有給休暇B男
いきたくない。あのハゲ松の顔、見たくない。僕はもう、疲れた。
きのうの会議のハゲ松の態度はなんだよ。ハラたってしかたない。
ここいらで、ぬかないと、やってられないよ。
いま、８時半か、会社に電話してみるか。電話しないで休むわけには、いかないしな。また、ハゲ松に何をいわれるか分からないからな。
総務のS子あたりが来てるんじゃないか。
彼女に、ハゲ松に伝えてもらえばいいかな。
「もしもし、経理のKですが。はい。そうです。ちょっと頭痛くて、熱っぽいんで、今日、休ませてください。」
「はい。よろしくお願いします。」
「はい。ありがとうございます。」
あっ、びっくりした。社長がなんで電話にでんの？そういえば、アメリカの親会社とのテレビ電話会議が、今日あるんだったなあ。
心臓とまるかと思った。
社長はいい人なんだよなあ。でも、あのハゲ松だよ。なんで、あいつがおれの上司なんだろうな。
不運としか言いようがないな。
で、あとは今日、なにをするかだ。映画でも見るか。
お、ここのコンビニで、ぴあを買って。でも、どこで見るか注意しないとなあ。うちの会社の営業連中が、出没するとこは避けないとな。
おお、まだ、これやってたのか。見たかったんだよな。時間は11時半か。なんだ。3時間もあるよ。とりあえず、会社と逆方向の電車に乗るか。
うわっ、けっこう込んでるなあ。
でも、なんだなんだ、高校生が多いなあ。ま、反対側、そんなに会社なんてないもんな。
そうだ、T町のシネコンでみるかな。わざわざ、会社ちかくに地雷を踏みにいくことこない。
たしか、クレジットカード、みせると安くなんだよなあ。時間は、やっぱ午後一番の上映か。
でもさ、反対側のホーム、隣の駅も込んでるな。そして、そろいもそろって、みんなしけた顔してるよなあ。
なんだ、なんだ。しけた奴が乗ってると思ったら、ハゲ松だよ。
なんでこいつが？
あっ、そうだよ。きょうT市にある子会社にいくっていってたんだ。思い出した。
まじ、まずい。隠れるように乗ってるしかないか。
おっ視線を感じる。ハゲ松が、こっちを見てるよ。どうしようかなあ。
無視するしかないな。他人のそら似はあるもんな。
「B男じゃないか？」
「ちがいます。」
「だって、このバック、B男だろ。」
「ちがいます。」
もう、これで冬の賞与はないな。トホホ。
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