Fastest Lap

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December 25, 2009
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テーマ: F1(444)
カテゴリ: Formula 1
撤退発表のとき首脳陣の目にも涙がありました。でも、その涙にほんの少しの良心と贖罪の念があったのなら、どうしてティームの譲渡ではなかったのか?
ケルンをはじめとするヨーロッパに点在するトヨタF1のための施設は紛れもなくトヨタのプロパティなのでトヨタがどうしようと自由です。
しかし、ホンダのように持参金を持たせて1年間走らせる方法もあったはずだし、買い手が見つかるまでティームに対して責任を持つべきでした。

トヨタのF1撤退に際して僕がもっとも言いたいことはここです。

「トヨタはフォーミュラ・コンストラクターではなく自動車メーカーとして撤退する」

何回、この連載中にこの一文を書き続けたでしょうか。
なにがなんでもホンダと同じ手法だけは取りたくない・・・という子供じみた最後の抵抗なのでしょうか?
レーシング・コンストラクターは立ち上げた人間の意志に関わらず受け継いでいくべき財産です。ジョーダンもブラウンの前身になったBARも、かつてのミナルディもしかり。レーシング・コンストラクターは業務を完全に封鎖し解散してしまうのではなく、コンストラクターを継承してくれる新オーナーに設備や人員込みで売却するものです。レーシング・コンストラクターとはそういう存在です。
トヨタは売却ではなく撤退を選びました。トヨタは1エンジン・サプライヤーではなく、モノコックもエンジンもすべてを設計製造するフェラーリに比肩するコンストラクターであるにもかかわらず、トヨタはコンストラクターとしての自覚がないまま撤退するのです。



一方では売却ではないので再度チャレンジすることができるという考えがあるかもしれませんがそれはありえません。トヨタが何年後に再チャレンジを試みるかは解りませんが例え5年以内に復活しても今までのノウハウは役にたちませんし、設備も時代遅れになっていて最新鋭のものを一から揃える必要があります。ヴァージョンアップで対応できる設備など実はごく一部です。
少なくともフォーミュラでコンペティティヴなマシンを作ろうとすれば当然のことです。今ある設備は量産車セクション、あるいはF1以外のレースカー関連施設にしか使えません。
こういった一連の決断そのものが大企業的なもので、トヨタはレーシング・コンストラクターとしてではなく、世界何位かの自動車メーカーとして撤退するのだということがお解りいただけると思います。
トヨタのF1撤退は韓国のヒュンダイが日本市場から撤退することとそれほど変わらない陳腐な手法なのです。
確かに売却譲渡という言葉にいい響きはありません。しかし、そこで働いていたスタッフは今まで通りレース活動ができます。
その努力を惜しまず様々な可能性を模索し手を尽くしたけれどもこの結果になったというのなら仕方ありません。ところがこのプレス・カンファレンスの内容は突然決まったことを発表したという感じではありませんし、F1界での情報では売却先を探していたという事実は聞いたことがありません。
こういった状況から判断すれば、かなり以前からトヨタのトップマネジメントは売却なしで撤退という意思決定でコンセンサスを得ていた・・・と考えるのが自然です。

売却ではなく単なる撤退。F1関連部署で働いていたスタッフは異動人事ないし解雇。自身のプロパティは自分たちで清算するという日本企業的な手法が見え見えで、この撤退のどこに花道や潔さがあるでしょうか?

何度も言いますがトヨタは単なるエンジン・サプライヤーではありません。エンジンからモノコックまで、すべて自分たちで作り上げるコンストラクターなのだからメカニックをはじめとするスタッフやドライヴァーとのコントラクトを遵守してもらうことを条件に格安譲渡の可能性を模索することは設備の充実度からみても絶対にできたはず。
自分たちがつむいできた情熱の足跡を受け継いでくれる真摯な新オーナーを探すことこそ本当の潔さではないでしょうか?

トヨタ・ファンの方々もその事実を見失ってはなりません。ファンとしてトヨタの心無い弱腰撤退を看過してはいけません。可夢偉だけでなく、ケルンで頑張ってきたスタッフたちは大半が切り捨てられてしまいます。日本で横行した派遣切りがフェラーリとトヨタ2ティームしかないF1のフルコンストラクター・ティーム・スタッフの中でも実施されているのです。

優秀な頭脳の流出危機に関しては最近になって日本でも本格的に危惧されるようになりましたがこれも至極当然のことで、いままで省みられなかったのが不思議なくらいです。景気が好転してから優秀なスタッフを引っこ抜いてくればいい・・・と考えるのはF1の世界でも同じことで、特にフェラーリはその傾向が強いですが一度流出してしまった優秀な頭脳をもう一度集めることは不可能にも近いことです。
景気が厳しいからといって真っ先にスタッフを解雇するような企業に未来はありません。ホンダもF1を撤退はしたものの、無償でロス・ブラウンに預け1年間活動できるだけの持参金まで持たせました。
F1関連スタッフのリストラもなく、国内生産拠点の従業員のリストラに関しても日産やトヨタのように大幅な解雇は行わず最小限度にとどめています。


~続く~





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Last updated  December 26, 2009 02:08:49 AM
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