We love コミック日記

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第四話

【前へ】

【雪とともに 4】

「こんにちは また会いましたね」

 俺は思わず 彼女に声をかけてしまった

 今日は名前 ちゃんと聞こう 他にも いろんなことを知りたい

 そう思って あらかじめ聞きたいことメモを用意しておいた


「そういえば前 私の名前 教えてなかったね 才助さん」

 意外だった 彼女からそのことを言ってくれたのだ

 自分の名前を彼女に『さん』で呼ばれたので なんだか嬉しかった


「私は 佐絵 よろしくね」

 彼女はゆっくりと そして優しくそう言った

「さ…え…さん よろしくお願いします」

 俺はそう言いながら だんだん自分の顔が赤くなっていくのを感じた


 今日は前と違って会うのは2回目だから 前より落ち着いていることができた

 俺はさりげなく 佐絵さんを観察した

 目はキリリとしていて わりとクールだ

 そういえば 声色は優しいが どこか凛としたところがある

 髪は 肩に少しつくぐらい ロングではない

 全体で見ると 独特の感じがした

 若い女の人では珍しい おとなしくもかっこいい雰囲気を出していた

 この雰囲気は 誰かに似ていた

 懐かしく 温かく 包み込んでくれるような…


「才助さん」

「は…はい なんでしょう」

 いきなり話しかけられ どきっとした

「兄弟とかいらっしゃるんですか?」

 佐絵さんは 俺と同じくいろんなことを聞きたかったようだ

「います 妹が一人 もうけっこう大きいですけど」

 俺は笑い混じりに言った 病院にいる妹の顔が頭をよぎった


「妹さんがいるの… 妹さんも まんじゅう好きなの?」

 佐絵さんが聞いてきた 

 俺は この時初めて気がついた

 妹の好きなもの 全然聞いたことがない…

「結構距離感あるんで… 聞いとらんです」


「キイトラン?」

「あ……」

 俺は自分が敬語を忘れていたのを佐絵さんの目を見て悟った


「ごめんなさい 訂正します 聞いてないんです」

「いえ…… そんな 訂正しなくてもいいんです」

「え……」

「敬語でしゃべらなくても いいですから 無理しないで」

 また 佐絵さんから懐かしい感じがした


「私こそ… かたっ苦しくてすいません…」

 佐絵さんは クールに見えて けっこう丁寧で優しかった


「じゃぁ… 少しくずしますんで 言葉」

「いいですよ 私 はやくこの地域の言葉に慣れたいので」

「引っ越してきたんですか」

 俺はびっくりした 最近ここに来た人だったとは

「雪が降っていた日に ここにきました そういえば……

 才助さんと出会ったのも 雪の日でしたっけ」



 雪の日 ……雪の日は人と出会って人と別れる日………



 何故だかふいに そう思ってしまった

 別れたことなんてあったか 記憶にはないはずなのに


「では まだ色々とやることがあるものですから…さようなら」

 佐絵さんは 急ぎ足で去って行った


 俺はボーっとしながら帰路についた

 病院へは寄らず まっすぐ家に帰った


 家に帰ると 父がいた


「あぁ おかえり 会うの久しぶりだね」

 父が言った 俺はすごく懐かしい気分になった

「父さん 仕事一日中やってるからしかたないよ」

「できれば 毎日才助とあいつと一緒にご飯食べたいんだけどな」

 父は どこか遠くを見るような目でそう言った

 あいつとは 妹のことだ

「かぁちゃんも できれば一緒が良かったのになぁ」

 父はそう一言付け加えると 奥の部屋に行った


 俺は自分の部屋に入り 佐絵さんの事を考えていた

 また 会いたい また 話したい

 メモしていた事 全然聞くことができなかった


 俺は 机の上に置いてある写真を手に取った

 それは 俺の母の写真だ

 母は ある事故がきっかけで もう他界していた


 すると その写真をみてあることに気がついた


 佐絵さんは 母にそっくりだった


 俺は自然に 母に似ていた佐絵さんにひかれていたのだ


 これは 本当に 恋だと言えるのだろうか……

 胸がズキンと 痛んだ


【次へ】

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