FLOWER GARDEN 2

FLOWER GARDEN 2

VOL.031~035

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★ 第31話 ジョージの決意(笑)


無垢は、もう、それ自体が凶器だ。
つか、アリシアレベルまで行くと、存在そのものが犯罪だ。
オトコをその気にさせといて、実はSEXについて何も知りませんとは……。
オトコは、ドン引きするだろう(少なくとも僕は引いたぞ)。

漸く、ヤル気なったって言うのに、その欲望も彼女の「無垢」の前にあえなく撃沈させられた。
抵抗されるよりも、最も効果的な撃退方法。
見事なまでに完璧に、オトコを萎えさせる……。
避妊方法の教育なんて正に無用!
素晴らしい性教育の成果だ!


僕はその日から、ソッコーでアリシアを僕の部屋への出入りを禁止した。
……危うく、何にも知らないアリシアをヤッちゃうところだった。

知っててヤルのと、そうじゃないのは雲泥の差だ。

アリシアは、しょんぼりしながら、その理由を自分なりに探し始めていたようだった。
僕はその理由を教えられるはずもなく、だんまりを決め込んだ。
知らないのなら、むしろ、その方が幸せだ。

ところが、それから丁度、1週間目の夜。
僕がコンサバトリーのベンチで横になって夜空を見上げていると、アリシアがやってきた。
「……ジョージ、無視しないで」
「……してないよ」
「だって、あの日から、部屋にも入れてくれなくなったもの……」
僕は、起き上がると、「気のせいじゃないか?」と笑った。
アリシアは、言いにくそうに目線を落として、ぼそりと呟いた。

「あの……友達に聞いたわ……」
「何を?」

僕は、あまり関心がないと言った感じで、ベンチから起き上がると、それでも、しっかりと耳だけはアリシアの言葉に傾け、木の梢に手を掛けながら、コンサバトリーの中を散策していた。

「ジョージみたいに愛を教えられないヒトも中にはいて……、そういうオトコのヒトのことを『フノー』とかいうらしいって……」




僕は、手を掛けていた枝を、渾身の力を込めて、バキッ!と折ってしまっていた。

そして、誓った。

これからどのようなことがあろうとも、こいつにだけは、絶対、手を出したりするもんか!と。



★ 第32話 アリシアへの教授


僕は、さいっこーにムカツキ、後ろ手にコンサバトリーの扉をバン!と閉めると、足早に部屋に向かって歩き出した。
アリシアは、その僕の後をはぁはぁ言いながら、小走りについて来ていた。
「ま、待って!ジョージ!!あ、あの、私、何か気に触ること言ったの?」
「ついてくんな!」
「え、えとね。私、ジョージが『フノー』とか言うのでもいいの!『フノー』はきっと……えっと……多分、悪い事じゃないわ!私、『フノー』のジョージでも…………あれ??どうしたの?ジョージ?」
僕は、部屋まで後4歩のところで、力尽き、頭を抱えてしゃがみ込んでしまっていた。

「……不能、不能って連呼すんなよ……」

アリシアは、済まなそうに「ごめんなさい……」としょんぼりした目をした。

「はぁ~」
僕の溜息は、更にアリシアを消沈させてしまったようだった。
「来いよ」
僕は観念した。
「ちゃんと、話してやるから……」
僕は部屋の戸を開けると、アリシアをベッドに腰掛けさせ、1時間に及ぶ性教育を(実践抜きで)した。


アリシアは、目を丸くしたり、青くなったり、赤くなったりしながら、僕の話に耳を傾けた。
そして、恥かしそうに、「みんな、本当にそんなことするの?」と真っ赤に俯きながら僕に質問した。
「多分ね」
「そう……なの……」
「……で?!」
「『……で?!』って?」
アリシアは、キョトンとしながら僕の顔を見つめた。
「僕と『男女の愛の営み』ってヤツをするの?」
僕は、かなり意地悪な気持ちで、笑いながら無邪気にアリシアに振ってみた。
「すっ、するわ!」
アリシアはそう言いながら、勢い良く立ち上がると、そのまま立ちくらみがしたようで倒れてしまった。

