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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・イラク水滸伝・絵はがきの大日本帝国・還暦筋トレ<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【絵はがきの大日本帝国】 二松啓紀著、平凡社、2018年刊<「BOOK」データベース>より膨張を繰り返し、ついには崩壊に至った、大日本帝国とはいかなるものだったのか。外交や産業、民俗、拡大する版図、数々の戦争。世界的な絵はがき収集家ラップナウ夫妻による膨大なコレクションから厳選した390点の絵はがきを題材に、大日本帝国のイメージを読み解く。絵はがきを道標に、大日本帝国の盛衰を“場”と“時”の両面から追体験。<読む前の大使寸評>「絵本」と言ったら言い過ぎになるが・・・とにかく画像が多くてビジュアルなので、興味深いのである♪rakuten絵はがきの大日本帝国【還暦筋トレ】坂詰真二著、毎日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>よりまだ間に合う!中高年からの超簡単筋トレ!今流行りの筋トレ、ダイエットがあなたの健康寿命を縮める。【目次】1 還暦を迎える中高年の体事情/2 まずは体のチェックから/3 これだけでOK還暦筋トレプログラム/4 認知機能の向上につながる日常トレーニング/5 ウォームアップ&クールダウン/6 人生100年時代に備える<読む前の大使寸評>現金払い、アナログ志向、ジムで筋トレと、老人ぶりが板についてきている昨今であるが・・・還暦筋トレとなるともう完璧に老人である♪rakuten還暦筋トレ
2024.09.23
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在28位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在22位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在11位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在4位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在8位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在3位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在17位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在6位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約112)現在102位・パッキパキ北京(8/29予約、副本9、予約111)現在91位・転がる珠玉のように(9/05予約、副本7、予約87)現在79位・原爆裁判(9/11予約、副本?、予約133)現在129位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門・奪還 日本人難民6万人を救った男:・ぜんぶ、すてれば:延滞本返却後に予約する<予約分受取:7/07以降> ・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)・パンとサーカス(8/28予約、9/01受取)・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、9/12受取)・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、9/22受取予定)**********************************************************************【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【パッキパキ北京】綿矢りさ著、集英社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは…?<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパッキパキ北京【転がる珠玉のように】ブレイディみかこ著 、中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりLike A Rolling Gem。大人の山あり谷ありライフを越えていけ!結婚するゲイの友人、職人魂を燃やす父、イギリスで、日本で、社会の底を支える労働者たちの人生劇場。泥くさい毎日を“宝石”に変える著者3年ぶりの最新エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(9/05予約、副本7、予約87)>rakuten転がる珠玉のように【原爆裁判】山我浩著、毎日ワンズ、2024年刊<商品説明>より日本初の女性判事・三淵嘉子が昭和三十年代に裁判官を務めた「原爆裁判」に焦点を当てた書き下ろし。原爆を巡るアメリカの闇を追及すると共に三淵嘉子の半生を紹介、さらに、世に名高い「原爆裁判の判決文」も付載した一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/11予約、副本?、予約133)>rakuten原爆裁判【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・デジタル朝日「好書好日」でめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.09.22
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半藤一利と阿川佐和子の対談で、建築家メレル・ヴォーリズが取り上げられているのがええのです♪近江八幡市の近江兄弟社を拠点として、関西一円に教会、大学、個人住宅を建てているが、私の常備薬メンソレータムとか、歌手・岡林信康とヴォーリズとの関係もあったりで・・・以下のとおり復刻して読み直してみます。*********************************************************図書館で『昭和の男』という本を、手にしたのです。半藤一利と阿川佐和子が「昭和の男」を語るという企画が、ええやんけ♪昭和を代表する男8人というチョイスもなかなかのものやで。【昭和の男】半藤一利, 阿川佐和子著、東京書籍、2017年刊<出版社>より昭和を代表する男8人を選び、その生きざまと時代を語り合う。『日本のいちばん長い日』『昭和史』など、「生きる昭和史」としてますます活躍する半藤一利と、男性に辛口なエッセイで大人気、『聞く力』の阿川佐和子が、自分の体験から独自に選らんだ「昭和の男」8人を選びました。「昭和の男とは何なのか」の議論は白熱、結論は意外な方向に……。<読む前の大使寸評>半藤一利と阿川佐和子が「昭和の男」を語るという企画が、ええやんけ♪昭和を代表する男8人というチョイスもなかなかのものやで。rakuten昭和の男アメリカ出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズについて、もうちょっと見てみましょう。p83~<日本人の優しさを> 半藤:この人、写真があまりないんだよね。阿川:わりにふくよかでそれほど背は高くなかったらしいです。近江八幡では、ヴォーリズを知っている人たちがまだ生きてらしたのですが、その人たちから、「戦争中、子供だったので、鬼畜米英ということばをたたきこまれていたから、アメリカ人もイギリス人も鬼みたいな顔をしているにちがいないと思っていたけど、ヴォーリズさんを遠目に見たとき、あの優しい顔は鬼じゃなさそうだなと思いました」という話をしてくださった。半藤:あぁ、そうか。阿川:もうひとつのエピソードは、近江八幡の教会で毎週日曜日、礼拝に行くと、ヴォーリズは建築のほうに興味がどんどんうつって、牧師様のお説教のときもこっそり設計図を描いていたりして、満喜子さんにたいそう叱られたという。 奥さんがきつくて、偉かった。奥さんは学校の校長(近江兄弟社学園の学園長)もしていたし、近江兄弟社中学で、歌手の岡林信康という人が育った。岡林のお父さんは東北で農業をしていたのですが、ヴォーリズの本を読んで、尊敬する牧師のところに行くと言って家族を連れて近江八幡に移住し、牧師になっちゃったって。岡林さんもヴォーリズの晩年に病院にお見舞いに行ったりした、という話を聞きました。半藤:いい話ですね。阿川:今もヴォーリズの建築事務所(一粒社ヴォーリズ建築事務所)はあるのです。大阪に。Q:自分の信ずるものに殉じるといいますか、自分の使命、ミッションに殉じて生きた昭和の人かなという気もしますが。半藤:きっとこの人は本当に日本が好きだったのですよ。日本人以上に。阿川:そうですね。そうじゃなきゃ、戦争中に、敵国に住み続けるなんてできない。Q:皆から白い目で見られつつも。何で日本が好きだったのだろう?結局日本に帰化し、日本名を名乗りました(一柳米来留)。半藤:やっぱり日本人にはわからない日本のいいところを見つけたんですよ。阿川:日本をすごく好きになるアメリカ人の男の人って、アメリカではちょっとドロップ・アウトの人もいるでしょ?半藤:いくらか、そうなんでしょうね。阿川:アメリカらしい、「俺こそは!」とか「ウェイト! 僕の意見を聞きなさい」という、戦い抜かないと一流になっていけない、というのが辛いなと思う人たちは、ドロップ・アウトして日本に行くという傾向があるって聞きますが、ヴォーリズも日本の優しさに近いものが・・・。半藤:あったのでしょうね。『昭和の男』3:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(続き)『昭和の男』2:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ『昭和の男』1:阿川弘之*********************************************************2018.03.06XML『昭和の男』3https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201803060000/
2024.09.22
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図書館で『世界(2024年7月号)』という本を、手にしたのです。特集2「日本の中の外国人」が・・・気になるのです。そして、「中国製EVの排斥」「DV(デジタル・ビークル)競争」についても気になるのです。【世界(2024年7月号)】雑誌、文藝春秋、2024年刊<出版社>より【特集2】日本の中の外国人 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。<読む前の大使寸評>追って記入iwanami世界(2024年7月号)自動車産業の潮流が語られているので、見てみましょう。p111~113<EV競争からDV競争へと向かう自動車産業:鶴原吉朗>■EVの販売台数に「陰り」 2024年に入り、世界でEVの販売台数がスローダウンしているという報道が目に付くようになった。 これまで、世界のEV化をリードしてきた欧州では、EVの販売台数が、2023年12月に、2020年以来初めて前年同月比マイナスになった。2023年12月にドイツのEV補助金が突然打ち切られたことや、フランスで中国からの輸入EVが補助金の対象から除外されたことなどが響いたと見られる。 米国では2023年の年初から年末にかけて対前年比のEV販売台数の伸びが低下し、2024年の1月と2月はついに対前年比マイナスに転じるなど、EV販売の失速が顕著だ。2023年にEV販売で世界トップだった米テスラは、2024年第1四半期の出荷台数が、コロナ禍で自動車販売が落ち込んだ2020年第2四半期以来、約4年ぶりのマイナスになった。(中略) 世界のEV販売台数の約6割を占める中国でもEVの成長率が鈍っている。2021年に前年比約160%増だった販売台数は、年々低下し、2024年の伸び率は20%程度になると中国汽車工業協会は予測する。その一方で、エンジンの付いたPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売台数は2023年に約83%伸びた。 中国では2022年末でEVへの補助金が廃止になった一方で、自動車取得税が新エネルギー車(EV、PHEV、FCV(燃料電池車))では2025年まで免除されている。このため、EVよりも価格が安く、航続距離も長いPHEVの販売台数の伸びにつながっている。2023年の中国におけるEVの販売台数はPHEVに対して約2.5倍だが、今後同等になる可能性もある。■「補助金バブル崩壊」と「中国製EVの排斥」 ここまで紹介してきたように、世界でEVの成長率が鈍化、もしくはマイナスに転じている一つの要因は「補助金バブル崩壊」であるが、もう一つの要因が「中国製EVの排斥」である。 まず欧州では、前述のようにフランスが中国製EVを補助金の対象から外したことで、売れ筋だった中国製の割安のモデルに2023年12月から補助金が支給されなくなった。(中略) 米国では、欧州以上に中国製EVを狙い撃ちにした排斥が進んでいる。2022年8月に「インフレ抑制法(IRA)」が成立し、米国で生産されているEV以外は税額控除の対象から外されたほか、米国で生産しているEVでも、搭載するバッテリーに使用する部品や材料に厳しい制限が設けられ、中国ばかりでなく日本や欧州の多くのEVが税額控除の対象から外された。 しかし、それだけでは終わらなかった。2024年5月14日、バイデン政権は米国通商代表部(USTR)に対してEVやバッテリーの米通商法301条に基ずく対中追加関税の関税率を引き上げるように指示した。具体的には、中国製のEVに現在の4倍の100%、EV用を含むリチウムバッテリーに対しては現在の7.5%から25%に引き上げる。これは、欧州以上の中国製EV排斥政策と言ってよい。 日本でも2024年4月から、EV補助金の支給金額の算定方法が見直され、中国製EVの補助金額が少なくなった。従来の補助金額は航続距離など車両性能や機能を基に算定していたが、24年度からはメーカーの充電設備の整備状況や製造時のCO2排出量なども加味した。代表的な車種の場合で補助金額は、従来の65万円から35万円に減額された。■EV競争からDV競争へ このように、先進各国で進む中国製EVの排斥は、自国の自動車産業の保護につながる一方で、EVの普及を減速させると予想される。というのも、中国製EVは圧倒的なコスト競争力を備えており、中国製EVを排斥するということは、自国の市場から割安なEVを締め出すことにつながるからだ。 中国製EVの影響を除いても、欧米では当初の思惑ほどEVの販売が伸びていない。このため欧米の完成車メーカーはEVシフトのスローダウンを余儀なくされている。2030年までにすべての販売車種EV化を目指していたドイツの高級車メーカーのメルセデス・ベンツが、2024年2月の決算発表の場でこの計画の撤回を発表したほか、米フォードモーターも2025年に予定していた次世代EVトラックや3列シート大型EVの販売時期をそれぞれ延期した。一方でフォードはPHEVのラインアップを拡大する。 逆にいえば、現在はEVが「ブーム」の段階を過ぎ、地に足を着けた形で普及していく段階に入ったところだといえる。ガソリン車やディーゼル車、あるいはハイブリッド車といったカテゴリーと同様に、EVについても自分の予算や使い方などに合わせて最適なものを選ぶための選択肢の一つと考えるべきだ。『世界(2024年7月号)』1:埼玉クルド人コミュニティ
2024.09.21
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このところ、蒸し暑い日が続いたが「暑さ寒さも彼岸まで」ということで、やや涼しくなりそうですね。彼岸花をまだ見ていないが、今年の開花は遅れているようです。なお、2024年の秋分の日は、22日になっているとのことです。***********************************************************************<二十四節季の秋分に注目>早朝に散歩する太子であるが、南東の空に月と金星が見えるのです。ちょうど三日月の内側に金星が位置しているが、これって中東諸国が好むマークではないか。また、このマークは春分と関係があるのではないか?『日本のならわしとしきたり』という蔵書に二十四節季の記事があることを思い出したのです。【日本のならわしとしきたり】ムック、 徳間書店、2012年刊<内容紹介>ありふれたムック本ということなのか、ネットにはデータがありません。<大使寸評>とにかく「今日は二十四節季でいえば、何になるか♪」を知りたいロボジーにとって、座右の書となるでしょう♪Amazon日本のならわしとしきたりこの本で、秋分のあたりを見てみましょう。和暦p24<秋分>太陽が真東から昇り、真西(西方浄土)に沈む日 秋分は、現行暦では9月23日ころから始まる15日間の節である。秋分に入る当日が「秋分の日」となり、国民の祝日になっている。秋分節季の期間は秋分の日から次節「寒露」の前日までである。 ちなみに、春分の日と秋分の日は共に「彼岸の中日」にあたる。 彼岸は雑節のひとつで、春分の日と秋分の日を中日として前後に各3日ある。つまり、春秋の彼岸は各7日間あり、「彼岸」は年間合計で14日間であることになる。この期間に行う仏事が彼岸会であり、最初の日は「彼岸の入り」、最後の日は「彼岸明け」と呼ばれている。 「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるが、春秋両彼岸に適応した言葉となっている。 また、『暦便覧』に「陰陽の中分なれば也」と説明があるためか、秋分の日は昼夜の時間がほぼ同じと思われてきたが、実際には昼のほうが約14分長いという科学的な裏付けがあるという。 秋分の期間の七十二候には、次のものがある。 初候「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」雷が鳴り響かなくなる。 次候「蟄虫ふさぐ戸(むしかくれてとをふさぐ)」虫が土中に掘った穴をふさぐ。 末候「水始涸(みずはじめてかるる)」田畑の水を干し始める、がある。 西洋占星術では、秋分の日が天秤宮(てんびん座)の始まりとなっている。二十四節季の処暑に注目(復刻)
2024.09.21
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『宮沢賢治フィールドノート』という本でも、イギリス海岸が言及されているが、定年前のご褒美旅行で妻と2人でこの地を訪れたのです♪・・・ということで、この本を復刻して読んでみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館で『宮沢賢治フィールドノート』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると写真や地図が満載で・・・・ビジュアルなところが、ええでぇ♪【宮沢賢治フィールドノート】林由紀夫著、集英社、1996年刊<「MARC」データベース>より賢治さんの道を歩いてみませんか? アウトドアの先駆者から学ぶイーハトヴ低山徘徊。「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」など作品の舞台をコース・ガイド。詳細地図、写真、キャンプ場情報など満載。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると写真や地図が満載で・・・・ビジュアルなところが、ええでぇ♪amazon宮沢賢治フィールドノート物見山の「風の又三郎像」を、見てみましょう。p28~29<種山高原 物見山>モナドノックの広い野原を風が遊ぶ。ギンガギンガと牧草は輝き、夜は星が降る。 賢治さんのイーハトヴという理想郷を考えるときに、どうしても浮んでくる風景があります。僕は生まれが賢治さんと同じ岩手県花巻市ですから自然の風景の捉え方で妙に納得できるところがあるのです。 イーハトヴは実際に四国四県よりも広いですからさまざまな地形があります。そして無国籍ともいえる風景が突然あります。自分の目の届く身近な低山徘徊、そして目の視点が遥か彼方まで行ってしまう大陸的な広がり。低山徘徊を自分の足でフィールドワークし、より詳しく知り心象スケッチ。賢治さんのイーハトヴはもっとさまざまな要素があるでしょうが自然を歩くことに限って言えば僕はそんな気がします。だからイーハトヴは無国籍的な理想郷なのです。もっとも無国籍さを感じさせる風景のひとつに種山ヶ原があるわけです。 盛岡高等農林学校(岩手大)の3年に在学中、同級生ふたりと江刺郡の地質調査に来て初めて種山ヶ原を知った賢治さんは文句なしに虜になりました。 『海だべがど おら おもたればやっぱり光る山だたぢゃい ホウ 髪毛 風吹げば 鹿踊りだぢゃい』と『高原』という詩に印象をスケッチしています。海ほど広い草原と遠くに広がる山並みを見て大好きな鹿踊りのように髪を風になびかせながら小躍りして体いっぱいで喜んでいる賢治さんです。 種山ヶ原あたりを歩くには賢治さんはたくさんのフィールドガイドを残してあります。思い入れもわかるというものです。童話『種山ヶ原』、劇『種山ヶ原の夜』、詩『種山ヶ原』、そして童話『風の又三郎』などがあります。 ドボルザークの「新世界交響曲」に賢治さんは詩をつけて種山ヶ原のテーマにしているかと思えば、鹿踊りも、鬼剣舞も出てくる無国籍地帯に風と遊んでみましょう。風が集まってくる種山ヶ原を、林さんが讃えています。p35 山からも平野からも海からも風が集まってくる地形、種山ヶ原は遠野市、江刺市、住田町に跨って位置しています。ここからはイーハトヴ全体どこにでも行きやすいですからとにかく風と相談して旅してください。そうそうこの辺は『風野又三郎』さんも通りますから聞いてくださいな。きっとこんなふうに言いますよ。 「ふん、イーハトヴのどこからきたんだい。僕はパシフィック・オーシャンから種山に着いたばかりさ。どこが素敵か聞きたいのかい。耳を澄ましてごらんよ。風に乗って聞こえないかいあの音が『ダー、ダー、ダー、ダー、スコ、ダー、ダー』ってね」『宮沢賢治フィールドノート』3:物見山の「風の又三郎像」『宮沢賢治フィールドノート』2:イギリス海岸『宮沢賢治フィールドノート』1:C・W・ニコルさん×林さんの対談*********************************************************■2018.11.18XML『宮沢賢治フィールドノート』3https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201811180002/
2024.09.20
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図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪rakuten走り続ける力最後に永山悦子さんが説く「解説」を、見てみましょう。p201~205<解説:永山悦子> 山中教授の好きな言葉の一つに、「人間万事塞翁が馬」がある。人生における幸せや不幸は予測が難しく、不幸だと悲しんでいたことが幸せに、幸せと喜んでいたことが不幸に、いつ転じるか分からないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないというたとえだ。 山中教授の人生は、まさにこの言葉通りといえる。iPS細胞ができるまでの道は平坦ではなかったし、これからの臨床応用が実用化するまでの道はさらなる困難が待ち構えているかもしえない。だからこそ、後輩たちや研究所の行く末、iPS細胞の行く末が頭から離れることがないのだろう。 一方、常々感じるのは、山中教授の基礎研究への思いの強さだ。「化学は驚きに満ちている。常識を覆したり、皆が信じていたことが違ったり、そういうことにワクワクする。私はそのワクワク感が大好きで研究者になった」と話す表情は明るい。 2018年4月、東京都内で開かれた新経済連盟の「新経済サミット2018」で、山中教授は人気ロックバンド「X JAPAN」のYOSHIKIさんとともに登壇した。そこで、科学と芸術の共通性が話題になったとき、山中教授は「私は『サイエンス=アート』だと思っている。YOSHIKIさんと同じように革新的なものを創造する作り手が科学者であり、科学者はアーティストだと考える」と話した。 神も想像していなかったに違いない「iPS細胞の発明」は、まさにアーティストの作品といえるのかもしれない。山中教授が続けて話したのは、基礎研究の魅力と研究環境の重要性だ。「私たちは、研究資金のために論文を書くのではなく、クリエイティブかつイノベーティブな仕事をするために論文を書ている。そのような基礎研究に没頭するためには、自由な時間が必要だ。それにもかかわらず日本には『失敗は恥』というような文化があり、失敗を許さない直線的な文化だと感じる。米国は円のような文化で、失敗も成功につながる過程の一環と考えられている。日本の文化も変わらなければならないのではないか」 自分自身の研究だけではなく、後に続く若手の研究も考えての発言のように聞こえた。だからこそ、iPS細胞研究を支援するための基金のPRにも自然と力が入るのだと感じる。 毎日新聞の連載コラムのタイトル「走り続けて」は、山中教授のアイデアだった。私たちもいくつか提案したが、「走り続けて」に対する山中教授の強い思いを感じ、決定した。今振り返ると、このタイトルにして良かったと思う。 思い返せば、2007年にヒトiPS細胞の作製の論文を発表した際の記者会見で、山中教授は「マラソンだとゴールが見えた感じで、再生医療研究が一気に進む可能性がある。でも日本がそのままテープを切れるかどうかは分からない」と語った。2012年にノーベル賞を受賞した翌日の記者会見では、「研究開発は本当にマラソンに似ている。マラソンの間も水分や栄養の補給が必要だが、今回のストックホルムにはそういった栄養補給のような意味があった」と話していた。山中教授の頭の中では、「研究」と「走ること」は重なっているようだ。 本書でも書かれているように、山中教授は、常にビジョンに向かって走り続けている。国内外のマラソンにも参加し、走り続けている。日々のランニングでも、耳に付けたイヤホンから流れているのは、音楽ではなく英会話のプログラムだ。「米国へ行くといまだに英語で苦労しているから、少しでもうまくなりたい」からだという。そのまじめさには感服するしかない。 私がインタビューした際、山中教授は「自分と同じ経験をした前任者はいない。CìRA所長の難しいところは孤独なところ」と明かした。そんな孤独感、iPS細胞研究への患者や家族の皆さん、社会からの大きな期待、そして研究所トップとしての責任を背負いながら、山中教授はビジョンと信念へ向かって今日も走り続ける。iPS細胞の生みの親として、CìRA所長として、先頭を走り続ける山中教授が見る風景を、これからも追いかけたい。『走り続ける力』2:素顔の山中伸弥:永山悦子『走り続ける力』1:臨床応用というゴール
