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2024.09.19
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。
おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪




山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
ノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。

<読む前の大使寸評>
おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪

rakuten 走り続ける力


「第二部 人間・山中伸弥」でジャーナリスト・永山悦子が見た山中先生を、見てみましょう。
p89~96
<第五章 素顔の山中伸弥:永山悦子>
■信念の人
「山中伸弥」という研究者に対する一般的なイメージはどんなものだろうか。世界で初めてiPS細胞を開発し、ノーベル賞を受賞した世界的な研究者であり、京都大iPS細胞研究所(CiRA)を率いるリーダー・・・。一方、山中さんを直接知る人々の意見を総合すると、「信念の人」というのが「人間・山中伸弥」を表現するうえで一番しっくりくるように感じる。

 山中さんの信念が、研究者、職員、学生を併せて約600人にも上る組織であるCiRAと世界のiPS細胞研究を引っ張っているのだ。

 幼い頃の山中さんは、町工場を営む両親のもとで育った。ラジオや時計を分解して遊ぶのが好きな子どもで、「壊しては元に戻せなくなって、母によく怒られた。研究者というよりも技術者の血の方が強かったかもしれない」と話す。中高一貫の大阪教育大附属天王寺中学・高校に進学し、数学と物理が得意科目だった。大学受験のときも生物はとらず、「(神戸大)医学部に入ってから高校レベルの生物を学んだ。娘が高校生のときに生物の問題を聞かれたが、難しくて『高校生はこんなことできなくてもいい』とごまかしたほどだ」と山中さんは笑う。

 柔道やラグビーに打ち込んだ中学、高校、大学時代は骨折を繰り返し、それが整形外科医を志すきっかけになった。しかし、医師になってからは、父の死、そして治療法のない重い病気の患者たちに接して、「今の医療では治せない病気を治したい」と基礎研究を目指すようになる。米国に留学して体のさまざまな細胞や組織になる能力を持つES細胞(胚性幹細胞)に出会うと研究にのめり込んだ。

 もう一つ、大きな出会いだったのが、留学先のグラッドストーン研究所のロバート・マーレー所長だった。山中さんが第二章の最後に紹介していたように、研究者として成功するために欠かせない言葉であり、山中さんの座右の銘ともいえる「ビジョン・アンド・ワークハード」をマーレー所長から教えられたのだ。

 帰国後、米国時代とは違って研究がうまく進まなくなり、「PAD(ポスト・アメリカ・ディプレッション)、米帰国後うつ症候群」になったことは、山中さんの講演では恒例のエピソードだろう。「研究をやめて臨床医に戻ろうか」と落ち込んでいた1999年、奈良先端科学技術大学院大学の助教授のポストを得ることができた。
 その際、研究室の大学院生を集めるために打ち出したのが、夢のような構想「患者自身の細胞を時計の針を逆回りさせるように受精卵のような状態に変化させ、ES細胞と似た細胞を作る」だった。
 このとき山中さんは内心、「20年や30年はかかる。最終的にできないかもしれない。しかし、奈良先端科学技術大学院大学に拾ってもらった。一度死にかけたのだから何か面白くて難しいことをやろう」と考えていたという。また、120人の学生を約20の研究室で争奪する構図だったため、「一人も大学院生が来なくては研究にならない」(山中さん)という思いもあった。

 この「夢」は、実現への道筋はまったく未知数だったものの、研究の方向性としては重要だった。当時、ES細胞を使った研究をめぐっては、ES細胞が受精卵から製作するため「命の萌芽を壊して作る」という倫理的な問題、さらにES細胞をもとに作った細胞や組織を患者に移植すると拒絶反応が起きてしまうという治療上の課題が指摘されていた。
 これらの課題を解決する一つの方法として、クローン技術があったが、遺伝的に同一の個体を作り出すため「クローン人間」を生み出す恐れなど、さらに大きな倫理的な問題があり、技術もまだ確立していなかった。再生医療の実用化を願う難病患者にとって、ES細胞でもなく、クローン技術でもない使いやすい細胞は待望の存在だった。