……ちょっと、刺激が強すぎたか。
ついつい『不能』と言われてムキになってしまった。

アリシアは、ふらふらしながら立ち上がり、再び崩れ落ちそうになった。
「危ない!」
サイドテーブルにぶつかりそうになったアリシアを慌ててキャッチし、僕達はそのままベッドに倒れこんでしまっていた。


★ 第33話 ワードローブの秘密


アリシアはさすがに意識し始めたらしく、真っ赤な顔をして体を強張らせると、僕から目を逸らした。
すっかり硬直し、歯を食いしばると彼女は目を強く瞑っていた。

……さっきとはエライ態度の違いだ。

僕は岩盤のように固く閉じられたアリシアの唇にキスをした。

僕は、笑いを噛み殺しながら、「どうする?もっと続きをする?」とアリシアに聞いた。
アリシアは、びくっと体を震わせた。
「言っとくけど、僕は『不能』じゃないから」
アリシアの顔が見る見る真っ赤になり、体中が火照って来ている様だった。

……もっと遊んでやろ~♪

僕は再度、アリシアにキスをすると、指で鎖骨をなぞり、肩を抱き、徐々に丸みを帯びた胸元へと手を移動しようとしていた。

その時、部屋の扉を叩く音がし、僕は慌ててアリシアから飛び退いた。

髪を掻き揚げ、荒い息を整えながら、一瞬アリシアと目が合い、彼女の乱れた胸元を整えた。

「はい!」
誰だ、こんな時間に。
「サリーです。お坊ちゃま。コーヒーをお持ちしました」
アリシアは、ベッドの上で、頬に手を当て、顔の火照りを押さえようとしていたが、『サリー』と言う言葉にぴくっと反応し、僕をじっと見つめた。
サリーの申し出を断ろうとも思ったが、今まで断った事が無かったのに、急に断るのもまずいかと考え、「ちょっと待って」と扉の向こう側にいるサリーに声を掛け、アリシアの腕を掴んだ。

「ジョージ!サリーを入れないで!」
ワードローブの扉を開け、その中にアリシアを入れ、彼女の唇に指を立てると、「静かに。また後で」と言うと扉を閉めた。

部屋の戸を開けるとサリーはトレーにコーヒーを乗せて、部屋に入ろうとした。
「悪い、サリー。今日はここで」
僕は、扉に手を掛けると、背後のワードローブからアリシアが飛び出すかもしれないと言う思いにヒヤヒヤしていた。
「どうされたんですか?お坊ちゃま」
「いや。何でもないけど……」
僕はワードローブをちらっと見た。
「コーヒー有り難う。でも、今日はちょっと忙しいから……」
いつもだと、僕はサリーの話をこの部屋で聞いていた。

バトラーや厳格な女中頭の失敗談とかを、サリーは面白おかしく話しては僕を笑わせていた。

今日もそのつもりだったんだろう。
サリーは少しがっかりしたようだった。

「分かりました。また、何かありましたらお声を掛けて下さいね」

サリーが部屋を去ろうとした時、僕はほっとした。
その時、彼女はくるんと振り向くと、
「そうそう、お坊ちゃま。今週末、大旦那様がお帰りになられますよ」
と、言い残して部屋を後にした。

おじい様が戻ってくる……。

僕は一抹の不安を抱えつつ、アリシアのいるワードローブを開けた。
「ごめん。大丈夫か?」
アリシアは小さな子供のようにその中に蹲り、小さな寝息を立てていた。



★ 第34話 不愉快な男


朝起きると、ジョージの腕の中だった。
慌てて、ベッドから起き、ジョージの瞼にキスをすると、そっと彼の部屋から出た。

昨日、ジョージとサリーがあれから何を話していたのか分からないまま、私はワードローブの中で完全に眠ってしまっていたようで、気付くとジョージの腕の中だった。

私は昨日の今日でジョージに顔を合わせるのが恥かしくて、早めにこっそりと家を抜け出した。
ちょっと行儀が悪いけど、厨房から林檎を失敬して……。

私は、学校に行く途中の小高い丘のてっぺんにある木にスルスルと上ると、その枝に跨り、林檎をかじった。

ここの景色が一番好き。
故郷のアイルランドにとても似ている景色が一望出来るもの。

私が景色を眺めながら林檎を頬張っていると、下から男のヒトの声がした。

「これは、これは、いい眺めだ……」

私はぎょっとして、見下ろした。

すると、その男は、
「随分と可愛らしい女の子に化けたサルもいたものですね」
と、私にに~っこりと微笑み掛けた。

私は途端に恥かしくなり、「お、降りますから、そこを退いて下さい」と訴えた。
「ジャンプなさい。ちゃんと抱き止めて上げますから」
男は、両手を広げるジェスチャーをすると笑った。