2024.09.19
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図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪rakuten走り続ける力「第二部 人間・山中伸弥」でジャーナリスト・永山悦子が見た山中先生を、見てみましょう。p89~96<第五章 素顔の山中伸弥:永山悦子>■信念の人「山中伸弥」という研究者に対する一般的なイメージはどんなものだろうか。世界で初めてiPS細胞を開発し、ノーベル賞を受賞した世界的な研究者であり、京都大iPS細胞研究所(CiRA)を率いるリーダー・・・。一方、山中さんを直接知る人々の意見を総合すると、「信念の人」というのが「人間・山中伸弥」を表現するうえで一番しっくりくるように感じる。 山中さんの信念が、研究者、職員、学生を併せて約600人にも上る組織であるCiRAと世界のiPS細胞研究を引っ張っているのだ。 幼い頃の山中さんは、町工場を営む両親のもとで育った。ラジオや時計を分解して遊ぶのが好きな子どもで、「壊しては元に戻せなくなって、母によく怒られた。研究者というよりも技術者の血の方が強かったかもしれない」と話す。中高一貫の大阪教育大附属天王寺中学・高校に進学し、数学と物理が得意科目だった。大学受験のときも生物はとらず、「(神戸大)医学部に入ってから高校レベルの生物を学んだ。娘が高校生のときに生物の問題を聞かれたが、難しくて『高校生はこんなことできなくてもいい』とごまかしたほどだ」と山中さんは笑う。 柔道やラグビーに打ち込んだ中学、高校、大学時代は骨折を繰り返し、それが整形外科医を志すきっかけになった。しかし、医師になってからは、父の死、そして治療法のない重い病気の患者たちに接して、「今の医療では治せない病気を治したい」と基礎研究を目指すようになる。米国に留学して体のさまざまな細胞や組織になる能力を持つES細胞(胚性幹細胞)に出会うと研究にのめり込んだ。 もう一つ、大きな出会いだったのが、留学先のグラッドストーン研究所のロバート・マーレー所長だった。山中さんが第二章の最後に紹介していたように、研究者として成功するために欠かせない言葉であり、山中さんの座右の銘ともいえる「ビジョン・アンド・ワークハード」をマーレー所長から教えられたのだ。 帰国後、米国時代とは違って研究がうまく進まなくなり、「PAD(ポスト・アメリカ・ディプレッション)、米帰国後うつ症候群」になったことは、山中さんの講演では恒例のエピソードだろう。「研究をやめて臨床医に戻ろうか」と落ち込んでいた1999年、奈良先端科学技術大学院大学の助教授のポストを得ることができた。 その際、研究室の大学院生を集めるために打ち出したのが、夢のような構想「患者自身の細胞を時計の針を逆回りさせるように受精卵のような状態に変化させ、ES細胞と似た細胞を作る」だった。 このとき山中さんは内心、「20年や30年はかかる。最終的にできないかもしれない。しかし、奈良先端科学技術大学院大学に拾ってもらった。一度死にかけたのだから何か面白くて難しいことをやろう」と考えていたという。また、120人の学生を約20の研究室で争奪する構図だったため、「一人も大学院生が来なくては研究にならない」(山中さん)という思いもあった。 この「夢」は、実現への道筋はまったく未知数だったものの、研究の方向性としては重要だった。当時、ES細胞を使った研究をめぐっては、ES細胞が受精卵から製作するため「命の萌芽を壊して作る」という倫理的な問題、さらにES細胞をもとに作った細胞や組織を患者に移植すると拒絶反応が起きてしまうという治療上の課題が指摘されていた。 これらの課題を解決する一つの方法として、クローン技術があったが、遺伝的に同一の個体を作り出すため「クローン人間」を生み出す恐れなど、さらに大きな倫理的な問題があり、技術もまだ確立していなかった。再生医療の実用化を願う難病患者にとって、ES細胞でもなく、クローン技術でもない使いやすい細胞は待望の存在だった。 その後、夢は現実になった。 山中さんはES細胞やクローン技術に関する過去の研究から、「ES細胞の特徴を維持するために欠かせない遺伝子が分かり、それを体細胞に送り込めば、ES細胞のような細胞を作れるはずだ」と考えた。「絶対無理と思われていることでも、理論的に正しければ必ず実現する」というビジョンを据え、遺伝子探しを始めた。公開されている遺伝子データベースを活用し、ES細胞で特異的に発現している遺伝子の候補を捜していった。 2004年までに24種類に絞り込まれ、その年に京都大へ移った後、24種類の中にiPS細胞を作り出すために必要な4種類の遺伝子が含まれていることを突き止めた。2006年にマウスの皮膚細胞からiPS細胞を製作することに成功したという論文を発表、翌年にはヒトの皮膚細胞からも製作に成功したと発表した。 マウスでiPS細胞を作ったという論文を発表した直後は、世界の研究者も疑心暗鬼だった。あまりにも簡単な方法だったからだ。山中さんが招待を受けて出席した米国での研究会後、夜に立ち寄ったバーで外国人の研究者が「たった四つの遺伝子でできるなんておかしい」と話す声が聞こえた。山中さんは「くやしかったが、実験データはきちんとそろっているからすぐに分かるはずだ」と考えたという。 その通り、すぐに世界的な競争が巻き起こり、ヒトiPS細胞を作ったという論文の発表は米国のチームと同着になった。これを受けて、哺乳類のクローン技術の第一人者として有名な英国のイアン・ウィルムット博士がヒトのクローン技術の研究を中止すると発表するなど、世界中に影響が及んだ。山中さんは後日、こう話している。「目の前にチャンスがあり、やるという選択肢とやらないという選択肢があるときには、基本的にはだいたいやる」。そんな姿勢が、iPS細胞を引き寄せたといえるだろう。 そして、2012年10月、山中さんが自宅で「ガタガタうるさかった洗濯機を直しているとき」、スウェーデンから携帯に電話がかかってきた。ノーベル医学生理学賞の受賞の連絡だった。英国のジョン・ガードン博士との共同受賞だった。山中さんはその年の12月、ストックホルムで開かれたノーベル賞の授賞式に、父章三郎さんの形見の腕時計をして臨んだ。式の前、「父がそこにいるつもりでメダルを受け取りたい。父が私を医者にしてくれた。今日は一緒に喜んでくれえるのではないか」と話した。■リーダーとして 山中さんに「ノーベル賞を授賞して人生が変わったか」と問うと、「自分の場合は、ノーベル賞よりもヒトのiPS細胞ができたことが人生のターニングポイントだった。それまでは研究者だったが、それからは仕事が変わった。ノーベル賞は、その流れが加速したという意味だったと思う」と答えた。 ヒトiPS細胞の作製が成功すると、動物であるマウスを使った2006年の論文とはうって変わって、臨床応用への可能性が一気に広がり、iPS細胞や再生医療の研究を巡る環境は激変した。 2008年に京都大の「物質―細胞統合システム拠点」に「iPS細胞研究センター」が設置され、2010年には単独の研究所としてCiRAが誕生した。CiRAは、基礎研究から臨床研究まで一貫して取り組む世界で初めてのiPS細胞に特化した研究所だ。山中さんは所長としてiPS細胞の研究と臨床応用の司令塔を担うことになった。ヒトiPS細胞ができるまでは、一研究室のトップとして研究の没頭し、若手研究者を叱咤激励する日々だった。そんな山中さんがより大きな組織を率いる「リーダー」となった。『走り続ける力』1:臨床応用というゴール
2024.09.19
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現在の中国の覇権主義が高じると、日本としては紛争も持さない覚悟で対峙するしかないわけで・・・『満州事変から日中戦争へ』という本を読み直してみようと、思うしだいです。*********************************************************図書館で『満州事変から日中戦争へ』という新書を、手にしたのです。1931年の鉄道爆破作戦は、日本近代史のまったくエポックメーキングな事件ではないか…ということで借りたわけでおます。【満州事変から日中戦争へ】加藤陽子著、岩波書店、2007年刊<「BOOK」データベース>より「満蒙の沃野を頂戴しようではないか」-煽動の背景に何があったのか。満蒙とは元来いかなる地域を指していたのか。1931年の鉄道爆破作戦は、やがて政党内閣制の崩壊、国際連盟脱退、2.26事件などへと連なってゆく。危機の30年代の始まりから長期持久戦への移行まで。日中双方の「戦争の論理」を精緻にたどる。<読む前の大使寸評>1931年の鉄道爆破作戦は、日本近代史のまったくエポックメーキングな事件ではないか…ということで借りたわけでおます。rakuten満州事変から日中戦争へ陸軍の対ソ認識、対中認識を「おわりに」で、見てみましょう。p235~236<おわりに> ここまで読み進めてこられた読者はすでにお気づきのことと思うが、昭和戦前期の日本においては、国防思想普及運動などによって国民を巻き込み、扇動し、満州事変への支持を調達した陸軍などが真にめざしていたものと、扇動の過程で国民の前で強調され、展開された論理との間には、実のところずれがあった。 石原莞爾が望んだのは、1.ソ連がいまだ弱体な時、2.中国とソ連の関係が悪化している時、3.日本とソ連が将来的に対峙する防衛ラインを、中ソ国境の天然の要害まで北に西に押し上げておくことであった。将来的な対米戦の補給基地としても満州は必用とされていた。しかし、それは国民の前には伏せられ、条約を守らない中国、日本品をボイコットする中国という構図で、国民の激しい排外感情に火が点ぜられた。 松岡洋右が、そして建川美次までが連盟に止まろうと奮闘した1932年暮れから33年初頭、ジュネーブ軍縮会議の陸軍側随員の1人として同じくジュネーブに居合わせた石原は、早期脱退をぶつのでもなく、冷静に傍観していたとの証言がある。戦略上の目的が達成されれば日中紛争の帰結など問題ではなかったのだろう。掻き立てられ、後に放置された国民の憤怒は「満州事変は復仇」との自己説得の論理に、より強く結びつけられてゆくほかはない。 ずれは日中戦争においても起きた。参謀本部第一部長だった石原は、37年後半にもソ連の対日参戦がありうると見ていた。ソ連を警戒するあまり、満州に駐屯していた現役兵の多い屈強な師団には手をつけず、荒木貞夫が喝破したように、後備兵の比率の高い弱体な特設師団に上海・南京戦を戦わせた。いっぽう、軍内の拡大派もまた、目の前の中国との戦争を名目に臨時軍事費を獲得し、実のところ将来の対ソ戦に備えた拡充計画、国防国家化に予算の6割を振り向けていた。 陸軍の不拡大派も拡大派も、その実、中国と正対していなかったのである。『満州事変から日中戦争へ』1:張作霖爆殺あたりの軍事的・政治的背景『満州事変から日中戦争へ』2:石原莞爾ら陸軍中堅の考え方*********************************************************■2024.01.17XML『満州事変から日中戦争へ』(復刻)https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/202401170001/
2024.09.18
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図書館で『身近な漢語をめぐる』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪rakuten身近な漢語をめぐる冒頭の「Ⅰ 読みのすがた」で「熟字」(二つ以上の漢字表記の語)が述べられているので、見てみましょう。p48~50<時雨、紅葉 熟字訓(一)>■『万葉集』における表記の工夫『万葉集』(759)は約350年間にわたる4500首の和歌などを収める日本最古の歌集である。 片仮名も平仮名もまだ成立していない時代の編集で、すべて漢字を用いて日本語を写している。中国語に卓越した人なら、想いや考えを漢文で表わせる。しかし、和語の表現、とりわけ歌の発音・調べは伝えることができない。それを表わすために漢字の意味にかかわりなく音と訓によるたどり着いた。この「万葉仮名」は『万葉集』の表記方法の根幹をなしている。 ところが、別の方法もとられた。それは多様で、あらゆる工夫がなされているといった感じがする。 例えば、「はる(春)」を表わすのに漢字の意味とは無関係に音だけを借りた万葉仮名「波留」とするとともに、正訓(固定した普遍的な訓み)の「春」の漢字を用いたり、また「暖」によって、「はる」と訓ませたりしている。「あきかぜ」には万葉仮名の「安伎可是」とともに「秋風」、更には「冷風」と記したりしている。 こうした「暖」や「冷風」の「冷(あき)」などは正訓の「春」「秋」に対して、漢字の意味からの連想による臨時的な訓みで、「義訓」と称されている。他にも「寒(ふゆ)、五更、丸雪、去家、壮士、求食、私語」など類例は多い。 ■「熟字訓」とは この義訓につながるものの中に「熟字訓」がある。熟字(二つ以上の漢字表記の語)を、それぞれの漢字一字ずつ読まずに、全体をまとめて一つの和語に読むもので、現在よく用いられる熟字とその読みは「常用漢字表」の「付表」に収められている。「付表」の語を中心にいくつか挙げると、灰汁(あく) 小豆 (あずき) 伯父(おじ) 一昨年(おととし) 神楽(かぐら) 陽炎(かげろう) 鍛冶(かじ) 風邪(かぜ) 五月雨(さみだれ) 白湯(さゆ) 時雨(しぐれ) 竹刀(しない) 素人(しろうと) 松明(たいまつ)山車(だし) 黄昏(たそがれ) 以降略 これらの熟字は中国製が多いが、日本製のものもある。例えば、神楽、鍛冶、白湯、足袋、裸足などは日本で生まれた熟字で中国語には存在しないか、あっても一般的ではない。それぞれ意味を汲み日本で二字の漢字をあてたものである。 日中辞典によると、「鍛冶屋」は中国語では「鉄匠」、「白湯」は「白開水」(開水は中国語で湯)、「裸足」は「赤脚」や「赤足」と表現される。(中略) 中国の古典籍にある語でも、現代中国の口頭語として一般的ではないものもある。「松明」は「火把」とか「火炬」と表し、「風邪」は漢方医学の用語で現在一般には「感冒」あるいは「傷風」と表現している。また、「海苔」は中国では広く海藻を意味し、食品の「のり」は「紫菜」と言う。『身近な漢語をめぐる』2:茶の歴史『身近な漢語をめぐる』1:漢字の成り立ち
2024.09.18
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漢字文明圏という括りが私のツボでもあるわけで・・・以下のとおり、復刻して読んでみましょう♪*********************************************************図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第10章 無文字社会から問う」で日本語の乱れとか美しい日本語が述べられているので、見てみましょう。p298~301■美しき二重言語の構造 昨今、「日本語の乱れ」が問題視されていますが、その原因の多くは接続法あるいは連続法に関わる問題といえます。たとえば、コンビニなどで買い物をしたときに、近年、レジの若い店員は「千円からお預かりします」と言いますが、この「から」は明らかに間違いです。 接続に関する助詞を間違えているのです。「千円」や「預かる」はそれ自体で意味をもつ自立語、つまり「詞」です。日本語の難しさはその自立語をどのように繋いでいくかという点にあります。「千円からお預かりします」という例でいえば、「から」と「ます」のような詞辞関係における「辞」の部分が問題になってくるのです。 別の観点からいえば、「詞」は主として漢字が担当し、「辞」は漢字で書きあらわせない部分なので仮名が担当します。「千円からお預かりします」といわれれば、預かっているのなら返してくれと言いたくもなるのですが(笑)、間違えるのは、「から」というような女子であったり、「お」を付けるかどうかという敬語の問題であったり、仮名書きのところで生じています。 しかし、この助詞は意味のアクセントとしては非常に弱い。実際には「から」も「お」も「ます」も、なくても意味は通じます。 極端にいえば、中国語には「辞」がありません。中国語ふうにいえば、「千円 預かる」になります。どうしても完了形にしたければ、、「千円 預かった」という形にするだけのことです。日本語の場合には詞のあいだに助詞を挟み込む構造になっているのです。 ところが普段われわれは、「あの人、かっこいい」とか「私、大好き」というように、ほとんど単語を並べるだけの日本語を日常的に使っています。これも立派な日本語です。いってみれば助詞は適当であってもいいとも言えるのです。とくに東アジアの言語は漢語中心の言語ですから、単語を並べればいいのです。 言語の乱れを問題視する人々は、仮名の部分の乱れを指摘します。世の中の多くの人は、「辞」の部分、繋ぎの部分が間違っていることを指して、「言葉が乱れている」と騒いでいます。これでは「美しい日本語」というのは、「繋ぎの部分」を正しく使えるかどうかという問題にすぎません。 しかし私にいわせれば、むしろ漢字のほう、つまり使える語彙が減ってきていることのほうが、より重大な問題です。それが日本語の危機の本質だと思います。仮名の部分にばかりこだわると、「繋ぎの部分」にだけ長けた人が出てきて、文法上の間違いもなく見栄えはすこぶるいいけれども、内容の乏しい日本語が生まれてくることにもなりかねません。『漢字とアジア』4:沖縄における漢字・漢文・平仮名の状況『漢字とアジア』3:日韓併合、独立闘争あたり『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.09.17
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図書館で『身近な漢語をめぐる』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪rakuten身近な漢語をめぐる冒頭の「Ⅰ 読みのすがた」で茶の歴史が述べられているので、見てみましょう。p7~10<茶の歴史>「茶」(チャ)も中国語の発音に基づく「字音」であり、また、一字の漢語である。辞典による異なりがあるが、『新字源 改訂新版』(角川書店)では、呉音ダ、漢音タ、唐音サで、チャは慣用音としている。 白川静『字通』(平凡社)は「茶は古い字書に見えず、その初文はおそらく「茶」であろう」という。「茶」は音「ト」で、「にがな」というキク科の多年草と、いわゆる「チャ」の二つをさす。解字辞典や漢和辞典によると、「にがな」と「チャ」の二つの植物を区別するために「チャ」の場合は一画減らしたものとし、一説にその時代を唐代とする。 日本の「茶」の歴史について、『日本大百科全書』(小学館)から関連部分を引用する。 喫茶の歴史のもっとも古いのは中国で、地理的に近いわが国には天平時代(729~749)にその風習が入ってきたようである。(中略) 805年(延暦24)伝教大師最澄が茶の種子を持ち帰り比叡山麓に植えたと伝えられ、806年(大同1)には弘法大師空海も茶の種子や茶を搗く石臼を持ち帰ったといわれている 日本に存在しないもので、名称もなく中国語音に基づいて「チャ」と読みならわすことになる。 帰国僧たちの持ち帰った茶は団茶(蒸した葉を石臼でついて固めたもの)であった。薬用の役割をもつ貴重品で、朝廷や寺院などでわずかに飲まれるにすぎなかったようである。日本の歴史書では『日本後期』弘仁6年の条に初めて現れる。 大僧都永忠、手自煎茶奉御。 永忠は唐に留学した僧。嵯峨天皇が唐崎に行幸した際、茶を煎じて奉った。西暦815年のことである。 同じ9世紀、嵯峨天皇は『凌雲集』に収める五言律詩の中で、詩を吟じつつ芳香の茶を搗き琴の調べに耳を傾ける、とうたい、菅原道真は『菅家文草』で、五言古詩「東方未眠 悶飲一杯茶」(仮中書懐詩)と詠む。茶の効用と道真の心境の一端をかいま見る思いがする。 日本で本格的な茶の栽培が始まるのは大分後れた12世紀後半であった。宋から帰国した臨済宗の開祖栄西は抹茶法を伝えるとともに種子を持ち帰った。譲り受けた、高山寺の明恵上人は栽培に取り組み、収穫した種子を全国各地に配って普及に努めた。これが後年の宇治、伊勢、狭山茶などの銘柄茶のもとをなしたという。 14世紀に入ると、茶は日本人の生活の中にとけ込み、中国の「家常便飯」に基づいて「日常茶飯(事)」という四字熟語まで生まれるに至った。『身近な漢語をめぐる』1:漢字の成り立ち
2024.09.16
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図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪rakuten走り続ける力「第一部 走り続けてⅠ」の冒頭から、見てみましょう。p12~16<臨床応用というゴール>■立ち止まる余裕はない 2007年に私たちのチームがヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製に成功したと発表してから11年になりました。「iPS細胞技術を一日でも早く患者の皆さんのもとへ」という思いで、私が所長を務める京都大iPS細胞研究所(CìRA)のメンバーや国内外の研究者が研究に取り組んできました。皆の努力のおかげで予想以上のペースで研究が進み、いくつかの病気で臨床応用の可能性が見えてきています。 まずは、iPS細胞について簡単に説明します。私たちの体は一個の受精卵が分裂し、多種多様な細胞へ分化して作られます。いったん分化した細胞、例えば皮膚の細胞は皮膚のままで、皮膚の細胞が突然筋肉の細胞になることはありません。細胞の種類ごとに運命が決まっています。 iPS細胞は、細胞に少数の遺伝子を導入することで細胞の運命がリセットされ、受精卵のような状態になったものです。どんな細胞にも変化し、ほぼ無限に増殖する能力があります。私たちはこの特徴を生かし、病気の治療法の開発にむけた研究を進めています。 iPS細胞を使う研究には「再生医療」と「創薬」があります。 再生医療とは、iPS細胞などから体の組織や臓器を作り、病気やけがで損なわれた機能を補う医療です。 2014年には、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーのチームが中心となり、加齢黄斑変性という目の病気を持つ患者さんの皮膚細胞からiPS細胞を作り、そのiPS細胞から網膜の細胞シートを作製し、患者さんの目に移植しました。これはiPS細胞を使った世界初の臨床研究で、臨床応用の可能性を示す大きな一歩でした。2017年3月には、事前に備蓄しておいた他人の細胞から作ったiPS細胞を使って同様の手術が実施されました。 iPS細胞のもう一つの可能性は創薬、つまり新しい薬の開発です。患者さんの細胞からiPS細胞を作り、それを患部の細胞に変化させると、病気の症状を細胞レベルで再現できます。その細胞にいろいろな物質を投与して、細胞の状態を改善できれば、その物質が薬の候補になると考えられます。 11年前、私たちは世界のチームと競い合う中、最初にヒトiPS細胞の作製に成功したという論文を発表しました。 私たちの目標は、初めから人への応用でしたが、ピクンピクンと拍動するヒトiPS細胞から作った心筋細胞を見たとき、「やっと人でできた。でも、これからだ」と緊張したのを思い出します。 当時、私は「マラソンに例えるとゴールが分かった感じ」とお話ししました。もちろんゴールまでの道を平坦だと思ってはいませんでしたが、立ち止まる余裕はありません。 ある時、難病の子どもを持つ女性から「おからだに気を付けてください」と声をかけられました。看病で大変な中、私たちのことまで気遣ってくださる姿に、涙が出そうになったことを思い出します。 そういった患者さんやその家族の思いが、私たちの研究の原動力になっています。■長い道のり 1987年に神戸大学医学部を卒業した私は、整形外科医を目指して臨床研修医となりました。少しでも患者さんたちの力になれるように、日夜、奮闘していました。しかし、当時の医学ではどうすることもできない病気もたくさんありました。 私は医師になってすぐ父を亡くしました。せっかく医師になったのに実の父に何もしてあげることができず、無力感にさいなまれました。「今の医学では治すことのできない患者さんを、どうしたら救えるのだろうか」 そんな思いで飛び込んだのが研究の世界です。 臨床と研究は、同じ「医学」ですが、いざ飛び込んでみると全く違う世界でした。 研究者の卵として最初に取り組んだ実験で、予想と正反対のことが起きました。臨床の現場でもし予想外の反応が起きたら大変です。患者さんの命にかかわる恐れもあるからです。ところが基礎研究では、予想外の結果は新たな発見につながるチャンスだとわかり、この瞬間に「自分は研究の方が合っている」と思いました。 その後、何度も予想外の結果に遭遇しましたが、そのたびに自分でも思っていなかった方向に研究が進んでいきました。そして、たどり着いたのがiPS細胞でした。
