その2



わたしはある時期、毎日のように川の夢を見ていました。
向こう岸が見えないほどの大河であったり、ほんの小川であったりと、
その姿はまちまちでした。
でも、どの夢にも共通していることがひとつ。
川を流れる水の色は同じものでした。
光に反射してキラキラしているのではなく、
水そのものが、輝いていたのです。

始めは、今晩はどんな川を見られるのかしら、と楽しみに思っただけでした。
そんなわたしも、1ヶ月もこれが続いたので、さすがに気づきました。
これはメッセージなんだと。
わたしに、なにかをしてほしいんだな、わたしにできることといったら
メロディーを作ることかしら?
こう思いつくのとほとんど同時に、1曲分のメロディーがやって来ました。

これで一安心、このメロディーがこの世界にやって来たかったのね・・・
と納得したのもつかの間、川の夢は、あいも変わらず続いたのです。

冷静になって考えてみるとすぐわかることなのですが、
この曲は、歌詞が入って完成するタイプの曲だったのです。
どうやら詞も作れということらしい・・・。

わたしは歌詞を作るのは、そんなに得意ではありません。
言葉よりも、メロディーの人です。
何を書いていいのかまるで浮かばず、毎日悩みました。
その間も、川の夢は続きます。

そんなある日、なにげなく本棚に手をかけました。
と、どうしたことか、後ろのほうから1冊の本が転がり落ちてきました。
ヘッセの「シッダールタ」という小説です。

10年ほど前に買って一度だけ読んで、しまったままになっていたものです。
たしか、釈迦が悟りを開くまでのことを描いた小説だったような。
内容はおぼろげにしか思い出せませんでしたが、
この本をわたしに勧めた女性のことが思い浮かびました。

彼女Mさんは、新講師研修で一緒だった人です。
わたしは今ではピアノ講師ですが、始めはエレクトーン講師でした。
宿泊研修があり、偶然同い年だった同室4名の中にわたし達はいました。
いつもは4人でにぎやかに、ボーイフレンドの話などをしていたのですが、
ある研修会の帰り、他の2人が先に帰ってしまい、Mさんと2人だけ、残されたことがありました。

このとき初めて、Mさんがとてもスピリチュアルな人だと知りました。
後にも先にもこのときだけですが、2人で世界のこと、宇宙のこと、
見えない世界のこと・・・など飽くことなく語り合いました。
その会話の中のひとつの話題として、「言葉で説明できないことを、言葉で説明する」ということが、話し合われました。たしかこのとき、この本を読んでみて、
と彼女が言っていたような気がします。

わたしはすぐに「シッダールタ」を読みました。
とても不思議なのですが、このときには、著者のヘッセが
どのような気持ちでこの小説を書いたのかが、手に取るようにわかりました。
このしばらくあとに、読み返したときにはもうよくわかりませんでしたが。

読み終わるのと同時に、詞もやってきました。
この「天の大河 地の大河」という曲は、わたしが作ったのではなく、
曲のほうから、この世界に生まれ出て来たものと考えます。
わたしの使命として、多くの人に聴いてもらいたいと願いました。
わたし自身にはうまく歌えないので、歌い手を探しました。
探す過程では、ときに傷ついたこともありましたが、
新しい出会いもあり、わたしのまわりの人が幸せになれました。

むきになって求めたり、期待しても、望む結果は得られないものですね。
自然体でいたら、歌うべき人にやっと出会えました。
ずいぶん時間がかかりましたが、すべてこの曲の意志だったようです。





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