「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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BONDS~絆~
太陽の笑顔~出逢い~
いつまで我慢していたら良いんだろう。
今俺は樹胡の父親の前で制服を着て畳に敷かれた座布団の上に正座している。
樹胡の母親と樹胡は茶を入れに行って、今この和室には樹胡の父親と俺だけだ。
無茶苦茶緊張している。
緊張しすぎて声がどこかへ行ってしまい、ここがどこで目の前にいる人が誰なのか忘れるくらいだ。
コホンと咳払いをされるだけで不快な想いをさせてしまったのではないかと焦る。
俺と樹胡の出会いは小学生の時だ。
たまたま同じクラス替えをした時に同じクラスになった。
その時に俺が一目ぼれをした。
小学生ながらに『結婚』の二文字を頭に浮かべた。
「あの・・・樹胡さんを下さい」
「やらん」
えっ。即答?!
ってか話通ってるんじゃないのかよ!?話が違う・・・。
「・・・何故ですか?」
「樹胡の意見を聞いていないからだ」
あぁ、そうか。この場に当の本人がいなければ話にならないということか。
それはそうだよな。失礼なことをした。
「お茶が入りましたよ」
「今日は樹胡がクッキー作ったの。パパ食べてね」
「・・・ぁあ」
母親が父親の隣へ、樹胡が俺の隣の座布団へ座って俺は改めて話し始めた。
「・・・樹胡さんを僕に下さい」
「可也・・・」
「だからやらんと言ってるだろう」
「どうして!?」
「樹胡はどうしたいのか聞いてないからだよ」
俺の時と違って温和な声で樹胡に話し掛けた。
「私も・・・可也と結婚したい」
「母さんはどう思うかね」
「あなたはいつも人の気持ばかり窺うのね。私はあなたの決断に賛成ですよ」
「・・・そうか」
父親は少し困ったようにお茶を啜り始めた。
「ねぇ樹胡ちゃん。僕、樹胡ちゃんのこと好きだよ」
「樹胡も可也君のこと好きだよ!」
「相思相愛だね!」
「うん!ずっと一緒にいようね!可也君」
この時初めてキスをした。
中3の時、受験でもめた。
「樹胡、可也と同じところに行く!」
嬉しかった。だけど・・・。
「お前の頭じゃ無理だろ。ろくたに勉強もしてないくせに」
「ずっと一緒って言ったじゃない!」
「気持だけじゃずっと一緒になんていられない」
「何でそんな冷たいこと言うの!?わかった・・・樹胡以外に好きな子できたんでしょ!だからそんなこと言うんでしょ!わかったよ!可也の馬鹿!」
「・・・そんなこと言ってないだろ。努力しろよ」
結局俺が樹胡のレベルに合わせて高校を受験することにした。
勿論俺の親は反対した。
俺の家は代々「東京大学」や「慶應義塾大学」などといった名門校に入るために高校からトップレベルの所へやる家訓みたいなものがあった。
だから樹胡と高校のレベルを合わせるなんて言った時は父親に勘当された。
俺も当然だと思って、そんな大きなショックも受けなかった。
中学を卒業して俺はしばらくの間自宅に帰らずに友達の家を回って泊らせて貰っていた。
ある友達の家の兄貴が俺に受験当時の話をしてくれた。
「彼女のレベルに合わせて親に勘当されたのか。でも親の気持もわかるな。名門校に入れたいとかそういうのは俺も反対だけど、彼女のレベルに合わせるのはどうかと思うぞ。尻に敷かれてるじゃないか。
それに、本当にキチンと付き合っていきたいんんだったらこんなことしてないで、親にキチンと話したほうがいいと思うぞ。どうするかはお前の勝手だけどな。
俺も大学受験の時に色々あってな・・・結局その時付き合ってた彼女とは別れちまったんだ。お前にはそうなって欲しくないんだよ、わかるか?」
結局別れてしまった・・・。この言葉が俺の心の中で強く響いた。
そして「ケジメ」をつけようと決めた。
その日の翌日俺は樹胡の家に行った。
チャイムを鳴らすと樹胡が出てきて上がりなよと一言だけ言い俺を部屋に招いた。
そして樹胡は急に抱き付いてきた。
「会いたかった・・・」
俺は軽く抱き返してすぐにまかさってる手をほどいて樹胡の目を見て話した。
「樹胡、俺さ、お前と結婚したいんだ」
「うん。私もしたい」
「うん・・・それで、俺2週間前に親父に勘当されたんだ。」
「え?どうして・・・?まさか高校のことで?」
「うん・・・・」
「そんな!ごめんなさい・・・!!そんなことになってるなんて!」
「それはいいんだ。俺はお前と結婚したいし、高校なんてどうもでいいんだ。だけど・・・ケジメをつけたいんだ」
「ケジメって?」
「俺たちは本気なんですって所」
樹胡はイマイチ理解していなかった。
「お互いの親にキチンと挨拶したい。受験は今まで通り樹胡に合わせて受けるから・・・」
「今でも・・・勉強したら間に合うかな?」
「え?」
「今から勉強したらもう1個レベル上の学校受けられるかな?」
「・・・そんなことしなくていいんだよ?」
「嫌!可也もケジメを見つけたなら私もケジメつけたいよ!2週間も考えたケジメなんでしょう?だったら私も後2ヶ月頑張るよ!」
樹胡の目はマジだった。嬉しかった。嬉しくて抱きしめてしまった。
「樹胡・・・大好きだ」
「私も!」
そうしてお互いの親へ挨拶をした。
険悪なムードだったがもう付き合ってるなら止められないし、そこまで本気なら・・・と許してくれた。ただし、樹胡の受験の結果も勿論見ると言った。ここから俺は樹胡に勉強を教えた。驚くべきことに樹胡は隠れた能力があったらしく、レベルは1個どころか4つ上がった。
「樹胡・・・やれば出来るじゃないか!」
「うん!私もやれば出来るんだね!」
このことで樹胡と俺の両親は快く許してくれた。
カッコン・・・。
和室の外から聞こえるししおどしの音。
妙にタイミングを作ってくれる。
しかし、父親は未だに黙ったまま・・・。
「あの・・・」
たまらず声をかけてしまった。
「君たちは昔からそうだった。何かと俺たちに見せ付けて嫌でも納得させてきた。今回だってそうだ・・・」
父親はまたお茶を啜った。
「・・・樹胡が結婚したいというのなら、許すしかないじゃないか。君たちは今までよくやってきた。飽き飽きするほど一緒にいたはずなのに、全ては結婚のためだと言うのなら俺たちには何も止められないだろう」
ししおどしが幾度も鳴って、父親はゆっくりとそう語った。
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