2024.09.16
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昨晩、民放テレビで『記憶にございません!』の後半を観たが、なかなか面白い作品であった。特に、キャスティングが豪華であったが、三谷幸喜監督の人脈というものか♪・・・ということで以下のとおり復刻してみます。*********************************************************手もと不如意の太子としては久々の封切り映画となるが・・・三谷幸喜監督の『記憶にございません!』を観たのです。【記憶にございません!】三谷幸喜監督、2019年制作、2019.10.07鑑賞<movie.walker作品情報>より『ラヂオの時間』などで知られる脚本家、三谷幸喜の映画監督8作目となるオリジナル作品。国民から嫌われ、史上最低の支持率を叩き出した総理大臣が記憶喪失になったことから巻き起こる騒動を描いたコメディ。主演の中井貴一ほか、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、佐藤浩市など豪華キャストが脇を固める。<大使寸評>美男美女でもあるディーン・フジオカと小池栄子が有能なスタッフとして掛け合うシーンが、硬軟取り混ぜて太子好みであった♪裏を知りつくしてシニカルなディーンが変化球であるなら、記憶喪失の首相の青臭い生真面目さが直球のように見えるわけで・・・硬軟取り混ぜたお話しになっています。栄子さんは直球派として首相をサポートするわけだが、爽やかである。官房長官役の草刈さんが、いかにもフィクサーの役柄をコミカルに演じています。その他、石田ゆり子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊、佐藤浩市など・・・豪華キャストである。シニア割引でも1200円と値上げされて、封切り映画は厳選せざるを得ないのだが・・・さにあれば、爽やかな喜劇こそ最適なんでしょうね。movie.walker記憶にございません!エンドロールのキャスチングでは、名前入り顔映像を並べているのが判りやすくて良い試みであったが・・・有働由美子アナの映画初出演が判った(バレた)のにはビックリ(笑)*********************************************************■2019.10.09XML久々の封切り映画:記憶にございません!https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201910090001/
2024.09.15
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図書館で『身近な漢語をめぐる』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪rakuten身近な漢語をめぐる冒頭の「Ⅰ 読みのすがた」で漢字の成り立ちが述べられているので、見てみましょう。p3~5<一つの漢字は一つの漢語> 漢字は、個々に一定の形があり、発音ができ、しかも(仮名やローマ字などと違って)意味もそなえている。つまりそれぞれが字であると同時に語(単語)である。先に挙げた字は、現在の日本語の中で訓の存在しない単一の「漢語」(字音語)といえる。 「もじ」の意味を表わす「字」も、その一つである。 私たちは感情・意思や情報・思想を伝える主要な手段として、言葉を用いる。その言葉による伝達は、「話し言葉」(音声言語)と「書き言葉」(文字言語)の両面によってなされている。 音声言語は、文字言語よりはるか前に発生した。口から耳へという過程を通して行われる音声言語は、より直接的ではあるが、本来は一回限りで瞬間的に消え去り、また遠方に伝えることができない。 文字は、音声のこのような時間的な制約と空間的な限界を乗り越えようとする必要と要求から生み出されたものと考えられる。文化が進むにつれて、音声を固定し、記録・保存することが必要になる。文字は人間の偉大な発明の一つである。<「字」に訓がないのは?>「字」という漢字は、漢和辞典で、「ワカンムリ」の部首に入れるものと「子」の部首に収めるものとがある。おおむね共通していることをまとめると、「ワカンムリ」+「子」から成る会意兼声文字で、現行の「ジ」の発音は呉音とされる。「ワカンムリ」(呉音メン、漢音ベン)は、屋根の形にかたどり「いえ」を示し、「子」(呉音・漢音シ)は、頭が大きく、手足のなよなよした乳児の形にかたどって「こ」を表わす。「字」は、「家の中で子を生む」ことを原義とし、派生して「ます(増)」、「やしなう(養)」意味に広がる。 本項目で話題としている「もじ」の意味はそこから生じる。それは、基本構成の単体字=象形・指事の字を基とし、その組み合わせによる複体字=会意・形声の字が、あたかも子が生まれるように次々と生じ増すから、という(ちなみにもともとは、単体字を「文」といい、複体字が「字」であるが、のちに広く全体を「字」あるいは「文字」と総称するようになった)。
2024.09.15
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「そばですよ」が刊行されていた当時、虎ノ門の「港屋」近くの長い行列を見たわけではないが、この本の著者が驚いたくらいなので、「港屋」のそばの味はいかばかりかと思うのです。・・・ということで以下のとおり復刻して読み直してみましょう。*********************************************************図書館で『そばですよ』という本を、手にゲットしたのです。この人の味のセンスは折り紙付きなので・・・期待できるのです。【そばですよ】 平松洋子著、本の雑誌社、2018年刊<「BOOK」データベース>よりようこそ、暖簾の奥へ。一杯に香る一瞬の人情味。東京立ちそば26店、それぞれの昼と夜を描く。<読む前の大使寸評>小川洋子とよく間違える著者である。この人の味のセンスは折り紙付きなので・・・期待できるのです。rakutenそばですよテレサ・テンのファンだったので、その名前に惹かれて・・・虎ノ門の「港屋」を、見てみましょう。p286~289<だからテレサ・テン>「港屋」。この名前を聞くと、条件反射でびくっとしてしまう。あの凄まじい行列を思い出して。 愛宕神社の参道すぐ近く、交差点の角に長い列を見かけたら、それは「港屋」詣での人だかりだ。私が目撃した最長は(図ってないけど)20メートル、いや30メートル。地下鉄の虎ノ門駅方面から歩いてきてのけぞり、野鳥の会のひとになって目視計測すると、夏の昼間なのに70人を軽く超えていた。夢でも見たかと思い、数日後に行ってみたらまた同じ夢を見てしまい、尻尾を巻いて退散。テレビで紹介された直後だったらしいが、あの異様な光景は忘れられない。 世間では、「港屋」はこうよばれている。 立ちそばのニューウェーブの源流。 “港屋インスパイア系”を産んだ革新的存在。 インスパイア、つまり「港屋」に触発されたり刺激を受けたり、影響を受けて現れた店や味があちこちにある。虎ノ門ヒルズが現れるずっと前から、愛宕神社のはす向かいにすっくと立つ孤高の存在だが、その前代未聞のオリジナリティがそばの自由度を大きく塗り替えてしまった。 麹町「そばうさ」主人、小島和樹さんにしても、「港屋」のそばを食べてカミナリに打たれ、「自分の進む道はコレだ!」。決意を固めて会社を辞め、苦闘ののち「そばうさ」が生まれた。そばだけではなく、「港屋」はひとの人生まで変えてしまう。 2002年オープン当初から現在にいたるまで、ともかくすべてがオリジナルだ。似た店も、似た味も、どこにもなかった。初めて店に足を踏み入れたとき、面食らうというより、私は頭がついていきませんでした。 看板がない。探さなければ店の名前もわからない。店内はやたら黒っぽく、間接照明のライトは灯っていてもうす暗く、だからそばもよく見えません昼間でも。カウンターは水をゆらゆら湛えた水盤、洒落た花が活けてある。BGMはジャズだったか、クラシックのピアノ曲だったか。どうしたって西麻布あたりのバーなんか思い出すわけだが、いや、いまそれはぜんぜん求めていないんですけど。 そばが食べたいだけなんですけど。自分の思考回路を軌道修正するのに苦労を強いられる。しかし、すでにこの時点で「港屋」の土俵に引きずりこまれていたと気づくのは、店を出たあとのことだが。 一杯のビジュアルにも、あっと驚く。頼んだ冷たい肉そばは、黒みがちの、見るからにぴんぴんの手強い麺。その上に刻み海苔のエベレストがそびえ立つ。丼いちめん、大漁の白ごま、刻みねぎ、薄切りバラ肉の雲海。惜しげのなさを愛でていいのか、呆れていいのか、どっちにしても有無を言わさぬ迫力だ。 ダメ押しは、ラー油のパンチが効いた甘辛い濃厚なつけ汁。つけ麺は敬遠してきたはずなのに、ぐいぐい追い込まれてしまうのは、コシの強いそばとのバランスが成立しているからだろうか。おまけに、ひと口ずつ、そばに絡みつく相手が違う。箸でヨイショと持ち上げたそばにまとわりつく刻み海苔、そばに貼りつく城ごま、そばにまみれるラー油風味のつけ汁・・・ええと、そばってこういう食べ物だったっけ? 開店以来16年間、味もメニューも動かない。 もり 600円 海苔もり 700円 胡麻もり 700円 海苔胡麻もり 800円 冷たい肉そば 870円 温かい鶏そば 870円 不動の6種類、つけそばだけ。確信犯だな、と思うのだが、面白い、新しい、うまい、楽しい、いろんなキモチといっしょに懸命に噛みしだくうち、浮かんでくるのは「納得」の二文字だ。 うす暗い店内に四方から響くズズ、ズズッ、そばを手操る音。黒大理石を囲む奇妙なフォーメーションで立つお客のあいだには、うっすらと連帯感のような空気さえ漂っている。 なんかぐやじい。そもそも、そば一杯を食べるときこんな状況に追い込まれたことがなく、味も空間も枠からハミ出している。でも、いつのまにか爽快感を覚えていた。あれは、自分のそば体験が更新された快感ではなかったか。そう思いいたると、あの長い行列もまた「納得」の証明に見えてくる。『そばですよ』1:「そばよし」の魅力*********************************************************■2022.11.11XML『そばですよ』2https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/202211110000/
2024.09.14
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図書館に予約していた『黄色い家』という本を、待つこと7週間ほどでゲットしたのです。「BOOK」データベースが今世紀最大の問題作!と讃えているが、興味深いではないか♪【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>「BOOK」データベースが今世紀最大の問題作!と讃えているが、興味深いではないか♪<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家「第一章 再会」の冒頭から、見ていきましょう。p7~9<1> このさき、自分がどこで生きることになっても、何歳になっても、どうなっても、彼女のことを忘れることはないだろうと思っていた。 けれど今さっき、偶然に辿りついた小さなネット記事で彼女の名前を見るまで、そんなふうに思ったことはもちろん、彼女の名前も、存在も、一緒に過ごした時間も、そしてそこで自分たちがしたことも、なにもかもを忘れていたことに気づかなかった。 吉川黄美子。 同姓同名かもしれないという考えが一瞬よぎったけれど、この記事に書かれているのがあの黄美子さんだということを、わたしは直感した。 わたしはその記事を三度くりかえして読んだあと、胸の奥から塊のような息を吐いた。指さきがかすかに震えて感じられるくらいに、心臓がどきどきと脈打っていた。黄美子さんだ。間違いない。あの黄美子さんが捕まったのだ。 吉川黄美子、と名前を検索してみると、似た内容のものがひとつと、あとは数行の報告の記事がもうひとつ、引っかかっただけだった。どっちも小さな扱いの記事だ。あとは姓名判断や画数占い、女の子にお勧めの名前がどうのというページだけ。黄美子さん本人に関する情報は、わたしがさっき目にした事件以外にはネットには存在しないみたいだった。 わたしは、なにをどこから考えるべきなのかを整理しようとした。もう一度、最初の記事のページに戻って日付を確認した。 この記事が掲載されたのは2020年、1月10日。今から三ヶ月くらいまえのものだ。そして事件が起きたのは去年、2019年の5月と書いてある。 でも、いくらしっかり読んでも、そういう日付の意味するところがうまく理解できなかった。初公判から三ヶ月がたっているのはわかったけれど、被害者や関係者がいま現在どんな状態でいるのかとか、事件や裁判がこれからどんな展開になっていくのか、そういうことがわからなかった。今、黄美子さんはどうなっているんだろう。これからどうなるんだろう。そういうのは、いったいどこで知ればいいんだろう。 取り調べについてや、拘置所なんかの順序やルールみたいなものも、まったく想像ができなかった。わたしが思い浮かべることができるのは、殺風景な灰色の小部屋とか、手錠とか、表情のない裁判官とか、法廷画家の描いた似顔絵とか、そういうドラマやニュース番組なんかで見たことのあるしょうもないイメージだけだった。
2024.09.14
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JUN社が作った「天井桟敷」のポスターがええわけで(横尾忠則や宇野亜喜良のコラージュであるが)・・・以下のとおり復刻して覗いてみようと思い立ったのです♪*********************************************************図書館で「寺山修司劇場『ノック』」という本を手にしたが・・・全てのページがビジュアルになっていて、大人の絵本と言えなくもないのです。天井棧敷の出し物の魅力もさることながら、横尾忠則や宇野亜喜良のポスターがええでぇ♪・・・大使の場合はポスターに惹かれて、この本を借りたわけです。【寺山修司劇場『ノック』】九条今日子, 寺山偏陸著、日東書院本社、2013年刊<「BOOK」データベース>より名台詞と貴重な写真で綴る演劇実験室・天井棧敷の軌跡。【目次】青森県のせむし男/大山デブコの犯罪/毛皮のマリー/時代はサーカスの象にのって/人力飛行機ソロモン/邪宗門/阿片戦争/盲人書簡上海篇/市街劇ノック/疫病流行記/阿呆船/奴婢訓/観客席<読む前の大使寸評>天井棧敷の出し物の魅力もさることながら、横尾忠則や宇野亜喜良のポスターがええでぇ♪・・・大使の場合はポスターに惹かれて、この本を借りたわけです。rakuten寺山修司劇場『ノック』初演1969年の『時代はサーカスの象に乗って』の一節です。<時代はサーカスの象に乗って>p59~61身を捨てるに値すべきか祖国よ。歌うな、教えよ、日本のアメリカ、過ぎゆく一切はまぼろし屠殺場の星条旗の アメリカの日本よおれは歴史なんかきらいだ思い出が好きだ国なんかきらいだ 人が好きだミッキー・マントルは好きだルロイ・ジョーンズは好きだポパイは好きだアンディ・ウォーホールは好きだキム・ノヴァクは好きだだがアメリカはきらいだ!これも時代なのだ 寒い地下鉄で吹いた口笛を思い出すか、ボクサーのボブ・ホスターよ戦争に向かってマッチの一箱の破壊解放された動物園の方から時代はやってくる。時代はゆっくりとやってくる、時代はおくびょう者の象にまたがってゆっくりとやってくる、そうだ、時代は象にまたがって世界で一番遠い場所、皆殺しの川におもむくだろう、せめてその象にサーカスの芸当をおしえてやろう。ほろんでゆく時代はサーカスの象にまたがって、せめてきかせてくれ。悪夢ではないジンタのひびきを、いいか、時代よ、サーカスの象にその芸当を教えよ今すぐに今すぐに!天井桟敷のポスターをネットで探してみました。劇団『天井桟敷』とそのポスターの素晴らしき世界より劇作家、映画監督、詩人、小説家、そしてメディアの寵児として知られる寺山修司(1935-83)は、多方面に才能を発揮した芸術家であり、60年代から70年代にかけて日本のアングラ劇場シーンを牽引した代表的な人物だ。ポスターハリスは渋谷道玄坂にある小さなギャラリーで、名前のハリスが動詞の『貼る』からきていることを見てもわかるように、劇団のポスターや広告などの制作を手掛けている。この会社は寺山の死によって天井桟敷に入団する夢を挫かれた社長が興したものだが、当時は商業的な劇場の増加によって、アングラ時代には劇団に連なる個人デザイナーが制作していたポスター類が、外部の広告代理店に委ねられるようになりつつあった。結果的には、ポスターデザインの会社を始めるには絶好のタイミングだったと言える。寺山は真に特異な存在だった。西洋の芸術家から強い影響を受けていた彼は、常に保守的な同業者の一歩先を歩み、舞台や映画では巧みな遊び心でもってタブーやグロテスクなどの要素を取り混ぜ、衝撃的な映像をふんだんに盛り込んだ。天井桟敷はしばしば「演劇実験室」を標榜していたことで知られているが、その主宰の寺山自身は、スキャンダルと異色の舞台で化学反応を起こす魔法使いか科学者のような存在だったと言えよう。(中略)寺山と同世代のクリエーターの多くが今でも現役で活動しているのに対して、寺山は1983年に47歳の若さで亡くなった。演劇がその場かぎりの刹那的な芸術である以上、寺山の作品の多くは実質的には失われたと言っても過言ではない。しかし映画や詩句、小説といった彼の並み外れた才能が、寺山の世界をこれからも生かし続けてくれる。そんな寺山修司の世界を垣間見る手始めに、天井桟敷のポスターはいかがだろうか。
2024.09.13
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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・黄色い家・走り続ける力・身近な漢語をめぐる<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten走り続ける力【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>追って記入rakuten身近な漢語をめぐる
2024.09.13
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在4位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在29位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在23位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在15位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在10位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在3位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在19位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在7位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約112)現在106位・パッキパキ北京(8/29予約、副本9、予約111)現在99位・転がる珠玉のように(9/05予約、副本7、予約87)現在83位・原爆裁判(9/11予約、副本?、予約133)現在134位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門・奪還 日本人難民6万人を救った男:<予約分受取:6/25以降> ・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)・パンとサーカス(8/28予約、9/01受取)・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、9/12受取予定)**********************************************************************【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【パッキパキ北京】綿矢りさ著、集英社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは…?<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパッキパキ北京【転がる珠玉のように】ブレイディみかこ著 、中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりLike A Rolling Gem。大人の山あり谷ありライフを越えていけ!結婚するゲイの友人、職人魂を燃やす父、イギリスで、日本で、社会の底を支える労働者たちの人生劇場。泥くさい毎日を“宝石”に変える著者3年ぶりの最新エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(9/05予約、副本7、予約87)>rakuten転がる珠玉のように【原爆裁判】山我浩著、毎日ワンズ、2024年刊<商品説明>より日本初の女性判事・三淵嘉子が昭和三十年代に裁判官を務めた「原爆裁判」に焦点を当てた書き下ろし。原爆を巡るアメリカの闇を追及すると共に三淵嘉子の半生を紹介、さらに、世に名高い「原爆裁判の判決文」も付載した一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/11予約、副本?、予約133)>rakuten原爆裁判【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・デジタル朝日「好書好日」でめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.09.12
