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2018.05.01
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カテゴリ: 歴史
図書館で『明治の外国武器商人』という新書を、手にしたのです。
日清・日露戦争勝利の礎を築いた武器商人となると、聞き捨てならないわけで・・・興味深いのです。





長島要一著、中央公論新社、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
デンマークの名門の牧師の家に生まれ、優れた海軍士官であったバルタサー・ミュンターだったが、軍上層部との対立もあって退役、その後アームストロング社の代理人となって来日し、帝国陸海軍との関係を深めていく。特に海軍には戦艦・武器を売り込むとともに、自らの海軍の知識と経験を生かして技術・操練指導を行ない、後の日清・日露戦争勝利の礎を築くことになる。なぜか滞日時代が謎に包まれている親日武器商人の実像に迫る。

<読む前の大使寸評>
日清・日露戦争勝利の礎を築いた武器商人となると、聞き捨てならないわけで・・・興味深いのです。

rakuten 明治の外国武器商人

伊藤博文が 初代兵庫県知事に就任した日 より

「第2章 死の商人ミュンターの東洋体験」で明治期の日本を、見てみましょう。
伊藤博文や西郷隆盛の話が出てきて、興味深いのです。
p50~53
■帝国海軍とミュンター
 日本での仕事はまず関係者との顔つなぎから始まった。ジャーディン・マセソン商会のウォルターにつきそわれて連日のように横浜から鉄道で東京へ通う。狭軌だったが車内は清潔で、東京まで50分かかった。田植え前の水田にまかれた肥料のにおいに顔をしかめながら、単調な風景の中を往復した。

 東京の町は新橋から銀座、皇居から芝公園、上野から浅草、築地、ニコライ堂を見てまわる。銀座通りは醜く、上野は桜が美しかった。日本人は嬉々として花見をしていた。また、博物館では、巨大なカニと尾長鶏に驚かされた。浅草は雑然としたところがおもしろい。寺と盛り場がいっしょになっていて、ずらりと並んだ露店では、ありとあらゆるものが売られていた。

 外国人居留地築地にはヨーロッパ人のために教会がいくつかあった。そのためか、住民はほとんどが宣教師だった。ニコライ堂の由来も聞かされた。鹿鳴館も訪れた。新橋の駅に近かったこのクラブには、非常に腕のいいコックがいた。数年前に座礁したフランスの郵便船のシェフが、日本に居残ったのだった。伊藤博文自らが主催する仮装舞踏会が開かれたりなどして、欧化主義への批判が高まっているころだった。

 天皇のこと、維新のこと、薩摩のこと長州のことも話に聞いて知った。人脈を見極める上での必須知識である。薩摩の人間が戦闘的であるのに対して長州人は知的であることも教わった。とくに伊藤博文と井上馨のふたりのことが話題にのぼった。維新前の騒乱気に英国人の知己を得、ふたりはジャーディン・マセソン商会の助力のもと、1863年に英国留学を果たしたのであった。航海中はほかの乗組員といっしょに作業をして、英国到着後はジャーディン・マセソン商会の世話になり、英国の政治の仕組みを見学した。

 ところが、翌年帰国してみると、長州藩は戦闘の真っ最中だった。下関の海峡を通過する外国船を砲撃していたのである。これに対抗して列強4国の艦隊が下関を攻撃した。実は、この砲撃を前にして、長州藩に戦闘を中止させようとした井上は、横浜を出港する4国艦隊に乗り込み、下関近くに上陸して、長州藩の説得に努めたのであるが不首尾に終わり、逆に襲われて顔面に傷を負った。その翌日に下関への砲撃が行なわれたのだった。

 井上の顔には今でもはっきりと傷跡が残っている。4国艦隊といっても、アメリカはあいにく横浜に軍艦を寄港させていなかったので、商船に士官と海兵隊員を数名乗り組ませて参加したにすぎなかった。したがって砲撃に加わっていない。

 ミュンター来日時には伊藤も井上も50前でまだ若く、英語が達者で通訳を必用としなかった。伊藤が首相で、井上は大蔵大臣(当時は外務大臣)だった。伊藤は岩倉使節団の副使として1873年にデンマークにも行っており、いつも当時のことを楽しく語っていた。

 デンマークのエストロップ首相が大変ほめていたとミュンターが話して聞かせると、伊藤は心から喜んでいた。もともとは英国びいきだった伊藤が、そのころはドイツかぶれをしていた。憲法制度の準備にあたっていた伊藤は、プロシア憲法の方が日本の現状にかなっているのを見抜いていたためであろうとミュンターには思われた。周知のように、韓国総監となった伊藤は1909年にハルビンで暗殺されてしまった。

 薩摩の軍人の中では西郷隆盛の話が印象に残った。天皇に背いて悲劇的な最後をとげた西郷は、かえってそのために英雄の栄光に包まれている。征韓問題に端を発した抗争に敗れた西郷は、1877年に叛旗をひるあえした。この反乱軍を討つために、西郷の弟で陸相の従道にかわって、海相の川村純義が抜擢された。結局、西郷は戦いに破れて自刃した。降伏の印として血みどろの西郷の首が討伐軍の指揮官川村のもとに届けられると、西郷とは親友であった川村は、はねられた首を自らの膝に乗せて血を拭い、きれいに洗ってやったという。こうして伝統的なサムライ魂を発揮して敵将に敬意を表し、最後の別れをしたのだった。

 ミュンターは乾いた文章でこのエピソードを語っているが、感動を隠しきれないでいる。けれども、それにしてもなぜこの謀反人の銅像が皇居の近くに立っているのか、そればかりはミュンターにはどうしても理解できなかった。


ほう、ミュンターさんは上野の西郷さんの銅像を見て、不思議に思ったようですね。

『明治の外国武器商人』3 :ミュンターの来日
『明治の外国武器商人』2 :アームストロング社嘱託として東洋へ
『明治の外国武器商人』1 :「はじめに」





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Last updated  2018.05.01 07:20:50
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