Nikon 28Ti







Nikon 28Ti



勝手にインプレッション

バブル華やかなりし頃の1994年当時、エンゾーは特に写真に興味がある人ではなかった。だから町のカメラ屋のショーケースの中で、初めてそのカメラを見たとき、たかがコンパクトカメラが、明らかに他とは別格の扱いで展示してあり、しかもその値札に書かれたプライスがあまりに高価だったので、ヤケに高いカメラだなあと思ったことを覚えている。(定価¥135,000)

そのカメラの軍艦部には、オーバル型の白い小窓がついており、中にはクロノグラフさながら、何本も細い指針が組み込まれていた。カメラなのに時計みたいな感じだな、と思った。(後になって分かった事だが、実はこの部分の開発には、大手時計メーカーのセイコーが参加している。なるほど時計のイメージがあるわけだと合点が行った。)
(2005.7.8追記:嘘こいてました。我々が一般にセイコーと呼んでいる会社はセイコーウォッチ(株)のことですが、クルクル針やエプソンのR-D1にクロノグラフのパーツを供給したのは、セイコーはセイコーでもセイコーエプソン(株)で、資本的にも全くの別会社なのだそうです。つまり、R-D1に使用されているクロノグラフ「セイコー・ブライツ」のパーツも、セイコーエプソン製という訳。ややこしいなあ(-"-;))


(これが通称「クルクル針」。これにやられちゃった人、多数。) 



それから7年後…エンゾーの写真趣味が暴走し始めた頃…ネットサーフィンしているうちに、あるHPで、再びこのカメラと巡り合うことになる。「クルクル針クラブ」というその罪なサイトは、管理者であるビヨーン太氏が趣味で開設した「28Tiと35Tiのためのページ」だ。
このサイトを隅から隅まで読み終わったとき、もはやエンゾーの中に、くるくる回る針を戴くこのカメラを手に入れないでおく理由は何一つなかった・・・。

28Tiと35Tiは、文字通り28mmと35mmのレンズを備えている。どちらを買おうかと迷った末、黒いボディが好きだったのと、ストロボスイッチの使い勝手が28Tiのほうが優れているという理由で、28Tiを買うことに決めた。
さて決めたのはいいが、実は販売実績の不振からとっくの昔に販売中止になっていたので、仕方なく中古品を買い求めた。28Tiの新品在庫が、ディスコン後何年もたって唐突に市場に流れ出したのは、それからまもなくの事である。エンゾー間抜け。

さて、28Tiと35Tiは兄弟機ではあるが、その描写には似ている部分と違う部分がある。先に出た35Tiは、かなり線が太い。正直な感想ところ、高級コンパクトとしてはいささか拍子抜けするくらい「普通」な画作りである。その反省があったのか、28Tiは解像感が上がっている。ただし、周辺光量は結構落ち込む。トンネル効果が期待できるので、そういう画が好きな人には向いているとも言える。上手くはまれば、なんでもない風景がドラマティックに変わるので、エンゾーは嫌いではない。

35Tiとの共通点は、発色が浅いこと。この頃のニコンのレンズに共通する味付けであるが、他社のレンズと比べ、冷調であっさりした描写傾向がある。このため、場合によっては派手目のフィルムと組み合わせる必要がある。

コンパクトカメラにしては贅沢な6分割評価測光による露出制御には定評があるが、それを過信しすぎたエンゾーは、過去二回、どアンダーのカットを撮ってしまい、痛い目にあった。やはり画面内に輝度差の激しい光源があるときには、セオリー通りプラス補正が必要である。とは言え、この手のカメラとしては非常に信頼性の高い露出制御能力を備えていると思う。

ところで、非常に趣味性の高いこのカメラには、「アンティークケース」というこれまたレアなニコン純正の本皮ケースが、オプションとして用意されていた。行くところまで行ってしまう性格のエンゾーは、これも別途探し出した。いかにもニコンらしい、真面目で趣味の良いつくりである。

アンティークケース
(アンティークケースというもの。こんな小物にまで、ニコンの真面目さが出ている)

最近なかなか出番がなくなってしまって悲しいが、決して手放す気にはなれない、工芸品のような一台である。


長所

○とにかく「クルクル針」がかわいい。それだけですべてが許せる。外装も非常に高級感がある。
○35Tiと比較して、ストロボスイッチがまともになった。ストロボの調光能力は一級品。
○ニッコールらしい、切れのあるレンズ描写。ただし、コントラストで見せるタイプではない。
 あっさりした色乗りが特徴。
○コンパクトカメラなのに露出制御が絶妙である。恐るべし、6分割測光。

短所

●周辺光量は、かなりダイナミックに落ちる。曇天の空などでは特に目立つ。
●設定を変えない限り、ファインダー上で合焦距離が分からない。しかし設定をいじると、今度は
 シャッタースピードが分からなくなる。痛し痒し。
●分割測光をアテにしすぎていると、ごく稀に痛い目に遭うこともある。
●アクティブAFなので、車窓越しやショーウィンドー越しの撮影は出来ない。

超個人的オススメ度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆

偏愛度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆

Yahooオークション出現率 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆ 
*デジカメの台頭で、値崩れしまくり。欲しい人には良い環境か?



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