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2010年泉鏡花文学賞受賞作でもあるこの本が興味深いわけで・・・以下のとおり復刻して読み直してみます♪*********************************************************図書館で「河原者ノススメ」という本を手にしたのです。画像も多く、内容も充実していて・・・2010年泉鏡花文学賞受賞作というのも納得できるのです。【河原者ノススメ】 篠田正浩著、幻戯書房、2021年刊<出版社>より構想50年の渾身の書き下ろし。日本映画界の旗手が、芸能者たちの《運命》を丹念に追跡し読み解く意欲作。独自の視点で、日本の芸能の歴史を再構築する。2010年第38回泉鏡花文学賞受賞作。映画『夜叉が池』リメイク版公開を記念に、泉鏡花をめぐる文章を増補して新版として刊行。<読む前の大使寸評>画像も多く、内容も充実していて・・・2010年泉鏡花文学賞受賞作というのも納得できるのです。rakuten河原者ノススメ「第17章 東海道四谷怪談」のなかで女形が語られているあたりを、見てみましょう。p329~331<女形という「型」> 世間は腐食しはじめていた。 創成期の歌舞伎や浄瑠璃は変動する政治社会に敏感に反応し、最も新しい情報や事件を組み入れて、市民に衝撃を与えてきた。しかし鎖国された民衆にとって周辺の海は水の壁でしかなかった。 ラクスマンも間宮林蔵も大黒屋光太夫もアイヌの反乱も彼らの視野には入らず、江戸市民はといえば、祭礼に浮かれて永代橋を踏み潰してしまっていた。19世紀に突入した文化文政の世となっても、人民が親しむ演劇は「型」の継承がもっぱらで、新作で時代に挑戦する歌舞伎はなかった。「型」といえば女形である。歌舞伎の運命は常に徳川幕府の禁制と不可分であった。女歌舞伎や若衆歌舞伎がその裏での売色を隠さなかったことから、男女共演は不可能になった。その屈曲の象徴が女形である。 女性の出演が公認された舞台は、阿国歌舞伎の繁昌期だけということになる。いずれにしても、元禄以後の歌舞伎という芸能は、徳川幕府の治世の理念である儒学の倫理によってフェイクされたものであり、ここから女形という「型」が形成されていったのだ。 ロラン・バルトは1970年に発表した『表徴の帝国』(筑摩書房・1996)で、現代人の位置から、三百年にわたって伝承された女形の本質を考察した。(女形の)内部の男性は、ただ、不在化されているのである。俳優は女形の顔をつくって、女性を演じているのではない。女性を複写しているのではない。ただ単に女性を表徴するのである。いっさいの女性的現実を吸収するか消失させる結果となる・・・またはそうなることが当然となる。表徴されはするが、再現されはしない、この女性は観念なのである(後略) 女形が観念だ、というバルトの指摘は、歌舞伎を独特の様式に仕上げてきた「型」の本質を的確に把握している。彼が観劇した時の女形は五十代で娘役を演じていた。フランス人がそれを女性だと認識できないのは当たり前である。初代芳沢あやめ(1673—1729)や四代目岩井半四郎(1747—1800)に代表される、日常まで女の暮らしを徹底しようと変身を心がけた女形はいたが、歌舞伎のドラマツルギーが進化、多様化するにつれて女形の「型」の正統、格式が論じられた一方、リアリズムが歌舞伎に侵入してくると女形の存在が不自然になった。この不自然を、現代人は観念の所為としてとらえなおそうと努力をはじめていた。 私は歌舞伎を観るたびに、最初のうちは舞台上の「型」の美しさ、意表をつく「観得」に圧倒されるが、そこから先、芝居の内部に入ろうとしても興醒めする場合がしばしばある。現代人にとって、「型」の内実はガランドウなのだ。それを異国人のロラン・バルトは「観念」と呼んだ。『河原者ノススメ』2:小津安二郎の自嘲『河原者ノススメ』1:「第1章 芸能賤民の運命」の冒頭*********************************************************2024.02.04XML『河原者ノススメ』3https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/202402040000/
2024.09.12
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図書館で『明治日本写生帖』という文庫本を、手にしたのです。写生帖と名乗っているとおりで、当時の日本の挿絵が満載されているわけで、興味深いのです♪*********************************************************【明治日本写生帖】フェリックス・レガメ著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より開国直後の日本を2度訪れたレガメ。紙とペン、そして旺盛な好奇心を携えたフランスの画家は、憧れの異郷で目にするすべてを描きとめた。誕生したばかりの帝国議会の様子は?富裕層と庶民の学校はどう違う?市川團十郎の歌舞伎の舞台裏とは?天皇、軍人、僧侶から、名もなき人や子どもまで、明治の人と風景を克明に描く図版245点。ジャポニスムに火を付けた画家の知られざる全貌。日仏交流史における意義に迫る解説を収録。<読む前の大使寸評>写生帖と名乗っているとおりで、当時の日本の挿絵が満載されているわけで、興味深いのです♪rakuten明治日本写生帖当時の「芝居と相撲」あたりを、見てみましょう。p186~188<芝居と相撲> 日本では、芝居は通俗的な娯楽である。宗教を実践するのが庶民ばかりであるのと同様に、芝居もほとんどすべて大衆に向けられたものである。今日ある日本人が、寺にも、芝居小屋にも足など踏み入れたこともないと語るのは、決して珍しいことではない。階級(もはや現在では残っていないが)の境が非常に明確だった頃は、役者たちは全く評価されず、彼らの子孫がその穢れを洗い落とすには、役者という職業とは無関係の何世代も後の時代を待たねばならなかった。 また、舞台に女性が出演することは、固く禁じられていた。女性の役は、幼少期からこれを専門として躾けられた男性によって演じられ、そのうちの何人かは、その名が後世に残るほど、その演技が完璧の域に達することもあった。 日本の舞台芸術は、当初は宗教的な観念を着想源とし、次いで歴史的事件や茶番劇もその題材として用いられた。われわれ西洋にはミストールという神秘劇があったが、日本には能が現在も残っている。われわれの神秘劇が中世の教会で行われ、次いで君主たちのもとに引き継がれ、そののち、大衆へとその場を移したのと、日本の能も同様である。西洋と日本の最大の共通点は、現在の状態に至るまでに辿ったその段階に見ることができる。 日本では、肉体を鍛錬することが高く評価されており、そのことから生じた見世物は、芝居が得ているのと同じくらい、あるいは、それ以上の人気を博している。相撲の力士たちは代々この職に就いており、特殊な食事法に従って、その肉体は驚異的な発達を遂げている。また、力士たちは、彼らを熱狂的に賛美するこの国において、独自の集団を形成している。 相撲小屋の開設(相撲には常設の会場がない)が告げられると、その町の住民すべてが沸き立つ。街路には、生き生きとした装飾の幟が一杯に立てられ、力士が住む家の門には、贔屓からの現物や現金の寄進を受け付けるために、花や貴重品でいっぱいの陳列台が置かれる。開幕の何日か前には、竹組みで作られた櫓の上に登った人が、太鼓で興行を知らせる。 この櫓は、五、六千人を収容できる広い場内を見下ろすようにそそり立っている。板と竹で建てられた相撲小屋は、あまり快適ではない。円形の広い場内の中央には、九、十メートル四方の土台(土俵)が設置されている。この土俵の上には、竹で編まれた屋根があり、垂れ布の付いた四本の梁によって支えられている。そして柱を背にし、観客に背を向ける形で四人の審判(行司)座っている。 行司たちは、砂でできた円形の土俵の境を成している俵によって、力士たちと隔てられている。土俵の境(俵)より外に相手を押し出すか、または、相手の膝だけでも地面に付けることで、闘いの勝者となる。役者と力士は、物見高い日本人の二大お気に入りである。
2024.09.11
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太子のツボでもある『ブレードランナー』が、ジャンク・フィクションとして語られている『ジャンク・フィクション・ワールド』という本があるのだが・・・興味深いので復刻して読んでみようと思いたったのです♪*********************************************************図書館で『ジャンク・フィクション・ワールド』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると・・・宇宙戦争、タイムマシン、地球空洞説など、目くるめくジャンク・フィクションが並んでいて、楽しそうな本やでぇ♪【ジャンク・フィクション・ワールド】風間賢二著、新書館、2001年刊<「BOOK」データベース>よりドラキュラ、フランケンシュタイン、宇宙戦争、タイムマシン、地球空洞説、アトランティス…ホンモノの小説は遠慮会釈なく面白い。【目次】『吸血鬼ドラキュラ』は単なる怪奇小説じゃない!/火星人は人類の末裔?/人間は猿か天使か?/“邪視”を持つ男の物語/アイデンティティのエントロピー状態/地球の中はカラッポ?/失われた世界を求めて/海がこわい/最後に合理が勝つ?/恋愛という病を伝染させる小説群〔ほか〕<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、宇宙戦争、タイムマシン、地球空洞説など、目くるめくジャンク・フィクションが並んでいて・・・楽しそうな本やでぇ♪rakutenジャンク・フィクション・ワールド太子のツボでもある『ブレードランナー』が語られているあたりを、見てみましょう。p196~199<めくるめくドラッグ小説の傑作> 芥子から採取されるこの興奮剤は、古くは紀元前16世紀のエジプトで医療薬として服用されていたが、ヴィクトリア朝の英国では、それこそ猫も杓子も、この阿片(阿片のエキスをアルコールで薄めた、いわゆるアヘン・チンキである)を今日のアスピリンのように気軽に飲んでいた。時おりしも産業化社会の最盛期で、貧しい労働者たちは長時間働かされるために、このアヘン・チンキを覚醒剤として大量に摂取していたのだ。なにしろ酒やタバコより安かったので、どこの家庭にもアヘン・チンキは“常備薬”として誰もが手にとれる場所に置かれていたという。■ドラッグ小説の最高峰 もちろん、この阿片を単なる強壮剤・麻酔剤・鎮痛剤としてではなく、感覚・知覚を鋭敏にして精神の拡張や意識の変革をもたらす、幻覚・想像力刺激剤として積極的に常用する芸術家たちもたくさんいた。コールリッジやバイロン、シェリー、ド・クィンシーといったロマン派の詩人や作家たちである。 こうしたドラッグと芸術的想像力の飛翔とが幸福な結合を果たした作品の系譜をたどっていけば、以降、シャルル・ボードレールやテオフィル・ゴーティエ、オルダス・ハクスレー、ジャン・コクトー、ウィリアム・S・バロウズといった現代の有名どころからアンナ・カヴァンやアレクサンダー・トロッキといったマイマー作家の作品まで枚挙のいとまのないほどであるが、ここでは、ジャンクなドラッグ小説の最高峰『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』(1964年)を紹介しておこう。 作者は、1982年に享年52歳で亡くなったSF作家フィリップ・K・ディックである。我が国では、ハリソン・フォード主演の映画『ブレードランナー』(1982年)とアーノルド・シュワルツネッガー主演の『トータル・リコール』(1990年)の作者として知られ、80年代末には静かなディック・ブームを招来し、“現実はひとつではない”ことを主張する彼の数多いSF作品は、今でもカルト的人気を誇っている。(中略) 果して、パーマー・エルドリッチとは何者なのか? そもそもすべては幻覚なのか? だとしたら、いったい誰の幻覚なのか? そして仮にあるとしたら、本当の現実はどこにあるのか? 幻覚剤の持つ意識改革と精神拡張の効能を見事に複雑怪奇な物語にまとめてみせたドラッグ小説の傑作である。また、ディックの他のLSD小説として、SF史上の名作『火星のタイム・スリップ』(1964年)や『暗闇のスキャナー』(1977年)もあるが、後者は麻薬の恐ろしさを訴えたアンチ・ドラッグ小説としても知られている。SF作家フィリップ・K・ディックが生み出した『ブレードランナー』であるが、これがドラッグ小説だったとは・・・もうひとつ腑に落ちないのである(汗)『ジャンク・フィクション・ワールド』3:ブレードランナー『ジャンク・フィクション・ワールド』2:ハードボイルド『ジャンク・フィクション・ワールド 』1:不思議の国のアリス*********************************************************■2019.08.24XML『ジャンク・フィクション・ワールド』3https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201908240000/
2024.09.10
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図書館に予約していた『パンとサーカス』という本を、待つこと4日ほどでゲットしたのです。予約本を受け取る時いつも思う事だが、装丁が想定と違うわけで・・・この本の分厚さに、まず読破する気が萎えたのです。【パンとサーカス】 島田雅彦著、講談社、2022年刊<「BOOK」データベース>よりCIA就活生が日米両政府を巧みに欺く、「私の暴走にどうかお付き合いください」世直しか、テロリズムか?日・米・中・韓を壊乱する壮大なエンターテインメント!<読む前の大使寸評>予約本を受け取る時いつも思う事だが、装丁が想定と違うわけで・・・この本の分厚さに、まず読破する気が萎えたのです。rakutenパンとサーカスまず「第一部 Ⅰ」辺りの語り口を、見てみましょう。p14~16Ⅰ スクールデイズ 桜田マリアの一日は早く、長い。 早朝、母桜田祥子が営む居酒屋「吉祥」の仕込みを手伝うと、大学に行く。授業は月曜から木曜日までぎっしり入っているが、火、水、金の週三日はソープランドでアルバイト、月、木、土はキャバクラ「スノービューティ」で接客している。風の谷のナウシカのように過重労働を強いられているのは、幼馴染みの借金は総額600万円、その内訳はホストクラブのツケとホストへの貢ぎとパチンコの負けだが、「お父さんの入院費と弟を大学に行かせるお金をなんとかしないといけない」と嘘をつき、マリアに借金の保証人になってもらった挙句、男と行方をくらませた。 マリア20歳の時の出来事である。 ―おまえはバカではないが、ここまで他人に甘いのは病気としか思えない。バカは治らないが、病気なら何とかなる。 マリアの行動をどうにも理解できないのは母親だけでなく、腹違いの兄火箱空也も同様だった。どうすれば、あの親父からマリアみたいな純真な娘が生まれるのか、大いなる謎だ。母親の方に似たのかといえば、それはもっと考えにくい。控えめに見ても、あの女は掃き溜めがよく似合う欲の塊で、マリアを生んだのが唯一の罪滅ぼしといってもいいくらいだ。 兄は時々、「吉祥」に食事をしにくるが、妹のマリアの無事を定期的に確かめるためだった。自分が監視していないと、何処までも他人の食い物にされ、ついには骨に成り果てることを本気で心配していた。―オレだって忙しいんだから、おまえを酷い目に遭わせた奴をいちいち制裁している暇はない。―別にそんなこと頼んでないよ。―けじめを付けないと、オレの示しがつかないんだよ。「おまえに嫌な思いをさせた奴をいつでも殺してやる」と兄がいえば、妹は「殺したい人はいない」と答える。二人はそんな関係だった。空也は、マリアを騙して、借金を背負わせた女とそれをそそのかしたホストにすでに追っ手を差し向けていた。―空也が余計なことをするから、どんどん住みづらい世の中になっちゃうんだよ。―おまえが他人を甘やかすから、誰もが無責任になり、生きづらい世の中になるんだ。 空也は何かにつけ性善説と性悪説を持ち出す。性悪説を取る空也は、この世界は元々、悪に染まっているいるので、力による支配しか実行力を持たないと考えている。マリアがクリスチャンでもないのに、「汝の隣人を愛せ」を実践しているのを見ると、歯痒くてたまらない。といって、マリアが自分と同じ濁った水の中に暮らすことは望んでおらず、つい「余計なお世話」を焼いてしまうところが、この腹違いの兄妹の唯一の共通点だった。 二人は別々の家庭に育ち、それぞれ18、16になるまで兄妹の関係にあることを知らなかった。ソープオペラでは当事者たちが衝撃を受ける場面だが、二人は平然と事実を受け止めた、いや受け流そうとした。このあとテロの首謀者として指令を出す空也とか、「アメリカに奉仕し、中国を敵と見なす」という路線とか、中国国家安全部を必要悪として活用するとか、読みどころは満載であるが・・・読破するには長すぎるようです。
2024.09.09
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古生物といえば私の場合は、アロマリカリスとか、肉鰭類(肉のついたヒレを持つ魚類)とか始祖鳥とか思い当たるわけで・・・『古生物たちのふしぎな世界』という本を復刻して読んでみたくなるわけです♪*********************************************************図書館で『古生物たちのふしぎな世界』という新書を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると・・・とにかく、想像力を加味したカラー画像がええでぇ♪【古生物たちのふしぎな世界】土屋健, 田中 源吾著、早川書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より恐竜だけが古生物じゃない!前恐竜時代にもさまざまな古生物が生きていた。三葉虫が繁栄し、アノマロカリスがカンブリア紀の覇者となる。デボン紀にはアンモナイトの仲間がまっすぐのびた円錐形からしだいに丸くなり、ティクターリクが“腕立て伏せ”をはじめる。古生代最後のペルム紀には、イノストランケヴィアをはじめとする単弓類が覇権をにぎる!ダイナミックかつドラマチックな古生代の物語。100点に及ぶ精緻なカラーイラスト&化石写真で解説!<読む前の大使寸評>とにかく、想像力を加味したカラー画像がええでぇ♪rakuten古生物たちのふしぎな世界ティクターリク我らが脊椎動物の上陸作戦を、見てみましょう。肉鰭つまり肉のついたひれを持つ魚の仲間である。p167~172 上陸作戦の主要メンバーを“進化の順番”で紹介しよう。 作戦の“基点”として有名なメンバーは、カナダ東部から化石がみつかっている肉鰭類、「ユーステノプテロン」だ。ユーステノプテロン 全長1~1.8メートルほどで、その姿は魚雷のようにまっすぐ太く、長い。胸びれの中に“腕”の構造をもつほか、尾びれが上下対称であること、脊椎がその尾びれの先端近くまでまっすぐ連なっていることなどの特徴がある。 一般に多くの魚の仲間では、尾びれは上下非対称であり、また尾びれ内の背骨は上下いずれかに曲がる。あるいは、尾びれまで脊椎がつながっていない。ユーステノプテロンの尾びれの端までまっすぐ連なる脊椎というのは、陸上四足動物の尾の骨とよく似ているのだ。 次のメンバーはユーステノプテロンの“一歩先”に位置づけられている肉鰭類である。ラトビアから化石がみつかっている「パンデリクチス」だ。パンデリクチスは、全長こそユーステノプテロンとさほどかわらないものの、ユーステノプテロンが魚雷のような姿をしていたのに対し、パンデリクチスはその頭部が水平方向に平たいという特徴がある。(中略) パンデリクチスの一歩先に位置づけられているのも肉鰭類である。カナダから化石がみつかっている「ティクターリク」だ。全長2.7メートルと、ユーステノプテロンやパンデリクチスよりはるかに大きなからだのもち主である。ティクターリクは、全体の印象としては現生のワニに近いかもしれない。 頭部は、パンデリクチスと同じように扁平だけれども、その眼はより高い位置にある。これは水中に身を潜めながら、地上の獲物を様子をうかがうことに適した配置だ。まさにワニと同じである。 ただし、ティクターリクの“高い位置の眼”がどのようにその生活に役立っていたのかは定かでなはない。なにしろ、現在とはちがって、岸に獲物となるような小動物はいなかったはずだ。何をうかがっていたのだろう?ウーム 同じ肉鰭類といっても、ユーステノプテロンとティクターリクではかなりの差異があるようでんな・・・これもデボン紀古生物たちの謎なんでしょう。『古生物たちのふしぎな世界』3:脊椎動物の上陸作戦『古生物たちのふしぎな世界』2:脊椎動物の祖先『古生物たちのふしぎな世界』1:アロマリカリス
2024.09.09
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多和田葉子の初期の作品『容疑者の夜行列車』が興味深いので・・・以下のとおり復刻して読んでみようと思い立ったのです♪*********************************************************図書館に予約していた『容疑者の夜行列車』という本を待つこと1週間ほどでゲットしたのです。この本の目次を見ると、まるでヨーロッパ鉄道旅行記のような本になっているわけで、ちょっと当てが外れたのでおます。【容疑者の夜行列車】多和田葉子著、青土社、2002年刊<「BOOK」データベース>より戦慄と陶酔の夢十三夜。旅人のあなたを待ち受ける奇妙な乗客と残酷な歓待。宙返りする言葉を武器にして、あなたは国境を越えてゆけるか。-稀代の物語作者による傑作長篇小説!半醒半睡の旅物語。<読む前の大使寸評>この本の目次を見ると、まるでヨーロッパ鉄道旅行記のような本になっているわけで、ちょっと当てが外れたのでおます。<図書館予約:(10/11予約、10/17受取)>rakuten容疑者の夜行列車オーストリアといえばまずウィーンであるが、リンツのような小都市を、見てみましょう。p117~120<ハンブルグへ> リンツは、ヒットラーがドイツ帝国の首都にしようと考えていたこともあった町だ。今ではオーストリアの小都市の一つに過ぎないが、そう言われて、まわりの町並みをぐるっと見回してみると、確かに、眠っている間に、煉瓦を唇に乗せられたような気分になる。 狭い額に憂鬱そうな皺を浮かべ、濁った充血した目で、恨めしそうにこちらを睨んでいる男のような町。骨組みはがっしりしているが、背の割に肩幅が広すぎて、腕の筋肉が重くぶら下がっている。いや、これは言い過ぎかもしれない。 あなたはリンツをそれほど嫌っているわけでhない。目を光らせて、現代音楽に耳を傾け、自分の踊りを吸い付けられるように見ている人たちが、この町にはたくさん住んでいることを、あなたは知っている。でも、これから、夜行の来るまでの時間をこの町で過ごさなければならないと思うと、何か得体の知れない物い呑み込まれはしないか、と不安になる。 ウィーンを出た夜行列車がこの町に着くのは、十時半過ぎ、あなたはそれまで、この町で時間を潰さなければならない。時間を潰すというのは、なんて嫌な言い方だろう。まるで、時間が蠅であるかのよう。時間蠅という種類の蠅がいる。タイム・フライズ・ライク・アン・アロウ。時間は矢のように飛んでいく。光陰矢のごとし。これをコンピュータに訳させたら、「時間蠅たちは、矢がお好き」という訳が出た、という話をつい昨日、読んだばかりだった。 しかし、夜行の来るのを待つ間、時間は矢のようには過ぎ去ってはいかない。蠅のように飛び去ってもいかない。まさに、その逆で、かたつむりのようだ。かたつむりの通った後には、一本の光る筋が残る。あれは、触ったら、ねばねばしているんだろうか。線路のように、背後に軌跡を残して。でんでんむしは、電車の一種か。頭から、アンテナが二本、伸びていて、遠くの誰かと通信しているようにも見える。 リンツで時間を潰すには、どうしたらいいのか。まず、植物園へでも行ってみようか。先週、ダンスのワークショップに来ていた参加者の一人が言っていたことをあなたは思い出した。「あたし、一番好きな場所は植物園なんです。踊りたい人間が植物みたいに動きのないものに惹かれるのは変かもしれませんが、わたし、いつもものを考える時には植物園に行くんです」あなたは植物に興味を持ったことはなかったが、そう言われてみると、なんだか、植物園に行ってみたくなった。 もう何年も、植物園になど、足を踏み入れたことがない。そうか、なるほど、動きのないものか。ダンサーにとって、静止の時間というのは大切かもしれない。いや、静止というのは、こちらの誤解。花だって、動いている。太陽のある方向に首を曲げたり、茎が伸びて成長したり、枯れたり。ただ、その動きが恐ろしく遅いだけだ。 植物の動きに比べたら、あたつむりなど特急列車ではないか。遅い動きというのは、体力を多く消耗するから、疲れる。ひまわりおように、1時間かけて首を右から左へ動かせと言われたら、大変だ。どうして、ひまわりは、そんな動きをしても疲れないんだる。そんなことを考えていたら、なんだか、たまらなく植物園に行きたくなってきた。 リンツの植物園にはさんさんと日が降り注ぎ、つつじの蜜が地面にこぼれそうだった。薄くてひらひらレースのような花びらが下着のようで、ちょっとみだらな感じもする。蜂はうまく羽を動かして、花の中を覗き込みながら、空中のある位置に停まり続ける。蜜があるあどうか偵察しているのだろう。あなたは、どんなに高く飛び上がることができても、すぐに地面に落ちてしまう。ダンサーなんて、そんなものだ。 蜂がお尻を振って踊るのを映画で見たことがある。蜂のダンスは、蜜のある場所を仲間に教えるためにやるんだ、と聞いた。おしべにめしべ。一つの花の中には、めしべ女とおしべ男と、両方住んでいる。そうだ、植物にとっては、両性具有が普通なんだ。自分の心の中にも、女と男と両方住んでいるのかもしれない、とあなたはふと思う。 牡丹は、ぼったりと咲いて、花の重みでぼったりと落ちそうである。 紫陽花は、どんなに日が照っていても、雨の日の記憶を肌に残して、しっとりと咲いている。 花壇の間を抜けて、道がくねくねと続く。植物園は、小さな山の麓に作られている。花壇の間をぬって走る終わりのない小道が、いつの間にか木立の中に入っていく。はくしょいと、あなたは、くしゃみをした。いつの間にか、両端に樫の木が立っていた。あなたは、樫の木は苦手である。いわゆるアレルギーがあって、近づくと、くしゃみが止まらなくなる。あわてて引き返す。『容疑者の夜行列車』3:オーストリアのリンツ『容疑者の夜行列車』2:北京へ『容疑者の夜行列車』1:グラーツへ
2024.09.08
