矢部賢治君 生命のうた


心いっぱいギャラリー

難病の中で描く「いのちのうた」
矢部賢治君の絵が海を渡る

矢部賢治君、平成2年6月24日生まれ14歳。
現在北海道真駒内養護学校中学部2年生。

歌と電車が好きで、元気いっぱいに過ごしていたが、6歳のとき「ムコ多糖症ハンター症候群」という百万人に一人とも言われる難病と判明した。
この病気は体内の分解酵素が一つ欠けているために、脳や心臓、肝臓などの内臓、関節、骨など全身に障がいが現れて死に至る、進行性の病気である。
現在治療法も薬もなく、唯一進行を止める手段は骨髄移植。
7歳のときに札幌医大病院で、幸運にも骨髄の型が一致した姉優香さんから骨髄を移植する手術に成功した。
しかし、辛い治療のストレスからか、病気の進行からか、長い入院生活と自宅療養を終えたころ、賢治君から歌も言葉も消え、身の回りのことができなくなった。

小学校4年の夏休みの課題を前に、母美津子さんは思いついた。

「何でもポイッと投げてしまう賢治。
絵筆もきっと投げてしまうだろうと思い、賢治の目の前に大きな和紙を広げて、たっぷりと絵の具をつけた筆を渡すと、案の定、ポイッ!この作業の繰り返しが始まりました。
どこへ飛ぶかわからない筆が、和紙の上で重なり合って、生まれ出た賢治の色。
意図の無い、偶然が成す作品。
でも私たち家族はできあがった絵に、あっと心を揺さぶられました。
それが、初めての作品『夢はなび』です」
次第に絵を描く喜びを感じたらしく筆を持つと、笑い声が出るようになり、集中力も出てきた。
最近では筆を叩きつけたり、手の平や指を使うようになり、絵の具を選ぶまでになった。
彼の絵は、展示会や地元女子大の学園祭などで発表され、見る人々の心を揺さぶった。
そして去る9月16日には、北海道水彩画会主催の第24回北海道水彩画展にて「奨励賞」を受賞した。

矢部宅では海外からのホームステイを受け入れている。
その中の一人、英国で働くイタリア人女性イラリアさんは、彼の絵、それを描く姿やこれまでに歩んできた道程に感激し、勤務先の上司に紹介した。
その結果、彼の絵がエアフランス社のロンドン支社オフィスに飾られることになった。
12月初旬母と姉が、数枚の絵を持ってロンドンへ行く。
そしてその後は、ミュージカルの勉強のため、学校の休みごとにロンドンを行き来する姉が新作を運び、旧作と交換するという。
「なんと夢のような話でしょう!賢治の絵がヨーロッパで、どのように感じられるのか楽しみです」と美津子さんは熱く語る。

「失ったものもたくさんあるけれど、賢治には笑顔が残りました。
小さな体で病気と戦い、しっかりと自分の命をつなぎとめた力強さ。
生き抜いた喜びから生まれる、賢治の心の詩。賢治の絵からそんな『いのちのうた』が聞こえてきます。
言葉は出なくても、賢治の頭の中にはイメージがある。
この絵が、生きる素晴らしさを見る人に伝えられれば、賢治は自分の使命を社会で果たしていることになると思います」

「矢部賢治君 勝手に思援隊」という会ができた。
賢治君を応援しようという有志の集まりである。
彼の絵を広く、たくさんの方々に見ていただくための活動を目的とし、現在会員を募っている。
入会金は2,000円(絵葉書付)。詳細は左記事務局まで。
また、その活動の一環として1月に個展を開催する。ぜひ多数のご来場を。

●矢部賢治君勝手に思縁隊事務局(有限会社アイム内)
電話:011-665-7839
FAX:011-665-2661

E-mail emiko@aimry.co.jp
http://kenjispirit.hp.gaiax.com

個展の案内
日程:2005年1月11日(火)~22日(土)(16日は休館日)
場所:らいらっくぎゃらりい(札幌市中央区大通西4丁目1道銀ビル1階)

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