「……1人で降りれるわ。退いて下さい」

すると彼は残念だと言わんばかりに肩を竦めると、渋々、木の下から数歩下がってくれた。

私が木を伝って降り、最後に飛び降りると、彼はヒューと口笛を吹いた。

彼は、私よりも遥かに年上に見えた。
20代後半、ううん、30代前半かもしれない……。
それに、もしかすると、ジョージよりも背が高いかも……。

一見、穏やかなこの男のブルーの瞳は、以前、アイルランドから来た時に渡った海を彷彿とさせた。
言葉にある種の品を感じ、さっきの失礼な出会いがなければ、きっと好感の持てるヒトだったのかもしれないとさえ思った。

私はスカートに纏わりついた木屑を払うと、この失礼な男に一瞥をくれ、そのまま無視して学校に行こうとした。

男は、毅然と去る私の後姿を見て、いきなり大爆笑した。
しかも、笑い過ぎて、お腹が痛いと言った感じで、お腹を抱え、大笑いしていた。
睨みつける私に、男は言った。
「失敬、レディ。でも、スカートの後ろが捲れあがっていますよ」

私は、真っ赤になって慌てて、スカートの後ろを払うようにして下ろした。
「……笑わないで下さい」
睨みながら、抗議をする私のバッグから林檎が零れ落ちた。

「……禁断の果実ですか」

男はそう言うと、屈みながら林檎を拾い手にすると、その林檎をかじり、にやりと笑った。



★ 第35話 不意打ちのキス


私は、慌てて林檎を取り返そうと手を伸ばすと、男は私の手を強引に引き、木に押し当てるといきなりキスをした。
驚いた私は、何度もその失礼な男の胸を叩いたけれど、男はびくともせず、私の唇を弄んでいた。
「痛っ!」
私が、男の唇を噛むとようやく私はその男の腕から開放された。
「随分、ひどいことをするんですね」
「ひどいことをしているのは、あなたの方でしょ!」
私は肩で息をしながら、唇を何度も何度も拭った。
男は唇から流れる血を、服の袖で拭いながらクスクスと笑った。

「オリビアも気が強かったが、あなたもかなりのものだ」

突然出た母さんの名前に、私は驚きを隠せなかった。
「……ど、どうして母さんの名前を……」
「それは僕の初恋の人だからね」
「じゃなくて……」
私の質問の意図が彼に伝わったのか、彼はまたクスリと笑った。
「ああ。僕は、オリビアの幼馴染だったんですよ」
「幼馴染……?!」
「ええ。あなたはアイルランドから来たオリビアの娘でしょう?……君は本当に良くお母さんに似ている。僕も直ぐに分かった……」
私は、飛び上がりそうになるくらい喜ぶと恐る恐る彼の近くに寄っていた。
「母さんを知ってるの?」
「知ってますよ。大変美しく、優しい女性だった……」

母さんと父さんの話しをすることはジョージと私の間で、タブーとなっていて、それが私たち兄妹の暗黙のルールのように守られていた。

でも、この男の口から出る母さんのエピソードは、私をワクワクさせ、どうしても母さんのことを聞きたいという気持ちを押さえる事が出来なかった。
私の知らない母さんが、この男の思い出の中にいて、私は夢中になって彼に質問を浴びせた。

「それから?」
私は身を乗り出して、男に尋ねていた。

「僕はエドワード・マッカーシーと言います。良ければエドと呼んでくれると嬉しいのですが……」
「分かったわ。エド。それで、それから母さんはどうなったの?」
エドは、目を伏せて戸惑いがちに微笑むと、「それから、オリビアは死に、大変美しい娘を遺し、僕はその娘に出会い、恋に落ち、キスをしたんです」
と、私の頭に素早く手を回すと、またキスをしてきたのだった。




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