 その後、夢は現実になった。
 山中さんはES細胞やクローン技術に関する過去の研究から、「ES細胞の特徴を維持するために欠かせない遺伝子が分かり、それを体細胞に送り込めば、ES細胞のような細胞を作れるはずだ」と考えた。「絶対無理と思われていることでも、理論的に正しければ必ず実現する」というビジョンを据え、遺伝子探しを始めた。公開されている遺伝子データベースを活用し、ES細胞で特異的に発現している遺伝子の候補を捜していった。
 2004年までに24種類に絞り込まれ、その年に京都大へ移った後、24種類の中にiPS細胞を作り出すために必要な4種類の遺伝子が含まれていることを突き止めた。2006年にマウスの皮膚細胞からiPS細胞を製作することに成功したという論文を発表、翌年にはヒトの皮膚細胞からも製作に成功したと発表した。

 マウスでiPS細胞を作ったという論文を発表した直後は、世界の研究者も疑心暗鬼だった。あまりにも簡単な方法だったからだ。山中さんが招待を受けて出席した米国での研究会後、夜に立ち寄ったバーで外国人の研究者が「たった四つの遺伝子でできるなんておかしい」と話す声が聞こえた。山中さんは「くやしかったが、実験データはきちんとそろっているからすぐに分かるはずだ」と考えたという。

 その通り、すぐに世界的な競争が巻き起こり、ヒトiPS細胞を作ったという論文の発表は米国のチームと同着になった。これを受けて、哺乳類のクローン技術の第一人者として有名な英国のイアン・ウィルムット博士がヒトのクローン技術の研究を中止すると発表するなど、世界中に影響が及んだ。山中さんは後日、こう話している。
「目の前にチャンスがあり、やるという選択肢とやらないという選択肢があるときには、基本的にはだいたいやる」。そんな姿勢が、iPS細胞を引き寄せたといえるだろう。

 そして、2012年10月、山中さんが自宅で「ガタガタうるさかった洗濯機を直しているとき」、スウェーデンから携帯に電話がかかってきた。ノーベル医学生理学賞の受賞の連絡だった。英国のジョン・ガードン博士との共同受賞だった。山中さんはその年の12月、ストックホルムで開かれたノーベル賞の授賞式に、父章三郎さんの形見の腕時計をして臨んだ。式の前、「父がそこにいるつもりでメダルを受け取りたい。父が私を医者にしてくれた。今日は一緒に喜んでくれえるのではないか」と話した。

■リーダーとして
 山中さんに「ノーベル賞を授賞して人生が変わったか」と問うと、「自分の場合は、ノーベル賞よりもヒトのiPS細胞ができたことが人生のターニングポイントだった。それまでは研究者だったが、それからは仕事が変わった。ノーベル賞は、その流れが加速したという意味だったと思う」と答えた。
 ヒトiPS細胞の作製が成功すると、動物であるマウスを使った2006年の論文とはうって変わって、臨床応用への可能性が一気に広がり、iPS細胞や再生医療の研究を巡る環境は激変した。

 2008年に京都大の「物質―細胞統合システム拠点」に「iPS細胞研究センター」が設置され、2010年には単独の研究所としてCiRAが誕生した。CiRAは、基礎研究から臨床研究まで一貫して取り組む世界で初めてのiPS細胞に特化した研究所だ。山中さんは所長としてiPS細胞の研究と臨床応用の司令塔を担うことになった。ヒトiPS細胞ができるまでは、一研究室のトップとして研究の没頭し、若手研究者を叱咤激励する日々だった。そんな山中さんがより大きな組織を率いる「リーダー」となった。


『走り続ける力』1 :臨床応用というゴール





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Last updated  2024.09.19 00:04:50
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