We love コミック日記

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第五話

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【雪とともに 5】

 俺の足の先は 公園の方には向かなかった

 気づいてしまったから なかなか会おうという気にはなれなかったからだ

 別に佐絵さんは悪くない 悪くないんだ… 悪いのは 全て

 俺の…… この弱い心だ

 佐絵さんの顔が少し母に似ているくらいで 気にしすぎなんだ…


 携帯が鳴った 友達からのメールだ

≪今日一緒に遊べない~??≫と あった


 だけどこの事は もちろん友達には話しづらい

 話さなくとも この事で頭がいっぱいの俺と遊んでも…

 きっと 相手の気持ちを考えてみれば楽しくなんかないだろう

 しかたないから 友達の誘いは断って 妹に会いに言った

 ちょっと会いに行ってなかっただけでも久しぶりな感じがする


 病院の臭いはやっぱり どこか緊張してしまうところがある

 何故か 肩に力が入ってしまった

 俺は寒いのもあるから…と 別に緊張しているからだとは思わなかった


「久しぶり 昨日は会いに来なくてごめん」

「別にいいけど… 待ってました~!!来てくれただけで嬉しいから!!」

 妹は誰が見ても分かるくらい すごく嬉しそうにはしゃいだ

「公園には行った?名前は聞いた?」

「うるさいなぁ… 今 順に話してくから静かにしてろ」

 俺は ひとつ せきばらいをしてから昨日あったことをあらいざらい話した


「ふうん…佐絵さんか その人はっきりいって誰に似てるの?」

 妹はまた 地雷を踏んだ

「うん… それがね… 母さんにそっくりなんだ」


 二人のあいだに長い沈黙の時間が流れた……………… 


「なにぃぃぃぃぃぃ!!!!???この マザコンがぁ!!!!!!!!」

 妹が口を開いたと思ったら 空気を破壊するようなひとことを叫んだ


「普通そこでマザコンになるかぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 俺はすかさず つっこんだ と同時に滑って転んでしまった かっこ悪い


「なるよ!! 未練ありすぎなんだよお兄ちゃんは!!」

 何故だか 違うともいえるけれど 反撃のことばは見つからなかった

 家族がひとりいなくなる…そんなこと 忘れるはずがないだろ とも言えた


 だけど 恋の感情が混ざってるからか 気持ちを抑えてしまった


「まぁ 名前が聞けただけでも大収穫だよ」

「何だ 偉そうに…」

 それでも もっと叱ろうとは思わなかった

「次は デートに誘うべしだね お兄ちゃんは初心だから大丈夫かな?」


「無理だ そんなことできない それに もう会えない」

 俺はつい 本音を言ってしまった


「えぇ~?? 何で 何 その人引っ越すの???」

「違う でも 母さんに似てる…と一回思っちゃったら気まずいんだよ」

「でもそんなんじゃ 佐絵さんも傷つくよ」

 妹は 俺と全く逆の事を考えているようだ


「だからネガティブ思考の人は嫌なんだよ 明るく考えてみなきゃ」

「ん… 明るく…か」

 ということで 妹のポジティブ講座が始まった


「佐絵さんは前 偶然その公園にいました」

「何勝手に考えてるの 失礼でしょ」

 妹はため息をついて言った 「馬鹿だねぇ… それくらいわかりなよ」


「そしてそこにお兄ちゃんが来ました そして佐絵さんは思いました

 (何この男 ナンパ…?しかも…顔も…ちょっとなぁ…)」

「何!!?そんなこと思っていたのか」

 俺は かなり大きなショックを受けた

「ジョークぐらい分かれよ バーカ」

 妹は多分 久々に俺と会って 俺をいじりたいんだろう


 妹に任せるとこっちの精神がもたないので 俺も提案した

「そしてその男は話してもつまらない奴なので

 まんじゅうだけもらって 佐絵さんはその場から逃げ去りました」

 妹はそれを聞くと すごく怪訝な顔をした

「ネ・ガ・ティ・ブ!!!お兄ちゃんダメだなぁ… やっぱアレ…だめだわ

 佐絵さんは用事があったので その場を去らなきゃいけなくなりました

 だけどその男の人とまた話したいので また次の日も公園に行きました」

「なるほどぉ…」

「だから お兄ちゃんが来ないと待ってあげてる佐絵さんがかわいそうなの!!

 そゆこと☆ 以上!!! これでもう大丈夫でしょう」

 妹のポジティブさには 俺も頭があがらなかった


「ありがとう これで少しは自信が付いた気がするな」

「どういたしまして… お礼に 明日…」

 妹は赤くなると 言葉を切って下をむいた だが すぐに決心したように


「明日も 明後日も ずっとずっと 毎日ここに来るんだよ!!!OK?

 相談にのるから 絶対来なきゃだめだからね」

 …とだけ言って 布団の中に潜ってしまった


 俺は軽くうなずくと すぐにその場を去った



 ふいに 涙が出そうになった

 家族の存在の 人の存在の 暖かさに触れて………



 そのまますぐに 公園の方に俺は走った

 案の定 佐絵さんはきちんと ブランコにのって待っていた

 俺の心の中にはもう とまどいはなかった

 話す直前までは の ことなのだが…… 


【次へ】


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