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図書館で『杉原千畝の実像』という本を、手にしたのです。杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。rakuten杉原千畝の実像「第4章 ビザ発給の決断と覚悟」で、ヨーロッパにおけるユダヤ避難民政策を見てみましょう。p63~66<日本政府のユダヤ避難民政策> ヒトラーの残酷なユダヤ人排斥政策のため、身の危険を感じた多くのユダヤ人は避難民となった。これは当初、日本にとって遠く離れたヨーロッパでの対岸の火事に過ぎなかったが、その後ヨーロッパの在外公館において日を追う毎に日本通過ビザを求める避難民は増え続け、直接火の粉が降りかかる問題となった。日本政府がこれにどのように対処したのか、順を追ってみていこう。 1938年10月7日、日本に流入する避難民が増加するのを危惧した近衛文麿外務大臣は、在外公館長へ「ユダヤ避難民の入国に関する件」を発令した。それは、日本の同盟国であるドイツとイタリアが排斥したために外国に避難せざるを得なくなった者(主にユダヤ人)を、日本に受け入れることは好ましくないとして、国内および各植民地に彼らの入国を禁止するものだった。 この頃、日本、ドイツ、イタリアでは防共協定が結ばれていたが、それはさらに強固なものにする日独伊三国同盟を締結しようとしていた。つまり、ユダヤ人排斥政策を取っていたナチス・ドイツに配慮した対応だった。 しかし、この通達を受けたヨーロッパの在外公館にはビザを求めるユダヤ避難民が連日押しかけてきており、日本からの指示はその状況を無視したものだった。ビザ発給を求める避難民への対応に追われていた在外公館からの悲痛な訴えに対して、日本政府の動きは鈍かった。そればかりか、1938年10月20日に外務大臣に任命された有田八郎は、在外公館に対して、日本に向けて渡航中の者にも「入国を断念するように」と厳しい指示を出した。(中略) 1940年8月になると、外務省と内務省は、杉原が発給した要件不備のビザを持ってウラジオストクから敦賀港へ続々と上陸する避難民の対応に苦慮していた。外務省では以前から、外国人の入国者は1500円、通過者は250円を上陸の際に提示するという内規があった。しかし、避難民に関する取り決めはなかった。さらに上陸に際して入国審査をするのは内務省だったが、両省庁の間で取り扱いが一致しない問題が生じていた。 松岡外務大臣は内務省と協議した結果、今後日本に入国する外国人で避難民と認定される者に対して、目的国までの必要な渡航費あるいは渡航チケットを持っていること、そして日本に滞在する日数に応じて、一人につき一日当たり最低25円見当の宿泊費用を到着時に持っていることが必要であると決定した。 1940年10月10日、松岡大臣は在外公館へ「外国避難民に対する査証取扱方に関する件」として訓令を出し、その対応を始めた。<なぜビザを発給したのか>(中略) 杉原自身がビザ発給について書いた資料は多くない。その少ない中でも前章で紹介したロシア語でタイプ打ちされた書簡がある。 杉原はビザ発給について、この書簡の中で次のように答えている。「結局8月10日、私は東京との無意味な対話を中断することを決めた。私には領事館閉鎖に伴う多くの作業もあったことから、対話は時間の無駄にしかならなかったのである。こうして8月11日には、独断で通過査証の発給を始めた。責任のすべてを負うことを決め、日本から先の旅を証明する書類を所持しているか否かを問わず、私は自分のところにやってきた文字どおり全員の人に査証を発給したのである」 ここの「8月11日には、独断で通過査証の発給を始めた」の日付については議論の余地があるが、本省とのやり取りを「時間の無駄」と結論づけ、「責任のすべてを負う」ことや、要件不備を承知の上で、「文字どおり全員の人に査証を発給した」という当時の杉原の心境が綴られている。さらに「もっぱら人道的精神の命じるがまま、他者に対する愛情から・・・もっとも失職することは予見していたのだが、私に請うすべてのポーランド人に対して査証を出し続けた」と書き、ビザを発給した思いと覚悟を述べている。『杉原千畝の実像』2:ヨーロッパでのユダヤ人排斥『杉原千畝の実像』1:杉原千畝の成り立ちの一端
2024.09.07
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図書館で『杉原千畝の実像』という本を、手にしたのです。杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。rakuten杉原千畝の実像「第3章 外交官時代」で、ヨーロッパでのユダヤ人排斥を見てみましょう。p47~49<プラハでもビザ発給> リトアニアのカウナスでのビザ発給は第2部で詳しく述べるので、ここではカウナスから移動したプラハでのことを先に見ていこう。カウナスの日本領事館に避難民が集まり始める1カ月前の6月15日、ソ連はリトアニアに侵攻し、8月3日にリトアニアを併合した。杉原は、ソ連当局や外務省から領事館を閉鎖するよう何度も通告を受けていた。 1940年8月29日、杉原は次の任地としてチェコのプラハへの異動命令が発令された。9月4日にカウナスを発ち、ベルリンに立ち寄った後、9月12日にプラハへ着任。前任者は総領事代理の市毛孝三だった。市毛は1939年6月から1年あまりの勤務を終え、1940年11月に日本に帰国した。 1941年1月15日、杉原は松岡洋右外務大臣に宛てて、「ドイツのボヘミヤ・モラヴィア保護領の統治業績並びにチェコ民族の対ドイツへの感情に関する件」と題してチェコにおけるドイツ軍と地元の状況について報告した。その中のユダヤ人に関する項目で、「ドイツ側が旧法律の手始めとして、ユダヤ人排斥の法律を制定したことにより、ドイツ国内と同じように規制を行い、この法律によってユダヤ人は、すべての官公庁の公職やその他の職業(特に医薬業、法律業、技術、獣医業)に就くことが禁止された」とユダヤ人の置かれた現状を報告している。 また、事実上ドイツに占領されていたチェコの保護領政府については、「ドイツ側の顔色を窺い、協調と妥結の建前を採っていた」とし、一般市民については、「出版や集会の自由を極度に制限されているため、その真意は現状においては不明だが、概ね保護領政府と同じようだ」と分析した。杉原はその他にも、ドイツの統治方針や財政、経済上の措置、さらに日用品や家屋資料、そして労働者や農民の生活状況などについても詳細に報告した。 杉原によると、チェコにおけるドイツのユダヤ人政策は過酷なものだった。公職をはじめとする多くの職業に対して厳しく制限したばかりではなく、ユダヤ人企業を没収し、銀行や主要産業などを彼らから取り上げた。ユダヤ人はすべてを奪われ、コミュニティは崩壊し、地獄のような状況下に置かれていた。 外務省の外交史料館には、プラハの杉原がビザ発給について松岡大臣に宛てて報告した調書「査証(ビザ)調書並発給表送付ノ件」が残されている。それによると、プラハの総領事館では1940年1月18日から1941年2月26日までに、105枚のビザが発給された。市毛は37枚のビザを発給し、杉原は68枚だった。そのうち95枚がユダヤ人に発給されている。 また、発給を受けた人のほとんどがドイツ国籍であり、渡航先は上海、アメリカ、ウルグアイ、アルゼンチン、日本など11の国と地域にわたっており、その多くが日本通過ビザだった。 市毛と杉原が発給したビザにより、果たして何人のユダヤ人が助かったのか、カウナスと同様、正確な数は不明である。ただ、後に残された多くのユダヤ人がナチスによって虐殺された事実を考えると、プラハでのビザも歴史的に大きな意味を持っている。『杉原千畝の実像』1:杉原千畝の成り立ちの一端
2024.09.07
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4日の朝日新聞に「丹波篠山 また新種恐竜」という記事があったので、スクラップしたところ・・・関西テレビ「newsランナー」 の「トリケラトプスの仲間『新種の恐竜』発見の快挙」が充実しているので、こちらの方を紹介します。*********************************************************兵庫県の丹波篠山市で、再び大発見です。新種の恐竜が発見されました。「ササヤマグノームス・サエグサイ」の頭部の化石と復元図 ©田中花音■化石の宝庫「篠山層群」兵庫県の丹波篠山市と丹波市にまたがる地層・篠山層群。化石の宝庫とも言われていて、これまでにも国内最大級の恐竜「丹波竜」が発掘されたほか、ことし7月には「ヒプノヴェナトル」という新種の恐竜の化石も報告されました。■トリケラトプスの仲間 角竜類の新種「頭が復元できるクオリティの化石は日本初」と専門家そして、今月3日、兵庫県立大学などのチームが2007年に丹波篠山市で見つかった化石を調べたところ、顎の特徴などからトリケラトプスの仲間である、角竜類の新種を発見したと発表しました。兵庫県立『人と自然の博物館』で主任研究員を務める兵庫県立大学の田中公教准教授は「『間違いなく角竜ですよ』と言える標本が『強力なもの』が増えた。頭が復元できるくらいのクオリティが残っている化石は、日本で初めての発見」と語りました。■「篠山の地下に隠された財宝を守る小人」という意味の名が付けられる見つかった化石は数センチのものが17点ほどですが、そこから体長がおよそ80センチ、体重10キロほどの小型の恐竜で成長途中の若い個体だったことまでわかりました。発見場所と研究者の名前から命名されたのは「ササヤマグノームス・サエグサイ」。「篠山の地下に隠された財宝を守る小人」を意味します■新種の発見でアジア起源の「角竜類」が1億1千万年前ごろ北米に渡り始めたことが推定可能この発見により、アジアが起源となる角竜類が1億1千万年前ごろ、北米に渡り始めたという推定ができるということです。地球が極端な温暖化状態だった1億1000万年前、北極域には氷が存在せず、広大な森林が広がっていたとみられ、ユーラシア大陸と北米大陸は「ベーリング陸橋」によってつながり、動物は大陸間を自由に行き来できる地形だったそうです。兵庫県立大学の田中公教 准教授は「今後、篠山層群から出てきた大量の化石を調べて、北米の脊椎動物の化石群、北アメリカの同時代からも見つかっていますので、アジアと北米の比較というのが今後大事になってくると思います」と話しました。この化石は4日から兵庫県立「人と自然の博物館」で展示される予定だ。(関西テレビ「newsランナー」 2024年9月3日)*********************************************************■2024.09.03【速報】トリケラトプスの仲間『新種の恐竜』発見の快挙https://news.yahoo.co.jp/articles/9fff5b2a61bd813c44bcff75e987a3d86148ad91
2024.09.06
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図書館で『杉原千畝の実像』という本を、手にしたのです。杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。rakuten杉原千畝の実像「第2章 満州時代」で、杉原千畝の成り立ちの一端を見てみましょう。p28~29<ハルビン日本総領事館> 母の死から明けた1922年4月、杉原は招集解除によって京城からハルビンに戻った。自宅ではロシア人やフランス人教師からロシア語などの学びを続けていた。午前中はハルビン日本総領事館を手伝い、午後からは日露協会学校の聴講生として勉学に励む毎日だった。 1923年3月3日、杉原に満洲里への転学命令が出された。この転学の措置には理由があった。前年12月に成立したソビエト連邦は、白系ロシア人を敵対視していた。そのため日本の外務省は、白系ロシア人たちと関りがあったハルビンの留学生を分散させようとしたのである。 3月30日、杉原はハルビンから満洲里へ出発し、翌31日に到着した。満洲里では、ハルビン同様に領事館を手伝いながらロシア語を学んだ。そしてよく1924年2月8日、満洲里の日本領事館で外務初期生として採用された。同時に本省での研修のため帰国を命じられた。 杉原は2月22日に洲里に出発する際、かねてから交際していたアポロノア・クラヴディヤ・セメノヴナとの国際結婚の許可願いを松井慶四郎外務大臣に提出した。その後ハルビンの総領事館に立ち寄り、山内総領事に婚姻届を提出。3月5日に東京に到着し、本省での研修が始まった。 外務省で10ヶ月あまりの研修を終えると、杉原はハルビンの総領事館への勤務を命じられた。1925年1月3日に東京を出発し、13日にハルビンへ着任した。すでにクラヴディヤとの入籍を済ませていた杉原は、新婚生活を住み慣れたハルビンでスタートさせた。 ハルビンの日本総領事館での仕事で特筆すべきは、二つの大著をまとめていることである。そして1926年11月の報告書『「ソヴィエト」聯邦国民経済大観』(全608頁)、そして1929年8月の『「ソヴィエト」聯邦ノ外交10年史』(全387頁)である。特に『経済大観』は入手困難なソ連の資料を集め、的確な分析で経済事情を多角的にまとめた労作だった。この経済大観は外務省内でも高い評価を受け、1927年に外務省欧米局で活字製本され、省内に配布されたほどだった。 ハルビンの日本総領事館では、後に深く関わることになる二人の人物との出会いがあった。一人は新しく総領事として赴任した大橋忠一、もう一人は後にウラジオストクの日本総領事館の総領事代理になった根井三郎である。 大橋忠一は、1893年12月8日岐阜県生まれで、杉原と同郷だった。1918年7月に東京帝国大学を卒業して外務省に入省。1931年3月、ハルビンの総領事に就任した大橋は、外務省内で配布されていた杉原の『「ソヴィエト」聯邦国民経済大観』の存在を知っていた。大橋は、杉原の情報収集・分析能力に注目していた。後述のとおり、大橋がソ連との鉄道譲渡交渉を見据えて杉原を満洲国外交部に引き抜いたことを見ても、その期待度が高かったことが分かる。
2024.09.05
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砂漠、アラビアのロレンス、村上春樹とくれば・・・私の三大ツボみたいなものなので、以下のように復刻して反芻してみたくなるのです♪*********************************************************図書館に予約していた『砂漠と異人たち』という本を、待つこと3ヵ月ほどでゲットしたのです。この本では、アラビアのロレンスや村上春樹を取り上げているので・・・私のツボが疼くのです。【砂漠と異人たち】宇野常寛著、朝日新聞出版、2022年刊<「BOOK」データベース>より情報社会を支配する相互評価のゲームの(外部)を求め、「僕」は旅だった。そこで出会った村上春樹、ハンナ・アーレント、コリン・ウィルソン、吉本隆明、そしてアラビアのロレンスー。20世紀を速く、タフに走り抜けた先人たちの達成と挫折から、21世紀に望まれる、新たな主体像を模索する「批評」的冒険譚。<読む前の大使寸評>この本では、アラビアのロレンスや村上春樹を取り上げているので・・・私のツボが疼くのです。<図書館予約:(2/25予約、副本1、予約5)>rakuten砂漠と異人たち「ドライブ・マイ・カー」「第三部 村上春樹と「壁抜け」のこと」で、村上の作品がずたずたに刻まれて批評されているので、見てみましょう。p242~244<28 駅とインターネット> かつての村上春樹はインターネット的なコミュニケーションの全面化を予見するかのような力を示していた。それが『ねじまき鳥クロニクル』の「壁抜け」であり、『アフターダーク』の監視カメラ的な視点だった。しかし、この時点の村上春樹は明らかに世界に対しての想像力を失い、ナルシシズムの中に引きこもっている。この「駅=インターネット」への過小評価こそが、村上春樹の陥った罠を示しているのだ。 前述したように「壁抜け」は、インターネットのもたらすフィルターバブル的な全能感を誘発する。村上春樹は「駅」=「インターネット」のプラットフォームの代わりに「母」的な女性性に依存する性搾取的なシステムを用いた回路なのだ。村上春樹は「壁抜け」の性搾取を手放さない限り、そのインターネット的な危うさを克服することもできないのだ。<29 男のいない男たち> もう少しだけ、村上春樹の話を続けよう。繰り返すがおそらく、村上は行き詰まりに自覚的だ。その迷いが端的に現れた作品が、2014年に出版された短編集『女のいない男たち』だ。この短編集はタイトルにあるように、妻や恋人のいない、もしくはそうした女性に去られようとしている男性たちの物語を集めたものだ。 しかし、僕は考える。この短編集に本当に相応しいタイトルは『男のいない男たち』だ。なぜならば、この短編集に収録された作品は唯一、初出時に別の雑誌に掲載された「シェエラザード」を除くすべてが、何らかの理由で魅力的な男友達と仲良くなるけれどうまくいかない、という物語だからだ。 たとえば「ドライブ・マイ・カー」では妻を亡くした主人公の男が、妻の生前の浮気相手の男性に興味を持つ。主人公は、その男性に、ちょっとした復讐を企てて近づく。しかし、主人公もまた彼に惹かれる。彼は器量が良く、裏表もない好人物だが「たいしたやつじゃない」。しかしその凡庸さが主人公の内省を(主に亡き妻のことを話すことで)適切に促す。(中略) そう、村上春樹はここで自分の代わりにこれまで彼が築き上げてきたナルシシスティックで、男性的な規範から逸脱してくれる男の友人を求め始めているのだ。 ここで村上春樹が、初期三部作(『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』)で「僕」とその友人「鼠」の対比で物語を展開していったことを思い出してもらいたい。村上春樹は、そもそも失敗していたかもしれないもう一人の自分の負の可能性を「友人」として側に置き、そして彼が失われることで主人公の選択が肯定されるという構造から出発した作家だった。 三部作の続編である『ダンス・ダンス・ダンス』では「五反田君」が「鼠」と同じ役割で登場する。「鼠」が60年代の学生反乱の季節における亡霊だとするのなら、「五反田君」はバブル景気を背景にした、80年代の日本の消費社会の生んだ幻影のような存在だ。どちらも、時代に流され、そのことを後ろめたく思い、そしてそのためにせめてもの抵抗として自らその生命を絶つ。そのような時代と並走して生きた彼らの死を横目に、生き残った主人公は時代に対して中距離を保つ自分のスタンスを確認する。 しかし『女のいない男たち』において「男友達」が、ここにきてもう一度重要なモチーフとして浮上している。村上春樹は再び、同性の友人を描き始めているのだ。『女のいない男たち』2『砂漠と異人たち』4:村上春樹と「壁抜け」『砂漠と異人たち』3:アラビアのロレンス(続き)『砂漠と異人たち』2:アラビアのロレンス(続き)『砂漠と異人たち』:アラビアのロレンス*********************************************************■2023.06.09XML『砂漠と異人たち』4https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/202306090001/
2024.09.04
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図書館で『Newton(2024年5月号)』という雑誌を、手にしたのです。特集「H3ロケット打ち上げ成功」が・・・気になるのです。*********************************************************【Newton(2024年5月号)】雑誌、ニュートンプレス、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌につきデータなし<読む前の大使寸評>追って記入rakutenNewton(2024年5月号)まず特集「H3ロケットと世界の最新ロケット」でH3ロケットの開発を、見てみましょう。p66<スペースⅩ社が変えたロケットの常識。日本は追いづけるのか:米本浩一> H3ロケット試験機2号機が無事に打ち上がったことによって、10年にもおよぶ開発に一区切りがついた。しかし、その間に世界のロケット開発の潮流が変化してきた。 H3ロケットの開発がはじまったのは2014年4月のこと。人工衛星の大型化やたくさんの小型衛星をまとめて打ち上げ、連携させて一体的に運用する「衛星コンステレーション」などに対応しながら、低コストで打ち上げられる手段を得るためだ。 また、日本は1994年に初の純国産液体燃料ロケットである「H—Ⅱロケット」を開発して以降、液体燃料ロケットの新規開発を行ってこなかった。そのため、このまま新しいロケットの開発をしないでいると、技術やノウハウが失われてしまう。今後もロケットの開発や製造をつづけるためにも、日本は2014年にH3ロケットの開発に踏み切った。■難航したH3ロケットの開発 H3ロケットはH—Ⅱロケット開発以来、20年以上ぶりに取り組んだ新規開発だ。とくに第1段のLE—9エンジンの開発は難易度が高かったため、開発は難航した。H3ロケット1号機は種子島宇宙センターの発射台から空高く打ち上がった。だが、打ち上げは失敗してしまった。 ZAXAと三菱重工は、失敗の原因に対策を施し、2024年2月17日の打ち上げにこぎつけた。今度は、1段目、2段目ともに正常に作動し、完璧に飛行した。この成功により、日本の宇宙開発は大きく前進し、関係者は胸をなで下ろした。 だが、喜んでばかりはいられない。日本がロケット技術を維持、発展させていくためにも、H3ロケットによる打ち上げビジネスを成功させる必要がある。再使用型宇宙輸送システムの研究に取り組んでいる東京理科大学の米本浩一教授は、「H3ロケットの打ち上げ費用を早急に目標の50億円にする必要がある」と指摘する。■低価格化の鍵は再使用 H3ロケットを開発している10年間で、ロケットをめぐる世界の情勢は大きく変化した。スペースⅩ社は、2010年6月にファルコン9ロケットの初飛行を成功させると、同年12月にはドラゴン補給船試験機1号機の打ち上げを成功させた。そして、2012年10月にはドラゴン補給船実用初号機の打ち上げを成功させ、国際宇宙ステーションへの商業補給サービスを軌道に乗せた。 スペースⅩ社はファルコン9の改良を重ね、打ち上げ頻度を上げていった。2023年には1年間に96回も打ち上げの半数に近い回数をファルコン9が占めている。さらに、スペースⅩ社はファルコン9の第1段の回収、再使用も進めている。ファルコン9の打ち上げでは、分離された第1段が海上の回収船にもどり、着船するようすはおなじみの光景となった。
2024.09.03
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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・パンとサーカス・明治日本写生帖・週刊東洋経済 1/20<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【パンとサーカス】 島田雅彦著、講談社、2022年刊<「BOOK」データベース>よりCIA就活生が日米両政府を巧みに欺く、「私の暴走にどうかお付き合いください」世直しか、テロリズムか?日・米・中・韓を壊乱する壮大なエンターテインメント!<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパンとサーカス【明治日本写生帖】フェリックス・レガメ著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より開国直後の日本を2度訪れたレガメ。紙とペン、そして旺盛な好奇心を携えたフランスの画家は、憧れの異郷で目にするすべてを描きとめた。誕生したばかりの帝国議会の様子は?富裕層と庶民の学校はどう違う?市川團十郎の歌舞伎の舞台裏とは?天皇、軍人、僧侶から、名もなき人や子どもまで、明治の人と風景を克明に描く図版245点。ジャポニスムに火を付けた画家の知られざる全貌。日仏交流史における意義に迫る解説を収録。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten明治日本写生帖【週刊東洋経済 1/20】雑誌、東洋経済新報社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌につきデータなし<読む前の大使寸評>追って記入rakuten週刊東洋経済 1/20
2024.09.03
