SIGMA DP1




SIGMA DP1



勝手にインプレッション

あらゆる意味で、エポックメイキングなカメラだ。いまさら言うまでもないが、念のため、その所以を書いておく。

 1.コンパクトカメラにして、APS-Cサイズの撮像素子を搭載した、
   世界初のカメラであること。

 2.使用した撮像素子が、一般的なベイヤー配列のCCDやCMOSなど
   ではなく『FOVEON』であること。

 3.カメラメーカーとしてはまだまだ発展途上にあるSIGMAの製品
   であるということ。

山木社長の打ち出す戦略はいつも刺激的だが、近年これほどまでに野心的な製品は、カメラ業界でもちょっとなかった。

DP1は、撮影する道具としての完成度は、お世辞にも高いとは言えない。まずデビュー当初、(価格の割りに)外装が高級感に欠けることが方々で指摘された。ボタンを押した感触などもペコペコしていて安っぽいし、ボディそのものの奥行きも、前面投影面積の割にはかなり分厚い。
また、AFのレスポンスは非常にのんびりしており、暗部ではピントが合わない。バッファも小さく、書き込みにはかなり時間が掛かる。総じて、これから時間をかけて熟成されていくための試金石といった印象がある。

しかし、そんな数々の欠点がどうでも良くなるほど、写し取られる画には魅力があった。文句無く高画質で、きめが細かい。コンパクトなのは見かけだけで、撮像素子と画像処理エンジンは一眼レフとほぼ同等なのだから、凡百のコンパクトカメラとは違って当たり前である。この「羊の皮をかぶった狼ぶり」が、コアなカメラフリークに熱狂的な支持を受け、SIGMAファンのみならず、世界中の写真好きに好評を博した。

銀塩換算で28mm相当になるレンズの出来はすばらしく、シャープで品の良い描写に一役買っている。ボケも素直だ。SIGMAの談話に寄れば、この画質を実現するために、一度完成しかかっていたレンズの設計を、再度やり直したのだとか。デビュー作で「FOVEONの実力はこんなものか」と思われては元も子もないのだから、その気合の入り方は想像に難くない。

画像処理エンジン「TRUE」の行う仕事には独特の癖が見られる。まず、全体的にやや赤やマゼンタが強目に出る傾向がある。特に赤の描写が独特で、真っ赤なものを撮ると、若干だがピンク寄りに転ぶ。画面の中に赤い被写体があるときは、その部分だけ彩度が高く浮いて見えるので、やや不自然だ。全体的な印象は、ネガに近いような気がする。

画面内に強い点光源を入れると、赤っぽいフレアや独特な形状のゴーストが現れる。フレアはIRカットフィルターを噛ませることでほぼ完全に解消できることが分かっているが、大きなフィルターの装着のためにコンパクトさを損なうので、エンゾーは着手しなかった。
いずれにしても、それらは重箱の隅をつつくような話だ。

面白いのが、MFで撮るためのいくつかの配慮だ。スナップでの使用を強く意識しているため、ビューファインダーを載せるホットシューがあり、専用の28mmファインダーまで用意されている。このファインダーの出来がすこぶる良い(驚くほど高いのが欠点)。クリアな視界でキャンディットフォトに威力を発揮する。使いこなし甲斐のある仕様である。
惜しむらくは、背面にあるMFダイヤルが何の抵抗もなくスカスカと回ところか。せめてもう少しトルクを重くするか、クリックストップするようにして欲しかったが・・・。


総じて、このカメラを買ったのは「SIGMAの男気に惚れた人々」であったと思われる。間違っても、物欲系雑誌のホレホレに踊らされて買うようなモデルではない。同じく物欲誌に人気のあるGRDやGXのシリーズとは、この辺が似て非なるところである。今どき珍しい、色々な意味で使い手を選ぶカメラだ。愛がないと使えない。

28mmという画角は個人的に好きな部類に入るが、単焦点カメラとしては潰しが利かないため、取材などではどうしても出番が回ってきにくかった。が、2009年春にデビューとなる派生機種DP2は、41mmF2.8という標準寄りで明るいレンズを搭載しているため、エンゾーの好みではこちらの方が使いやすそうだ。今後の展開が楽しみなシリーズである。




長所

○コンパクト機なのに、APS-Cサイズ素子。
○撮像素子として、他に類を見ない、FOVEONを搭載。
○非常に高性能なレンズ。
○シンプルで分かりやすい操作系と、便利なMF撮影機能。


短所

●価格に対して、全体的に造りに高級感がない。
●AFのレスポンスがいまふたつである。はっきり言って遅い。
●書き込みにかなり時間が掛かるので、撮影テンポが悪くなることがある。
●やはり高価だ。


超個人的オススメ度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ 

偏愛度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆

Yahooオークション出現率 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 

*万人には向かない。しかし、使ってみる価値はある。そんなカメラ。






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