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2016年09月14日
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カテゴリ: 羅刹
 いつの間にか、兵藤太は握り締めていた能季の手を離し、その顔を心配げに見守っている。

 その目には、まことの父のような慈愛の心が映っていた。

 そこにも、あの餓えと渇きを満たす方法が記されているように、能季には思えた。

 誰かへの、一身を投げうった愛と献身。

 それによって、兵藤太は己の心の中の暗闇を照らしてきたのだろう。

 私にも、何かあるだろうか。

 斉子女王を失った今、その餓えと渇きを満たす何かが。

 能季にはわからなかった。

 ただ、今は胸が苦しく、焼け付くように痛むだけだ。



 いつか必ず。

 中秋の明るい月が、いつの間にか堀河殿の軒端の下にまで傾いている。

 少し肌寒いほどの風が、庭池を渡って釣殿の上を吹き抜けて行った。

 いつの間にか、もう夏は過ぎ、秋がやってきたのだ。

 こうやって、日は過ぎ、旬は巡る。人の想いも知らぬげに、飛ぶように速く。

 ふいに、庭先の草葎(くさむら)の中から、今年最初の虫の音が聞こえてきた。

 それは、涼やかな声で、能季に問い掛ける。

 虫であろうと人であろうと、その一生の儚(はかな)さには変わりはない。その短い生を、お前は一体どう生き抜いていくのか。

 姿の見えない秋虫の問いに、能季はいつまでも耳を傾けていた。

                        (了)


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最終更新日  2016年09月14日 11時50分17秒
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Re:羅刹 -192-(09/14)  
千菊丸2151  さん
漸く完結しましたね。

Re[1]:羅刹 -192-(09/14)  
千菊丸2151さん

だらだら更新に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!!!!

いつもコメントをくださって、とてもうれしかったです(*^_^*)

まだボツ原稿はたくさんありますので(号泣)、よろしかったらまた遊びに来てください(@^^)/~~~
(2016年10月05日 16時58分10秒)

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