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在3位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在6位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在31位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在33位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在19位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在10位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在5位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在21位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在8位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約112)現在111位・パッキパキ北京(8/29予約、副本9、予約111)現在105位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料を返した後→予約<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門・奪還 日本人難民6万人を救った男:<予約分受取:6/25以降> ・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)・パンとサーカス(8/28予約、9/01受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【パッキパキ北京】綿矢りさ著、集英社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは…?<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパッキパキ北京【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・デジタル朝日「好書好日」でめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.09.02
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図書館で『世界(2024年7月号)』という雑誌を、手にしたのです。特集2「日本の中の外国人」が・・・気になるのです。*********************************************************【世界(2024年7月号)】雑誌、文藝春秋、2024年刊<出版社>より【特集2】日本の中の外国人 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。<読む前の大使寸評>追って記入iwanami世界(2024年7月号)まず特集2「日本の中の外国人」で埼玉クルド人コミュニティを、見てみましょう。クルド人移民やマイノリティに対する街宣、フェイク情報はかくも過酷になっているのかと、暗然とするわけです。p116~118<埼玉クルド人コミュニティ:安田浩一>■日本語教室の内と外 正しい日本語が仕えているかどうかチェックしてほしい・・・クルド人男性(43歳)に頼まれた。 毎週日曜日、外国人支援団体「在日クルド人と共に」(埼玉県蕨市)が主催している日本語教室。たまたま近くにいた男性を取材しようと思っただけなのに、話しかけたら即席の“講師”をするはめになった。 彼が“教科書”として用意していたのは『産業廃棄物叉は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会テキスト』なる冊子である。「廃石綿等及び石綿含有廃棄物」「特定粉じん排出等作業実施」といった難解な言葉が並ぶ。男性がそれをゆっくり読み上げながら、漢字の意味を私に問う。私だって、よくわからない。―これ、日本人でも難しいです。「でも、覚えないとね」―なんで?「産廃事業の管理者になりたいんです。講習会を受けて試験に通れば、許可してもらえるかもしれない」―許可って?「滞在」 そう、ここでいう「許可」とは、日本での在留資格のことである。 彼が生まれた故郷のトルコを離れたのは、いまから20年前。多くのトルコ出身クルド人がそうであるように、差別から逃れるための“脱出”だった。たどり着いた日本で難民申請を繰り返したが認められることはなく、現在は「仮放免」の身である。 同胞の多い川口市に居を定め、難民申請中に覚えた産廃の仕事を、いつかは自身で切り盛りしたいと考えている。必要なのは、彼が言うところの「許可」だ。そのための近道が、資格取得だと信じている。「日本の役に立つことをすれば、日本だって私を認めてくれる」 どんな形でもいい。正規の在留資格さえ得ることができれば、仕事をすることもできる。健康保険にも入ることができる。当たり前の人間として生きることができる。自分も、妻も、子どもたちも。だから小難しいテキストを日本語教室に持ち込み、ひとつひとつの文言を頭に焼き付けているのだ。 日本国内に住んでいるクルド人は約3000人と言われ、そのうち約2000人が川口市や蕨市など埼玉県南部に住む。仮放免者などの非正規滞在者も少なくない。 「在日クルド人と共に」は、こうした人々に日本語を教えるだけでなく、交流の場として日曜日に事務所を開放している。温井立央代表理事によると、「日本人と普通に話したことのない人もけっこういる」のだという。 ここに集まるクルド人は、年齢も立場もさまざまな人々だ。日常生活に不便を感じて日本語を学びに来る人がいる。学校の授業に追いつくために通う子どもたちもいる。子どものいる母親は、学校からの「お便り」を理解するために教室に足を運ぶ。 日本人スタッフのひとりも、こう話す。「ボランティアの日本人と会話するためだけに来ている人も多いですよ。日本語が上達したね、と声をかけるだけで、みんな嬉しそうな顔を見せてくれるんです。日常生活の中で成功体験を持たない人がほとんどですから」 みんな表情が明るい。「学ぶ」というより、まさに楽しんでいる。 私の“教え子”となってしまった男性も、実は日本語能力は相当に高く、会話にはまったく不自由しない。テキストに記された「中和処理」なる文言を私に確認しながら、「中国と日本のことだと思った」と大声で笑った。 だが・・・その数時間後、事務所の目と鼻の先で、クルド人たちの笑顔を奪い取るような醜悪な風景が広がった。 この日(5月19日)午後、蕨市内ではクルド人排斥を訴えるヘイトデモがおこなわれたのだ。デモを主催したのは、これまで川崎駅前で在日コリアンに対する差別デモや街宣を繰り返してきた「日の丸街宣倶楽部」なる団体。旭日旗や日章旗を振り回しながら外国人に向けてヘイトスピーチを繰り返してきた“実績”を持つヘイト団体だ。 同日のデモに参加したのは、代表の渡辺賢一氏を中心にわずか5名だったが、それでも埼玉県警は数百人の機動隊を動員。周辺の道路を封鎖しただけでなく、県警自らが“人間の盾”となって、ヘイト団体のデモを守った。 少人数のデモであっても、地域への影響は大きい。「強〇、誘拐、危険運転」などクルド人そのものを中傷するプラカードを掲げた隊列のおかげで、少なくないクルド人はこの日、外出を諦めた。クルド料理店の前から険しい表情でデモを見ていた30代のクルド人男性は、「子どもには見せたくない」と独り言のようにつぶやいた。 当然だろう、デモ隊は個別の「犯罪」やトラブルを理由に、クルド人全体を中傷しているだけでなく、明確に差別を煽っているのだ。 しかも、デモはこの日が初めてではない。これまで幾度となく、蕨、川口のクルド人集住地域で繰り返されてきた。在特会(在日特権を許さない市民の会)の流れをくむ日本第一党なども、「クルド人は出ていけ」と叫びながらデモをおこなっている。5月26日にも「日本侵略を許さない国民の会」ナルヘイト団体が、「移民は日本から出ていけ!」とわめきながら、蕨、川口両市を練り歩いた。 いずれの団体も、これまで各地で在日コリアンなどのマイノリティにヘイトスピーチをぶつけてきた差別者集団だ。外国人集住地域への理解も思い入れもなく、面白半分に差別と排外主義を煽っているようにしか見えない。だが、そのたびに旭日旗が打ち振られ、排斥が叫ばれ、ただ地域で暮らしているだけのクルド人に不安と恐怖を与える。 5月12日に川口駅前でおこなわれた「日の丸街宣倶楽部」の街宣では、ヘイトに抗議する市民が、街宣参加メンバーから暴行されるといった事件も起きた。 被害者の50代男性によると、同団体がヘイト街宣を終えて引き揚げる際、「早く帰れ」と抗議。すると、参加メンバーのひとりが男性の左目付近を殴打し、かぶっていた帽子も吹き飛んだという。男性は川口署に被害届を出し、現在、埼玉県警が捜査中だ。 実は、同団体メンバーらは、過去にもヘイトデモ、街宣を繰り返すなか、同種の事件を三回も起こしている。 被害男性が続ける。「暴力のエスカレートを怖れます。私は日本人ですから直接的なヘイトクライムではないにせよ、クルド人差別に抗議したことで暴行を受けました。内実は差別事件でもあるわけですよ」
2024.09.02
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第10章 無文字社会から問う」で日本語の乱れとか美しい日本語が述べられているので、見てみましょう。p298~301■美しき二重言語の構造 昨今、「日本語の乱れ」が問題視されていますが、その原因の多くは接続法あるいは連続法に関わる問題といえます。たとえば、コンビニなどで買い物をしたときに、近年、レジの若い店員は「千円からお預かりします」と言いますが、この「から」は明らかに間違いです。 接続に関する助詞を間違えているのです。「千円」や「預かる」はそれ自体で意味をもつ自立語、つまり「詞」です。日本語の難しさはその自立語をどのように繋いでいくかという点にあります。「千円からお預かりします」という例でいえば、「から」と「ます」のような詞辞関係における「辞」の部分が問題になってくるのです。 別の観点からいえば、「詞」は主として漢字が担当し、「辞」は漢字で書きあらわせない部分なので仮名が担当します。「千円からお預かりします」といわれれば、預かっているのなら返してくれと言いたくもなるのですが(笑)、間違えるのは、「から」というような助詞であったり、「お」を付けるかどうかという敬語の問題であったり、仮名書きのところで生じています。 しかし、この助詞は意味のアクセントとしては非常に弱い。実際には「から」も「お」も「ます」も、なくても意味は通じます。 極端にいえば、中国語には「辞」がありません。中国語ふうにいえば、「千円 預かる」になります。どうしても完了形にしたければ、、「千円 預かった」という形にするだけのことです。日本語の場合には詞のあいだに助詞を挟み込む構造になっているのです。 ところが普段われわれは、「あの人、かっこいい」とか「私、大好き」というように、ほとんど単語を並べるだけの日本語を日常的に使っています。これも立派な日本語です。いってみれば助詞は適当であってもいいとも言えるのです。とくに東アジアの言語は漢語中心の言語ですから、単語を並べればいいのです。 言語の乱れを問題視する人々は、仮名の部分の乱れを指摘します。世の中の多くの人は、「辞」の部分、繋ぎの部分が間違っていることを指して、「言葉が乱れている」と騒いでいます。これでは「美しい日本語」というのは、「繋ぎの部分」を正しく使えるかどうかという問題にすぎません。 しかし私にいわせれば、むしろ漢字のほう、つまり使える語彙が減ってきていることのほうが、より重大な問題です。それが日本語の危機の本質だと思います。仮名の部分にばかりこだわると、「繋ぎの部分」にだけ長けた人が出てきて、文法上の間違いもなく見栄えはすこぶるいいけれども、内容の乏しい日本語が生まれてくることにもなりかねません。■美しき二重言語の構造 以上述べてきたように、日本語というのは、音訓二併制と詞辞の分化という二つの意味において、漢字と仮名の二重性でかたちづくられています。このような特性をもった日本語が私たちの文化の中心にありますが、日本の周辺には、日本文化を相対化できる視点をもった言語、文化的集団が二つあります。そのひとつがアイヌです。言葉はあっても文字をもたない集団、それがアイヌです。 いまの子供たちがどんなに文字を知らない、勉強をしないといっても、基本的にまわりには文字が氾濫しています。テレビからも出てくるし、町にもいっぱい文字がありますから、その影響を子供たちは受けています。ところが、その文字がアイヌには存在しなかったのです。文字のない言葉、それがアイヌ語であり、それをこの孤島で担ってきたのがアイヌです。したがって、本質的な規定をすれば、この列島の言語における無文字のシンボルがアイヌ語だということになります。 無文字のアイヌが一方にあって、そのもう一方には、日本語を受け入れつつも、日本とは少し違う文化的な態度をとった地方があります。それが琉球です。これが日本語を相対化できるもうひとつの言語集団です。 前章でみてきたように、琉球は二重複線言語を受け入れています。「たまおどんのひのもん」のような漢字仮名交じりの碑を建てていることが、そのことを象徴しています。にもかかわらず一方で琉球は、そのもとになった大陸の単音節孤立語の中国語も受け入れています。二重複線言語である日本語と中国語をさらに二重に受け入れているのです。『漢字とアジア』4:沖縄における漢字・漢文・平仮名の状況『漢字とアジア』3:日韓併合、独立闘争あたり『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.09.01
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第9章 ヤポネシアの空間」で沖縄における漢字・漢文・平仮名の状況を、見てみましょう。p285~287■なぜ沖縄は漢文地帯にならなかったのか それでは、平仮名はいつごろ沖縄に入ってきたのでしょうか。沖縄が日本と接触する機会は古くからあって、遣唐使の中継地点としても使われていたのですから、その頃から当然いろいろな人たちが日本から沖縄に入っていますから、なんらかの形で、平仮名以前の万葉仮名も漢字と同様に入っていたと考えるのが自然です。 平仮名がどのように受け止められたかについて、東恩納千鶴子さんという人が『琉球における仮名文字の研究』という本を書いています。この本によると、「すでに12世紀頃には仮名文字が沖縄に移入されたと考えられるが、それを立証する資料がない」とあります。網野善彦さんなどもおそらくこの東恩納さんあたりの研究をもとに、12世紀頃には仮名文字、女手が沖縄に入っているといっています。それは十分にありうる話です。 ただ、女手を本格的に使いこなせるようになったことと、1429年に尚巴志が沖縄全島を統一したことのあいだに、かんれんがないわけではないと私は思うのです。つまり、「沖縄は、仮名文字が流入し、音写文字による沖縄語表記が可能になって、ヤポネシアとなった」のであり、このときに沖縄はヤポネシアになったと考えた方がいいと思います。 要するに、私が言いたいのはこういうことです。ヤポネシアをどのように捉えるべきかについてはいろいろな議論がありますが、そのひとつに、「もともと倭があった。北の方にはアイヌがいた。沖縄を含み込むようなかたちでもともとヤポネシアがあった。大陸から文化が移入されて、その中央部が中国化あるいは半島化され、その影響が遺された」という考えがあります。 ただ、私はそうは考えない。「平仮名が入り込んで、平仮名文を使いこなせるようになったときに、じつは沖縄が日本化され、そのとき初めてヤポネシアに入るようになった」というふうに考えます。このように考えた方が正確だと思うのです。 ここで大きな問題となるのは、「なぜ沖縄は漢語・漢文地帯にならなかった」ということです。もしも漢語・漢文地帯になるとすれば、まず台湾からです。台湾が漢語・漢文地帯になって、ここに漢文で治める王が生まれて台湾を統一し、現住民をの言葉を圧倒して漢語化が進む。沖縄もそこに組み込まれるか、あるいは沖縄にもまた少し違う王が生まれる、という姿になっただろうと思います。 なぜ沖縄は漢文地帯にならなかったのか。その理由は、ひとつには島が小さかったからだろうと思います。国家というものは、いくつかの地方勢力がぶつかりあい、その後にはじめて形成されるものです。その点では、沖縄はやはり限界があります。琉球弧は端から端までの距離がものすごく長く、日本列島と同じくらいの距離をもっていて、かつ、一つひとつの島が小さく人口も少ない。 そうすると、そこでは中国式の支配の思想、要するに儒教思想であるとか、あるいは政治制度を本格的に学ぶ必要がない。なぜか。それこそ平和な嵩算のもとに生きている無文字の村落共同体が数多くあり、そういう環境では支配者である王は、中国式の支配の思想を学ぶよりも、平仮名という表音文字をうまく受け入れていった方が簡単に統治できたであろうからです。 要するに、自前の言葉を書き表す上で、平仮名は非常に便利なものであったために、沖縄は漢文地帯にならず平仮名―漢字文明圏になったのだと思います。 沖縄は、小さい島がいっぱい繋がっているという地形的な特殊性ゆえに、平仮名を受け入れたわけです。沖縄に平仮名が入り込むことによって、琉球は日本化したのでしょう。『漢字とアジア』3:日韓併合、独立闘争あたり『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.08.31
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在職中にサウジアラビアで手直し工事を行うハメになったことがあるのだが・・・過ぎてみれば、貴重な体験とさえ思えるのです。このサウジアラビア出張について「地獄のサウジレポート」として取りまとめていたので、復刻して読んでみようと思い立ったのです。*********************************************************26時間以上の完全徹夜を敢行したあと、ドーハから関空に向かうカタール航空のビジネス席に座り・・・・リクライニングシートを倒し、アテンダントの微笑みにかしずかれ、快適な時を過ごしているが・・・まさにドングリ大王のような気分である♪実は、サウジのサイトから逃れて、ジェッダ空港の出国ゲートをくぐった時が一番感激していたのかも知れないが。ドーハを出てアフガニスタン上空あたりで目覚めたが、乾燥したパミール高原が克明に見えるではないか♪緑が一切なしで、峰々の頂上は冠雪しています。そして高原の中央部付近では氷河まで見えます。ここの雪解け水が、かろうじて砂漠を潤すのだろうな~タクラマカン砂漠それからは、パミール高原からタクラマカン砂漠、内モンゴル自治区と広大な自然景観を飽きもせず眺め続ける大使であった。サウジの砂漠も広大ではあるが、サハラ砂漠の次に大きいのがタクラマカン砂漠のようですね。タクラマカン砂漠、コンロン山脈、西域南道?と来れば、シルクロードや西遊記の世界であるが・・・・・国名をドングリスタンと決めた大使は、もともと西域に憧れているわけで、眠いのも忘れて、窓にひたいをつけて眼下の自然景観に見入るのでした。ウィキペディアのタクラマカン砂漠によれば、タクラマカンとは死の場所という意味のようです。無機質で美しい景観ではあるが、人を寄せ付けない過酷な場所なんでしょう。自前のカメラはサイトで落として壊し・・・急遽、同僚にハンドキャリーしてもらった会社のカメラも砂嵐のなかで砂にまみれて故障したので、この景観を撮影できないのが悔しいが・・・まぶたの奥の記憶装置に、記憶することにいたしましょう(トホホ)夜勤体制になじんだ体のリハビリのため23日は、有給休暇をとることにしました。タクラマカン砂漠 地図シルクロード地図シルクロードみどころMAP*********************************************************・2009.07.22死の場所・タクラマカン・2009.07.21sauji dassyutu・2009.07.17帰国近し・2009.07.16約1ヶ月ぶりの休日・2009.07.15夏が来~れば 思い出す・2009.07.10「必死のパッチ」で・2009.07.08「挽歌」の聴き比べなど、如何?・2009.07.04刑期再延長・2009.07.01サウジの空港職員・2009.06.28サウジのテレビ事情・2009.06.24ノー プロブレン・2009.06.21焼酎を持ってこんかい!・2009.06.18刑期延長(地獄のサウジレポート3)・2009.06.14地獄のサウジレポート2・2009.06.12紅海が見えた ・2009.06.10地獄のサウジレポート(第1報)・2009.06.05急遽 サウジアラビアに出張
2024.08.31
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昨年、今年とツキノワグマによる人身被害は続き、のんきな山菜取りなんかできる状況ではないようです。ネットに『ともに生きる 山のツキノワグマ』という記事を見かけたので紹介します。*********************************************************近年、市街地に出没するクマ「アーバンベア」の増加が取り沙汰されています。『ともに生きる 山のツキノワグマ』(あかね書房)は、東北の湖で行ったツキノワグマの撮影を中心に、人間とクマがともに生きていく道を考える写真絵本。その作者で、朝日小学生新聞の人気連載「生き物たちの地球」でもおなじみの動物写真家・前川貴行さんにお話を伺いました。(文:加治佐志津)■初めて出会った野生のクマQ: 前川さんにとってクマは、動物写真家としての原点ともいうべき特別な存在なのだそうですね。 動物写真家として生きていこうと心に決めたとき、最初に取り組もうと思ったのがクマでした。クマは容易には近づきがたい動物ですが、ぬいぐるみやおもちゃのモチーフ、絵本の主人公などにもよくなっていて、子どもから大人まで多くの人を惹きつける存在ですよね。クマのどこに魅力を感じるのか、僕自身も言葉ではなかなか表せないのですが、もっと知りたい、近づきたいと思わせる何かを感じていたんだと思います。Q: 初めてクマと対面されたときの様子は、フォトエッセイ『クマと旅をする』(キーステージ21)などで拝読しました。 動物写真家の助手時代に、個人的に初めてアラスカに行ったときのことです。グリズリーやブラックベアーなど、野生のクマをメインに撮影しようと決めて、ボートで島を巡って探していると、降り立った浜辺で、遠くからゆったりと歩いてくるブラックベアーを見つけました。距離は200メートル以上あったと思うのですが、初めて見る野生のクマを前に、ものすごい緊張感と恐怖感が湧いてきて、クマってこんなにすごいのか、これはやばいな、と身をすくませてしまって。とにかくその強烈な存在感に圧倒されて、撮影しようにも近づくことすらできませんでした。自分としてはかなりショックで、落ち込みましたね。 それでも動物写真家を目指す以上、びびっていてはいかんと思って、毎日毎日クマに接近を試みて……何日かするうちにだいぶ慣れてきて、近くで写真を撮れるようになってきました。経験を積み重ねて、恐怖心を克服していった感じです。Q: 今はもう恐怖を感じなくなったのですか。 いや、恐怖心は常にあるんですが、初めてのときのような身動きできなくなるほどの恐怖は感じなくなりました。クマの表情や動きの変化を注意深く観察して、少しでもおかしな動きをするようなら、すぐに距離をとるようにしていますしね。 トラやライオンに生身で接近することはできませんが、クマならぎりぎりそれができる。そんなぎりぎりのチャレンジをしてみたい、というのも、クマの撮影に取り組むようになった理由のひとつです。でもそんな気持ちを抜きにしても、ただ単純に惹かれてしまう、さまざまな魅力を感じる生き物、それが僕にとってのクマです。■ツキノワグマの置かれた現状を伝えたいQ: 近年、市街地にクマが現れ、人の暮らしを脅かすニュースをよく目にします。『ともに生きる 山のツキノワグマ』は、そのような問題と向き合うべく作られたのでしょうか。 日本には、北海道に生息するエゾヒグマと、本州・四国に生息するツキノワグマという2種類のクマがいます。僕はどちらも好きで、つい先月も知床半島でエゾヒグマの撮影をしてきました。 ツキノワグマは、本州と四国では敵なしの、食物連鎖の頂点に立つ強い動物ですが、実は人を恐れて警戒する、臆病な側面もあります。そんなギャップや、真っ黒でつやつやとした毛皮をまとった姿、醸しだす雰囲気などもすごく魅力的で、昔からお気に入りの動物です。*********************************************************■2024.08.26『「ともに生きる 山のツキノワグマ」動物写真家・前川貴行さんインタビュー』https://book.asahi.com/article/15388527■2024年5月24日 【クマ被害相次ぐ】秋田と石川で2人けが 4月以降の被害11人にhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20240524/k10014459211000.html
2024.08.30
