♯５
【前へ】♯５「たまにはのんびりと」
前 新聞に相談屋が載ってから依頼の数が激変 別に悪い意味じゃない 良すぎる意味でだ
今までではありえない数のお客さんが来た …ほとんど危険ではなさそうだけども
とりあえず順々に片づけていったが その依頼は力仕事の手伝いが多く
何の相談だよ!!とつっこみたくなった
この仕事は便利屋じゃないんだよ!!紛らわしいけど……
でも 平日に暇ができた日もあった 今日も平日 お客さんがあまり来ない
弥生さんも才助さんも 最近働き過ぎてお疲れのようだ
俺はたまった給料をまず才助さんに 次に断ろうとする弥生さんに渡した
弥生さんも頑張ってくれてるんだから…と 半ば強引に渡した
「今日は誰も来ないから みんないろいろ自分の事とか話そう!!
最近忙しくて そんな余裕なかったからね」
俺はそうやって話を切り出した
歴史小説を黙々と読んでた才助さんが顔をあげた
「プロフィール公開ってやつだな」
そう言って才助さんは懐からメモと鉛筆を取り出した
「大丈夫です 言わなくっても私は才助さんのことは何でも知ってます!!」
弥生さんが自信ありげに答えた それって やっぱり……
「この ストーカーがぁぁぁぁ!!!!!!!」
俺と才助さんは一緒に叫んだ
「才助さんがいつもメダカに話しかけてるのも知ってますよ
あと いつもお風呂に入る時『いい湯だな』ってひとりごと言ってるのも知ってます
あと 夜に一人じゃ寝れないことも知ってます 寂しがり屋ですね
あ… 一人の時でもテレビに向かって話しかけたりしてるのも知ってます
そうそう 昔学校で飼ってた金魚が死んだときすっごい泣いてたというのも知ってます
えっと… 買い物の時もずっとひとりごとを言っているのも知っ…」
「やめろぉぉぉぉ!!!!!!」
才助さんが真っ赤になって弥生さんを静止した 弥生さんの方がＳっぽいな…
「ととととりあえず 自己紹介をしていこう! 弥生さんは黙って!
名前とか趣味とか血液型とか…よろしくっ!!」
俺はそう言って親指をつきだした ちょっと場がしらけた
「まず俺から 俺は高山 馨 大学卒業したばかりの相談屋店長」
「んなもん 知ってるわボケ～」
才助さんが力のないつっこみをした
「んなもん 知ってるわハゲ～」
弥生さんが真似してつっこんだ
「うるさいな…ハゲとか言うな!! …誕生日は５月６日 もうすぐだよ
おうし座のＢ型 好きなスポーツは剣道 趣味も剣道
将来の夢は この相談屋でいろんな人の悩みが全部消えてほしいな…ということ
チャームポイントは目かな 好きな人はいるよ」
俺はプロフィール帳を参考にしながら言った
「チャームポイントはチビ助なところだろ」
才助さんが上から見下して言った くそ…独り言男に言われたくねーよ
次は才助さんの番だ 弥生さんがメモを握って待機していた
「同じようにしゃべればいいんだろ 俺は五呈 才助 よろしく
誕生日は７月７日 かに座のＯ型だ 結構大雑把な性格だからな
好きなスポーツは格闘技全般…あ 柔道が一番好きかな やっぱ
趣味はひとりごとでもメダカ観察でもないぞ 読書とかだ
将来の夢は 人種差別がなくなればいいと思ってる
チャームポイントは髪の毛だ はねまくってるからな 目立つだろ
すすすすす好きな人は ひひひひひひひ秘密だ」
好きな人の行方を探してって相談に来たのは どこのどいつだよ!!
将来の夢は 天パを直すことだろ!!
「しゃべりすぎだよ才助さん 聞いてる方の身になってみてよ」
俺はそう言ってさらに突っ込もうとしたが 弥生さんに制止された
「次は私です 私は久坂 弥生 よろしくお願いします
好きなものは才助さん 好きな人は才助さん チャームポイントは才助さん
趣味は才助さんの事を知ること 好きなスポーツは才助さんを追うこと
将来の夢はやっぱり 才助さんの… きゃあっ!!!!!」
そう言うと弥生さんは思いっきり俺の背中を叩いた
それだけ言っといて なんで将来の夢が言えないんだろう……
「っていうか 誕生日とかも教えてよ ふざけんなよ～」
俺はそう言って弥生さんにもっと色んなことを…と思ったが
「ミステリアスな女の方が素敵なんです」
と 俺の言葉を振り払った
結局ぐだぐだのまま その日は解散になった
「まったく… 恥ずかしいおもいをしただけだったじゃないか」
才助さんはそう言うと さっさと帰ってしまった
弥生さんもその後から たったと帰ってしまった（後を追って行った？）
俺は結局 今日も役立たずだったかな… 皆に嫌な思いをさせてしまったかもしれない…
俺は見送ってから 自分の店の掃除でもするか と戻った
そこには 才助さんと弥生さんの忘れ物があった
さっきプロフィールを言っていった時に握ってたメモ帳だ
どうせ 弥生さんは才助さんのことばっかり
才助さんは どうでもいいことばっかり書いていたんだろうな と思って俺はこっそり見てみた
そこには……
『高山馨 誕生日は５月６日 もうすぐ 誕生日プレゼントを…
趣味剣道 ↑竹刀とか木刀とか適当に買っとこう 好きな人 やっぱレオナって人』
『高山馨さん 誕生日は５月６日 もうすぐ プレゼント必要
趣味・好きなスポーツ 剣道 ←すごい好きなんだな～
好きな人は 前相談に来てた人かな??』
なんだ 二人ともまともじゃないか 二人とも結構可愛いとこあるじゃないか
俺は 顔が思わずにやけてしまった
「うん 今日もいい湯だな 極楽～ 極楽～」
才助さんがお風呂でひとりごとを言っていた
弥生さんは いつも通り じーっとそれを見ていた
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