーとして認識してもらうには、どうしてもこの壁を乗り越える必要があったのだ。

はたして、SIGMAは変わった。すぐに完璧な対策を施せたわけではない。相変わらずフレアは出たしゴーストも現れたが、それでも、使い続けてきたユーザーが見ればすぐ分かるほど、暴れ方が大人しくなった。

その転換期に出たレンズのうちの一本が「28-70mmF2.8-4 DG」だ。軽量小型であるにもかかわらず広角側の解放F値が2.8と明るく、しかもズームフード装備という贅沢な仕様になっている。せっかくSA-7Nを使うなら、お供にはこのレンズしかないと思っていた。当時、既に24-60mmF2.8DGという高性能な大口径ズームもリリースされていたが、SA-7Nの小さなボディにはアンバランスなので、機動力を優先したかったのだ。
ちなみにこのレンズ、外観を変えずに一度マイナーチェンジを経ており、その際に更なるコーティングの見直しが図られている。購入したのは、そのマイナーチェンジ版である。


エンゾーがSA-7Nを入手しようと思った時にはとっくに店頭から消えていたので、結局はヤフオクで捜し求めることになった。ただでさえ玉数の少ないSIGMAの一眼レフの中でも、モデル末期に少量生産されただけの改良版である7Nは滅多に出品されなかったが、今は縁あって防湿庫の片隅に鎮座している。必要十分の性能を備えた、実用に足る一台である。



長所

○真面目に作られたボディ。このクラスでミラーアップ完備は珍しい。
○意外と洗練されたデザイン。直線を多用した骨っぽい造形である。
○ツーダイヤルでシンプルな操作系。
○軽量小型で機動性が高い。


短所

●シグママウントゆえ、レンズのラインナップに偏りがある。
●ファインダーの黄変が最大の持病。素材の特性ゆえ、修理しても再発する。
●AF性能は高くない。測距点も中央一点のみ。
●グリップからマウントまでが近いので、手のサイズによっては指先がレンズの鏡筒に当たる。


超個人的オススメ度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ 

偏愛度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆

Yahooオークション出現率 (10点満点)
☆ 

*ほとんど出てこない。レアではあるが、積極的にオススメはしない。






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