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「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、西加奈子さんは♪で区別します。今回表示分は*)*「パンとサーカス」解説*共感ベース社会の陥穽・死ぬってどういうことですか?・2024年度寺子屋ゼミのテーマは・箱根の温泉で感じた中国のリアル・『本の本』あとがき・「宗教の本領」とは何か?・『街場の米中論』を読んで・月刊日本インタビュー「ウクライナとパレスチナ」・高校生に言いたかったこと・宮﨑駿『君たちはどう生きるか』を観て・平川克美『「答えは出さない」という見識』(夜間飛行)書評・「怪物」公式パンフレット解説・白井さんと話したこと・3.11から学ぶこと・韓国の地方移住者たちに話したこと・生産性の高い社会のゆくすえ・ウクライナ危機と反抗・「生きづらさについて考える」単行本あとがき・「街場の米中論」まえがき・図書館の戦い・村上文学の意義について・統一教会、安倍国葬について他・安倍政治を総括する・選挙と公約・無作法と批評性・徒然草 訳者あとがき・勇気について・病と癒しの物語『鬼滅の刃』の構造分析・「アウトサイダー」についての個人的な思い出とささやかな感想・コロナ後の世界 ・格差について・『コロナ後の世界』まえがき・紀伊田辺聖地巡礼の旅・成長と統治コスト・『日本習合論』中国語版序文・日本のイデオクラシー・後手に回る政治・倉吉の汽水空港でこんな話をした。(目次全文はここ)(その69):「『パンとサーカス』解説」を追記2024-08-27 「パンとサーカス」解説より 僕の(頼りない)文学史的知識に基づくなら、『パンとサーカス』は『愛と幻想のファシズム』以来40年ぶりの「日本で革命が起きる話」です(「それ、オレも書いたぞ」という方がいたらお詫びします)。 寵児と空也とマリアが仕掛ける政治的動乱の目的は「アメリカの属国身分からの脱却」、そして「国家主権の奪還」です。(中略) そもそもの大前提として、アメリカは決して中国との戦争には踏み切らない。アジア太平洋地域における軍事的影響力が一気に低下し、ハワイまで奪われかねず。その損失は計り知れないからです。」(223-224頁) 米中戦争にかかわるミュートのこの見通しに僕は全面的に同意します。アメリカは米中戦争をする気がありません。全面戦争になれば核戦争になります。核戦争をすれば米中共倒れになることが確実である以上、アメリカが選択できるのは中強度の通常兵器による戦闘までです。 人民解放軍は中越戦争以来、45年間実戦経験がほとんどありません。海戦経験はほぼゼロ。装備はハイレベルですが、実戦能力は不明。やってみないとわからない。でも、そんなリスクの高い賭けにアメリカは応じられません。ですから、台湾に中国が軍事侵攻してもアメリカがコミットしないという可能性はかなり高い。現に「台湾のためにアメリカがリスクを取ることはない」と公言する政治家、政治学者はアメリカ国内には少なくありません。 それに、米中戦争の帰趨はどう転ぶか分かりません。いささか旧聞に属しますが、2017年にランド研究所は「妥当な推定を基にすれば、米軍は次に戦闘を求められる戦争で敗北する」というレポートを発表しています。同年、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長も「われわれが現在の軌道を見直さなければ、量的・質的な競争優位を失うだろう」と警告を発しています。つまり通常兵器による戦争ではアメリカは中国に敗けるかも知れないということです。もちろん「このままでは大変なことになる」という軍人からの警告は多少割り引いて聴く必要があります。リスクを過大評価して、国防予算の増額を要求するのは軍人の本務の一部ですから。 それでも、「中国と戦ったら敗けるかもしれない」とシンクタンクや軍高官が明言するというのは、かなりシリアスな状況だと考えてよいと思います。アメリカは「対中戦争はできるだけしたくない」と思っている。それは確かです。 とはいえ、中国が台湾に侵攻した時にそれを放置すれば、西太平洋におけるアメリカの軍事的優位も外交的信頼も失われます。日本と韓国は、アメリカが台湾を見捨てれば、アメリカと自分たちの間の軍事同盟も「実は空文かもしれない」と思い始めるでしょう。日韓の信頼を失うことがもたらすリスクと、中国との全面戦争にコミットすることがもたらすリスクのどちらが「致命的」であるとホワイトハウスは考えるでしょうか。ことは信義の問題ではなく、損得の問題です。そして、算盤を弾いた末に、アメリカは米中戦争を回避することを優先させると僕は思います。 ですから、台湾有事になったら、自衛隊の尻を叩いて「存立危機事態なんだから、まずは日本人が戦え」と命じておいて、在日米軍主力はとりあえずグアムまで後退すると思います。 アメリカにとって必要なのは時間を稼ぐことです。そして、AI軍拡で中国に対してアドバンテージを持つことです。中国はこれから人口減と経済成長の鈍化を迎え、遠からず国力はピークアウトします。それに中国共産党は「海外からの侵略リスク」より「国内における反乱リスク」の方を重く見ています(だからこそあのような徹底的な国民監視システムを構築しているのです)。ということは、いずれ文化大革命や天安門事件のような壊乱的事態が出来するかも知れない(北京はそうならないことを願い、ホワイトハウスはそうなることを願っています) いずれにせよ、アメリカにとって必要なのは時間です。日本や韓国を見捨ててもそれで時間が稼げるなら、アメリカにとっては帳尻が合う。 中国が台湾や韓国や日本に軍事侵攻した場合、かなりの抵抗が予測されます(特に台湾と韓国では。日本ではそれほどの抵抗はないと中国共産党指導部は考えているはずです。というのは日本人は「外国軍隊に蹂躙されることに対して特段の心理的抵抗を感じない国民」だと国際社会からは思われているから)。 それでも日本を実効支配するためには、長期にわたって数十万規模の軍隊と行政官を常駐させなければなりません。これは中国にとってはできれば負担したくないコストです。ですから、中国は日本を勢力圏に置く場合、直接統治するよりは、華夷秩序以来長い歴史を持つ「辺境の属領には高度の自治を許す」という使い慣れた「一国二制度」を持ち出してくるはずです。「かつての香港」程度の政治的自由を許せば、日本の支配層は簡単に「中国シフト」に切り替えて延命を図ります。日本の「被支配層」は久しく「長いものには巻かれろ」とだけ教えられてきたので、レジスタンスを戦うなどということは思いつきもしないでしょう。「アメリカに支配されるのも中国に支配されるのも、国家主権がない点では変わりがないからね。ははは」と寂しく笑って人々はこの事態をやり過ごすはずです。 アメリカに見捨てられ、中国の辺境の自治州となった日本は、その後どうなるのでしょうか。「アメリカ憎し」の一念で中国をバックにした「反米の尖兵」となるでしょうか。そんなことはないような気がします。だって、あまりにも愚かで腰抜けだったせいでアメリカに「いいようにされた」だけの話ですから。日本人がいくら「自分たちは被害者だ。日米安保条約ひとつであれだけ日本から収奪しておきながら、肝心のときに置き去りにするなんて・・・アメリカは80年分の『みかじめ料』を返せ」と泣訴しても、日本に同情して、ともにアメリカ批判に加わってくれるような親切な国は国際社会にはたぶん一つもないと思います。国連総会決議(アメリカは日本に謝罪して、金を返せという決議)もたぶん行われないと思います(それって自己責任でしょ・・・と言われるだけで)。2024-07-27 共感ベース社会の陥穽より 先日、ある文学賞の選考にかかわっている編集者からこんな話を聴いた。この文学賞では投稿されてきた作品を編集者たちがまず「下読み」をして、候補作を絞り込んでから選考委員会に上げる。何百本も応募作が届くのだから当然である。その「下読み」の時に、若い編集者がある作品について「これは落としましょう」という低い評点を付けた。理由を訊ねたら「主人公に共感できないんです」とこともなげに言ったそうである。「驚きました」と私に話してくれた人はため息をついた。「主人公に自分が共感できるかどうかが文学作品の質の判定基準なんですよ・・・」すごいですね、と私も応じた。その基準だと『悪霊』や『変身』はたぶん一次選考で落ちてしまうだろう。 共感できるかどうかというのは個人の気質の問題である。「自分と近い」ということはその作品に「価値がある」ということを意味しない。そんなのは自明のことであるだと思っていたが、いつの間にかそうではなくなっていた。自分とケミストリーが近いかどうかがある時期から「価値」の基準に採用されるようになった。 今回の都知事選を論じたものの中に、二位になった石丸候補について、「若い人たちの共感を集めた」という分析を多く読んだ。そうだろうと思う。攻撃的で冷笑的であることが生き延びる上では力強い「ウェポン」になるということを経験的に習得してしまった若い人たちが、石丸候補のうちに「自分と同じケミストリー」を感じることに不思議はない。 左派系の人たちは「若い人たちは情報が不足しているから、こんな選択をしたのだ。事実を開示されたらこんな投票行動をしなかったはずだ」という「啓蒙主義的」総括に傾きがちだけれど、私はこれには容易に同意することができない。投票行動が共感ベースなら情報の多寡は問題にならないからだ。共感ベースなら、石丸候補がいかなる政治的立場を取っているかも、公約が何であるかも関係がない。動画を見て、街宣を聴いて、自分と「同じ生地」でできている人間らしいと感じたら、投票行動を決定する情報としてはそれで十分である。 でも、「共感」ベースで政治的判断を下すことについては、それがいかに危険なことかはしっかりとアナウンスしなければならないと思う。「共感」ベースで政治的判断を下すということは、理解も共感もできない人たちとのコミュニケーションは初めから放棄するということだからである。(『週刊金曜日』、7月17日)以降の全文は内田先生かく語りき62による。
2024.08.29
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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「月刊雑誌」でしょうか♪<市立図書館>・世界(2024年7月号)・Newton(2024年5月号)・図書館のお夜食<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【世界(2024年7月号)】雑誌、文藝春秋、2024年刊<出版社>より【特集2】日本の中の外国人 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。<読む前の大使寸評>追って記入iwanami世界(2024年7月号)【Newton(2024年5月号)】雑誌、ニュートンプレス、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌につきデータなし<読む前の大使寸評>追って記入rakutenNewton(2024年5月号)【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食
2024.08.28
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在9位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在8位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在32位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在34位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在20位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在11位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在5位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在24位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在8位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約113)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・ボクはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門<予約分受取:5/10以降> ・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.08.28
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漫画連鎖というコトバに惹かれて購入した古書であるが・・・・復刻して読んでみようと思ったのです。*********************************************************偶然、出くわした古書フェアで、定価890円のこの本が800円で売り出されていたのです。ちょっと高いかとも思ったけど、今買わないと二度とお目にかからないだろうと焦ったわけでおました。(家に帰って楽天を覗くと890円(税込み961円)の定価販売となっていて、古書値段は、やや高め設定というところか)【一億人の漫画連鎖】ダヴィンチ編集部編、メディアファクトリー、1998年刊<「BOOK」データベース>より【目次】第1章 人気ランキングから広げるコミック連鎖反応/第2章 マンガおもしろ分析&マンガ家インタビューから広げるコミック連鎖反応/第3章 あの作家あの作品から広げるコミック連鎖反応<大使寸評>この本は「ダヴィンチ」96年7月号~98年3月号の掲載記事を主に編集されていて・・・当時の大使は漫画をあまり読んでいなかった時期なので、やや浦島太郎の感を覚えたわけでおます。(だいたい「ダヴィンチ」という雑誌があることを知らなかったけど)でも、この本では松本大洋ロングインタビュー、浦沢直樹スペシャルインタビューなど載っていて、もろに大使のツボを突いています。一億人の漫画連鎖大使の一押し記事ともいえる松本大洋ロングインタビューを見てみましょう。p90~95 <我ら松本大洋族:アイカワタケシ> 大友克洋以降の最重要若手マンガ家の一人、松本大洋。高度に洗練された表現スタイルと、時に詩的、寓話的な語り口で敏感な若者たちに圧倒的な人気を誇る。それが今の時代の感性と共鳴していることは間違いないが、はたして作家本人はどんなパーソナリティーを持っているのだろうか。クールな作風からは窺い知れない作家の内面に、おっとり刀で迫ってみた。 「松本大洋さんはインタビュー嫌いらしいよ」 打ち合わせの席で担当編集者に、そう教えられた。一度はファクスインタビューにこぎつけたものの、これまでに2回、インタビューを断られたそうだ。写真嫌いであるともいう。ちょっと不安がよぎる。 松本大洋といえば、「大友克洋以降」を代表する若手マンガ家の中でも、最重要作家の一人と目されている人物だ。もしかしたら、尊大でもったいぶったアーチスト気質の濃い人物なんじゃないか。あるいは、神経質で人間嫌いの世捨て人なのか。そんな不安と妄想は作品を通して読んでみると、ますます強くなった。 作画スタイルは作品を追うごとに変化している。長篇と短篇では、テーマもテイストもまったく異なっている。高度に洗練された「絵」が印象に残る一方、作家の肉声はほとんど感じられない。あるいは、あえて肉声を押し殺しているような、そんな感じがした。(中略)<『花男』は、道行く人の頭をバットで殴りつけるアブナイ男の話だった?!> Q:石川県に住んでいたという話ですが、こっちへ来たのはいつ頃ですか?松本:東京で生まれてすぐ石川県に行って、今度は三重県に行って6年生まで、中学校は静岡で、高校で東京に帰って来たんです。親に放浪癖があったんで・・・・Q:それは転勤とかじゃなくて?松本:場所変えるのが好きなんですよね。Q:それは、ちょっと『花男』の感覚があるんですか?Q:あ、ありますね。うちの親はもう、なんかオカシイんですよ。「アダムス・ファミリー」みたいな感じで(笑)。『花男』っていうのは最初、花男っていう非常に変な男っていうのかな。要するにちょっとアブナイ、痛い人がいて(笑)、それがバットで道行く人の頭殴りつけたりする話だったんですけど、こんなもん連載できるわけないだろってことになって(笑)。 俺が考えてくと、かなりカルティックになっちゃうんですよ。夢を目指す人間ていうのは、どれくらい醜いかっていう。そういうテーマで最初描いていたんですよ。夢って非常に美化されるじゃないですか。 それで夢を見る男が、どれだけみっともなくて、うるさくて、やかましくって近所迷惑かっていうのを突き詰めてやるぜ、なんて思ってたんだけど、連載になったら全然違う話になっちゃった。それで良かったと思うんですけどねぇ。『花男』の出発点は、夢の世界に生きる男の妄執が暴走するバイオレントな話だったのか。松本大洋という作家の資質は、じつは意外と歪んだ要素を含んでいるのかもしれない。他の作品についても聞いてみた。Q:『鉄コン筋クリート』のシロとクロもそうですけど、二律背反する2つのものを並べますよね。『ピンポン』で言えばスマイルとペコとか。明と暗が対比するキャラクターを登場させるというか。松本:『花男』やったときに味をしめたんですよね。これはかなり広い部分を網羅していると思って。俺は悪役を出さないですから、価値基準があまりにも一定だとコワイものができあがるじゃないですか。 それと全然価値基準が違う二人が仲良かったりするのって、非常に俺の好きな雰囲気なんですよね。それを、もうちょっと徹底させてみたいと思ったのが『鉄コン~』で・・・。まぁ結局、二人とも似た者同士になっちゃったんですけど。もっと正反対でも良かったんですよね。(中略) インタビューに臨む前に一方的に感じていた不安は、やはり妄想だった(当たり前)。松本大洋は、痩せて小柄の、とてもシャイな人だった。小田急ロマンスカーに乗って江ノ島まで帰る時間ギリギリまで、こちらのとりとめのない質問にも、言語を選びながら丁寧に答えてくれた。そしてその言語の裏に、作品ではストレートに表出しない、「時代の気分」とは正反対の「まっとうな反骨精神」を感じた。ジミ・ヘンの話は最後まで出なかった。折りしもメディアでは、相模原殺傷事件で大騒ぎであるが・・・松本の発した「夢を目指す人間ていうのは、どれくらい醜いか」という言葉が、坑道のカナリヤのように聞えるのです。そういえば、かつて安倍さんが「美しい国」などというポエムを語っていたなあ。*********************************************************■2016.07.31XML一億人の漫画連鎖https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201607310000/
2024.08.27
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図書館で『世界SF作家会議』という本を、手にしたのです。世界SF作家会議ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【世界SF作家会議】フジテレビ/早川書房編集部【編】、早川書房、2021年刊<出版社>より新井素子、冲方丁、小川哲、高山羽根子、樋口恭介、藤井太洋という現代日本を代表するSF作家が集結。緊急会議を行い、全人類に突きつけられた課題を徹底討論する。劉慈欣、ケン・リュウほか海外SF作家が緊急参加、提言を行う。司会:いとうせいこう、大森望<読む前の大使寸評>追って記入kinokuniya世界SF作家会議いとう:大森:まず「第1回 世界SF作家会議」で司会のいとうせいこうさんと顧問の大森望さんの対談を、見てみましょう。p11~13<第1回 世界SF作家会議>いとう:こんばんわ、いとうせいこうです。世界SF作家会議、はじまりました。新型コロナウイルスが話題になっていますが、これによって世界が今どういうふうに変わっていくのかかを最もよく知るには、SF作家に集まってもらうしかないんじゃないかと思っておりまして、SF作家の想像力に期待しております。お隣は、世界SF作家会議顧問、大森望さんです。よろしくお願いいたします。大森:顧問の大森です。よろしくお願いします。いとう:確かに、70年代ぐらいまでは、世界の問題はSF作家がよく発言していましたし、訊かれていましたね。大森:そうですね。テレビでもSF作家の人が、アポロが月に着陸してこの先このどうなりますかとか、訊かれてコメントするのが仕事みたいな。いとう:80年代ぐらいから訊かれなくなってしまったのかなと。なんでだかはわからないですけれども。その精神に立ち返ってやってみたいと思います。SF作家は日々、未来のことを考えているのが仕事ですから、『未来のプロ』ともいえるわけで。アフターコロナの世界はどのようになるのか、SF作家の皆さんに考えていただきたいと思います。われわれのやっていることは意義あることなんですよね。大森:もちろんです。どんな突拍子もないアイデアがSF作家から出てくるのか楽しみですね。普通の人が考えないようなことを考えることが仕事なので、なにそれ? と思うようなこともあるかもしれませんが、それがSF作家の役目ですから。いとう:5年、10年して、その通りだったということもいろいろあると思います。大森:千年後に正しかったとわかるとか。地質年代で考えるとか。小松左京さんがよくおっしゃっていましたけど、一億年もすれば人類の痕跡なんて消えてなくなるんだから、地球の歴史にとっては環境問題なんて屁でもないと。いとう:大幅にとりましたね。大森:それぐらいのスケールになるとどうでもよくなるという。いとう:SF作家が一堂に会するといえば、いま小松左京さんの話も出ましたが、今から50年前の大阪万博の時に世界中のSF作家が集まったというのがありましたよね。大森:国際SFシンポジウムですね。当時まだ、鉄のカーテンというのがあって、西側のSF作家が東側のSF作家と会うことは一切なかった。ところが、万博の年の日本で、英米カナダのSF作家とソ連のSF作家が史上初めて同席したんです。いまから50年前、そういう歴史的なイベントが日本で行われていたんですね。いとう:先見的じゃないですか。大森:そうです。このシンポジウムのために来日した、『2001年宇宙の旅』で有名なアーサー・C・クラークが小松左京とテレビで対談したりね。いとう:すごいですね。それから50年ですか、本当にもう一度SF作家の頭脳に頼るときがきたということで、今宵、世界SF作家会議に参加する作家の皆さんをご紹介いたしましょう。
2024.08.27
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太平洋戦争初期の占領地の状況が述べられている『徴用中のこと』という本が興味深いわけで・・・以下のとおり復刻して読み直してみます。*********************************************************図書館で『徴用中のこと』という本を、手にしたのです。検閲で没になった古原稿をもとに書き改めたとのことで・・・大戦初期の占領地の状況が興味深いのです。【徴用中のこと】井伏鱒二著、講談社、1996年刊<内容紹介>より陸軍徴用の地シンガポールでの苛酷な実態と人々の姿を、死を見据えた細密な観察眼で捉え淡々と描いた、井伏文学の特質を伝える長篇。私たちは従軍中も入城後も、新聞社関係の特派員からときたま原稿を頼まれたが、私の原稿は検閲で没書になるのが多かつた。たいてい没書になつた。その原稿は、そのつどリュクサックに蔵つて置き、日本に帰るとき束ねて持ち帰つた。今、その古原稿で当時の記憶を呼び起こしながら、この原稿「徴用中のこと」を書いてゐる。──本文より<読む前の大使寸評>検閲で没になった古原稿をもとに書き改めたとのことで・・・大戦初期の占領地の状況が興味深いのです。kodansha徴用中のことスパイとして英軍に拘留された篠崎護氏との交流を、見てみましょう。p363~第28回 篠崎さんが御自分でさう云っていたが、戦争の始まる前にはジャーナリストとしてシンガポールに来て、毎日のように盛場を歩きまはりながら取材をしてゐたさうだ。主要な任務は、シンガポールの基地に次から次に殖えて来る英軍飛行機の機種と機数を調べ、世間の風聞も取入れて、本社に報告することであったといふ。 シンガポール島内には、センバワン基地、テンガ基地、カラン基地、セレタ基地なっど、英軍の飛行場が各所に散らばってゐる。そこに着陸する機数は、日を追ふて次第に殖えて来る。その数字を本社へ報告すると、そんな急速に殖えるわけがないと云ふ。風雲急を告げて行く気配が迫って来る。それで翌日また調べに行って、盛場で知りあった現地人の与太者にも確かめさせてみることがある。 そんなわけで盛場には毎日のやうに飲みに行ったので、当時のストレート・タイムズ記者で現在昭南タイムス記者になってゐるレンベルガン、サヴェージ、ラッパー、リョン、ホープ、ジョンス、タン・トン・ハイなど、みんな親しい飲み仲間であった。「戦前の自分は、のんべんだらりの飲助だった。情報を取るためだと思ってゐた。だが、今は違うよ。酒は止した。自分は鉄の意思を持つことにした。自分は鉄になった。冷徹な人間でなくてはいかん」 篠崎さんは私たちにさう云っていたが、急に冷たい人間になりすぎたと云ふ者がゐた。 レンベルガンやホープなどの話では、戦前の篠崎さんは酒場などで顔を合わせると、にこにこしてビールを注いでくれ、酒場を出るときには肩を組んでくれたものだ。それが今では、昭南タイムスの編纂室へ布告の原稿を持って来て顔を合わせても、見て見ぬふりで棒を呑んだやうにして通りすぎると云った。 一方、昭南タイムスの発刊された当初、私のところへ新聞配達の請負を頼みに来たカラユキさんの云ふことに、戦前の篠崎さんはスパイの疑ひを避けるため、わざと飲んだくれの真似をしてゐるやうなところがあった。昼間から酔っぱらって、プリンセップ街の山川さんのお嬢さんの肩にしなだれかかりミドル街を歩いてゐたことがある。これは敵をあざむく戦術の一つだらうといふ説があったと云った。「プリンセップ街の山川さんのお嬢さんといふのは、誰かね」と訊くと、「あなたさん、山川さんのお嬢さんを知らんのですか」と呆れたやうに云った。 山川さんといふのは、日露戦争のときの陸軍大尉として近衛連隊の兵と一緒に満州の戦地に送られる途中、ロシアのウラジオ艦隊に撃沈された運送船の常陸丸に乗ってゐたために、海面に投げ出されて失神してゐるところをロシア艦隊に拾われて、ペテルブルグに送られた人ださうだ。 明治39年に日露戦争が終り、山川さんは日本の捕虜たちと一緒にペトログラードから日本に送還されることになった。ところが捕虜として故国に帰る辛さに堪えかねて、シンガポールでこっそり船から降りてマレーのゴム園に隠れ、身すぎ世すぎで鉄鉱石の採掘やゴム栽培など手がけながら、明治、大正、昭和と暮らして来た。連添いの婦人は日本人の世話で日本から呼んだ。カラユキさんが「山川さんのお嬢さん」と云ったのは、この山川老大尉の令嬢のことだ。シンガポールでは聞こえた麗人であったさうだ。篠崎護氏のスパイ活動やシンガポールでの華人粛清などについてはネットのシンガポール血の粛清 陰で救った篠崎護に詳しく出ていました。『徴用中のこと』3:シンガポールの親しい飲み仲間『徴用中のこと』2:シンガポール占領の状況『徴用中のこと』1:シンガポールでの取材活動*********************************************************■2018.03.31XML『徴用中のこと』3https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201803310000/
2024.08.26
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『漢字とアジア』という文庫本を読んでいるが、この本では思いの外、ハングルについて語られているわけで・・・ 『韓国が漢字を復活できない理由』という本を復刻して読み直してみようと、思い立ったのです。*********************************************************たとえ不自由はあろうとも「日本隠し」を続ける意地はすごいけど・・・隣国の民として「漢字・ハングル混じり文」だけは復活してほしいと思うのだ。豊田さんのこの本を読んで、切にそう思ったのです。【韓国が漢字を復活できない理由】豊田有恒著、祥伝社、2012年刊<「BOOK」データベースより>韓国はもともと漢字の国だった。中国への従属関係から公文書はすべて漢文であり、世宗王が創製したハングルは蔑まれ、知識階級が使うことはなかった。日本統治時代、日本製の漢語が大量に流入する。韓国で使われた漢字熟語の七、八割は和製漢語なのである。なぜ、韓国は、漢字を廃止したのか。その後、復活論がわき起こるたびに潰されてきたのはなぜか。韓国研究で名高い著者が、その深い謎に迫る。 <大使寸評>豊田有恒と言えばSF作家とばかり思っていたが、著者の著述分野の多彩さにまず驚いた次第です。この本も書店で衝動買いした1冊でおま♪(Amazon豊田有恒参照)Amazon韓国が漢字を復活できない理由内容の一部を紹介します。<李承晩大統領が出した「ハングル専用法」>p50~52 1945年8月15日、韓国で言う光復の日から、すでに67年、その間、韓国の漢字政策は、朝令暮改、試行錯誤の連続だった。 戦前の日本教育世代の多くの方々は、漢字・ハングル混じり文の効用を知っているから、日本語の言い換えと並行して、国語を再編成するに当って、漢字語の重要性を説いたが、李承晩大統領は、ハングル優先政策を採った。日本統治を逃れて、アメリカに亡命していた李大統領は、アメリカ人の夫人を伴い帰国し、大韓民国初代の大統領に任命されると時を同じくして、正式な建国の1948年に早くも「ハングル専用法」を公布し、公文書のハングル表記を命じた。「大韓民国の公文書はハングルで書くものとする。ただし、当分のあいだ必用な時には漢字を併用することができる。 付則、この法律は公布の日から実施する」 この「ハングル専用法」は、公文書のみを対象としたものだが、それでも漢字の併用を認めている。終戦後3年、韓国も大韓民国を称して独立したものの、いまだに言語そのものが、日本語の影響から逃れなかったのである。 李大統領は、日本漁船を拿捕するなど、反日をむき出しにした。ハングル政策も、その反日の一環だったのだが、必要な場合は漢字を併記することも認めざるをえなかった。やはり漢字抜きでは無理があると、考えたからであろう。 日本統治時代、植民地ではなく、併合していたのだから、国語といえば日本語だった。朝鮮総督府は、台湾でも同様だったが、日本語を国語とし、国語常用家庭を表彰するなど、日鮮一体化政策を遂行したが、必ずしも漢字・ハングル混じり文を、禁止したわけではなかった。慶応義塾に籍を置いたことのある筆者は、呼び捨てにしにくいので、あえて福沢諭吉先生と呼ばせてもらう。すでに併合以前、福沢諭吉先生は、王朝時代の漢文至上主義を批判し、みずからハングル活字を作らせ、漢字・ハングル併用を、推進しているほどである。こうした経緯については、のちほど詳しく説明する。 ただ、第二次世界大戦後、このことが仇となり、漢字・ハングル併用は、日本帝国主義の残滓のように誤解され、排斥の対象とされるようになった。その一方で、ハングルは、民族のシンボルの域にまで祭り上げられることになった。<朴正熙は、なぜ漢字追放に踏み切ったのか>p52~54 ここで、ハングル派の言い分にも、耳を傾けてみよう。たしかに、ハングル派の努力によって、ハングルは、韓国社会に定着している。韓国は、日本と同様、識字率の高い国だが、日本時代の初等教育の普及と、ハングル教育に負うところが少なくない。ハングル派の言い分は、要約すれば、漢字論者への反論である。「ハングルは、韓国語の表記に適している。また、文字の機械化にも適している。それにもかかわらず、せっかく定着しているハングルに、漢字表記を加えることは、歴史の歯車を元に戻すようなものである」と、言うのだ。 これに対して、漢字混用論者は、こう主張する。まるで人体実験のように、韓国語の70%を占める漢字語を排斥した結果、相当数の教養欠落者を出した。教育効果を増進する漢字を、ただちに復活すべきである。 その後も、折に触れて、日本時代の教養を有する知識人たちは、ハングル至上主義による知識、教養の低下を憂え、漢字復活を建議し続けた。中には、漢字復活を訴え、ハングル至上の国粋派の指弾を受けて、大学の職を追われた教授すらあった。 韓国中興の祖とされる朴正熙大統領は、いわゆる第三共和国の一時期(1968~72年)、教育カリキュラムから、漢字を追放した。大邸師範学校を卒業した朴大統領自身は、必ずしもハングル至上主義ではなかったのだが、日本統治時代に奨励された漢字・ハングル混じり文が、いわゆる日帝のシンボルとして槍玉に挙げられたのである。 朴大統領は、日本の軍歴を持ち、日本寄りと見做されることも少なくなかった。朴大統領は、国民の大反対を押し切って、日韓基本条約を締結した。国民のポピュリズムに迎合しない姿勢は、高く評価されるべきだが、その代償のように漢字がスケープゴートにされたわけである。
2024.08.25
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第5章 ハングルと朝鮮文化」で日韓併合、独立闘争あたりを、見てみましょう。p177~181■朝鮮の近代と「洋擾」 明治維新後、日本の新政府は朝鮮に国書を送るのですが、「徳川時代とは違う」という理由で、朝鮮は国書(書契)の受け取りを拒否します。そこで、明治政府は、「維新が起こって天皇が親政するようになった」という旨の外交文書を、対馬藩を通して朝鮮に送るのですが、そこに「皇」と「勅」という字があるという理由でまたしても朝鮮側は受け取りを拒絶します。なぜかというと、「皇」は中国皇帝、「勅」は皇帝の勅書のこと。 これらの文字を含んだ文書は、朝鮮が冊封している中国皇帝からしか来ないものだからです。「こんな国書を受け取ったら、中国皇帝から何を言われるかわからない」のです。 朝鮮にしてみれば、日本は友邦ではあっても、日本に冊封されているわけではないから、「皇」「勅」という字が記された文書を受け取るいわれはないのです。 それで、副島種臣(幕末・明治時代の外交家)がまず清国へ行って、「朝鮮は貴国の属国であるか」と問い質すのです。すると清国は、「そういう関係ではない」と回答する。それを受けて、朝鮮へ出向いてその矛盾を質さねばならないという議論が生じます。それがいわゆる征韓論です。 西郷隆盛は、「自分は副島君ほどの外交能力はないかもしれないし、副島君ほどの成果を上げられないかもしれないけれども、向こうへ行って腹を切って死ぬことぐらいはできる」というような言い方をしたようです。それで、「西郷は戦争をする気だ」ということになる。もちろん西郷にまったく下心がなかったわけではないことは、その後の歩みを見れば明らかではありますが。 征韓論争のポイントになるのは、「清が朝鮮は属国ではないといっているのが本当かどうかを朝鮮にじかに確かめにいく」というところにあったのです。 その後、結局朝鮮は、日本を皮切りに、アメリカ、イギリス、イタリア、ロシア、オーストリアとそれぞれ通商条約を結んでいきます。ところがその条約を調印した後に朝鮮は、「朝鮮は中国の属邦」という声明書を相手国に送るのです。これは一種の中国を後ろ盾にした安全保障です。つまり、朝鮮は小国だと見なされるとあぶないので、中国が後ろ盾にあることを誇示しているのです。■大韓帝国の成立 前述したとおり、李朝の終わりの頃には、「朝鮮は中国の藩国である」という宣言をすることによって、植民地化を逃れようとしました。その朝鮮が冊封体制から離れ、近代において独立したのは1897年から1910年までのわずか13年間にすぎません。 1897年に国号を朝鮮から大韓帝国に改めます。日本が大日本帝国と名乗っていたので、それにあわせるように、朝鮮も大韓帝国としたのです。ここではじめて国王が皇帝になります。 これはわずか100年ほど前の話で、そんなに古い話ではありません。それから13年間、中国(清)との宗属関係下の王政を廃し、皇帝を名のる大韓帝国として皇帝専制による国家を始動させたのですが、すでに日本の日韓併合の方向は決定していて、1910年に、「韓国併合ニ関スル条約」が調印され、日韓が併合(日本の植民地化)して国号を朝鮮と改め、朝鮮総督府が設置されます。『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.08.25
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第5章 ハングルと朝鮮文化」でハングルの特徴を、見てみましょう。p168~170■ハングルの特殊性 朝鮮語は日本語と同様に、語彙のなかで漢語の占める割合が50~60パーセントあると言われています。半分以上は漢語からなる言葉で、漢字を撤廃してハングル表記に変えたところで、日本語を片仮名表記するようなものです。あくまでもハングルの裏には漢字が貼りついています。 漢語については、その漢字一字一字が本来もっている意味を捨象して、ただ音だけを写しているにすぎないのです。■ハングルの三つの特徴 ハングルは上述したような特徴をもっています。そのハングルの特殊性を整理すると、次の三点が指摘できます。 まず「中国音の挑戦訛り化」ということです。ここで間違ってはならないのは、挑戦は日本と異なり、基本的に政治の上層部は漢語・漢文の世界に生きつづけていたという事実です。 上層部の指導者は、公用としてはずっと中国音でしゃべっていた。その音をハングルで書き、それが朝鮮式にいわば訛って定着されたのです。あるいは社会の下層部までいって訛った中国音が、そこに定着されたのです。それが朝鮮語の漢字音になっています。 二つ目は「漢字単位表記」です。ハングルの子音記号・母音記号を漢字の単位に従って表記します。母音記号や子音記号を縦や横に綴るのではなく、漢字に従って一枡にまとめますから、線状に綴ることができません。これはハングルに「筆記体がない」ということでもあります。日本には平仮名と片仮名がありますが、平仮名は筆記体のみがあり、片仮名には筆記体がありません。 筆記体というのは、語を単位に続字・分書(わかちがき)しようとする指向性をもった文字です。言葉は単語単位でまとまろうとするものです。 たとえば、続字・分書の方向に沿って生まれた平仮名では、「あめ が ふる」というように、文章がつくれます。ところが、漢詩・漢文の間に分け入って翻訳するために開発された片仮名では「ア・メ・ガ・フ・ル」と「アメ」や「フル」も連合するようには書かれず、「アメ ガ フル」というかたちの綴字にはぎこちなさがつきまといます。 平仮名の場合であれば「あめ」の二字や「ふる」の二字が連続することに何の不都合もありません。「雨」と思って「あめ」とすんなり書けずに「ア・メ」と書かなければならないとすると、なめらかな思考が断たれてしまいます。片仮名では独立した文章や歌が成り立ちにくいのです。 続字できないという点において、ハングルは片仮名に近い。先に見たようにハングルの場合は、朝鮮地方特有の言葉(国語)も漢字語も一字一字を楷書の漢字のような単位で表記するため、続字ができないのです。 ハングルは非常に難しい位置にある文字です。片仮名と似た性格をもちますが、いわば漢語を前提にそれを普及させるためにできたハングルにおいて、その専用によって漢語との繋がりをわからなくすることは、文化的にも非常に損失だと思います。 ましてや朝鮮式に訛って表記されているのですから、ますます漢語との繋がりがわからなくなり、造語力も落ちます。そういう意味で、ハングルというのは非常に難しい位置にある文字だと思います。漢字ハングル交じり表記に戻るほうが、文化的には得策だと思われます。『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.08.24
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジアまず「序章 漢字文明圏とは何か」で漢字文明圏の叡智を、見てみましょう。p17~20<言語と文字から歴史を読みなおす> アメリカ依存の政権ができてからというもの、下火になりましたが、ヨーロッパの「EU」に倣って2000年代初頭には「AU(アジア連合)」という言葉が生まれました。また1990年代以降の急速な中国の経済発展とともに「東アジア」なる言葉もよく耳にし、目につくようになりましたが、それでは、東アジアとは、どのように定義すればよいのでしょか。 結論的にいえば、日本、中国、韓国・朝鮮、台湾、越南(ベトナム)が含まれる東アジアというのは、単なる地理的な概念ではありません。「漢字文明圏」というかたちで括ることのできる歴史的、地理的、文化的な共通性をもつ地域です。 たとえば、イスラムは地理的にいえば西アジアということになりますが、それでは東アジアと西アジアと合わせてアジアという定義づけが可能かというと、私にはそうは思えません。 東アジアというのは地理的な概念ではなく、「漢字文明圏」つまり「有文字・無宗教の歴史的、地理的、文化的地帯である」とわたしは定義したいと思います。とりあえず、「漢字文明圏」と表現しましたが、「一文字が一語である漢語文明圏」と言う方が正確です。 西欧アルファベット、アラビア系文字、インド系文字とは異なり、漢字は一語が一字、つまり「言葉即文字(漢語=漢字)」という構造をもつ、よりも優先の言葉であり、それゆえ、変化しにくく、水圧も高い言葉です。 東アジアの各国は、例外なく、この漢語・漢字を共通項としてもつことによって生まれ、括られ、再生産されている地方であり、また、この漢字に対する戦略の違いによって、中国、日本、朝鮮・韓国、越南などの国が生まれています。ちなみに漢語依存率は、中国では九割以上、越南は七割、日本や朝鮮・韓国でも五割以上を占めます。 アジア的段階の前にアフリカ的段階という概念を持ち込んだのは詩人にして思想家・吉本隆明さんですが、私の解釈ではアフリカ的段階とは無文字段階を意味します。東アジアは文字を持っており、かつ、宗教を持つヨーロッパなどとは違い無宗教です。有文字・無宗教の歴史的、地理的、文化的地帯、また歴史段階を東アジアと規定できると思います。 ただしこのときに、日本には仏教や神道があるではないか、朝鮮にも儒教やキリスト教、また道教もあるではないか、と考える人も多いと思います。しかしこれらは今私がここで使う宗教という範疇には入りません。それらは無宗教のなかでの政治思想や学問であったり、週刊であったり、世界観であったりというレベルのもので、宗教ではありません。宗教といったところで、いずれも、これらは近代以降、西欧キリスト教をモデルに再構成されたそれにほかなりません。 2001年の9.11事件を経て、これから世界の人類がどういう方向に向かうのかを考えるときに、吉本さんが規定するようなアフリカ的段階、ヘーゲルやマルクスがいうところのアジア的段階を経て、そのあとつづいて古代、中世、近世、近代、現代と区分される時代があるという西欧型の歴史観は、民主制的近代化を促すという意味で、有効な歴史観として機能したことは事実です。しかし、同時にまたその限界も見えてきたように思われます。 たとえば、少々強い言い方をすれば、東アジアにおいては、紀元前三世紀、秦の始皇帝時代に、基本的には宗教段階を終えていますから、西欧やイスラムが二次的に衣替えしたとはいえ、いまだ宗教的な観念の宇宙を払拭しきれていないことは、西欧は秦の始皇帝時代以前の歴史段階にとどまっているという言い方さえできないわけではありません。また、中央集権の郡県制と地方分権の封建制のあやとしての政治制度や中華・華夷性の国際外交制度をもつ先進地方でありつづけました。孔子をはじめ諸子百家の脱宗教=政治化んための言説や為政者のための倫理、道徳が、現代日本の経営者にも役立つのはそれゆえです。 言葉から離れられない人間の歴史を、言葉のスタイル、とりわけ、文(書き言葉)と言(話し言葉)の関係、つまりは言語に対する文字の関係から分類して世界史を考えなおすのが本書の狙いです。 その新しい歴史観では、言葉即文字の、文(書き言葉)中心の構造をもつ東アジアの漢字文明圏がまずひとつあります。次いで第二に、発音記号のごとき文字しかもたない、言(話し言葉)中心の構造をもつ欧米・西アジア・南アジア・北アフリカの宗教文明圏があります。これは子音と母音をもつアルファベット文明圏と、子音優位のイスラム文明圏と、母音優位のインド文明圏の三つの文明圏に分けられます。さらに、もうひとつ第三のアフリカ的な無文字文化圏を想定し、大きくはこの三極の歴史の総合として考えていくというものです。 むろん、東アジア漢字文明圏が西欧やイスラムなど他の文明圏と対立するというわけではありません。かつて、「東洋的叡智」という言い方がありましたが、はじめにお話ししたように東アジアは宗教をすでに脱した歴史段階にあり、西欧よりも先の思考をすでに持っています。その東アジア的叡智が生きて活躍できる場もまた21世紀に確実にあると思われます。
2024.08.24
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イタリア海軍の空母「カブール」が22日、海上自衛隊横須賀基地に寄港したようだが、このあと日本、イタリア、アメリカ、ドイツ、フランスの艦船が参加する多国間演習が行われるようです。これらの動きは、インド太平洋地域の海洋秩序を維持するための共同訓練と言われています。伊独仏までが日米豪印に加わって中国に対峙しようとする状況のおいては、チャイナ・スタンダードとは何か?と考えざるを得ないようです。・・・ということで、以下のとおり過去の記録から『チャイナ・スタンダード』を復刻してみます。*********************************************************<『チャイナ・スタンダード』3>図書館に予約していた『チャイナ・スタンダード』という本を待つこと10日ほどでゲットしたのです。【チャイナ・スタンダード】朝日新聞取材班、朝日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より人権、民主主義、サイバー空間、開発協力、生命科学、メディア、決済…。世界第2の経済大国となった中国は、世界のルールを塗り替えるのか。5大陸29カ国で総力取材。朝日新聞好評連載に大幅加筆し書籍化。<読む前の大使寸評>チャイナ・スタンダードってか・・・ちょっと昔で言うなら(やや見下した意味を含んでいたが)中華思想であり、今では箍の外れた覇権主義とでもいう怖いスタンダードである。<図書館予約:(9/22予約、10/02受取)>rakutenチャイナ・スタンダード「第7章 海洋進出」で中国の札束攻勢を、見てみましょう。<第3節 アフリカの中国軍基地>よりp196~200■港と直結、数千人収容 アフリカ東部のジブチ。2017年8月、中国はここで初めての海外軍事基地の運用を始めた。その半月ほど前、記者は現地を訪れた。 ジブチは国土の大半を砂漠と溶岩台地に覆われ、夏の気温は50度を超える。極度の乾燥で草木もほとんど生えない過酷な土地だが、紅海とインド洋が出合うバブエルマンデブ海峡に面し、すぐ沖合を欧州とアジアを往復する船が年間2万3000隻も通るシーレーンの要衝にある。 地政学的な重要性に各国は注目し、軍事拠点を築いてきた。最初に基地を置いたのは旧宗主国のフランスだった。1977年にジブチが独立した後も駐留を続け、現在も約2000人の部隊を配置する。米国は2001年の米同時多発テロの後、対テロ戦の一環として、アフリカで唯一の大規模基地を設けた。約4000人が駐留し、隣国のソマリアやイエメンで空爆作戦を続ける無人機を飛ばす拠点となっている。 08年ごろから、ソマリアの沖合で海賊の活動が活発化すると、ジブチは取り締まりに当たる各国の艦船や軍用機の補給地になった。09年から海賊対策に参加してきた日本の自衛隊は、現地での活動を支援するため、11年に初の海外拠点をジブチに開設した。海賊船を上空から監視する哨戒機を飛ばしたり、洋上で活動する護衛艦を寄港させたりするための支援要員として約170人が常駐する。イタリアも最大300人の要員が滞在できる補給基地を13年に造った。 これら4ヶ国が駐留するのは、首都ジブチ市国際空港の周辺だ。対照的に中国軍の基地は街外れの海岸沿いにある。広さは米軍の基地には及ばないが、自衛隊の拠点の約3倍の約36ヘクタール。コンテナハウスを並べた自衛隊拠点の仮住まい感とは対照的に、重厚なコンクリート製の建物が林立し、部隊を恒久的に駐留させる意図がにじむ。(中略) 外国の治安当局者は「駐留は数千人規模になるだろう。建物は地下にも続いている」とみる。 この基地の最大の利点は海へのアクセスを持つ点だ。中国の融資で建設されたばかりでの多目的港に隣接していて、中国海軍は埠頭の一部の独占使用が認められている。港の関係者は「基地の運用開始前から、中国の艦船が時々停泊している」と話した。 中国がソマリア沖の海賊対策に艦船を派遣したのは、日本より一足早い08年末だった。補給地としてジブチを利用していたものの、専用の基地の確保へ動き出したのは、自衛隊が拠点を開いた後だった。「中国は日本の動きに刺激を受けたのだろう。自衛隊の拠点ができると、中国政府の関係者が頻繁に外から偵察していた」と日本の外交関係者が明かす。巨額の中国マネーが人口90万人の小さな国を飲み込み始めたのはそのころからだった。 各国の艦艇が寄港していたジブチ港は当時、老朽化が問題になっていた。日本政府は無償援助で整備する計画をジブチ政府との間で進めていた。ところがジブチ側は突然、港の民営化を発表。「援助は要らない」と日本側に通告した。 まもなく中国の国有企業が港の運営会社の株式の23パーセントを取得し、港の運営の主導権を握った。さらに首都郊外の海岸に新たな港の建設が始まり、総工費6億ドル(約660億円)の半分以上を中国の投融資でまかなった。中国はその新港に直結する形で基地の用地を手に入れた。 ジブチ政府の財政基盤の弱さから、融資には慎重だった日本や欧米政府、国際金融機関を尻目に、中国は大量の資金を貸し込んだ。ジブチと隣のエチオピアを結ぶ鉄道(ジブチ側で約550億円)や同国からの水道用パイプライン(約380億円)の建設など、大規模プロジェクトに次々と巨額資金を融資した。無償資金協力が年間20億円程度の日本の援助の存在感は相対的に色あせた。『チャイナ・スタンダード』3:アフリカの中国軍基地『チャイナ・スタンダード』2:中国の潜水艦『チャイナ・スタンダード』1:サイバー空間での米中対立*********************************************************■2019.10.07XML『チャイナ・スタンダード』3https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201910070000/
2024.08.23
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